災害現場や血が苦手ながらも、必死に対応していく。
困難な症例にも即興で適切な処置をこなす姿に、周囲の評価が少しずつ変わり始めた。
2巻のあらすじを振り返ってみましょう。
春子の心配
春子が礼を告げるために来院した。
子供たちもかすり傷程度で済んだのだという。
手土産のスイーツは3日も通ってやっと買える程の人気店のものだ。
しかしスタッフルームには同じ袋がたくさん置いてある。
この店のパティシエ・柏木が八雲に助けられた礼として贈られたものだ。
八雲のおかげで初期の舌癌が見つかり、味覚を失わずに済んだのだ。
春子にとって兄が医師になる夢をかなえたことはうれしい事だが、一方で人が良すぎるその性格が八雲をDMATに縛り付けないか心配していた。
その時、八雲は院長の伊勢崎に呼び出される。
DMATを辞めたいという意思を伝えるつもりだった。
マニュアルにない処置を咎められるものだと思い、不安が募る。
しかし、伊勢崎はアメリカの野戦治療マニュアルにしか載っていないような治療法を即興で思いつくような医師を手放すつもりは全くなかった。
エレベーター事故発生
柏木はついに手に入れた青山のビルを前にし、感慨に浸っていた。
ビルの改装はこれからだが、新たなチャレンジに決意を新たにする。
オフィスになる予定の最上階へ向かおうとしたその時、事故は発生した。
八雲たちが到着すると、老朽化したエレベーターに足を挟まれた柏木の姿を発見する。
挟まれている下半身ももちろん重傷だが、それ以上に全身の状態が良くなかった。
内蔵の損傷も疑われる状態は、一刻も早い病院への搬送を必要とする。
だが、挟まれた足を抜くのにあと90分はかかるというが、そんな余裕はなかった。
八雲の頭に下肢切断の選択肢がよぎる。
だが、それは八雲にできるような処置ではなかった。
刻一刻と状態が悪化していく柏木。
いつもの先生じゃないみたいだ。
笑顔を失い慌てる八雲の姿から、柏木は死への不安を感じ始めていた。
救助できるまで命をつながなくてはいけない。
だが、何をするべきかわかっていても、内科医の八雲には荷が重い処置だ。
その時、ビル内で火災が発生する。
医療チームはいったん外に避難するのが災害現場の鉄則だ。
柏木をおいてその場を離れなくてはいけない。
八雲は無力感に苛まれた。
無力
柏木にとって白衣を着た八雲はまさにスーパーヒーローだった。
だがその八雲は柏木の側にいることさえ許されずにビルの外で待機している。
ようやく安全が確認され柏木の下へ戻ると、もう意識さえも朦朧とした状態だった。
目の前にいる八雲が認識できていないのか、うわごとのように八雲を呼んでくれと言う。
荷物の中に詰め込まれた白衣が目に入る。
いつもの先生じゃないみたいだという柏木の言葉が思い出された。
おもむろにヘルメットを脱ぎ、白衣に着替える八雲。
「いつもの先生」として話しかけると、涙を流し、笑顔で目を閉じる柏木。
その直後止まった心臓は、二度と動かなかった。
信念
3日ぶりに出勤した八雲は院長室にいた。
DMATから外してもらうためだ。
そのためには辞職も覚悟している。
その場にいた医師が自分でなければ柏木は助かった。
柏木を死なせたのは自分だと八雲は言う。
しかし、伊勢崎はうぬぼれるなと一喝した。
車で連れ出される八雲。
伊勢崎はヒポクラテスの話をして聞かせた。
医学の父として知られるヒポクラテスでさえも、医術の道は果てしなく厳しく、己の未熟を知らなくてはならないと感じていたのだ。
2人がたどり着いたのは柏木のビルの前だった。
八雲にとっては柏木を救えず無力感を味わった場所だ。
その場で地面に座り込み、柏木の作った菓子を食べだした。
この場所で自分の作った作品を味わってもらうことを柏木は夢見ていたのだ。
伊勢崎は八雲が引きこもっている間、柏木の妻と面会していた。
事故の詳細と死亡の経緯を聞き、涙を流す。
しかし、安らかな表情で最期を迎えた夫の姿を見て八雲に感謝をしていた。
八雲は柏木の生を守ることはできなかったが、魂を救うことはできた。
それでも、あえて自分が許せず人の命を救いたいのなら、学ぶべきは救急なのだ。
今、八雲の信念が試される時が来ていた。
八雲の居場所
八雲達の下に内科部長を兼任する副院長の仏原が訪れた。
かつて看板内科医だった彼に憧れ、八雲は有栖川病院に来たのだ。
八雲を高く評価する仏原は、外科に八雲を取られることを懸念していた。
あくまで内科が自分の居場所だという八雲に仏原は安心し、「仏も昔は凡夫なり」と努力を労った。
決意を新たに救急の研修を受けるためERを訪れる八雲。
相変わらず血が苦手なことは変わらなかったが、信念を貫く覚悟があった。
そのころ、伊勢崎は事務局からの突き上げを食らっていた。
もともと都内屈指の歴史を誇る有栖川病院は、発足以来内科で経営を成り立たせてきた。
だが伊勢崎が赴任して以来、救急部門が経費も人材も他部門を圧迫している。
収益を生むどころか、災害への備えに経費を割く伊勢崎への不満は大きい。
