プロ野球のスパイダースに所属する凡田夏之介は、プロ8年目で年俸1800万円の中継ぎ投手で、プロ野球選手としては決して一流とは言えない選手。
そんな凡田が「グラウンドには銭が埋まっている」略して「グラゼニ」を胸に、プロ野球選手としての生活に励む。
前作では中継ぎと先発を行った来たりしながら投手としての頭角を現した凡田だが、チーム事情に振り回された末にポスティング申請でメジャー移籍を目指す。
しかし契約がまとまりかけたところで予期せぬベテラン選手の現役復帰のシワ寄せを受けてマイナー契約を打診され、結果として凡田は帰国。
入団先が文京モップスに決まり、意中の相手だったユキとも婚約した凡田の新たなシーズンが始まる―。
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目次
登場人物紹介
<凡田家>
凡田 夏之介(ぼんだ なつのすけ)
本作の主人公。投手、左投左打。
山梨鶴見川高校から高校ドラフト最下位でプロ入りした選手。
主に中継ぎのワンポイントで起用されるが、ロングリリーフや谷間の先発を任されるなど重宝されている。
球界でも限られた左のサイドスローという希少性を活かし、どうにか1軍に在籍し続けている。
狙ったコーナーにボールを投げ分ける技巧派。短所としては、球威がやや欠けている面が挙げられる。
プロはカネが全てと考えており、他球団の選手の年俸がかなり気になる性分。
それ故に常に選手名鑑を持ち歩いており、12球団の1軍選手の年俸をソラで言えるほどの「年俸マニア」。
ユキ
恵比寿の食堂で働く看板娘。24歳。なかなかの美人でスタイルや気立ても良い。男擦れしておらずとてもウブ。
夏之介が惚れて目を付けているが、他の客も大半がユキちゃん目当てでやってくる。
凡田 金太郎(ぼんだ きんたろう)
夏之介とユキの長男。
<文京モップス>
高橋 ノブヨシ(たかはし ノブヨシ)
外野手。モップスのプリンスと呼ばれるベテラン。
過去に34歳で腰を痛めて手術をしたため1年間棒に振ったことがあり、自宅に怪我について助言を与えに来たことがある。
東京4年目のシーズンから球団の要請でモップス監督就任のため引退した。
鈴木 ヒロミツ(すずき ヒロミツ)
文京モップスの監督。1年目でリーグ優勝、2年目で日本一を経験している。
しかしここ3年間は優勝から遠ざかっているため、今年は何が何でも優勝しようと勝負の鬼として非情な采配も厭わない方針を固めている。
辺見(へんみ)
鈴木の後任の文京モップス監督。
解説での冷静さと野球理論を買われ鈴木の後を継いだが「常勝」「球界を代表するチームの監督」というプレッシャーで不安に駆られ大型補強を実施、多くの選手を獲得した結果凡田を含まない形で球団保有の70人枠を使い切る。
しかしその甲斐もなく2年連続でワイルドワンズの後塵を拝し、契約満了により更新せず退任となった。
杉浦(すぎうら)
鈴木の運転手。辺見体制になり投手コーチとして入閣。
自身が現役時代に肘を故障して引退に追い込まれた経緯がある。
杉里 令一(すぎさと れいいち)
投手。開幕当初は2軍スタートだった中継ぎピッチャー。
<神宮スパイダース>
大野 雪雄(おおの ゆきお)
外野手(左翼手)。山梨県出身。
大卒3年目の若手。守備にやや難があるもそれを上回る打棒が持ち味。
スパイダーズ山梨県人会の三男。
山梨県人会の中では随一の素質を持ち、夏之介にも認められている。
丸金 千太郎(まるがね せんたろう)
捕手。高卒6年目。ドラフト5位で入団。
中学生の時両親が離婚し母子家庭に育ち、現在は妹の学費の面倒を見ながらプロ生活を送るハングリー精神の塊のような選手。
「野球はお金を稼ぐ手段」と断言するなど、夏之介をもってしても自分以上と認めるグラゼニ体質。
波越 拓郎(なみこし たくろう)
スパイダース新監督。「策士」と呼ばれるキレ者。
富士野 泰山(ふじの たいざん)
外野手。福岡シャープホークスからFA加入した大物スラッガー。
鳥海 啓太(とりうみ けいた)
一塁兼外野手。
夏之介と同級生で、高校時代は四番&エースで夏の甲子園制覇という輝かしい経歴を持つ。
大学でも好成績を残してモップスにドラフト1位で入団した。
しかし球団の大補強&入団当時通算500本塁打をマークしていた主力選手という厚い層によって出場機会はなく二軍の帝王状態になっていた。
椎名 敬士(しいな けいし)
元エース投手。前シリーズではエースとして君臨していたが、実力が衰え始めている。
<スパイダース関係者>
安田 良樹(やすだ よしき)
スパイダーズのスカウト。プロ入り時の夏之介を担当し、シビアなアドバイスでプロの心得を教えた。カネにこだわる夏之介の性格に大きく影響を与えた人物である。
カタギには見えない出で立ちをしている。周囲の人間や他球団のスカウトが西浦に注目する中、ただ一人早くから夏之介に注目していた。
凡田と同じ山梨県出身。
羽田
スパイダーズの編成部長。もともとは監督のマネージャーをしており、ドラフトでの編成を担当するようになった際に目をかけていたトクに発破をかけるため、凡田の指名を決断した人物。
<瀬戸内カーナビーツ>
原武 裕美(はらたけ ひろみ)
