またハナレと共に帰省した際には父と再会を果たし、親子の確執が少しずつ解けていく。
授業でペアを組んだ男鹿とも徐々に距離が縮まるなか、男鹿から親と縁を切りたがっていることを打ち明けられた。
男鹿の父は有名な医師であることを知った賢人は、なぜ男鹿が親と縁を切りたがっているのか、疑問に思うのであった。
4巻のあらすじを振り返ってみましょう。
目次
ハナレに恋する土居内
解剖学講座の授業を通して、人体には個人差があること、そして基本的な人体の構造を理解したうえで目の前の個人に向き合う姿勢を学ぶ賢人。
骨折から回復してきている土居内へのお見舞いへ行くと、土居内はハナレが骨の図を書いたギブスを大事にとっておいていた。
土居内がハナレに想いを寄せていることを知った賢人は、ハナレの結婚が書類上のものと知ったらどうするのだろう、と考えあぐねていた。
男鹿の過去
日曜日になり、賢人はたまたま母親と言い争っている男鹿と遭遇し、2人でカフェで話をすることになった。
男鹿が普段、賢人から刺激をもらっていることを笑顔で話す。
賢人は自分は正当な理由で医学部に来たわけではないし、自分の中で大切なものが何か足りないからこそ、努力をしていると胸の内を明かした。
男鹿は、賢人が複雑な家庭環境をオープンにしていたことを羨ましく感じると同時に、家族と戦っているのは自分だけではないと、賢人に親近感を覚えていた。
そして男鹿は、違う医大に行くつもりだったが、父が志望校の理事長に裏金を渡していたことを告白する。
そのせいで男鹿は父のことが嫌になり、正しいことができる医者になるためにその志望校を蹴って防医大に入校したのだ。
しかしカフェの後ろの席では、賢人と男鹿の後をつけていた歌野・美馬・久保出らが聞き耳を立てており、その話も知ってしまうのだった。
久保出の嫌味
男鹿は幼い頃から父が地域医療や僻地医療に取り組んでおり、患者のために頑張る医者は皆偉いと教わってきた。
その父の教えを胸に、父のような医者になりたいと大学受験も猛勉強していた男鹿。
しかし志望校のA判定が出たことを父に早く知らせようと帰宅した際、父が一流の医大外を見下し、裏金で男鹿をいい大学に入学させようとしていることを知ってしまう。
自分の受験を応援してくれていたと思っていた父からの「入試は形だけ受けさせればいい。いい医者になりさえすれば、いくらでも元がとれる」という衝撃の言葉により、父への尊敬は怒りや悔しさへと変わり、それ以来父とは口を利いていないという。
結局、その大学は受験するだけして合格を蹴り、自分の力だけでいい医者になるべく防衛医大を選んだ男鹿。
賢人は男鹿が辛い自分の過去を話してくれたことに感謝の意を伝えた。
男鹿は、後ろで聞いていた同期にも気がついていたようで、皆にも声をかけた。
男鹿と同期たちは、これから一致団結しようとするが、久保出だけは「身内も大切にできないような人間がいい医者になれるとは思わない」と反発し、その場を去った。
賢人は寮に戻った後、土居内に久保出の発言について相談すると、土居内は久保出が両親を震災で亡くしていることを明かし、男鹿の父の話を聞いて思うところがあったのではと推測するのだった。
男鹿と久保出のトラブル
人体に個体差があるように、家族の在り方も人それぞれ。
久保出のことを自分なりに理解しようとしつつも、もし久保出が男鹿のように自分のことを打ち明けてきたらと思うと、重たい話を聞くのに相当のエネルギーがいることに気が重くなる賢人。
ただそれでも男鹿が全てを話してくれたのは嬉しく感じられ、医者になるとはこのように目の前の人と真剣に向き合うことなのだろうか、と思いを馳せていた。
そんなある日、風邪を引いた歌野の代わりに久保出が「旗衛」の係を務めることに。
この日の旗衞は男鹿とペアであり、男鹿は久保出との気まずい関係から集中できず、国旗を地面に落としてしまった。
2人は指導官室に呼び出されて自衛隊員としての自覚が足りないと叱責され、男鹿は1週間、役付きである久保出は3週間の外出禁止処分となった。
さらに久保出は役付きであるため、この処分中にトラブルを起こしたら留年と釘を刺されてしまう。
男鹿は久保出に謝罪したが、久保出は男鹿に対して父親を絡めた嫌味をグサリと突き刺した。
それを聞いた男鹿は久保出の手をとり、久保出の頬の横に拳をかすめる。
久保出の顔の横にいた蜂を見事なパンチで退治するものだったが、男鹿は続けて「つまらない価値観を押し付けるな」と吐き捨てた。
