川内は三瓶との婚約が、三瓶の負担になっていないかと不安がぬぐえない。
しかし、三瓶が川内を大切に思う理由は、川内の記憶にない二人の思い出にあるようだった。
15巻のあらすじを振り返ってみましょう。
ムルディ一家
地域医療構想会議で、西島グループが新規事業を立ち上げると発表。
手柄を立てたい松木保健局長は、西島グループの外国人富裕層向けに医療ツアーを組む「医療観光」に食いついた。
一方そのころ、外国人ムルディの家族を援助している弁護士の中保は、息子のエレンが風邪を引いていることを気にかけて一家を連れて病院へと急ぐ。
エレンは肺炎一歩手前で無事治療を受けられたが、書類に記入する際に日本語で住所が書けないと言い出すムルディ。
日本語の読み書きや話すことに今まで問題がなかったことから、中保は不思議に思う。
1週間後エレンの様子を診るため中保が訪問すると、ムルディは日本語が話せなくなっていたうえに、突然倒れてしまった。
アクセス障害
治療できずに放置していた虫歯が悪化し、脳に膿がたまる脳膿瘍を発症していたムルディ。
三瓶たちは、ムルディが3年前に観光ビザで入国し難民申請したが、認められず非正規滞在として扱われていることを知る。
日本にいながら健康保険など日本の社会資源が使用できず、アクセス障害の被害者と言えた。
日本語だけが話せないムルディに疑問を感じる中保だが、第二言語の言語中枢はやや離れて別々に存在するため、あり得る症状だと三瓶は考える。
抗菌薬で治療するか、確実に直すため手術をするか決断を迫られ、金銭的な問題を心配する中保。
ムルディにどうしたいかと尋ねると、中保に決めてほしいという返事で、三瓶はその無気力な様子が気がかりだった。
絶対安静のムルディ
治療費の問題から、別病院での抗菌薬投与を選択した中保。
投与から1週間、三瓶がムルディの診察に出向くと日本語が話せるようになっていた。
再発を防ぐため、投与の1カ月間継続を指示する三瓶に、中保は入院費を抑えるため通院で治療できないかと相談する。
自宅で安静にしていることを条件に通院治療に切り替えられたが、見舞いに訪れた工場社長の誘いに乗ってしまったムルディは安静の約束を破ってしまう。
労働自体が規則に反することなので、中保には黙っていたムルディ。
しかし、三瓶と川内はなかなか症状が改善しないムルディのカルテを診て安静にしていないことを悟ったのだった。
医は仁術
労働中に倒れて病院に運ばれたムルディは、抗菌薬だけでは治療困難な状態になっていた。
ムルディを救うには手術しか道は残されていないが、日本語が話せなくなるリスクが高い。
手術前に駆け込んできた中保は、ムルディ一家に在留特別許可が下りそうだと話す。
エレンが高校を卒業するまでは日本滞在が認められるようだが、その後は日本語能力試験を受けて就労ビザを獲得しなければ、再び非正規滞在に。
なんとしても日本語を残存させて手術を成功させる必要があると考える三瓶と川内は、覚醒下手術に挑む。
一時的に患者を麻酔から覚まし、脳機能をマッピングしながら手術を勧める手法で、ムルディに日本語と母国語で話をさせて日本語の言語中枢を探し出していった。
無事に手術は成功し、日本語が話せる状態で退院していくムルディに、治療費は請求しないと決めた丘陵セントラル。
理事長の「医は仁術」という粋な計らいだった。
交通事故
重症児施設からの便りが届き、川内はその施設に三瓶の唯一の家族である兄がいることを知る。
ある日、丘陵地区の患者会会長に就任した樋内が、病院に挨拶にやってきた。
樋内は丘陵地区でも、挨拶を兼ねて「交通事故被害者の相談会」に関するチラシを配って回っていた。
そこで交通事故厳罰化を求める署名活動にも協力を促すが、政治はよく分からないからとやんわり断る若い母親。
しかし、その家の息子・颯太が自転車で車との事故に遭う。
互いに急ブレーキを踏み、大した衝突ではないように思われたが、打ち所が悪く颯太は意識不明の重体に。
危険な状態をさまよう息子を思い不安な夜を過ごす両親は、ニュースで車を運転していたのが近所に住む中学教師だと知ってしまう。
交通事故被害者の相談会
西島グループの観光医療プロジェクトは、衰退気味の観光地を町ぐるみでリニューアルするなど観光庁や商工会を巻き込み、実現に向け動き出していた。
一方、意識を取り戻した颯太はリハビリテーションで機能回復を目指す。
中学受験・入学を控えていた颯太の後遺症や機能回復について心配をする母親は、確実に治るとは約束できない三瓶のあいまいな返事に興奮し涙を流す。
車を運転していた中学教師もまた若い被害者のことを思うが、直接謝罪したいという申し出は保険会社から止められ、被害者家族に気持ちを伝えることもできぬまま辛い毎日を過ごしていた。
数日後、颯太の母親は患者会のチラシを思い出し、「交通事故被害者の相談会」に顔を出す。
同じく事故で家族が大けがをした相談者たちが集まり励まし合う様子に勇気づけられ、母親は樋内たちに助言をもらいながら、颯太のリハビリのサポートに全力で取り組んだ。
理解されない高次脳機能障害
母親のサポートと病院でのリハビリの様子を観察し、三瓶は退院も問題ないと判断する。
樋内の助言で春休み中に後遺症認定の書類をそろえようと考える母親は、病識に乏しい颯太に代わり、家庭での観察日記をつけて持参した。
家庭内でしか気が付かなかったであろう問題が多くみられ、三瓶は重症度を5級と認定。
しかし、保険会社からは最も軽い9級と判定され、納得のいかない母親は中保とともに裁判に挑む。
裁判では、保険会社側から暗に保険金詐欺と責めるような言い方をされ深く傷つく母親。
裁判官を納得させるため、三瓶は寝る間も惜しんで颯太の症状と脳の障害について詳細をまとめるが、すぐに保険会社側からの反対意見が出される。
脳外傷の第一人者である著名な医師による意見書にも関わらず、事実とは異なる内容であることに憤りを感じる三瓶は、すぐにその医師のもとへ直談判に向かった。
意見書は撤回されたものの、颯太の母親は理解を得られない社会への不満が募り、患者会の活動にのめり込んでいった。
そして、川内にも異変が。
ずっとそばにいてほしいという三瓶の気持ちに答える川内だが、突然頭に違和感を感じ、次の瞬間には三瓶のことが誰だか分からなくなってしまったのだった。
【15巻のまとめ】
日本にいながら日本の社会資源を使用できないムルディ、表面的な部分しか見られず本当の苦しみを分かってもらえない颯太と母親。
そして人里離れた重傷者施設で暮らす兄を思い、人を分けるのは上下ではなく内と外だと社会のあり方に歯がゆい思いをする三瓶。
そんな三瓶をそばで支えたいと願う川内だが、記憶障害の症状が急変してしまう。
【15巻の見どころ】
この巻の見どころは、外国人患者ムルディの医療問題と、交通事故で重傷を負った少年・颯太の後遺症認定をめぐる闘いです。
ムルディは言語障害と医療費問題に直面し、覚醒下手術という高度な医療技術で日本語を守ろうとする医師たちの奮闘が描かれます。
一方、颯太の母親は、理解されにくい高次脳機能障害と戦いながら、裁判で息子の症状を認めさせようと奮闘します。

次巻へ続きます。
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