なぜ感染者のカルテは隠ぺいされ、感染している者も名乗りを上げなかったのか―。
紐倉と阿里はその謎を追ううちに、これが16年前に起きた食害事件で娘を無くしたある男の怒りによる復讐のバイオテロであったことを突き止め、事件を解決に導くのだった。
最終巻のあらすじを振り返ってみましょう。
目次
TARSウイルスの感染拡大
SARSやMERSに続く致死性の高いコロナウイルスTARSが東南アジアで発現し、水際での阻止作戦を指揮する内閣情報調査室の牧野はアドバイザーの紐倉に協力を要請。
実は、既にTARSウイルスが日本に侵入している可能性があるというのである。
「インハンド プロローグ」2巻©講談社/朱戸アオ
そんなある日、高熱やセキを訴えていた花森明鈴が数日のうちに容体が急変し亡くなると、従兄弟の高家春馬が病院に駆け付けた。
元医師でもある高家は明鈴の主治医から話を聞くが、明鈴は「発症前10日以内に東南アジアへ渡航歴がある」という条件に合致しないため、TARSの検査は行われていないようだ。
その条件だと既に国内経由で感染した場合はTARSであっても見逃されるのでは、と体制の不備について指摘する高家。
と、高家が席を外した隙に牧野と紐倉が病室に入り、明鈴に勝手にTARSの検査を始めた。
慌てて止めに入った高家だが、紐倉たちが現状のTARS対策を転換させるために日本国内のTARSの感染ルートを調査していると聞き、検査に協力することにするのであった。
「インハンド プロローグ」2巻©講談社/朱戸アオ
感染者たちの接点が明らかに
明鈴の実家を徹底的に捜索する紐倉のやり方に反発する高家だが、既にTARSのような症状による患者・死者が増えていると聞き、PCやスマホの解析に協力することに。
だが国内で感染が疑われる者たちの共通点がなかなか見当たらない。
強いて挙げるなら、1年前に親友の上野と一緒にタイ旅行に行っており、他にもここ数年でタイに行った者が何人かいる程度。
と、そこにある大学で16人が入院していること、上野自身も3日前から体調不良で会社を休んでいることが判明し、牧野らは大学へ、紐倉と高家は上野のもとへ急行する。
上野は幸いにも熱が下がって回復傾向にあったが、牧野らが大学でヒアリングした情報と合わせると、大学で授業をしている講師・相田の存在が浮かび上がる。
相田はダイビングが趣味で頻繁にタイ旅行へ行っており、その授業を取っていた生徒の多くを含め、TARS感染が疑われる全ての患者と何かしらの接点があったのだった。
「インハンド プロローグ」2巻©講談社/朱戸アオ
調査の功績
相田はおそらく、他人に感染症を移しやすい「スーパースプレッダー」であり、本人には自覚症状のないままTARSをばら撒いている状態。
紐倉と高家はすぐさま相田の身柄を確保・隔離すべく自宅へ向かうが、相田は自宅マンションの非常階段で死後数日経っている状態で発見された。
生きたスーパースプレッダーのサンプルが手に入らなかった紐倉はとても残念がる一方、高家は「体調が悪いならわざわざ非常階段は使おうとしない」と分析し、何者かに殺されたと推理する。
「インハンド プロローグ」2巻©講談社/朱戸アオ
紐倉と高家は警察が来る前に相田の遺体からサンプルを回収、そして間もなくして相田を殺した犯人も逮捕された。
犯人は相田によってTARSに感染した女性の彼氏であり、彼女の死の復讐が動機だった。
同じく従姉妹の明鈴を亡くした高家は犯人の心情に理解を示し、無力さを嘆く自分は医師には向いていないと肩を落とす一方、紐倉は自分たちは今は無力でもその研究が後世の役に立つと励ます。
「インハンド プロローグ」2巻©講談社/朱戸アオ
そして紐倉と高家が回収したサンプルによって相田がスーパースプレッダーであったことが確定し、国内のTARS対策も見直されることとなった。
相田の遺体からサンプル回収を実行した高家は濃厚接触者として隔離されることとなり、仕事も失うことが濃厚。
紐倉はそんな高家を助手として雇うことを提案し、行くあてのない高家も仕方なくその誘いに応じるのであった。
警察官を拉致した集団
ある警察官が人体売買のルートを追う捜査中に何者かに拉致されて行方不明となった。
