富士の見える町、横走市にある横走中央病院の医師・玉木。 ある日、駐屯する自衛隊の隊員・滝原、肉屋・中畑の2人が重篤な状態で立て続けに担ぎ込まれる。
似たような病状であったが、滝原は安定するも中畑は死亡。
そのうえ滝原は、玉木の知らぬ間に自衛隊病院へと転院させられていた。
そうした中、前週まで元気そうに働いていた女性看護師の鮎澤も来なくなり、高校生の娘・潤月によってベッドで亡くなっている姿が発見された。
何かが起こり始めていると考えた玉木の懸念は現実のものとなり、横走市では大勢の患者が似たような症状を訴えて病院へ殺到。
混乱のなか、国立疫病研究所の原神はサンプルの分析から肺ペストのアウトブレイクが発生していることを突き止めた。
中央アジアで流行していたものを、派遣されていた自衛隊員の滝原が持ち帰り、駐屯地の内外で感染が拡大してしまったのである。
感染拡大を防ぐために奔走する玉木と原神、だがペスト菌はさらに変化し、抗生物質が効かずに亡くなる人が続出。
悪夢のような事態に見舞われ、原神はこれからの事態に備えてありったけの防護服と死体袋を発注するのだった。
2巻のあらすじを振り返ってみましょう。
止まらない感染拡大
感染者発生から10日ほど経ち、死者の数は100人を既に超えていた。
玉木は忙しく病院の外に作られた患者用テントを走り回って懸命に対応するが、医療機器もスタッフも足りていない。
火葬場への汚染を防ぐため、亡くなった方についてはお坊さんを呼んで仮埋葬をするのが精一杯。
まだ感染拡大に抗い続ける玉木、しかし冷静な原神は既に「僕らはもう負けた」と告げる。
「リウーを待ちながら」2巻©講談社/朱戸アオ
1人の患者から5人へと伝染していき、どう足掻いても感染拡大のペースの方が早いのである。
次の一手として、原神はあえてラジオでペスト菌の怖さを公言。
だが過去にこうした災害で住民がパニックを起こした例はなく、原神の目的は政府が住民によるパニックを恐れるように仕向けるためだった。
そしてその原神の狙いどおり、政府は感染が拡大している横走市に非常事態宣言を発令し、市の封鎖に踏み切るのだった。
「リウーを待ちながら」2巻©講談社/朱戸アオ
混乱から誹謗中傷へ
政府の要請により横走市は封鎖され、コンビニやスーパーでは生活物資も品薄になる。
報道で市の封鎖を知った玉木はすぐさま原神を問い詰めるが、原神はあくまで犠牲者を最小限に抑えるためだと説明。
中世と同じなら死亡するのは全員ではなく2/3程度、感染が全世界に広がれば50億の死者が出るが、感染を市内に抑えれば死者は6万人で済むというのだが、命の選別ともいえる判断に玉木はどうしても納得できなかった。
一部の横走市民が封鎖網を潜り抜けて脱出を図る「脱走(だつばしり)」が問題視される一方、面白がりながら脱走者を追い回す自警団も出現。
さらにペストとは無関係の人まで横走市出身というだけで差別や風評被害を受けるようになり、社会に混乱が広まっていく。
市外にある学校へ通学できなくなった潤月は特例措置としてリモートで授業を受けるが、次第にクラスメイトからSNSで悪口が書き込まれ、誹謗中傷がエスカレートしていく。
潤月の彼氏であるコウタだけはクラスメイトからの心無い書き込みに憤慨するが、潤月はコウタがクラスで孤立しないよう、一方的にメールで別れを告げる。
潤月はコウタからの再三の電話から逃げるように家を出て、横走中央病院で患者の住所のマッピングなどを手伝うことに。
そんな潤月に、原神はアルベールカミュの代表作『ペスト』を勧めた。
原神はその本に出てくる医師、ベルナール・リウーに憧れ、そのような存在が現れるのをずっと待っていることを明かすのだった。
「リウーを待ちながら」2巻©講談社/朱戸アオ
いったい誰が悪いのか
ペストの最初の感染者である自衛隊員・滝原が意識を回復した。
潤月は感染の原因を作った自衛隊のことを毛嫌いするようになっていたが、一方で市外の人からは潤月たち横走市住民を病原菌扱いして迫害する。
理不尽な状況に怒りを抱える潤月に、原神は冷静に様々な角度から考える必要があり、いったい誰が悪いのか、考えても答えは出ないことを諭す。
自衛隊もまた、ペスト菌を持ち帰ってきてしまったとはいえ、元々は中央アジアの国・キルギスが大震災に見舞われ、その救援のために派遣されたのである。
だが、みなが原神のように落ち着いて考えられるわけではない。