対する久保出は男鹿の手を引っ張って口論に発展し、男鹿は久保出の胸を思い切り突き放して立ち去る。
盗み聞きされていたのが発端とはいえ、こんなことになるなら自分の話をしなければよかったと後悔する男鹿。
しかしその日の夜、賢人たち同期のスマホに、「暴力事件発生」というタイトルと共に久保出が男鹿の手を引っ張っている写真が拡散されてきたのだった。
すれ違う思い
賢人はその画像がそれ以上拡散されないよう、同期たちには削除するよう連絡しようとするが、結局その画像は指導官も知るところとなり、男鹿と久保出は指導官に呼び出されてしまった。
呼び出しの後、久保出と男鹿の間には明らかに冷え切った空気が流れており、とてもではないが話しかけられない雰囲気に。
土居内や歌野から助けを求められた賢人は男鹿に事情を聞くと、男鹿は久保出に非はないことを指導官に説明したものの、久保出には「気持ち悪いからもう触らないで」とハッキリ拒絶したことを明かす。
そして男鹿は涙を浮かべながら、「賢人も家族を大切にできない人はいい医者になれないと思うか」と尋ね、自分は父親のことで責められるようなことはしていないと理解を求めるのであった。
久保出の衝撃の過去
賢人は男鹿と仲直りしてもらうため、久保出にも話を聞くことに。
ようやく腹を割って話す気になった久保出は、震災の日に父親に叱られ、「死ねよ、クソジジイ」と暴言を吐いてしまい、そのまま父親が亡くなってしまったことへの後悔を打ち明ける。
男鹿の父が悪いことは認めた久保出だったが、一つのことを間違えたらそれまでのことは白紙になってずっと最悪の父親と呼ばれなければならないのか。
もしそうなら、父親の死に際に最低な言葉を投げつけた自分はずっと最低な息子になるのか。
久保出はその考えから、いつまでも家族を許すことができない男鹿とは相容れないのであった。
賢人、人間関係に悩む
2人から話を聞いた賢人は、どちらの肩を持ったらいいのかわからなくなった。
そんな折、たまたま遭遇した白木教授から部屋に呼ばれ、個体差が重要なのは理解できるが、なぜ個体差ができるのか、と聞いてみる賢人。
白木教授はわからないと即答したが、わからないことに一生向き合っていく仕事が医者であるとアドバイスを送った。
その後、ハナレにも2人のことについて相談してみると、ハナレは「いつも一緒にいるのだから、ぶつかることは当然だ」と話す。
賢人は見て見ぬ振りはできないと、主張したが、ハナレは「必要な時に支えられるように、今はもう少し見守っていよう」と笑顔で答えるのだった。
献体者への思い
解剖学実習が始まり、賢人はハナレ、男鹿、久保出と班を組むことに。
皆、緊張の面持ちで遺体にメスを入れていき、授業の終わりには必ず遺体に黙祷。
その夜、風呂に浸かりながら、どんな人間が切るかわからないのにどうして献体しようと思ったんだろうと想いを馳せる賢人。
ハナレもまた、女子寮で同じ疑問を感じていたのだった。
最悪の下対番
賢人たちは無事に2学年になり、新たな仕事として新入生の面倒を見ることとなる。
だが賢人の下対番となる新入生・徳川は厄介な人物で、賢人は早々にげっそりしていた。
徳川は指導官に対して裏で反抗的な態度を取ったり、制服のプレスについて文句をたらたらと漏らし、とにかく周囲を見下す生意気な後輩なのであった。
成長を見せた賢人
賢人は解剖学実習をはじめ各教科の勉強に追われていたが、徳川に対する指導も行わなければならず、手を焼いていた。
学年が上がって、先輩たちの裏側が見えてきたと同時に、長野に残した叔母夫婦たちのことを思う賢人。
1年間で人に対する思いやりを身につけ、叔母たちも自分の知らないところでたくさんの苦労があったのだろう、と実感していた。
プレス指導で徳川にイラつく賢人だったが、それは1年前の自分の姿でもあるのだった。
徳川への怒りをエネルギーに
2学年の春季定期訓練では、習志野駐屯地で降下訓練が行われる。
だが賢人はいざ、降下しようとすると、身体がすくんで動かない。
そして下を見ているうちに下対番の徳川のことを思い出し、徳川への怒りで頭がいっぱいになっていった。
3年生から徳川に関するクレームが賢人の元に入ったのだ。
徳川が制服をプレスせずに、大学内にあるクリーニング店に制服を出していたことや、他の1年生を無視しているなど、多数のクレームに頭を悩ませる賢人。
クリーニングのことを徳川に問いただすと、徳川は効率的なやり方を選んだだけ、と太々しく答えた。