現場も把握している伊勢崎は、次の手を打ってあった。
脳外科医・伊勢崎紅美
救急の研修を受け始めて1週間、苦戦している八雲を村上が食事に連れ出した。
有栖川のERは専門ではなく、他科からのローテーションで集められている。
嫌々来ている医師達にとって八雲の指導には何のメリットもなかった。
一方村上にとっては、八雲が成長すれば自分のDMAT出場が減る。
そんな憎まれ口をたたきながらも、八雲への気遣いを見せていた。
翌日、新規採用の人事が発表される。
院内は騒然とし、反発の声が上がった。
直前にDMATの出場要請がかかった八雲はその事実を知らない。
現場である奥多摩の山間部へはヘリでの出場となる。
急いで屋上に向かうと、伊勢崎とその娘であり、アメリカ帰りの脳外科医・紅美がいた。
今日は彼女の指揮下での出場となった。
滑落事故発生
桐谷夫妻は定年を迎えた夫の誘いで、奥多摩のハイキングコースを歩いていた。
いつもマイペースで妻のことなど気にかけない桐谷だが、この日はも妻に手を差し伸べる気遣いを見せていた。
妻の手を取ると少し照れた表情を見せる桐谷。
だが次の瞬間、手を掛けた木の柵が折れ、崖の下へと滑落する。
全身を打撲したが、意識はあり、救急隊によって最寄りの病院まで搬送されていた。
ところが搬送中に容体が急変、近くのヘリポートへDMATの派遣を要請するに至った。
到着した八雲達が速やかに桐谷を診断する。
急性硬膜外血種を起こしている疑いが強く、緊急の開頭手術が必要だ。
時間を惜しんだ八雲は病院への搬送を急ぐ。
だが、紅美の選択はその場での緊急手術だった。
CTもMRIもない屋外の環境では血種の位置も分からない。
しかし、紅美が用意していた秘密兵器・ポータブルエコー機がこの状況を打開した。
最先端の医療機器は緊急医療に革新的な進歩をもたらし始めているのだ。
すぐに血種の位置が特定され、手術の準備が進められていった。
紅美の実力
伊勢崎の方針は内科系を中心に院内でも反発が強い。
そんな中で自分の娘を採用することは、自らの体制強化と取られても仕方なかった。
伊勢崎にしてみれば、紅美の採用はあくまで実力を評価したまでのこと。
加えて身内であれば、専門分野のみならずERやDMATにも格安で遠慮なく使える。
内科系が訴えた業績改善策の建前でもあった。
そのころ、八雲は困惑する桐谷の妻を説得し、手術の同意を取り付けていた。
紅美によるドリルを使用した穿頭手術が始められる。
野外での開頭手術など成功するのか。
現場には重い空気が立ち込める。
ついに桐谷の頭部にメスの第1刀が入れられた。
紅美が見せる正確で迅速な手技は不安に満ちた空気を一変させる。
わずか10分で処置を終え、搬送準備を指示する紅美に八雲は圧倒されていた。
また、部活もせず勉強ばかりしていた八雲にとって、チームで活動するDMATの凄さを学ぶ機会にもなっていた。
搬送中のヘリの中で桐谷の意識が回復を見せる。
現場での処置に間違いはなかったのだ。
自らを天才と称する紅美も安どの表情を見せていた。
紅美の反発
同じころ、都内でガス爆破事故が発生した。
都内のDMATチームすべてに出場要請が出される。
桐谷を搬送し、有栖川病院に戻った八雲達も例外ではない。
続けての出場に戸惑いながら、八雲も率先して出場を決断した。
一方で紅美は納得がいかない。
災害に肩入れしすぎる父の方針に賛同しているわけではないのだ。
災害医療に関して言えば、紅美よりの八雲のほうが優れているのかもしれない。
紅美はそんな父の言葉が全く理解できなかった。
【2巻のまとめ】
かつて八雲が命を救った柏木が、事故に会い八雲の前で命を落とした。
無力感を感じDMATを辞めようとする者の、伊勢崎の説得で決意を新たにする。
日々救急の研修を受け、経験を積んでいく中、伊勢崎の娘・紅美が有栖川にやってくる。
DMATを指揮し、圧倒的な実力を見せるものの、決して父の災害医療に対して理解を示しているわけではなかった。
【2巻の見どころ】
この巻の見どころは、八雲が「医師としての自分」と向き合い、成長していく姿です。
柏木の事故では、救いたかった命を救えず、医師としての無力さに打ちのめされます。
しかし、伊勢崎の言葉や柏木の妻の感謝を通して、命を救うとは何かを考え直すのです。
さらに、紅美の登場により、災害医療の最前線での迅速な判断と高度な技術を目の当たりにし、八雲の中で新たな覚悟が芽生えます。
滑落事故現場での屋外開頭手術は、その緊迫感と紅美の圧倒的な実力が際立つ場面です。
紅美の手技に驚きつつも、チーム医療の大切さを学ぶ八雲の成長が感じられます。

次巻へ続きます。
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参考災害現場の最前線で人命救助に奔走するヒューマンドラマ『Dr.DMAT〜瓦礫の下のヒポクラテス〜』全11巻【ネタバレ注意】
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