助けられない命の多さに落ち込むものの、仲間とつらさを分かち合うことで乗り越えた。
2日目には重症患者が多く運ばれる医療拠点での活動を行う。
混乱する医療現場を指揮する決意をし、冷静かつ適切に患者を振り分けていった。
そのころ、まだ八雲や桜庭と連絡が取れていなかった春子は瓦礫の下にいた。
7巻のあらすじを振り返ってみましょう。
絶望の淵に立つ佑子
震災前日、高速事故で夫と子供を失った丸山佑子は母と面会していた。
事故後、子供を失ったことからうつ病を発症し精神科に入院していたのだ。
佑子の息子は死に、生きる意味を見出せなかった。
だが、佑子の母にとって佑子もまたかけがえのない娘だ。
母は佑子が助かったことを心から感謝しているし、佑子もそうならなければならないことは理解している。
それでも少しづつ回復しつつある佑子は、その日母と外泊する予定になっていた。
しかし、受付で手続きを済ませ外に出ようとした瞬間、地震が発生する。
佑子は無事だったが、母は落下物が頭部を直撃し、そのまま帰らぬ人となってしまった。
ようやく立ち直りつつあった佑子は再び絶望に打ちひしがれ、自ら命を絶とうと考えていた。
春子らの保育園も被災
ひまわり保育園も当然、地震の被害にあっていた。
この保育園は震災時避難場所に指定されている。
長時間の避難が予想される中、必要な物資を確保しなくてはいけない。
春子は生活物資を確保するため外に出ていた。
余震により、緊急避難命令が出される。
子供たちも保育士もすぐに外に避難させられた。
子供が全員そろっているか確認している余裕などない。
すぐに園内からは人気がなくなった。
ところが、奥から一人の子どもがはい出てくる。
一人取り残された輔はその場で泣くことしかできなかった。
輔の救出
自ら命を絶つために佑子は橋の上に来ていた。
周囲は瓦礫の山になり、世界の終わり用のような景色になっている。
母まで死んでしまった佑子に生きる気力は残っていなかった。
飛び降りようと橋の欄干に手を掛ける。
その瞬間橋の下に泣き叫ぶ幼子・輔の姿を発見した。
自力ではい出てきたのか、路上で座り込んでいる。
佑子はすぐに橋の下に向かった。
輔を抱き上げた佑子は声を上げて泣き出す。
佑子もまた、輔に心と命を救われたのだ。
テロ犯の救出
青木は瓦礫の中で意識を取り戻した。
目の前で毒の入った瓶が割れているにも関わらず、生きている。
毒の生成は失敗していたということだ。
全身大けがで血も大量に流れている。
青木は死の恐怖から助けを願った。
家族を失い、仕事を失い、人にも社会にも捨てられたと思っている青木。
自分のことを助けてくれるものなど来ない。
死ぬまで世の中不公平だと感じていた。
その時、近くに救助の声が近づいてくる。
青木の救助に現れたのは、憎くてしょうがない八雲だった。
心からの謝罪
八雲はすぐに治療を開始する。
青木はすぐに意識を失ってしまった。
四肢にマヒが出ている様子から頸椎の損傷が疑われる。
全身から出血し、いつショックに陥ってもおかしくない状態だった。
八雲は依然桜庭が見せた、安全ピンによる舌の固定を思い出していた。
部屋から安全ピンを探し出すと、青木の傷を縫い付ける。
とっさの機転で、出血のコントロールに成功した。
意識を取り戻した青木にに八雲が呼び掛ける。
八雲は同じ病院で働いていた青木のことを覚えていた。
青木を助けられたことを喜ぶ八雲。
搬送される中、青木は涙を流しながら心の中で謝り続けた。
春子との再会
地震発生から31時間。
八雲達がいる医療拠点は、一息付けるまでになっていた。
皆の勧めで八雲が休憩に入ると、携帯電話には桜庭からの不在着信が何度も入っている。
すぐに折り返すと、桜庭から春子が行方不明であることが告げられた。
春子が向かった先は、八雲がいる場所のすぐ近くだという。
八雲は休憩時間を利用し、すぐにその場所へ向かった。
