青年漫画

記憶を取り戻した小野寺、国を失った日本人たちの行く末『日本沈没』15巻(完)【ネタバレ注意】

小学館/ 一色登希彦・小松左京
~前巻のあらすじ~
救出条件の受け入れに調印をした緒形総理は覚悟を決めて帰国するも、突然の火山噴火にみまわれ命を落とす。

小野寺たちは人の狂気が生き死にを左右するような事態に陥るも、断固として脱出作戦を遂行していった。

先への不安と絶望から生気を失った日本人にむけて、皇居からの言葉が届けられる。

晴れ渡る空に力を取り戻した彼らは力強く旅立っていった。

そんな中、マコが姿を消したことを知った小野寺は自分を「キミ」としか呼ばなくなった中田と玲子によって、とうとう記憶を取り戻すかどうかの岐路に立たされていた。

最終巻のあらすじを振り返ってみましょう。

取り戻された記憶

中田は玲子に、小野寺の記憶を呼び戻す最後の切り札を授けていた。

おそらく、日本が沈没しきる前に記憶を戻さなければ、もう元には戻らないだろう。

玲子は目の前にいる自分の男を取り戻すために問いかける。

結城はどうなったのか、妻のまなみにそのことを伝えたのか。

小野寺の頭の中を駆け巡っていた断片的な光景が全てつながり、ついに小野寺としての記憶が蘇った。

玲子が喜びの表情を見せたのもつかの間、小野寺がケルマディック号を乗せたヘリを呼び出す。

受け止めきれない記憶を取り戻してしまった小野寺は、玲子に別れを告げるや否や飛び去ってしまった。

最期の別れ

小野寺はマコが向かったといわれる八丈島へ、ヘリを飛ばしていた。

まもなく水没しようとしている島からは、住民もみな脱出しているはずだ。

しかも、マコの生体反応は消えそうな反応を示している。

それを頼りに藪をかき分け、山の中を進むと、小さな滝の脇で目を閉じて座るマコの姿を見つけた。

記憶を失った小野寺を発見した時からすでに脳腫瘍で、いつ死んでもおかしくない状態の中、マコは限界まで小野寺と共に残りの人生を過ごそうとしていた。

しかし、もう命が尽きることを確信したマコは、母の実家の八丈島で眠りにつくことを決断したのだ。

マコは感謝の言葉を伝えるも、すでに目も見えなくなり、意識も遠のいていく。

小野寺は事切れたマコを川の流れに横たわらせると、ケルマディック号で沈みゆく八丈島を脱出した。

新宿での再会

小野寺が姿を消した民間D計画は、玲子が後を継ぐこととなった。

そのころ小野寺は、一人で残された日本人たちを救出し続けていた。

もはや帰る場所など無いと絶望し、一人残らずこの列島から日本人を追い出し独りになるつもりなのだ。

世界中の助力で、日本人の脱出は効率的に進み、生存している要救助者は数えられるほどにまでなっている。

しかし小野寺は、その生存者の中に結城の妻・まなみの名前を見つけてしまった。

かつて新宿と呼ばれた荒地の中に、雑種天国の看板が立っている。

厄災の始発点ともいえるこの場所は、未だ沈没を免れていた。

なぜかまなみはこの場所を訪れ、離れようとしない。

今にも大きな地殻変動がこの場所を襲おうとする中、まなみは小野寺と話をすることで、生きる意思を固めようとしていた。

大地がこの場所まで飲み込もうと大きな揺れを起こす中、ついに小野寺は彼女の救出にやってきた。

命の誕生

まなみは結城の子を妊娠していた。

がれきの中に閉じ込められた2人は、結城について語り合うことができた。

生きるために死ぬかもしれないこの場所で小野寺を待ち続けていたまなみを、小野寺は必ず助けると誓った。

がれきの隙間から手を伸ばすと、その手を掴む者がいた。

他人の手のぬくもりに触れた小野寺は、涙を流す。

かつてこの地で小野寺に手をつかまれた玲子がそうであったように。

ついに生きる意志を取り戻した小野寺とまなみが、地上へ助け出される。

