命を絶とうとさまよう中で、取り残された輔を偶然発見し救助していた。
テロを企んでいる青木もまた被災し、八雲に救われ改心する。
ようやく見つかった春子だが、重傷を負い危険な状態だった。
八雲は自ら春子に黒タグをつけ、さらなる救助活動へ向かう。
半年後、桐谷夫妻と訪れた奥多摩の山奥で、春子の遺骨が散骨された。
8巻のあらすじを振り返ってみましょう。
紅美の不満
八雲は災害医療指導のため、台湾に派遣されていた。
その分紅美の負担が増え、臨時要因だったはずがすっかりDMATの主力になっている。
紅美は院長室に怒鳴り込む。
もうすでに36時間も連続勤務しているのだ。
予算も人員も復興に回され、現場はボランティア状態だ。
今は耐えろと言う伊勢崎と、不満が爆発寸前の紅美。
そんな中、新しい看護師がやってくることとなる。
院長の肝煎りでやってくるのだ。
DMAT要因である可能性が高く、吉岡たちも喜んでいた。
新メンバーの初出勤
ある兄弟が車に乗っている。
遅刻しそうな妹を、兄が送っているところだ。
急げという妹の言葉に兄はアクセルを踏み込む。
その時、目の間に猫が飛びだす。
避けようとしてハンドルを切られた車は路肩の建物に激突してしまった。
そこに通りがかった自転車の乗った青年は、すぐに自転車を降り、兄弟の下へ駆けつける。
だが、自身も車にひかれてけがを負ってしまう。
逃げた車に悪態を文句を言いながら、事故車へたどり着くと、中では兄弟が血を流して意識を失っていた。
ドアが開かないと知るや否や、青年は拳で窓ガラスを突き破る。
2人とも脈がなく危険な状態だ。
救急車を呼ぶものの、早朝では周囲に人がいない。
AEDを探しに行っている暇など無い中、青年は必死に考えを巡らせていた。
消防隊が到着すると、隊員たちは驚きの光景を目にする。
そこには兄弟に同時に心臓マッサージを施す青年の姿があった。
この処置が功を奏し、2人とも心拍・呼吸共に再開し、有栖川に救急搬送されることとなった。
重症を負いながら懸命に救命措置を行った青年もまた搬送される。
彼に万が一のことがあれば、それは消防の恥に他ならなかった。
一方有栖川では時間にうるさい長谷川がイライラしていた。
まだ新人が出勤してこないのだ。
そこへ、先ほどの青年が救急搬送されてくる。
ストレッチャーの上で青年は自己紹介する。
その青年・中島山月こそ今日から有栖川ではたらく新人看護師だった。
中島の評価
中島は伊勢崎親子と子供の頃からの家族づきあいがある。
中島の家は寺だが、空手の道場も営んでおり、伊勢崎も師範をしているのだ。
その日も屋上で院長の伊勢崎と組手で汗を流す。
伊勢崎は中島を組み手の相手くらいにしか考えていなかった。
紅美にすれば、厄介者を自分のチームに押し付けられたにすぎない。
聞かれていることにも気づかずに、伊勢崎親子は中島を大声でけなしあっていた。
一方で吉岡は中島の仕事ぶりに感心する。
意外なことに、力に頼らず丁寧で繊細な看護をする姿に好感が持てたのだ。
紅美の親友
紅美には努力を誓った友人がいた。
だが、最近はDMATにすり減らされ、論文もかけていない。
決して若くはない中、先が見えないことに焦りを感じていた。
アメリカ留学時代、紅美の成績は友人の瑞蘭に毎度大差を付けられての2位。
有名病院への特待推薦研修枠にあと一歩だった。
その瑞蘭はストーカー行為を受けており、ついには暴行され殺されてしまう。
その志を継ぐことで、今の天才脳外科医・伊勢崎紅美は存在する。
憧れていた親友である瑞蘭の死は紅美の心に暗い影を落としていた。
呼び起された過去
雨の降る夜、路肩に止まったワンボックスカーの中で一人の女性が暴行を受けていた。
ストーカーは自分に従わない彼女を道連れに心中を試みる。
ダンプカーに激突したストーカーの車は大破し、DMATの出場が要請された。
初出場に気合を入れる中島に、紅美は冷静な判断の大切さを語る。
現場ではストーカーの男性と被害者の女性両方が赤タグの状態で救出を進められていた。
男性は奥のほうで救出に時間がかかりそうだ。
女性のほうが救出は早そうだが、症状は深刻で救出の可能性が低そうだった。
どちらの救助が優先されるのか判断に迷う中、警察から2人の関係性を伝えられる紅美。
