抗てんかん薬の増量でわずかな記憶力回復を見せていた川内は、綾野の何気ない一言で突然過去の一場面を思い出した。
8巻のあらすじを振り返ってみましょう。
リングドクター三瓶の目線
綾野の一言で過去の一部を思い出した川内。
記憶が正しいのか確認しようと綾野を引き止め、過去に綾野に告白されていたことを知る。
それから数日後、三瓶・星前・風間の3人は、格闘技の試合にリングドクターとして呼ばれた。
三瓶は観客席に綾野と川内が一緒にいるところを発見しショックを受けるが、リングドクターとして注意深く試合を見守る。
脳外科医として脳震盪に神経質になる三瓶に、ベテラン格闘家・平野は、「自分には何があっても試合を止めるな」と三瓶に釘を刺した。
若手選手の挑戦を受けて立つ平野は、ベテランらしい振る舞いと闘い方で会場を沸かせるが、三瓶はマネージャーから3日前に脳震盪を起こしていることを聞いて試合を中止させようとする。
意思を引き継ぐ
三瓶のストップも間に合わず、平野は試合中に倒れてしまう。
急性硬膜下血腫で緊急手術が行われ、一命をとりとめたが、もうリングに上がることはできない。
しかし、覚悟の上で最後の試合に挑んでいた平野は、試合が始まる前に挑戦者に意思を引き継いでほしいと、トレードマークの赤いパンツを用意しマネージャーに託していた。
緊急手術を終え一息つく星前たちは、緊急時に川内に連絡が取れなかったと話す。
綾野と川内が試合を見に来ていたことに気が付いたのは、三瓶だけだったようだ。
余命3ケ月の男性
早退が続く川内に、彼氏が出来たのではと勘ぐる風間。
三瓶はポーカーフェイスを貫くが、手術の日何か思い出したそぶりを見せた川内に気が付いていた成増は、三瓶を心配そうに見つめる。
川内は記憶が一部蘇ったことで、そのころの思い出をたどればさらに記憶が戻ると信じて、綾野とデートした美術館を訪れていた。
帰り道の公園で、男性が絵を描いているところ突然倒れたのを目撃した川内は、すぐに駆けつけ、てんかん発作と判断し救急車を呼んだ。
三瓶たちと合流した川内は、男性の症状と、医大で悪性脳腫瘍の治療中であることを伝えた。
発作への対応が早かったことから命は助かったが、脳の腫瘍が再発している男性は余命は3ケ月ほどで、三瓶が医大から引き継ぎそのまま担当することに。
それぞれの関係
絵描きが趣味の男性患者に付き添っている女性は、内縁関係にある小説家の池内芳美だった。
てんかん発作後まだ麻痺の残る患者は、リハビリ入院をして様子を見ることに。
そのころ、綾野の婚約者の西島は、綾野との結婚が進まないことで家庭内で息が詰まる思いをしていた。
臨床に未練がある綾野の為、外科医として続けていく方法はないかと探るが、西島の意見は押さえつけられてしまう。
一方、三瓶のもとへは、川内との関係を気遣う成増がやってくる。
川内の記憶が戻ることを信じて待つ三瓶に、記憶が戻っても昔と同じ気持ちになるかは分からない、三瓶も昔と同じであろうとする必要はないのだと諭した。
池内の懺悔
脳腫瘍の患者はある日突然、人格が変わったように怒ったり暴れたりするようになった。
腫瘍が大きくなり脳を圧迫していることが原因で、その症状は日に日に進み、次第に意思の疎通が困難になると説明する三瓶。
池内は、妻子ある立場であった患者と許されない恋に落ち罪悪感を持ち続けてきたが、引き離してしまった家族と会わせようと連絡をとる。
家族を代表して面会にやってきた患者の兄は、患者と池内に冷たい態度で接した。
そのことを悲しむ患者は池内を責めるが、三瓶は患者の記憶の混乱や感情を抑えられない状態を詳しく説明し、「ひどいことを言われても心を痛めないで」と励ます。
それぞれの別れ
川内は格闘技の試合の後、もう二人では会わないと綾野に伝えてたが、綾野はどうしても川内の事が気がかりだった。
そんな様子を静かに察する西島は、「自分の気持ちを優先させ家族を犠牲にしないでほしい」と綾野に念押しする。
脳腫瘍の患者は腫瘍の成長とともに、意識障害が進んでいた。
恋に生きる自分と同じ気持ちと信じてきた患者と、心を通わせることが出来なくなり悲しみにくれる池内に、患者は最後の似顔絵をプレゼントした。
もう自分のことが誰なのかも分からず描いたその絵を抱きしめて、池内は患者を見送った。
そして、綾野は自分の生きたいように生きると決心するが、西島に別れを告げられる。
尽くす妻のリハビリ
ある日、右側の麻痺で病院を訪れた女性患者はラクナ梗塞であると診断される。
症状の進行を防ぐ治療はできるものの、麻痺を改善し社会復帰するには大変な苦労が待っていると心配する三瓶。
患者は、「主人と息子には私がいないと困る」と気がかりな様子で、川内はリハビリや患者の精神面を懸命にサポートする。
徐々に歩行などの感覚を取り戻していく患者は、どうしても利き手である右手が思うように動かせない。
そこで三瓶は拡散テンソル画像で神経線維を確認し、今後の治療プランを立てることを提案するが、画像の結果、右手は回復が難しい状態であることが分かり患者は落ち込む。
そんな患者に川内は、三瓶が落ち込んでいる自分にかけてくれた言葉を思い出し、同じように患者に寄り添い励まそうとする。
不器用な夫のリハビリ
夫は一生懸命働いて、妻は家事と子育てに励む―。
そんな夫婦の形を作ってきた患者には、自分のために早期退職すると言い出した夫と、家事ができない自分に不安を隠せない。
さらに妻を支えようとするものの、女心が分からず的外れな提案をする夫に苛立つ患者を見て、川内は患者の趣味である散歩で二人の心を再び通わせようと画策する。
患者夫婦と三瓶を連れて出かけた川内は、恋人のような時間を取り戻した夫婦を見て安心し、三瓶とそっとその場を離れる。
三瓶と二人きりになった川内は、格闘技の試合の日のことや、記憶はそれ以上戻らなかったこと、綾野に対しても特別な感情はわかなかったことを伝えた。
帰り道、街の景色を楽しみながら日々の変化に敏感に気が付く川内。
毎日そうして記憶を確認していると話す川内を、優しく見守る三瓶はどこか嬉しそうな安心したような表情を見せる。
【8巻のまとめ】
綾野との過去の記憶が少しだけ蘇った川内は、さらに記憶を辿るが、それ以上に思い出すことも綾野にときめくこともなかった。
そして、綾野は経営者としての道ではなく外科医の道を選び、西島は綾野との婚約破棄を決断する。
前向きに進もうとする川内を見守る三瓶だが、川内に芽生えた三瓶への恋心には気づかないようで、川内はもどかしい思いをする。
【8巻の見どころ】
この巻の見どころは、川内の記憶が綾野の一言で部分的に蘇るものの、それが現在の感情と一致しない葛藤です。
リングドクターとしての三瓶の奮闘も見逃せません。
試合中の事故を防ごうとする三瓶の判断と、選手の覚悟が交錯する場面は手に汗握ります。
さらに、脳腫瘍患者と小説家・池内の切ない愛の物語が、記憶の混乱とともに描かれます。
夫婦の関係を見つめ直すリハビリのエピソードも心温まるものです。

次巻へ続きます。
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