自衛隊新富士病院では感染源となった滝原が他の自衛隊員に暴行を受け、滝原自身もまた自分の責任を感じてその暴行を受け入れていた。
原神のおかげで少し気持ちが落ち着いた潤月は、コウタから呼び出されて横走市の封鎖されている県境でコウタと再会。
封鎖線の警備員に止められながらもコウタは潤月に「好きだ」と叫び、潤月も「私も」と返して想いを確かめ合う。
しかしその裏では滝原が自責の念に耐えかねて自ら命を絶ってしまうのだった。
せめて自分にできることを
横走中央病院でも玉木が患者の対応に奔走していたが、死者は増える一方。
玉木は精神的にも体力的にも疲れが見え、みな絶望に慣れ始めてしまっていた。
「リウーを待ちながら」2巻©講談社/朱戸アオ
そんな折、ある女性の患者が病院内で息子とはぐれてしまったことを知る。
どんなに頑張っても患者を治すことができないのなか、せめて自分にできることを―。
玉木はひと時でも患者を安心させることを選び、助かる見込みの薄い患者の対応よりもその息子を探し出すことを優先。
そのおかげで母子は無事に再会し、最後の時を一緒に過ごすことができた。
玉木は自分の選択に後悔は無いのであった。
院長の死と支援要請
横走中央病院の医療現場は限界を迎え、医師やスタッフの中にも来なくなる者が続出する。
さらに院長の川島田も発熱してしまった。
「リウーを待ちながら」2巻©講談社/朱戸アオ
川島田は死ぬ前に家にある大好きな赤ワインを持ってきてほしいと玉木に頼み、その晩に亡くなった。
川島田の院長としての仕事である現状報告やリモート取材は「若い女だから」というだけの理由で玉木が選ばれ、苦手な仕事を押し付けられたことに怒る玉木。
そんな玉木を原神が諭し、鬱憤を発散させてスッキリした玉木は、リモートでの記者会見に応じて医療現場での尽力を伝えて支援を要請するのだった。
「リウーを待ちながら」2巻©講談社/朱戸アオ
亡き妻の幻影
横走市内で働くサラリーマンの板野は、新婚の妻を亡くしたものの、その死をどうしても受け入れられずに妻の姿を求めて徘徊していた。
どれだけ探しても妻を見つけることができず、道端で佇んでいるところに通りがかった潤月が心配して声をかける。
潤月もペストで母を亡くしたこと、そして母にきちんとお別れが言えなかった後悔を打ち明け、母の姿を幻で見たかもしれないと明かす。
それを聞いた板野は帰宅後、家の外でたくさんの人が行列をなして山の方へ歩いていく幻を見る。
その中には愛する妻の姿も。
板野は妻に今までの感謝を伝え、ようやく妻の死を受け入れることができたのだった。
「リウーを待ちながら」2巻©講談社/朱戸アオ
[st-kaiwa1 r]愛する奥さんの死と向き合うことができたんだね…
越境者
自衛隊内では横走市の外へ脱走する者が相次ぎ、脱走を手引きしている者がいると噂になっていた。
そんななか、駒野の案内役である仁杉は、母親が危篤になり地元で緊急手術をすることになったことを知り、動揺する。
「リウーを待ちながら」2巻©講談社/朱戸アオ
母のもとへ駆けつけたいが、どんな事情があっても封鎖されている横走市から出ることは許されない。
どうすることもできず打ちのめされていると、そこにある人物が「ここから出たいなら駐車場に来るように」と声をかけてきた。
仁杉がそのとおりに駐車場に急ぐと、そこには車に乗ったカルロスが待っていた。
偶然通りがかった玉木はその2人が一緒の車に乗っていることに気付き、後に仁杉を探している駒野にそのことを伝えるのであった。
「リウーを待ちながら」2巻©講談社/朱戸アオ
【2巻のまとめ】
感染拡大は止まらず、病院の医療現場は限界を迎え、医師やスタッフの中にも来なくなる者が続出する。
院長も感染して命を落としてしまい、玉木は病院を代表してリモート会見で現場の窮状を訴えて支援を要請した。
他方、世間では横走市民への誹謗・中傷がエスカレートしていき、市内からも横走市の外へ脱走する者が相次ぐ。
それは自衛隊の中も例外ではなく、危篤になった母親の緊急手術に立ち会うために仁杉軍曹も市外へ出たいと願っていた。
すると、病院の清掃スタッフであるカルロスが仁杉に声をかけ、脱走の手引きを始めるのであった。
次巻へ続きます。
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