リカオンズ悲願の優勝を目指す”悲運の天才打者”児島は、ミニキャンプに来た沖縄で1打席勝負の賭け野球「ワンナウト」で無敗を誇る天才勝負師・渡久地東亜と出会う。
速球も変化球もないが並外れた度胸、洞察力と読心術で相手打者を翻弄する渡久地を児島は勝負への執念で破り、渡久地は児島に従って「リカオンズを優勝させる」という目的のもと入団することとなった。
球団経営を銭勘定でしか考えないリカオンズオーナーの彩川と「1アウトで+500万円、1失点でー5000万円」という完全出来高制の年俸契約(通称:ワンナウツ契約)を結び、渡久地のプロ野球選手としてのシーズンが始まる。
渡久地はパ・リーグの最強王者マリナーズとの3連戦に全試合先発させられながらも見事に大幅な収支黒字で切り抜け、ホームスチール成功率100%の最速男ジョンソン擁するバガブーズ、ホームスタジアムでイカサマを駆使する悪質球団ブルーマーズも破った。
渡久地と彩川オーナーの賭け勝負は途中から2軍で戦力外寸前のムルワカ・倉井・菅平のポンコツ3人衆も対象に含めた「新・ワンナウツ契約」へと姿を変えるが、ここでも渡久地は3人の潜在能力を引き出して大勝。
ついに彩川オーナーの資金が底を尽き新・ワンナウツ契約は終結するが、今度はリカオンズの球団売却の話が公表される。
球団消滅の危機に際し選手たちは渡久地と共に解雇を受け入れる覚悟を固めるが、渡久地が個人で球団の買い取りに名乗りを上げ、新しいオーナーに就任。
そしてペナントレースは中盤に差し掛かり、オールスターゲームの選出が始まろうとしていた。
20巻(外伝)のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。
目次
イタズラ投票をするネット上のファン達
時は少し遡り、リカオンズが消滅危機を乗り越えて渡久地がオーナーとなった頃のこと。
ネット上では球界に不満を募らせた過激なファンたちが抗議の意味を込めてオールスターの転覆計画を画策していた。
「スターでも何でもない奴を選出しよう」
〈イタズラ投票が始まる [ONE OUTS 20巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
この言葉を機に悪戯投票が蔓延し、スパローズからフィンガースに2年4億の契約で移籍したもののすぐに腰を痛め出場していない捕手・仁科を筆頭に票が集中していく。
仁科は中間発表でまさかの1位を取り、スポーツニュースでも報道され騒動は加速していく。
当の仁科は、元捕手の高輪に弱みを握られていた。
仁科はスパローズ時代、オープン戦で対戦した高輪にデッドボールを当てさせてしまい、その怪我がきっかけで高輪はシーズンを棒に振る。
さらにその年のシーズンオフに仁科がFA移籍したことによってポジションが被る高輪が押し出されるように戦力外となり、仁科は高輪に大きな負い目があった。
仁科を恨む高輪はしばしば金を要求すると同時に、嫌がらせでネットの住人を焚き付けて今回の騒動を巻き起こしたのだった。
〈仁科をゆする高輪 [ONE OUTS 20巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
渡久地の日本新記録挑戦に注目が集まる
球界のドンであるガラリアンズオーナーの田辺は騒動を鎮静化するため、ファンの興味を逸らす作戦に出る。
選出が確実視される渡久地との会話を誘導し、「渡久地がオールスターで新記録となる10連続奪三振を宣言した」と大げさな特ダネを報道各社に流したのである。
〈渡久地をエサに注目を逸らす [ONE OUTS 20巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
ファンは一気に盛り上がり、正常なファンの投票が盛り返す。
そして各ポジションで順当な選出が行われるなか、仁科だけがさらし者になったまま2位の追随を許さず捕手1位として選出された。
〈選出されてしまった仁科 [ONE OUTS 20巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
結果を見て高輪は、仁科に恥をかかせるために渡久地の宣言した記録を阻止させることを企む。
高輪がさんざん嫌がらせや要求ができたのは、仁科が持病の怪我を隠して移籍してきたという証拠を握っており、仁科を脅しているのだった。
〈渡久地の記録阻止を企む高輪 [ONE OUTS 20巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
渡久地を妨害したい仁科
10連続奪三振など不可能―。
そうタカをくくっていた仁科だが、オールスター前のリカオンズとの試合で初めて渡久地の球を打席で体感し、すぐに考えを改める。
なんとか渡久地の記録樹立を阻止しなければ、高輪が証拠を暴露して自分の選手生命が終わる。