そこには玲子と田所が駆けつけていた。

直後、まもなく地球上から姿を消すこの国で、日本で生まれる最後の日本人が産声を上げる。

一方、田所は小野寺に、現代科学では「死」としか表現のしようがない六郎の失踪と共に、地球そのものがなくなってしまうことを告げる。

もはや人類の存続は、六郎や結城がたどり着いたかもしれない向こう側へとたどり着けるかどうかにかかっていた。

田所の仲介で、小野寺と玲子の日本最後の結婚式が執り行われる。

2人は遂に、真の再会を遂げることに成功したのだ。

新たな始まり

世界中に上陸した日本人たちは、驚きを隠せなかった。

没収されたはずの資産は当面の間一元管理されるだけであり、日本語も日本の姓名も奪われることは無かったのだ。

これから彼らは国連指揮下の「国際救助隊」として、世界中の厄災に駆け付ける一億人ものレスキュー隊となる。

国家、貨幣経済という概念が無意味になっていく世界で、いち早くその理想的な役割を見出した日本人。

ゴドレイ総裁が推し進めようとしていたこのプランは、元来小野寺の発案によるものだった。

そのころ、最後の日本人として列島を脱出しようとしていた小野寺と玲子は、かすかな生体反応に気付く。

そこには絶滅したといわれているニホンオオカミの子供たちがいた。

海に落ちた一頭を救うべく、小野寺も海へ入る。

彼らを襲う大津波を前に、玲子は早く戻るよう呼び叫んだ。

小野寺は不思議と落ち着いた表情で、大丈夫だと告げる。

新宿の事象を発端とした厄災と、変わりゆく世界の在り方は、全大陸が沈み、「物質的人類」が次の段階に踏み込むまでの始まりでしかないのだった。

【15巻(完)のまとめ】

ついに記憶を取り戻した小野寺は、マコの後を追い、命尽きる姿を見届けます。

絶望から再び孤独を選ぼうとしましたが、新宿でついに再会したまなみと結城について語り合うことで、生きる意志を取り戻しました。

小野寺と玲子は遂に真の再会を果たし、結婚することとなります。

日本の沈没は、人類が物質という殻を脱ぎ捨てるための始まりに過ぎませんでした。

【15巻(完)の見どころ】

この巻の見どころは、小野寺が記憶と人としての意志を取り戻し、絶望の中で生きる希望を見出す瞬間です。

玲子の問いかけにより、小野寺の断片的な記憶がつながり、かつての自分を取り戻す場面は、物語の集大成として感動的な転換点となります。

結城のこと、A計画のこと、すべてが一気に押し寄せる――その重さが、小野寺を再び孤独へと向かわせます。

マコとの再会では、命尽きゆく彼女の姿に小野寺の覚悟と愛情が試されます。

八丈島での脱出シーンは、緊迫感と悲しみが交錯し、読者の心を揺さぶります。

死を覚悟して小野寺を待っていたマコ――その静かな最期は、涙なしには見られません。

さらに、新宿でまなみと再会し命を繋ぐ場面では、小野寺が生きる意志を完全に取り戻します。

がれきの隙間から伸ばした手を掴む瞬間――他人の手のぬくもりに触れて涙を流す小野寺の姿は、物語の原点への回帰を感じさせます。

そして日本で生まれる最後の日本人――結城の子の誕生は、絶望の中に希望の光を灯します。

小野寺と玲子の結婚式は、長い苦難の末にようやく結ばれた2人の真の再会として、物語に深い感動をもたらします。

最後に、日本人が国際救助隊として新たな役割を見出し、小野寺がニホンオオカミの子を救う場面――これは終わりではなく、新たな始まりを象徴しています。

物質文明の次の段階へ――壮大なスケールで描かれる人類の未来が、読者に深い余韻を残します。

絶望と孤独の中で記憶と希望を取り戻し、愛と覚悟が交錯するクライマックスが描かれる、感動の完結巻です。
管理人

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