徳川は学歴や数字で人のことを判断する人間で、先輩や同期たちのことを舐めていた。
賢人は指吸に相談したが、やっと指導する側の気持ちが分かっただろう、と笑われてしまった。
指吸は賢人も1年生の時、徳川と同じようなもんだった、お前なら大丈夫、と声をかけた。
そして賢人は徳川への怒りで発奮し、降下訓練で飛び降りるのだった。
縁の下の力持ちの有難い存在
賢人たちが続いて訪れたのは、空挺団のパラシュートの保管・管理をしている、重物梱包場。
ここでは全国から集積されたパラシュートを隊員たちが梱包している。
落下する隊員だけが主役なわけではない。
こうした梱包をしてくれる隊員がいてくれるからこそ、他の隊員たちは活躍できるのだ。
賢人は一つ畳むのにどのくらい時間がかかるか聞いてみた。
すると、一つにつき20分とのこと。
せっかく梱包したパラシュートを広げてみますか、とあっけらかんと広げてしまった。
せっかく一つ畳むのに20分かかるものを、数秒で広げてまた畳むという作業があるのに、賢人たち医官には見て欲しいからというだけで広げてくれたのだ。
そして、逆に医官になるための貴重な時間を取ってくれてありがとうと、お礼を言われてしまった。
職業に格差はないとわかっていても、傲る気持ちが出てきてしまっていたことに思いを巡らせる賢人。
何事も経験を通じて学べることがあることを感じるのだった。
看護学科との実習
解剖学実習で、看護学科の学生たちが見学にやってきた。
防医大には医学科の他にも、看護学科もある。
今回は実習に看護学科の学生も受け入れたのだ。
看護学科2年の大山はこの実習に並々ならぬ決意で臨んできたようだ。
心臓解剖の途中で他の看護学生から肝臓に関する病気についての解説を求められた賢人だったが、疾患等についてはまだ看護学生の方が授業菓子進んでおり、賢人はうまく答えられなかった。
賢人は逆に、自分が知らない疾患の知識を自分に教えて欲しいと頼んだ。
すると大山たちは笑顔でそれに応え、ここでも交流による学びが生まれるのであった。
徳川の人間性を疑う賢人
休日になり、対番外出で徳川を外に連れ出す賢人。
3年の無良も徳川には手を焼いていたが、徳川は歩きながらゴミをポイ捨てしたり、焼肉店の店員に向かって知能低すぎと罵ったりしていた。
賢人は徳川に、先日訪れた空挺団の梱包部隊の隊員たちのことを話し、医者になるには自分の力だけではどうにもならないことも徳川に説いたが、徳川は医師は社会的に立場のある人間であり尊重されるのは当然の権利だと主張し、全く聞く耳を持たない。
能力の高い人間は高い給料をもらうことは当然、それなりの扱いを受けるのも当然、自分で手に入れたものを他人にとやかく言われたくない、と賢人を完全否定。
挙句の果てには「自分は自分のために医者になろうとしている。他人のことはどうでもいい」と言い放ち、賢人は唖然とするのであった。
【4巻のまとめ】
男鹿と父の問題は、男鹿の父が裏口入学という汚い手段を取り男鹿を志望校に入学させようとしたことによるものだった。
男鹿は父のことを尊敬していたが、裏切られた気持ちになり、防医大に入校してきた。
そのことを男鹿から打ち明けられたがその話をハナレや久保出も聞いていて、久保出が家族も大切にできない人間は医者には向いていない、と男鹿と対立してしまう。
一方で、久保出は父親に暴言を吐いた直後に震災で父を亡くしており、その後悔から家族を許せない男鹿に反発していたようだ。
どちらの肩も持てない賢人は、ハナレにアドバイスを求め、2人を信じて様子を見守ることにするのだった。
そして2年生になり、賢人の下対番・徳川の生意気で自己中心的な態度に手を焼いていた。
どんなに指導しても利く耳を持たない徳川は、挙句の果てには「自分のために医者になる。他人のことはどうでもいい」と賢人に言い放ち、賢人は唖然とするのだった。
【4巻の見どころ】
この巻の見どころは、仲間たちの心の葛藤と成長です。
土居内がハナレへの淡い想いを胸に秘める中、男鹿の壮絶な過去が明かされます。
父への反発から防医大を選んだ男鹿と、家族を許せない彼を批判する久保出。
二人の衝突はやがて暴力事件へと発展し、同期たちを巻き込む騒動へと発展します。
一方で、賢人は指導する立場となり、新入生・徳川の問題行動に苦悩。
降下訓練では彼への怒りを原動力に飛び降りる姿が印象的です。

次巻へ続きます。
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