投手。プロ入り14年目。入団時から中継ぎ一筋のベテラン。元ツッパリの一本気な性格で愛称は「瀬戸内番長」。同期は全員引退している。
広島のローカル番組でグルメレポーターを務めたり、ウェブサイトで人生相談の回答を担当したりするなど、ユニークなキャラクターでファンからの人気は高い。
他球団所属ながら夏之介にも非常に慕われており、本人も同じ境遇である夏之介を可愛がっている。
豪胆なイメージとは裏腹に実は慎重で小心な性格。身体能力は低く(入団後の体力測定で「遠投」も含め同期で全種目最下位)自身でも強く自覚している。
<川崎ブルーコメッツ>
三浦 永輔(みうら えいすけ)
「ハマの永ちゃん」と称される選手で、ファンからも人気がある背番号18のピッチャー。
高校時代は練習についていけず幽霊部員になっていたが同僚からリンチを受け半強制的に部に戻らされながらも自分の才能と必要性に気づき、ブルーコメッツの前身「大漁ホールズ」に入団。
ミラー
ブルーコメッツの監督。
現役時代は「ミラーちゃん」の愛称で親しまれスパイダース→モップス→ブルーコメッツと渡り歩いた選手。
<名古屋ワイルドワンズ>
北王子 敏文(きたおうじ としふみ)
名古屋ワイルドワンズ〜野球解説者〜ワイルドワンズ監督。
大学、社会人を経て地元球団(ただし、出身は群馬県)である名古屋ワイルドワンズに入団し、長年正捕手としてプレー。
2000安打も達成し、「ミスター・ワイルドワンズ」と称された大選手。
渋谷 章(しぶや あきら)
投手。神宮スパイダース→名古屋ワイルドワンズ。ドラフト1位入団。夏之介とドラフト同期の同級生。
他の同期がすでに残っていないこともあり、仲がいい。先発ローテーション入りしており、プロ7年で通算21勝を挙げている。
栄養管理などにも気を使っているが、細かいことを気にしすぎるところがあり、夏之介からも「ちょっと気難しい奴」と思われている。
関谷 雅光(せきや まさみつ)
一塁手。年俸1億8000万円。3番打者。ランナーが溜まるほど力を発揮するクラッチヒッター。
ちょうど10倍の年俸を稼いでいるため、夏之介に強く意識されている。
飲み明かした後に二日酔いのまま試合に出場するような豪放な性格。
だが一度グラウンドに入ると、凡田曰く「肉食系」の強烈な集中力を発揮する。
<仙台ゴールデンカップス>
徳永(とくなが)
元投手。山梨県出身。愛称はトク。
3年前に引退した元スパイダーズの選手。現役時代は右の先発として10年間活躍し、通算49勝。
一時期は年俸3000万円くらい稼いでいたが現役時代に散財したため、貯蓄はない模様。引退初年度の年収は300万円に満たなかった。
人当たりのいい宴会系キャラでファンからもそこそこ人気があった。オトワラジオのディレクターと仲がよかったこともあり引退後運良くラジオ解説者になるも、感覚に頼った擬音の多い解説をするため、聴取者の評判はいまいち良くない。
夏之介とは同じ山梨出身ということもあり現役時代から人一倍かわいがっており、夏之介、雪雄の3人でスパイダーズ山梨県人会を結成し、長男を務める。
五利 今栄(ごり いまえい)
内野手。年俸1億5千万円。幕張サベージ→仙台ゴールデンカップス。日本シリーズMVP獲得経験2回のサベージの看板選手。
向井(むかい)
ゴールデンカップスのヘッドコーチ。山梨県出身。
監督に昇進することが内定しており、トク、凡田と同県出身者をチームに入れることを狙う。
<札幌パープルシャドウズ>
則川 祐一(のりかわ ゆういち)
投手。モップスの中継ぎ投手。
高校、大学時代共に全く目立たずスカウトからも「物になれば儲けもの」の低評価で入団後も二軍暮らしと敗戦処理が続き凡田の入団で危機感を感じていたが、後に大化けする。
現在では凡田と一家ぐるみで交流のある良き親友であり中継ぎのポジションを争う立場としては最大のライバルとなる。
家族はギャル系ファッションでガングロの妻・かおると一人息子の神王統(かおす)の三人暮らし。
妻はモップスファンの間でも「モップスの選手以外とは結婚しない」と言う有名な追っかけであり当の則川本人も金目当ての結婚と見ているが高校で全くモテなかった過去から自分を好いてくれるならと意に介していない。
河内 達也(こうち たつや)
打者。凡田の同い年。ドラフト8位。年俸1億5000万円。
凡田と何かと因縁がある。
<その他>
松本 ひでお(まつもと ひでお)
オトワラジオのアナウンサー。作中ではプロ野球中継の実況のほか、シーズンオフにナイター枠で放送される生番組『ココだけ』のパーソナリティも務める。
徳永と仲が良い。
セキネ
飛ばし記事で有名なスポーツ紙東東スポーツ(略して東スポ)の野球担当記者。
彼女が文京モップスの取材をしてからチームは快進撃で日本一を達成し「勝利の女神」と呼ばれている。
ダーティー桜塚
スポーツ交渉代理人。助っ人並びに日本人メジャーリーガーの身辺調査を受け持ち、選手のスカウトから年俸の仲介、球団の売り込みなど、移籍に関わる業務であれば幅広く扱っている。
元モップス所属のプロ野球選手(投手)だが、3年で現役を引退した。目的のためなら手段を問わない手法への評判を逆手に取り、「ダーティー桜塚」と名乗っている。
持田郁
ダーティー桜塚事務所社員。ダーティー桜塚の部下。夏之介の山梨鶴見川高校時代の1年後輩。