泣き虫なMSW・犬飼と先輩の馬頭。
MSWの仕事は、患者が望んでいることを引き出し、そのために病院や社会に何ができるかを一緒に考え、サポートすること。
脳卒中で人の顔がわからない相貌失認となった患者に対しては、仕事を続けたいという本音を引き出し、会社訪問を行って復職をサポート。
アルコール依存症の患者に対しては、自分が依存症であることを認めることが第一歩であることを説明し、家族も巻き込みながら断酒会での治療を支援。
無年金で無保険ながら入院となった患者に対しては、家族とのわだかまりを解きながら生活保護を受けて治療を継続する決意を固めるのを見届けた。
2巻のあらすじを振り返ってみましょう。
目次
国指定の難病と闘う青年
MSW・馬頭の元へ消化器内科の牛尾から相談してほしい患者がいると電話が入った。
入院患者の病名は「潰瘍性大腸炎」に罹って9年目の針間翔。
婚約者の陽愛(ひまり)も同席していた。
潰瘍性大腸炎は人が生活する上で欠かせない、食と排泄にダイレクトに関わってくる病気であり、大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができ、症状は下痢、血便、腹痛、発熱、貧血などが挙げられる。
針間は全大腸炎型の中等症で症状も重いほうに入る。
本人は就職を希望しており、発病してから一時期は症状が寛解状態にあったが、再燃してしまったらしい。
この病気は長期にわたって症状が出るうえ、発症の原因も不明で治療法が確立していない国指定の難病であり、寛解期を長く保つことを目標にしなければならないのだった。
難病と働くということ
犬飼は就職したいという針間に対して、今は体を休めることに重点を置くべきと示す。
完治のない病気は闘病期間が長くなる分精神的にも負担が大きいのだ。
犬飼たちMSWはそこを針間と考えていくべき、と考えたが、針間は「何の支障もなく好きに働けている人には(自分の気持ちは)わからない」と、次の就職に向けてエントリーシートを書く手を止めない。
そこで犬飼は、陽愛と2人で針間のことについて話をすることにした。
陽愛によれば、本当は針間は優しい人、結婚式の式場と指輪も決めてあるそうだ。
一方、針間はトイレで血便が出たのを隠して退院し就活に励むが、結局再入院することとなった。
犬飼は馬頭から「患者を孤独にさせるな、たとえ本人が望んで孤独になろうとしてもだ」と釘を刺される。
病院のベッドで夜、血便を漏らしてしまう針間は、女性看護師の羊が便を処理してくれた際、思わず泣きながら「すみません」と謝るのだった。
難病の辛さと理解するということ
針間の元を訪れる犬飼だが、相変わらず針間からは「健康な人のアドバイスなんて何の参考にもならない」と突っぱねられてしまう。
犬飼は引き下がらず話を聞くと、針間は仕事をしていた時にみんなの前で漏らしてしまい、それが本当に嫌な体験だったと明かす。
それを聞き、犬飼は昨夜の針間が漏らしたことを話そうとするが、針間は「もう正論はいらない、話したくない」と喧嘩になってしまった。
話を聞いた馬頭は、特に排泄はデリケートな問題であり、他人の前で漏らしてしまうとどうしても精神的ダメージがくる、と針間の辛さに理解を示すのだった。
難病患者の離職率
難病患者の8割は就職しているが、その半数弱は難病に関連して離職した経験がある。
離職理由は体調の悪化や治療のほかに、職場の無理解や難病を理由とした退職勧告などが挙げられる。
これらの資料に目を通した犬飼は、どうしたら針間の力になれるかを考えるのだった。
犬飼なりの難病への理解の示し方
そんな時、針間が病院から姿を消した。
犬飼は針間が行きそうな場所を考え、捜索に向かう。
針間が脂汗をかきながらふらつきながら街を彷徨っていたところ、犬飼が現れ、手を差し伸べた。