そこで八雲が見たものは、倒壊した子供用品店と春子の自転車。
震えが止まらぬまま中に入る。
すぐに一人の女性を発見する。
すでに息絶えたその女性は春子ではなかった。
一通り、店内を探すが、ほかに人はいなそうだ。
しかし次の瞬間、がれきの下にもう一人発見する。
血まみれで意識を失った女性は春子だった。
春子の秘密
春子はまだ息があった。
だが、腹腔内出血が疑われ、重要な臓器や血管に関わる骨盤も骨折している。
脈も微弱で非常に危険な状態だった。
その時春子は意識を取り戻す。
桜庭と輔が助かったことを知り安堵するが、自分が助かりそうにないことを悟る。
それは八雲の表情からも見て取れた。
そのこと、八雲の無線に連絡が入る。
近くで要救助者が見つかったのだ。
自身の状態を理解した春子は、八雲に次の人の下へ行くよう告げる。
だが、八雲にとっては妹の命だ。
医者を辞めてでも春子のことを一人にするわけにはいかない。
だが、瓦礫もどかせず、大した医療資材も持っていない八雲にできることはもう無い。
うなだれる八雲に春子が秘密を打ち明けるという。
それは過去にリストカットした時の話だった。
春子は当時付き合っていた男の子を宿し、堕胎していた。
当時、あえて八雲は詮索しなかったが、その後悔から死のうとしていたのだ。
だが、今は生きて桜庭の子を産み、命を繋げられたことに感謝している。
自分を救ってくれた兄に感謝していた。
決意の黒タグ
集合する時間まであと5分。
八雲はまだ春子の側にいた。
どんどん状態が悪化していく春子を前に八雲ができることは何もない。
しかし妹を見捨ててこの場を離れることもできなかった。
その時、春子は決断する。
近くに落ちているトリアージタグを手に取ると、赤タグ以下を自らちぎりだした。
八雲の脳裏に幼いころから大きくなるまでの出来事がよみがえる。
ごめん。
八雲は一言春子に声を掛けると、春子の手からトリアージタグを取り一気に引きちぎった。
春子を抱きしめ別れを告げると、黒タグと家族で撮った写真を残し、現場へと駆け出す。
幼いころから取り続けてきた春子の手を、この時ついに離すこととなった。
大災害から半年後
東京湾北部大震災と名付けられた大災害から半年後、東京は復興が加速していた。
DMATの活躍により、多くの命が救われたことに賞賛の声も多い。
だが伊勢崎はまだまだ満足していなかった。
奥多摩の駅での桐谷夫妻との再会。
八雲が撒いていた大切な人の遺骨とは春子のものだった。
八雲が大好きなその場所は春子の好きな場所だったのだ。
遅れて桜庭やDMATチーム、輔を助けた佑子も訪れる。
皆、春子から託された命を繋ぐという思いを受け取っていた。
【7巻のまとめ】
回復しつつあった丸山佑子は被災し、母も失う。
命を絶とうとさまよう中で、取り残された輔を偶然発見し救助していた。
テロを企んでいる青木もまた被災し、八雲に救われ改心する。
ようやく見つかった春子だが、重傷を負い危険な状態だった。
八雲は自ら春子に黒タグをつけ、さらなる救助活動へ向かう。
半年後、桐谷夫妻と訪れた奥多摩の山奥で、春子の遺骨が散骨された。
【7巻の見どころ】
この巻の見どころは、極限の絶望とそこから生まれる希望の光です。
高速事故で家族を失い、うつ病を患った佑子は、母の死によって再び生きる意味を見失います。
しかし、自ら命を絶とうとした瞬間、泣き叫ぶ幼子・輔を発見し、その救出を通じて自分自身も救われます。
一方、テロを企てた青木は、八雲に命を救われることで憎しみから解放され、心からの謝罪を捧げます。
そして最も衝撃的なのは、八雲が妹・春子に黒タグをつけ、救助活動へ向かう決断のシーン。
愛する家族を見捨てるのではなく、彼女の思いを胸に前へ進む姿は圧巻です。
次巻へ続きます。
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