中島は感情的になり、被害者女性の救出を優先したがった。
だが、花田はあくまで鉄則に従いストーカー男性の救助を優先するべきだと提案する。
瑞蘭の姿を脳裏に浮かべる紅美。
紅美の決断は女性の救助を優先することだった。
最悪の結末
男性を優先すれば男の命は助かるかもしれない。
もちろん女性の命はまず助からない。
かといって、女性の命を優先すれば、両方助からない可能性が高い。
その中でも紅美は女性の救助を優先する。
花田は男の救助を優先するよう紅美に進言するが、紅美の決断は変わらなかった。
手を尽くし、女性の治療にあたるが、結局女性は死亡してしまった。
すぐに男性の治療に映る紅美たちだが、結局男性の命も助からず、両者死亡といういう最悪の結果を招いてしまう。
それでも紅美は必死に自分の判断は間違っていなかったと自分自身に言い聞かせていた。
プロ意識
病院に戻る紅美を伊勢崎が待ち受けていた。
事件がらみだった出場の概略を聞いておくためだ。
感情に流された判断がなかったのか問い詰める伊勢崎。
皆、心当たりがあり、焦りの表情を見せる。
しかし、紅美は決して感情論で判断を下しているわけではなかった。
見えている現場の状況を考慮した合理的判断だったのだ。
伊勢崎は納得し、DMATの面々もほっとした表情を見せる。
しかし、ニュースを見た紅美は犯人の年齢を見て驚く。
ずいぶん高齢に見えた犯人はまだ48歳だった。
65歳以上がトリアージにおいて後順となる、という根拠が崩れる。
何度も現場で瑞蘭を思い出した自分は、無意識のうちに情報を歪めていたのではないか。
紅美の自身が揺らぎ始めていた。
吉岡の励まし
紅美は気分を紛らわせようと、男に抱かれていた。
だが、DMATの活動に批判的なその男に腹が立つ。
結局気がまぎれることもなく帰宅してしまった。
切らしている酒を買いにスーパーに行くと、吉岡と出会い夕食に招かれる。
強がる紅美だが空腹には勝てず、吉岡の家へ行くこととなった。
仲間も多く、人が集まることが多い吉岡の料理が紅美も満足するものだった。
酒も進み、酔った紅美はDMATを辞めることを吉岡に告げる。
しかし吉岡は瑞蘭と同じ言葉で紅美を励ました。
吉岡に気を許した紅美は機嫌よく酒を飲み進める。
その時何気なく吉岡がニュースの話を始める。
ストーカーは覚せい剤の常習者だったそうだ。
覚せい剤の常習者は老けて見えることが多い。
紅美は自分の目が曇っていたわけではなかったことを知った。
仲間
気分がよくなった紅美はさらに飲み進める。
吉岡の部屋にあった八雲の写真を見つけると、最近八雲のことが気になっていることを打ち明ける。
吉岡もまた、八雲のことが気になっていた。
そこへ紅美に呼ばれていた合コン帰りの花田達が訪れる。
中島や村上を含め、DMATの仲間と盛り上がる。
一人で頑張ってきたつもりでも、仲間がいることで救われることを知った。
翌朝、酔いが覚めた紅美は八雲への想いを再確認するとともに、DMATを続けていく意思を固めた。
【8巻のまとめ】
DMATに新メンバーである看護師の中島が加わった。
伊勢崎の評価は低いものの、同じ看護師の吉岡は少なからず評価している。
そんな中、中島の初出場となる事故現場は紅美の過去を掘り返すものだった。
冷静な判断をしたつもりが、いつの間にか感情的になっていたのかと悩む紅美。
DMATを辞めるつもりでいたが、後に判断に間違いはなかったことを知る。
仲間とバカ騒ぎをし、気持ちが救われた紅美はDMATを続けることを決意した。
【8巻の見どころ】
この巻の見どころは、新たな看護師・中島の登場と、紅美が過去と向き合う姿です。
中島は事故現場で負傷しながらも救命活動を続け、その実力を見せつけます。
しかし、紅美は彼を厄介者扱いし、伊勢崎も評価を下しません。
そんな中、ストーカー事件でのトリアージ判断を巡り、紅美は苦悩します。
過去の親友・瑞蘭の死が蘇り、冷静だったはずの自分の判断が揺らぐのです。
誤った決断かもしれないと悩む紅美に、吉岡がかけた言葉とは？
次巻へ続きます。
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