〈焦る仁科 [ONE OUTS 20巻](c)集英社/甲斐谷忍〉
こうして始まったオールスター第1戦。
渡久地と仁科に出番はないものの、試合はパ・リーグの重量打線が爆発して快勝。
出場機会を得るために必死に考えを巡らせる仁科は、捕手としての知識と経験を活かし、「相手のセ・リーグの打者についてわざと誤った情報を渡久地に教え、危険なゾーンに投げさせる」という作戦に至るのだった。
いよいよ渡久地がマウンドへ
そして仁科はうまく監督を説得し、渡久地の出番のときに一緒に出場することを取り付ける。
第2戦は派手な乱打戦となり、5回を終わって14-12とパ・リーグがリードする展開。
そして6回表、セ・リーグの攻撃でワンナウトの場面で渡久地がマウンドに立つことに。
仁科もキャッチャーとして出場し、観衆は新記録樹立の瞬間を期待して大歓声が沸き上がるのだった。
〈いよいよ出番が来た [ONE OUTS 20巻](c)集英社〉
記録阻止の作戦
本来はサイン交換などいらない渡久地に、仁科は参考情報としてセ・リーグの打者の情報を教える。
最初は本当の情報を教え、渡久地に信用させてからハメる算段である。
渡久地は仁科の要求どおりに2者連続三振を奪い、その回を無失点に抑えた。
続く7回のマウンド、先頭打者は仁科の元同僚である若松。
仁科はここでバッターボックスに立つ若松にあらかじめ投げるコースをこっそり教え、記録を阻止にかかる。
〈打者にコースを教える [ONE OUTS 20巻](c)集英社〉
その通りのコースに投げた渡久地の球を若松が見事に打ち、内野安打。
早くも渡久地の記録樹立は途絶えたのだった。
〈記録を阻止 [ONE OUTS 20巻](c)集英社〉
奪三振ショーで記録達成
しかし、渡久地は仁科の目論見を看破していた。
記録はどうでもいいが、ここから三振を積み上げていくことには重要な意味がある―。
渡久地は仁科にそう告げ、「次、俺の邪魔をしたらこの5万の観衆の前でテメーをぶちのめす」と脅す。
〈ここからが本番 [ONE OUTS 20巻](c)集英社〉
こうしてプレー再開となり、ここから渡久地の奪三振ショーが始まった。
セ・リーグを代表する打者たちのバットは次々と空を切り、3者連続三振。
記録樹立が潰え上機嫌の高輪をよそに、渡久地は8回も3者連続三振を奪う。
そして最終回のマウンド。
2人を三振に斬って取り、最後のバッターは先ほど内野安打を打った若松。
今度こそ実力勝負となり、渡久地は通常よりも低回転で沈む球で若松を三振に取った。
しかし仁科が捕球できずパスボールとなったことで、振り逃げが成立。
〈振り逃げでも記録上は三振 [ONE OUTS 20巻](c)集英社〉
記録上は三振となるが、9者連続三振の状態で次のバッターを迎えることとなった。
最後のバッターはセ・リーグ最強の打者・榎本。
渡久地はさんざん榎本を挑発して打ち気をはやらせ、最後はインハイのボール球で釣って三振。
奇跡の10連続奪三振を達成し、日本新記録と同時に大きな衝撃を与えるのだった。
〈10連続奪三振達成 [ONE OUTS 20巻](c)集英社〉
日本一への布石
渡久地が三振を積み上げることに拘っていたのは、日本シリーズを見据えての布石だった。
常勝マリナーズとの激闘を制してリーグ優勝したリカオンズは、日本シリーズでガラリアンズと対戦。
渡久地の姿は無かったが、ガラリアンズはリカオンズとマリナーズのどちらが優勝してもいいように対策を練らなければならなかったこと、そしてオールスターの衝撃で渡久地対策に躍起になっていたことで後手を踏むこととなる。
渡久地はオールスターで強烈な印象を与えながらも肩透かしを食らわせ、日本シリーズはリカオンズが4勝2敗で制し、日本一を飾ったのだった。
〈日本一をつかみ取ったリカオンズ [ONE OUTS 20巻](c)集英社〉
【20巻(外伝)のまとめ】
ネット上の悪戯により、全く活躍できていない捕手の仁科がファン投票でオールスターに選出される。
オールスターでは渡久地が日本新記録となる10連続奪三振を達成するかに注目が集まるなか、仁科の弱みを握る元捕手の高輪は仁科に大きな恥をかかせるため、あえて渡久地の記録樹立を妨害させるように仕向ける。
やむなく従うしかない仁科は相手打者に投げるコースを教えいったんは奪三振を阻止するが、狙いをすべて看破していた渡久地はここから振り逃げを含めて10連続奪三振を達成。
セ・リーグに大きな衝撃を与え、渡久地はその後リカオンズの優勝の直前に姿を消す。
渡久地対策に追われていた相手に肩透かしを食らわせ、リカオンズは勢いそのままに日本シリーズも制した。
渡久地のオールスターでの活躍は日本一を見据えたうえでの布石なのだった。
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