その際の監視カメラの映像に映っていた男はかつて紐倉とも親交があったことを突き止めた牧野は、紐倉に捜査への協力を依頼する。
紐倉によれば、その男はコバヤシという国際的な人体ブローカーだが、コバヤシは単にその場に居合わせただけの可能性が高いという。
「インハンド プロローグ」2巻©講談社/朱戸アオ
警察官を拉致した犯人たちは全員同じブレスレットをしていたことから、紐倉たちはそのブレスレットを会員の証とする「ガニメデ財団」への調査を始めるのであった。
ガニメデ財団への潜入
不老不死を研究テーマとするガニメデ財団は、上級会員にそのブレスレットを着けさせていた。
ガニメデ財団に潜入を試みる紐倉と高家だが、金をちらつかせても上級会員の資格は得られそうもない。
「インハンド プロローグ」2巻©講談社/朱戸アオ
正攻法でない方法を思いついた紐倉は、不老不死に関係のあるそれっぽい論文を捏造してガニメデ財団宛に送り付け、見事に財団の代表である瀬見の興味を引くことに成功。
博士役を高家に押し付けて論文の内容について説明させる間、助手の名を騙った紐倉自身は瀬見の部屋を漁る。
すぐにバレてしまい紐倉は資料を撮影して急いで脱出するが、高家は捕まってしまった。
高家の身柄と引き換えに「持っていった物を返せ」と財団から要求が届くが、紐倉は資料のデータを牧野に引き渡しつつ、高家救出のために動き出すのであった。
「インハンド プロローグ」2巻©講談社/朱戸アオ
高家を救出、財団の闇を暴く
紐倉は直々にブローカーのコバヤシに接触し、牧野に用意させた消えてもいい死体を無料であげること、追手も追い払うことを条件にガニメデ財団の内部情報を入手。
「インハンド プロローグ」2巻©講談社/朱戸アオ
財団幹部が若さを保つ秘訣は輸血であり、誘拐した警察官から若い血を得られているものの、警察にマークされたために他の血が手に入らず焦っているはず。
血の受け渡しはクルーズ船の上で行われることも知り、現場に急行する紐倉。
その船の内部では高家がまさに瀬見によって血を吸われようとしていた。
紐倉はあえて自分も財団に捕らわれつつも、予めストックされていた血液パックを破棄したうえにクルーズ船に火を放っていた。
「インハンド プロローグ」2巻©講談社/朱戸アオ
財団の者たちは全員逃げ、紐倉は高家の救出に成功。
危険に晒したことを高家に謝りつつ、財団の闇を暴いたのであった。
紐倉の出資先が捜査対象に
バイオベンチャーに自ら出資している紐倉は、牧野からある会社の調査を依頼される。
その会社は紐倉も出資しているフューチャージーンという国内最大手の遺伝子診断会社であり、自殺した社長の園川直継に不正な遺伝子調査をしていた疑惑があるというのである。
「インハンド プロローグ」2巻©講談社/朱戸アオ
紐倉が出資したのは創設メンバーの友人の頼みによるものであり、その後キガシマキャピタルから増資を受けた際に園川が代表となったが、「ファウンダープロジェクト」なる怪しいプロジェクトのもと、不審な金の動きなどが確認されている状況。
死んだ園川は一代で巨大な資産を築いたキガシマグループの創業者・園川大次郎の甥であり、現会長・園川務の一人息子、すなわち次期会長の有力候補とも見られていた人物。
険しい表情の紐倉は、高家には研究所に戻って掃除でもするように指示し、1人でフューチャージーン社へと向かうのであった。
「インハンド プロローグ」2巻©講談社/朱戸アオ
極秘プロジェクトの情報が漏洩していた
フューチャージーンで旧友と再会した紐倉。
どうやらファウンダープロジェクトというのは紐倉も関与した極秘プロジェクトであり、園川社長にも秘密だったはずが、どこからか流出して園川社長も知ることとなったようだ。
「インハンド プロローグ」2巻©講談社/朱戸アオ
紐倉たちは園川社長がどこまで知っていたか突き止めるべく社長のパソコンや机を漁る。
すると酒が飲めないはずの園川社長の机からはなぜかアルコールの瓶が出てきた。
しかしパソコンの中のデータを確認しているところで園川会長が姿を見せ、パソコンごと没収していってしまうのだった。
「インハンド プロローグ」2巻©講談社/朱戸アオ
極秘プロジェクトの内容は遺伝子の調査
