横須賀北高校に転校してきた森 文太郎は根暗で周囲を拒絶していたが、山岳部の宮本に絡まれたことをきっかけに命綱なしで校舎をよじ登り、それ以来登山にハマっていくこととなる。
顧問であり自身も日本有数のクライマーでもある大西先生は単独で命を投げ出すような危険な登り方をしたがる文太郎を気にかけ、登山の基礎や技術を教えながらインドアクライミングの大会に文太郎を出場させた。
そこで文太郎は初心者ながらも見事なクライミングを見せ、以前いた高校ではクラスメイトの自殺現場に居合わせたことから殻にこもるようになったという過去があるものの、クライミングを通じて徐々に人としても変わり始める。
大西先生のもとでクライミングの基礎と技術を学んだ文太郎だが、遭難しかけた自分を救助しようとしていた大西先生が落石事故で亡くなってしまう。
それでも山への憧れを抑えられない文太郎はソロクライマーとして生きることを決意し、2年後、文太郎は派遣社員として冷凍倉庫で働きながら全てを登山のために捧げるストイックな生活を送るように。
大西先生の追悼登山ではその見事な登りっぷりが評価され、資産家で登山家の二宮から人類未踏の氷壁であるK2東壁の完登を目指すチーム「14マウンテン」にスカウトされる。
1人で登りたい文太郎だったが、悪女と化していた夕実との再会を機に女の誘惑が頭をよぎるようになり、山に集中するためそのスカウトを受けることに。
しかし隊のなかで文太郎は孤立し、文太郎以外全員命を落とす結果となった。
なかでも大怪我を負った隊員・新美を数日間看病しその最期まで看取った文太郎は、孤独に生きることを決意し単独で縦走を完遂。
4年後、文太郎は冬の富士山の観測の仕事にありつき、仕事を真面目にこなしながら山のトレーニングを継続している。
後輩の建村が熱心に文太郎をK2へ誘うが、文太郎はあくまで1人での行動を貫く考えを持っている様子。
良き理解者との出会いを機に大学の研究チームに正式に採用された文太郎は、今後の準備資金として渡されたお金を持ってクライミングの聖地でもある城ヶ崎での調査へ。
そこで建村を通じて文太郎に目を付けていた高校時代の旧友である宮本と夕実らと再会を果たした。
フランスのセユーズを拠点にトップクライマーになるのが夢と語っていた宮本だが、実際のところは実力を偽っているのであった。
11巻のあらすじを振り返ってみましょう。
宮本のイカサマに失望
宮本との再会を機に、宮本とパートナーを組む運命だったのかもしれないと感じる文太郎。
宮本の実力を知るため、夜に一人で宮本が完登したディープウォーターソロに挑みながら、そのチョークの跡を追う。
一切の迷いなく続く跡を見ながら文太郎は早期に海外へと旅立っていった宮本に尊敬にも似た感情を抱き始めるが、最難関の1ヶ所だけなぜかチョークの跡が無いことに気付いた。
宮本がそこでカムを使ったからである。
文太郎はそこを自力で突破したものの、宮本がどうやって登ったのか、不可解な謎が残る。
そして文太郎が登り切ったところに、宮本が姿を現した。
カップラーメンをすすりながら話すこととなり、文太郎は宮本にどうやって登ったのか尋ねる。
「孤高の人」11巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
最初は話をそらそうとする宮本だが、文太郎の真っすぐな瞳を見て観念し、カムを使ったことを白状した。
指を怪我している今だけ、どうしても格好つけたくて使ってしまったと言う宮本の言い訳。
文太郎は自ら宮本のイカサマを暴露する気はないものの、失望するのであった。
夕実に溺れる建村
その頃、建村は夕実に誘惑されるがまま、文太郎と宮本を置いて2人だけで宿に泊まることに。
「孤高の人」11巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
夕実が自分に気があると理解した建村は、K2登頂という目標を達成するまでは待ってほしいと言うが、夕実の女の誘惑によって理性が決壊。
多幸感と共に夕実と肉体関係を持った建村。
翌朝、夕実は一足先にチェックアウトして帰っていたが、建村はすっかり夕実の虜になってしまった。
夕実と登山デートの約束を取り付けていた建村だが、本気ではない夕実は夫のもとへ帰る。
それでも建村は夕実への想いを募らせていくのであった。
宮本の盗みと裏切り
夕実と建村に置いてけぼりを食らった文太郎と宮本。
