横須賀北高校に転校してきた森 文太郎は根暗で周囲を拒絶していたが、山岳部の宮本に絡まれたことをきっかけに命綱なしで校舎をよじ登り、それ以来登山にハマっていくこととなる。
顧問であり自身も日本有数のクライマーでもある大西先生は単独で命を投げ出すような危険な登り方をしたがる文太郎を気にかけ、登山の基礎や技術を教えながらインドアクライミングの大会に文太郎を出場させた。
そこで文太郎は初心者ながらも見事なクライミングを見せ、以前いた高校ではクラスメイトの自殺現場に居合わせたことから殻にこもるようになったという過去があるものの、クライミングを通じて徐々に人としても変わり始める。
ところが双子山での活動時に同級生の夕実が滑落してしまい、文太郎は夕実を助けたものの、命綱なしで難易度の高い崖をよじ登り、その一部始終をフリーライターの黒沢によって暴露されてしまう。
クライミング部は世間から叩かれて炎上し無期限の活動休止となる一方、文太郎の活躍をさらなるスクープとして売りたい黒沢は文太郎に「雪山は下界の汚いこと、やな事全部真っ白に洗い流してくれる」などと唆しながら八ヶ岳の主峰・赤岳のアイスクライミングを勧める。
黒沢に唆されて八ヶ岳のアイスクライミングに挑戦することとなった文太郎だが、はやる気持ちを抑えられずに1人で山の中を散策しているうちに急に天候が悪化し、遭難してしまった。
黒沢は背に腹は代えられず大西先生に連絡を取り、2人で文太郎の救助へ向かう。
大学の山岳部時代の事件で大西先生は黒沢に対して強い怒りを抱えていたが、命を預け合うなかで10年越しに黒沢が当時の真相を明かし、誤解だったことを知った大西先生は動揺。
一方、自力で生きながらえていた文太郎は凍傷になりかける危険な状態ながらも心の向くままに単独で登り続け、ついに山頂に到達する。
だが文太郎を追う黒沢と大西先生の頭上で落石が発生し、その岩が無常にも大西先生を直撃してしまうのだった。
4巻のあらすじを振り返ってみましょう。
大西先生の死
幸い、文太郎は手の指に軽い凍傷を負っただけで救助されたが、大西先生は落石が直撃したことで帰らぬ人となってしまった。
「孤高の人」4巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
宮本は学校を辞めてフランスへ行く決意を固め、黒沢は大西先生の遺志を継いで心を入れ替える。
そして当の文太郎は、大西先生が亡くなっても山への憧れを止めることができず、病院で寝たきりの親友・瑞樹のもとを訪れ、クライマーになる決意を口にするのだった。
2年後、ストイックな生活を送る文太郎
2年後、高校を中退して派遣会社に就職した文太郎は世界トップレベルの山の環境をイメージしながら、勤務先の冷凍倉庫でトレーニングを続けていた。
勤務態度は真面目で正社員登用の誘いも来たが、それを辞退してまでストイックな生活を送り、全てを登山のために捧げる文太郎。
「孤高の人」4巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
そんな文太郎のもとを黒沢が訪ね、日曜日に大西先生の追悼登山に誘われるが、合わせる顔がない文太郎は同僚の休日出勤のシフトを引き受けてまで行かない理由を作り出した。
しかし、職場の女性社員である小堀から熱烈なアプローチを受け、その休日に小堀と2人きりで出勤することになったことを知ると、逃げ出すように追悼登山に参加することに。
そして黒沢と共に、大西先生が大学3年の時に初めてオンサイトで完登し、「オオニシ・キズナルート」と名付けた瑞牆(みずがき)山で追悼登山が行われるのだった。
「孤高の人」4巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
大西先生の追悼登山を機に資産家からスカウトを受ける
当時の大西先生を想像しながら、大西先生以外完登した者のいないルートに挑む文太郎。
その様子を黒沢は予め連絡を取っていた資産家であり登山家の二宮に見せ、文太郎のことを気に入った二宮は自分の山岳チーム「14マウンテン」にスカウトする。
「孤高の人」4巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
二宮が目指すのは世界で一番難しいとされる、標高8611mのK2のなかでも幾多の死者を出してきた人類未踏の氷壁である東壁。
資金にも余裕がある二宮から優秀な人材と見込まれてのスカウトは普通に考えれば願ってもない話だが、文太郎は「自分のことは自分でやりたい」と言って固辞する。
二宮がますます文太郎のことを気に入る一方、K2東壁のことが気になった文太郎は、どんなに探してもその写真が世に出回っていないことに気づく。
そんな文太郎に黒沢が再び声をかけ、14マウンテンが所有している世界でも希少なK2東壁の写真を見せてもらうと、気持ちがうずき始めた。
「孤高の人」4巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
もし文太郎の願いどおり個人でK2に挑むとなれば、入山料のほかに渡航費や移動車両費、連絡官の雇用料やベースキャンプでの滞在費など、お金は200万円あっても足りない。
しかし二宮による14マウンテンに入ればお金の心配は無いー。
黒沢はお金の話で文太郎をチームに入れようとするが、それでも文太郎は1人で金を溜めて挑むことを決意するのであった。
「孤高の人」4巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
夕実との再会は悪夢に
その帰り、文太郎は二宮の所有する六本木の高級マンションから出てきたところで同級生だった夕実とばったり遭遇する。
「孤高の人」4巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
双子山での事件以降、内定を取り消されて夜の世界に身を置き、てすっかり派手な身なりになっていた夕実は、高級マンションから出てきた文太郎から金の匂いを感じ、森の家にそのまま上がり込んでいった。
貧相な家ながらも、彼氏に入れ込んで金がない夕実は文太郎に色仕掛けで金をせびろうとする。
文太郎はその誘惑を振り切って夕実を家に泊め、自分は外でビバークの練習として野宿することにするが、夕実は文太郎が家賃の支払いや山の道具代のために財布に入れていたなけなしの金を盗んでいってしまう。
「孤高の人」4巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
目標である山に集中し、夕実にされたことを忘れるため、文太郎は山荘への物資の搬入という重労働を請け負い、考える余裕を無くして歩荷のトレーニングに集中する。
全てを断ち切って山荘に到着した文太郎は達成感を得るが、しかし夕実による女の誘惑は頭から離れないのであった。
【4巻のまとめ】
大西先生は落石事故で亡くなってしまったが、それでも山への憧れを抑えられない文太郎はソロクライマーとして生きることを決意。
2年後、派遣社員として冷凍倉庫で働きながら全てを登山のために捧げるストイックな生活を送る文太郎。
大西先生の追悼登山ではその見事な登りっぷりが評価され、資産家で登山家の二宮から人類未踏の氷壁であるK2東壁の完登を目指すチーム「14マウンテン」にスカウトされる。
資金面での負担が無くなる願ってもない話だが、1人で登りたい文太郎はその誘いを固辞。
だが悪女と化していた夕実との再会を機に、山に集中したくても女の誘惑が頭をよぎるようになってしまうのであった。
次巻へ続きます。
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