針間は、婚約指輪を受取ためにお店に向かおうとしていたのだ。
さらに犬飼は針間の気持ちに立って考えるため、自分もオムツをはいてきており、針間の気持ちを自分でも体感しようとしていることを明かすのだった。
心を開いた難病青年とその後の就活
針間は犬飼の言葉に背中を行動と言葉に背中を押され、就職活動を再開。
面接でははっきりと自分の病気と向き合いながら仕事をする決意を口にする。
犬飼もトイレの場所を調べたトイレマップやお守りの生理用ナプキンを持ち歩くようにサポートし、何社か受かることができたのだった。
乳がん患者の気持ち
乳がん患者の牧倖乃、27歳。
姉・暁奈と共に犬飼の元へ傷病手当の書類についての説明を希望しに来た。
妹は相談には消極的で、書類についての説明は暁奈に行った。
暁奈は倖乃が病気になったことがショックで立ち直れていない、家族もみんな心配していると不安そうだった。
そして、暁奈は犬飼が出した紅茶を飲まず、自ら持ち歩いている水を一口飲んだ。
倖乃はいわゆる「AYA世代」。
15歳から39歳の患者を指す言葉だ。
乳がんは年間で9万4000人が罹患するが、乳がんはがんの中でも圧倒的若い年齢で発病する確率が高い。
学校に通っていたり、働いていたり、妊娠していたりする人もいる。
病気の治療によって生活が変わるだけじゃない。
がんの治療には長期間時間がかかる。
その自分の人生設計を台無しにされてしまったと感じる人もいる。
精神的負担がそれだけ大きいのだ。
犬飼は腫瘍内科の熊谷の元へと向かい、倖乃の話を聞く。
熊谷から「がん治療で辛いことって何が思い当たる?」と聞かれ、「抗がん剤の副作用…」と答えるが、乳がんの場合は胸を失うということ。
病気によって自身のボディイメージが変わってしまうということがなにより大きい。
倖乃は家族から生きてるだけでいい、といわれるのがなにより嫌だった。
暁奈が1人で相談へ行くと、犬飼は暁奈が妊娠していることを見抜いていて、あまり思い詰めないで、と声をかけた。
馬頭への逆質問
倖乃は抗がん剤の副作用がきつくて、廊下で休んでいた。
馬頭が看護師と話していて、倖乃から声をかけてきた。
「あなたにとっての優先順位は?」と倖乃から尋ねられると、馬頭は「家族かな」と答える。
倖乃は全てを諦めているような雰囲気だった。
しかし馬頭は、「人生で出来た出来なかった、手に入れた、失ったといった基準は『幸せ』とはまた違う基準なんじゃないですか」と微笑む。
ありのままを受け入れるということ
翌日、犬飼が倖乃のもとへと行くと表情が和らいでいた。
倖乃は「家族のことは大切。生きてるだけでいいっていうけど、家族といるのが辛い」と本音を漏らす。
犬飼は、暁奈からも話を聞き、馬頭に協力を仰ぎ、姉妹それぞれから話を聞き取った。
家族のみんなが傷ついているから、それぞれを大切にする時間を持つことができなかったのだ。
病気から無理に立ち直ろうとしても、それは無理な話。
「病気から立ち直ることがそんなに大切ですか、今あなたが傷ついている事実の方が大切なんです」と語りかける犬飼。
すると倖乃は涙を流し、苦しんでいる自分を受け入れることができた。
謎の家族
犬飼の相談者で気になる相談者が現れた。
母と息子に孫2人の家族だった。
息子は相談中もうつらうつらしていて、話が上の空のよう。
圧迫骨折で入院し認知症の疑いの母と数年前に離婚した仕事が忙しい息子。
そして中学1年生の男の子に幼稚園児の妹。
この家族は一体家事育児をどう回しているのか、犬飼は疑問に思うのだった。
ヤングケアラー
犬飼は長男の景都に接触することにした。
景都は祖母のオムツやお見舞い、洗濯物などの回収もしてくれている。
景都は犬飼とゲームがしたそうで、犬飼は一緒にゲームをしてコミュニケーションを取るようになった。
父親とも景都を介してしか話ができていない。
