元暴走族の駆け出し弁護士・桜木建二(さくらぎ けんじ)は、経営破綻状態となった落ちこぼれ高校、私立龍山高等学校の運営問題を請け負うこととなった。
始めは清算を計画していた桜木だったが、破綻を回避し経営状態を良くするためには、進学実績を上げるのが手っ取り早いと考え、1年で1人、5年後に100人の東大合格者を出す計画を考案する。
かつて受験指導に大きな実績を上げた個性溢れる教師を集めながら、開設した特別進学クラスに人生を諦めかけていた水野直美と矢島勇介を迎え入れた桜木は、彼らに様々な受験テクニックや勉強法を教えていく。
果たしておバカ2人を1年で東大に合格させることは可能なのか―。
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登場人物紹介
<教師>
桜木建二(さくらぎ けんじ)
本編の主人公で、中卒で元暴走族という異色の肩書を持つ弁護士。大検を経て独学で弁護士の試験に合格して虎ノ門に弁護士事務所を開設する一里塚として、龍山高校の再建に臨む。
井野真々子(いの ままこ)
龍山高校の英語教師。私大の文学部英文学科卒。過去にお見合いパーティーで桜木と出会い「行為」におよんだが、その後連絡がつかなくなったことで桜木を恨んでいる。物事に対して逃げの姿勢が多い自己保身者。
柳鉄之介(やなぎ てつのすけ)
特別進学クラス講師として最初にやってきた老人。専科は数学。かつては東大の進学実績で名高かった伝説の私塾「柳塾」の塾長。「高校数学の鬼」と呼ばれ、受験生から恐れられていた。「詰め込みこそ、真の教育である」という柳の考え方は「時代に合わないやり方」と、生徒や保護者たちに拒絶される。以前、阿院と理数専門塾を営んでいたことがある。
川口洋(かわぐち ひろし)
特別進学クラス講師2番手。専科は英語。「英語は楽しく勉強しよう」がモットーとしているだけあって、独特なユーモアを持っている。
芥山龍三郎(あくたやま りゅうざぶろう)
特別進学クラス講師の3番手。専科は国語。風貌や物腰が緩やかな印象に対して、国語に対する姿勢には凛とした厳しさを秘めている。国語は全教科の試験の点数に影響し、根本をなしているほど肝要であるという考えを持っている。生徒には常に「なぜ?」という疑問を持たせ、設問を作った筆者の意図を読ませる授業などを行う。
阿院修太郎(あいん しゅうたろう)
特別進学クラス講師として最後にやってくる。専科は理科。「〜でヒ」が口癖である。具体的なイメージが持ちにくい高校の理科を自作のテキスト「阿院の物理」などを使って図解などを通してわかりやすく教える。地学も担当する。1、2年生の特進クラスでは実験を取り入れた授業も行っている。
高原浩之(たかはら ひろゆき)
龍山高校の数学教師。「生徒たちに夢や希望を持たせ、教師はそのサポートをしてあげる」などを教育モットーとして掲げ、度々桜木と衝突する。当初は桜木のやり方に反発していたが、生徒たちの変化を見るにつれ、桜木の考えに段々心を動かされてゆく。
宮村沙知子(みやむら さちこ)
龍山高校の国語教師。私立女子大の文学部国文学科卒。教師としての自分に自信を持てないでいたが、学校が変わるきっかけになればと思い桜木の指導方針に賛同する。国語の特別講師である芥山の指導方法に対し時には反発することもあるが、授業を見学してゆくうちに、彼の考え方に少しずつ理解を示すようになる。
<生徒>
水野直美(みずの なおみ)
龍山高校3年生。特進クラスの生徒。両親は中学2年の時に離婚しており、江古田でスナックを経営する母親と暮らしている媚びを売って生活をする母のように落ちぶれたくはない、1人で強く生きていくというのが東大を目指した動機。次第に桜木ら特進クラスの講師陣を強く信頼するようになる。
矢島勇介(やじま ゆうすけ)
龍山高校3年生。特進クラスの生徒。父親は大手製薬会社の社長。3兄弟の末っ子であり、幼少のころは両親から高い期待を受けて育ったが、中学受験に失敗したことをきっかけに、優秀な兄たちに対する劣等感や両親への反発から勉強をしなくなる。桜木にも反発しており、邪魔をしてやるつもりで特進クラスに加わったが、桜木や特別講師陣たちの指導を受けて次第に勉強に取り組むようになり、元来持っていた高いポテンシャルを発揮し始める。
栗山祥太(くりやま しょうた)
龍山高校2年特進クラスの優等生。中堅私大程度なら楽に行けると言われていたほどの学力の持ち主であるが、体が弱いため歩いて登校できる龍山高校を選ぶ。口数が少なく、大人しい性格。
西崎麻美(にしざき あさみ)
龍山高校2年特進クラスの生徒。将来、女優やタレントになるために東大ブランドを利用しようと考えている。井野とは犬猿の仲だが、案外それでバランスをとっているらしい。水野に対抗意識を燃やしている。
<その他>
岡部(おかべ)
龍山高校の債務処理を桜木に委託したエリート弁護士。
大沢賢治(おおさわ けんじ)
都立日眉山高校3年生。東大理科III類合格確実の成績を誇る秀才。さらに、3年間しっかりハンドボール部の活動も行い、亡くなった母に代わって家事や小学生の弟の世話もこなす。また、顔も性格も良い。水野いわく「宇宙人」。どのような物事にも興味を持ち、深く追求していこうとする性格。
本田美智子(ほんだ みちこ)
秋から矢島の家庭教師を務める現役の東大経済学部4年生。かつては東北の商業高校を卒業し、卒業後は地元の銀行で働いていたが、入社2年目にしてその銀行が突然倒産する。その経験から無知であることの恐ろしさを悟り、東大に入学して経済を1から勉強することを決意した。桜木が認めるほどの凄腕で、考え方には桜木と共通するところも多い。
松本エリカ(まつもと えりか)
京都在住の本田のもう1人の教え子。中高一貫校に入れられ学年トップだったこともあるが、高すぎる両親の期待に耐えられず突然高校を退学する。その後、本田の指導で東大受験を目指す。秋の東大模試で上京し、水野や矢島とも友達になる。