トイレで雨宿りしながら話すうちに、文太郎の今の仕事やちょうどいま文太郎が諸々の準備金として100万円ほど持ち歩いていることを知ると、宮本の目の色が変わった。
FXでの儲け話を文太郎に持ちかけ、俺に金を預ければ増やしてやると豪語する宮本。
文太郎は自分の金ではないから勝手に預けることはできない、と言って上手い話には乗らない。
「孤高の人」11巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
結局、その晩2人はカプセルホテルに移動して泊まることに。
すると宮本は文太郎のロッカーの鍵をフロントに預けていくと言いだした。
鍵を預けた文太郎は、1時間もしないうちに宮本がチェックアウトしたことに気付く。
そして文太郎のロッカーのリュックからは、現金100万円が消えてしまっていた。
足立が用意してくれた大切な金を盗まれてしまった文太郎は、自分の貯蓄を取り崩し、また観測所に籠っている間も極限まで切り詰めた生活をすることで工面することを決意する。
翌朝、文太郎が宮本を探しに来た夕実に金を盗まれたことを告げると、夕実は自分も宮本に金を持ち逃げされているとしたうえで、衝撃の事実を明かす。
「孤高の人」11巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
それは、宮本は高校中退後フランスに旅立ったはずが、地元の成人式で酒をあおってバカ騒ぎしていたというもの。
宮本のフランスの話は口先だけで、ずっと地元で堕落した生活を送っていたのである。
宮本に裏切られもう誰も信じないと決めた文太郎は、全ての雑念を振り払うようにして自分を追い込みながら冬の富士山の観測所で山籠もりをするのであった。
「孤高の人」11巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
山で救助した運命の相手
3か月後、足立のチームの女性研究員である加藤 花が現地調査で富士山を訪れる。
一人で登山し、山花の撮影に夢中になった花だが、いつのまにか周囲には濃い霧がたちこめ、山小屋の位置もわからなくなってしまった。
「孤高の人」11巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
霧の湿気によって服もびしょ濡れとなり、体温が急激に奪われていく。
うずくまることしかできない花は、自分がこれまで他人とはズレている変人として扱われてきたことを思い返しながら、意識が遠のいていく。
と、偶然にも霧の中を通りがかった文太郎が倒れている花を発見。
文太郎はそれが同じ研究チームの一員と気づかないながらも、すぐに救助のために濡れた服を脱がせて自分の上着を着せ、観測所まで背負って移動。
「孤高の人」11巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
観測所で無事に意識を取り戻した花。
目の前には長い山籠もりのせいで髪も髭も伸ばし放題の山男のような文太郎がいる。
だが花は怖がる素振りを見せるどころか、文太郎の瞳を見て「綺麗」とこぼすのだった。
最愛の人の支えを手に入れる
3年後、単独で世界各地の山を攻略しながらK2東壁を目標にし続ける文太郎は、「不死身のソロクライマー」として有名な登山家になっていた。
今の文太郎には「必ず生きて帰る」という強い覚悟がある。
「孤高の人」11巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
富士山で花を助けたのをきっかけとして文太郎は花と結婚、文太郎は婿入りして苗字も加藤に変えていたのである。
人生のパートナーとなり自分の帰りを信じて待っている花の存在が、文太郎の支えとなっているのであった。
【11巻のまとめ】
宮本は口先だけで実はフランスには行っておらず、また文太郎の大事な準備資金である現金を持ち逃げ。
一方、建村も夕実の誘惑に溺れ、叶わぬ恋に思いをはせることとなる。
その3年後、不死身のソロクライマーとして世界的に有名な登山家になった文太郎。
だが同じ研究チームの花という女性と運命の出会いを果たして結婚、婿入りし、今は最愛の人の支えを胸に「必ず生きて帰る」という強い覚悟を持っているのだった。
次巻へ続きます。
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