犬飼は景都が「ヤングケアラー」なのではないか、と思うようになり、景都へのケアが必要と考える。
ヤングケアラーとは、本来大人が担うとされている家事や家族の世話などを日常的に行っている18歳未満の子どもや若者を指す。
過度な負担により、学業などに支障が生じたり、子どもらしい生活を送る権利を侵害されている状態なのだ。
景都がヤングケアラーとして自覚がないのは、家族のことは家族がやって当たり前、といった思いからだった。
ヤングケアラーの一番の問題は、彼らの存在が気づかれていないことなのである。
束の間の息抜きの時間
景都は学校を早退して、祖母のお見舞いに来ていた。
そんな時に犬飼が病室を訪れ、2人でゲームをしていた。
景都は犬飼とゲームができて、祖母の夜中のトイレの付き添いに行かなくて済むから元気、と語る。
そう、景都にはずっと福祉の手が届いていないのだ。
ヤングケアラーに手を差し伸べる
景都は妹の世話をし、家事をし、お風呂に入り、寝かしつけ、宿題をすると午前2時を回っていた。
だがこれでも、祖母が入院中で手間がかからないから捗ったほうである。
一方の父はスーパーの店長で24時間営業になり、職場も遠くなったことから帰宅時間がいつも遅く、出社時間も早い。
久しぶりに夕方に帰ることができ、息子たちの顔を見ながらご飯を食べていると、ようやく景都が介護の家事・育児を一人で抱え込んでいることに気付き、愕然とした。
父はすぐに態度を改め、犬飼の元へ訪れて全てを受け入れる覚悟を決めた。
だがそんな矢先、景都が学校を無断欠席してしまう。
病院に来た景都は、犬飼に「祖母の介護サービスを入れることをやめてほしい」と初めてこぼした。
祖母は自分のことでお金がかかることが嫌で、サービスを受けることを拒み、妹も授業参観の紙を捨ててしまうなど、それぞれがこれ以上家族に負担をかけまいとしていて、景都はそれら全てに気を配っていたのである。
それに対し「家族の問題を家族の中だけで解決させようとしないでいい、僕たちに君と家族が背負っているものを分けてほしい」と語りかける犬飼。
景都は誰かを頼ることを知り、少し肩の荷が下りるのだった。
【2巻のまとめ】
潰瘍性大腸炎の患者が就職したいという思いに対して、食と排泄が密接に関係してくるこの病気に自らオムツを穿いて動き回り、患者がいなくなった時も探し出し、共に就活に向けてのトイレマップの作成や生理用品を使うことを提案。
無事、何社か内定を取ることができた。
乳がんを患う患者に対し、自分のボディイメージが崩れ苦しんでいる様子を見て、家族もまた患者を励まそうとする。
しかし、患者にとってはそれが重荷だった。
犬飼は患者に苦しいことも何もかも受け入れる、そのままでいいんですよ、と諭し患者を癒す。
圧迫骨折と認知症の疑いで入院してきた祖母と仕事に忙殺される息子、その孫2人。
孫の景都が家事や育児、介護を全て担うヤングケアラーだと気づいた犬飼は、景都に寄り添いながら、家族の中だけで抱え込まず自分たちを頼るよう諭し、家族ごと支えるのであった。
【2巻の見どころ】
この巻の見どころは、難病やがん、家族介護といった深刻な課題に直面する人々と、彼らに寄り添う犬飼たちの姿です。
潰瘍性大腸炎の青年・針間が、排泄の悩みを抱えながらも就職を目指す姿は痛々しくも勇ましく、犬飼が彼に共感するため自らオムツを履くシーンは胸を打ちます。
乳がん患者・倖乃の「生きてるだけでいい」と言われる苦悩に寄り添い、「今あなたが傷ついていることの方が大切」と語りかける犬飼の言葉には、真のケアの意味が詰まっています。
ヤングケアラー・景都がすべてを背負う姿も心に残ります。

次巻へ続きます。
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