他方、研究所の掃除と称して立入り禁止の資料室を漁った高家は、紐倉がゲノムの研究であるファウンダープロジェクトに関わっていたことを知る。
紐倉もあっさりと認め、アメリカにいた頃に「悪魔の子」が現れるコミュニティでその発現に関わる遺伝子を調査したことを明かした。
「インハンド プロローグ」2巻©講談社/朱戸アオ
調査の結果、200年前のある夫婦の子の遺伝子に異常が見つかり、そのせいで暴力的な性格や依存症になりやすい傾向が生まれていたことが判明。
だがそれは一歩間違えば差別や断種にもつながる情報であるため、当時はコミュニティの外に情報が漏れないように研究結果は極秘とされたのである。
しかし、現にデータは漏れ、死者が出ている。
紐倉は漏れた情報を回収する方法を思いつき、事態を収拾するために高家に協力を仰ぐのであった。
「鬼の血」が全てのきっかけだった
死んだ園川社長は自宅で大量のデータや書類を破棄していたのに、パソコンにはファウンダープロジェクトのデータが残ったまま。
それはつまり、自宅で破棄されたのはファウンダープロジェクトのデータではないということ。
紐倉は園川の伯父である創業者の園川大次郎が九州の離島出身であることから、園川家に悪魔の遺伝子が宿っていたのではと推理。
「インハンド プロローグ」2巻©講談社/朱戸アオ
そしてその離島には昔から鬼伝説があり、島では赤い巻き毛で肌の色は白く、乱暴で酒飲み、依存症になりやすいといった特徴を持つ「鬼子」が生まれるのだという。
フューチャージーンの機材の使用履歴を細かく調べて突き詰めていった結果、紐倉の友人がその島の住人たちのゲノム解析をしていたことが判明した。
紐倉は元社長が依頼したものと考えていたが、問い詰められた友人は、社長の興味を引いて出資してもらうために自ら話を持ちかけたことを告白。
「インハンド プロローグ」2巻©講談社/朱戸アオ
データを公表すると脅した結果、元社長が暴れてパソコンごと破壊されたため、捜査に協力するフリをしながら生データを紐倉に解析してもらおうとしていたのである。
そしてデータ解析の結果、元社長の遺伝子に暴力性や依存症につながりやすい異常があったことを突き止め、真相を園川会長に伝える紐倉。
会長は園川家に鬼の血が流れていることは承知のうえだったが、ゲノム解析していたうちの1人の存在を知らされることとなる。
それは、元社長の子、つまり会長の孫にあたる男の子。
「インハンド プロローグ」2巻©講談社/朱戸アオ
元社長は自分の血が遺伝することを恐れて子供を嫌がっていたが、妻は隠れて出産していたというのである。
園川家に婿入りした会長はその身をもって鬼の血の危険さを知っており、息子には常に気を付けろと言い聞かせてきた。
それでも鬼の血を受け継ぐ孫ができてしまったと知り、愕然とする園川会長。
対する紐倉は、遺伝子と環境の両方が人生に影響を与えると諭す。
園川会長は孫のためを想い、データをその場で消去し、鬼の血の存在を知らせないために自分が祖父であることも名乗りでないことを決意。
しかし偶然にもグループが主催する子供の絵画コンクールでその孫が大賞を獲得し、表彰式で孫と対面することとなった。
スピーチでは父がいないながらも友人や先生など、色々な「家族」に囲まれている幸せを口にする健気な孫の姿に涙を抑えきれない園川会長。
「インハンド プロローグ」2巻©講談社/朱戸アオ
息子は鬼の血を継いでいることに抗いきれずに亡くなったが、人は努力次第で何にでも変わることができる。
そして園川会長は、表彰状の授与の際に自分の絵を描いてくれるように頼む。
その後出来上がった会長の似顔絵には、「おじいちゃん」と書き添えられていた。
一方、真相を突き止めた紐倉は、牧野からの依頼であるファウンダープロジェクトにの捜査については「調べてもわからなかった」ことにしたのだった。
【2巻(完)のまとめ】
本作では紐倉と高家の出会いのきっかけとなったTARSの感染拡大阻止作戦、不老不死をテーマにする財団の陰謀、バイオベンチャー企業の不審死に関連する極秘の遺伝子調査プロジェクトの3つのストーリーが描かれていました。

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