そして、川内はPTSDを発症し恐怖の記憶を呼び覚ましてしまった。
事故の原因を知った川内と、記憶障害の原因を知った三瓶はどう立ち向かっていくのか。
13巻のあらすじを振り返ってみましょう。
思い悩む三瓶
大迫の告発によって西島同窓会長も逮捕。
騒動により、大迫は不起訴処分だったが脳外科医から引退することに。
三瓶は大迫に会った日、川内の治療について話し合っていた。
何とかして完治を目指したい三瓶に対して、現状のまま回復を見守るのがベストと考える大迫。
それでも三瓶は、諦めきれず極細の血管縫合の練習を黙々と続ける。
そして、看護助手業務を卒業し脳外科に専念できることになり喜ぶ川内に、手術で記憶障害が完治するとしたらどうするかと問いかけ困らせてしまうのだった。
NPO法人 失語症グループ NEW VOICE
五十嵐の念願であったNPOの開所が決定し、三瓶たちは開所式に招かれた。
川内は失語症に悩む患者の一人である富田夫婦にさっそく施設を紹介する。
通常のデイケアでは言葉が通じないストレスがあり、近所を出歩くにも周囲の目が気になり家に引き籠りがちで、なかなか居場所を見つけられずにいた富田は入所を希望した。
それぞれタイプの違う失語症患者でも意思疎通ができるようボランティアがフォローし、富田も生き生きと会話をしているように見えた。
しかし、NPOにも新聞記者の取材が入り、注目が集まる。
しかし出来上がった新聞の「失語症の方たちの居場所づくり」の見出しを目にして、三瓶は内心がっかりするのだった。
富田の居場所
ある日、仕事で娘の学校の旗当番に立てなくなった妻に代わり、旗当番を思い立った富田。
それを見た父兄や教員たちが「子どもに何かあっては困るから」と富田に旗当番をやめさせようとしたことで、富田は破滅反応の発作を起こし、病院に運ばれてしまう。
富田は旗当番を問題なくこなすことができることを三瓶は説明するが、学校関係者たちがなかなか理解を示さない。
周囲の人間の理解と協力がないと、富田の居場所はNPOの中だけになってしまう。
新聞の見出しを見て三瓶ががっかりしたのもこれが理由だったのである。
再び家に引き籠ってしまった富田に、なんとか旗当番をさせてあげたいと川内はNPOに足を運び協力を要請する。
そしてNPOからやってきた仲間やボランティアたちと協力し合うことで、富田は互いの得意不得意をカバーし合いながら力を引き出し、旗当番の役割を見事に果たした。
富田が旗当番にこだわる理由は、娘や社会との関わりに自分も参加したいという思いからだった。
作業療法士 今市太郎
丘陵セントラルに新しく仲間入りした作業療法士の今市太郎。
五十嵐は実習生時代、一緒に仕事をしたことがあるようだが毛嫌いしている様子。
そこへ運転ミスでけがをした患者が運び込まれる。
大したけがではないものの、左側の空間認識障害を疑った三瓶は、MRIを撮り脳梗塞を発見した。
トラック運転手である患者は運転ができないと困るからとリハビリに励むが、真面目に仕事に取り組んでいるように見えない今市に五十嵐は苛立ちを覚える。
右手のお茶
トラック運転手の患者は元レーサーの宇賀竜二で、かつてレースクイーンであった成増は面識があり複雑な心境に。
三瓶はリハビリの結果を考慮し、宇賀に運転は許可できないと告げた。
運転を諦めきれない宇賀はさらにリハビリを重ねるが、見かねた今市が三瓶に提案し、ドライブシュミレーターの結果で判断することに。
テスト中、宇賀は左側からの歩行者に気が付いたとたん、お茶をどうぞと差し出す今市に気をとられて、シュミレーター上で事故を起こしてしまう。
三瓶はその結果を見て、左半側無視は軽度であるものの、宇賀は右側に気をとられると左側の周辺視野の動きが把握できなくなることを理解した。
成増の過去
やはり運転は許可できないと説明する三瓶に、宇賀はサーキットなら良いかと食い下がる。
運転に執着する理由は、宇賀と成増の複雑な過去にあった。
14年前、レースクイーンとして宇賀と出会った成増は、テストドライバーであり宇賀の親友である三島と恋に落ちた。
繊細で臆病な宇賀を誰より理解し、そんな宇賀の精神バランスを保つため「日本一になろう」と約束していた三島。
しかし、宇賀の希望でギリギリを攻める危険なセッティングを行った三島は、そのテスト走行で事故を起こし、命を落としてしまう。
事故を期にチームは解散し宇賀もレーサーを引退したが、宇賀の心は三島との約束に縛られたままだった。
汎化
三瓶に運転を禁止されていたにも関わらず、宇賀は交通事故を起こし病院に運ばれる。
大事には至らなかったものの、三瓶と成増はそれぞれ宇賀に厳しく注意する。
再び入院しリハビリ室にやってきた宇賀に、今市は今度はお手玉を渡した。
以前はできたお手玉が上手くできず首をひねる宇賀に、五十嵐が助言しようとすると、今市は「作業療法士は答えや方法は教えないのだ」と話した。
今市は患者のため、自分で気づかせ自分で方法を考えさせることが大事だと考えているのだった。
宇賀の病室を訪れた成増は、三島が密かに打ち明けていた気持ちを宇賀へと伝えた。
そうすることで、成増自身も宇賀への恨みが薄れ、三島を死に追いやった事故は本当は誰も悪くなかったと思えるように。
14年間わだかまっていたものが解け、ようやく前に進み出す二人。
リハビリを通し自らの問題点と解決策を見出した宇賀を、丘陵セントラルの仲間たちは新しい職へと送り出した。
【13巻のまとめ】
川内の記憶障害の原因を知ったものの、治療の手段が見つからずに思い悩む三瓶。
ある日、丘陵セントラルに運び込まれた男性は成増の過去に大きく関わりのある人物で謎めいた成増の過去が暴かれる。
作業療法士として仲間入りした今市は、さっそくリハビリで独特の持ち味を発揮した。
【13巻の見どころ】
この巻の見どころは、三瓶の葛藤と、患者たちが自らの道を見つける姿にあります。
大迫と意見が分かれながらも、川内の治療に向けて努力を続ける三瓶。
その執念が、医師としての成長へとつながります。
一方、失語症患者の富田は、社会の理解不足に苦しみながらも、仲間と共に旗当番を果たすことで自信を取り戻します。
また、運転への執着を捨てきれない宇賀は、事故を経てようやく過去と向き合い、新たな道を歩み始めます。
今市の独自のリハビリ指導も光り、患者が自ら気づき、成長していく過程が描かれています。

次巻へ続きます。
この漫画をもう一度読みたい方はこちら
全巻まとめに戻る
-
-
参考天才脳外科医の愛と献身、記憶障害を抱える婚約者の医師を救うことはできるのか―『アンメット』全17巻【ネタバレ注意】
続きを見る