男鹿は父のことを尊敬していたが、裏切られた気持ちになり、防医大に入校してきた。
そのことを男鹿から打ち明けられたがその話をハナレや久保出も聞いていて、久保出が家族も大切にできない人間は医者には向いていない、と男鹿と対立してしまう。
一方で、久保出は父親に暴言を吐いた直後に震災で父を亡くしており、その後悔から家族を許せない男鹿に反発していたようだ。
どちらの肩も持てない賢人は、ハナレにアドバイスを求め、2人を信じて様子を見守ることにするのだった。
そして2年生になり、賢人の下対番・徳川の生意気で自己中心的な態度に手を焼いていた。
どんなに指導しても利く耳を持たない徳川は、挙句の果てには「自分のために医者になる。他人のことはどうでもいい」と賢人に言い放ち、賢人は唖然とするのだった。
最終巻のあらすじを振り返ってみましょう。
目次
良いチームとは何か?
賢人と土居内が医学生が主催するイベントを訪れると、土居内は高校時代にいじめられていた相手と鉢合わせする。
賢人がそのことに気づき、慌てて土居内を呼び戻した。
そこに現れた徳川は、土居内の弱さを嘲笑い、さらにいじめっ子たちが所属するZ医大の偏差値の低さを大声で煽るという性格の悪さを見せる。
グループ討論会が開かれ、多くの講師が集まり、講義をしながら議論が進められる。
テーマは「良いチームとは何か」。
だが徳川が周囲を見下すため、議論は次第に口論へと発展しそうになる。
怒った賢人が徳川を諌め、場の空気が険悪になる中、土居内が大人の対応で収めた。
しかし徳川は意に介さず、講義後にはZ医大の国家試験の合格率が防医大より低いことを知り、喜んでいた。
それを見たZ医大のいじめっ子たちが因縁をつけてくるのであった。
賢人と徳川の違いは?
解剖学実習が始まり3ヶ月が経過。
周りの同期が成長しているなか、賢人は自分は前に進めているか自問自答していた。
土居内は賢人と徳川の違いについて考え、徳川と同じ高校の先輩から彼の過去を聞くと、徳川には東大卒の弁護士の兄がいることがわかった。
兄は頭脳明晰で人気者、生徒会長も務めた理想的な人物である一方で、徳川は兄とは似ても似つかない。
そんな話をしていると、同期から「徳川がZ医大の学生を殴った」との連絡が入る。
徳川に話を聞きに行くと、外出禁止2週間の処分を受けることとなったが、正当防衛だったと主張し、悪びれる様子はない。
徳川は賢人にその正当防衛の証拠として先に手を出された様子の動画を見せたが、賢人は医師を志す者が他人に怪我を負わせたことに憤慨する。
しかし徳川にとって医師とは、人生において「勝ち組」になるための道具でしかなく、人格者であろうとは考えていない様子。
賢人は「良い医者」とは何か、そしてかつては自力で生きていけるように医師を志していた自分と徳川の何が違うのか、悩むことになるのだった。
献体にも名前や人生があったこと
解剖学実習が終わり、剖出したご遺体を棺に移し、蓋を閉じる。
そこには「故此前和夫柩」と、献体をした方の名前が記されていた。
賢人は、ご遺体には名前があり、それぞれの人生があったのだと強く感じるのだった。
徳川の過去
徳川はかつて東大に合格し周囲からチヤホヤされる兄に勉強で負けまいと東大を受験したが、自分は不合格だった。
兄には強がり、もともと防医大が第一志望だったと語る。
そんな過去を思い返しながら教室に入ろうとしたところ、徳川は同期が自分の悪口を言っているのを聞いてしまう。
徳川はその様子をスマホに録音し、自室で防医大のハラスメントを告発するブログを書き始めるのだった。
献体した方からの手紙
白木教授から解剖班の代表者が呼ばれ、献体した方からの手紙が渡される。
手紙を読み始める賢人たち。
賢人たちが解剖した此前は、母親を介護し、看取った後に献体の意思を知って自分も献体することを決意。
防医大に赴いた際、学生たちの姿を見て「この子たちの役に立てるのなら」と清々しい気持ちになったと手紙に記されていた。
賢人たちは改めて一人の命を背負ったことを実感するのだった。
人生観を変えた解剖実習
解剖実習が終わり、ハナレが「お疲れさま会」を開き、班のみんなが集まる。
賢人たちは人間として一回り成長していた。
男鹿は久保出に謝罪し、久保出もまた謝罪しながら、自分には両親がいないことを明かした。
ハナレが場を設け、見守ってくれたことを振り返り、賢人は「ハナレのような人が良い医者になるのだろう」と感じる。
一方で、久保出と男鹿は、徳川は医師には向いていないと考えていた。
しかし賢人は解剖実習を通して人生観が変わったことを明かし、徳川もまた変わるのではないかと見捨てないのだった。
徳川の改心
徳川は自分が書いた告発ブログを見ながらニヤついていた。
そんな中、学生証を無くしたことに気がつくと、徳川は同期が自分への嫌がらせで学生証を盗んだと思い込み、喧嘩に発展する。
そこへ賢人が通りかかり、状況を把握すると徳川の言い分を否定し、教室を探し始めた。
徳川は犯人が逃げたと決めつけるが、賢人は徳川の一日の足取りを追うことに。
そしてハナレが一緒に協力して探すことを提案し、皆で協力して徳川の学生証を探し回る。
最初は協力を拒んでいた久保出もハナレに説得されて考えを改め、自室で告発ブログを書いていた徳川を連れ出して賢人たちの姿を見せる。
久保出は、徳川が兄に対して劣等感をこじらせていることを指摘すると、徳川は「自分が人生の勝ち組になるためには医師という肩書きが必要だ」と逆ギレ。
だが賢人はそんな徳川を昔の自分と重ねて理解を示しつつ、防衛医大での学びを通じて一人で医者になることの困難さを痛感したことを諭す。
一人でなら行きたいところに早く行けるが、仲間の存在があれば一人では到達できない場所へ行ける―。
その言葉が初めて刺さったのか、無言の徳川。
すると、徳川がいつも相手をしている野良猫が徳川の学生証をくわえて姿を現した。
結局、学生証は盗まれてなどいなかったのである。
徳川は疑いをかけてしまった同期への言い訳を考え始めるが、賢人は上対番として謝罪の面倒も見る姿勢を見せた。
そして、徳川は小声ながら初めて賢人に謝意を伝え、書き溜めていた告発ブログも心を入れ替えて消去するのだった。
理想の医師像
防医大2年生では陸上自衛隊の駐屯地で、実弾を使用した射撃訓練を行う。
教官の脅しにも耐えながら、一発一発に集中して撃つが、賢人の横で撃っていたハナレは、全弾を外してしまった。
そのことに気づいた賢人がハナレに問いかけると、ハナレは故郷で隣に住んでいた男性が故郷を守るために銃を取り、そのまま撃たれて亡くなったことを明かす。
賢人は訓練で実際に銃を撃ち、肩の痛みを感じながら、これがハナレの日常だったのだと改めて考えさせられた。
臨床実習を通して将来を考える
時は流れ、賢人たちは無事に4年生になった。
周りが将来の道を考え始める中、賢人はまだ卒業後の進路を決めかねていた。
4年生後期から5年生にかけては、防衛医科大学病院での実習。
病院には内科や外科など複数の科があり、学生は班ごとにすべての科をローテーションで回り、将来の専門を決めることとなる。
久保出は救急を志望、男鹿は海上自衛隊で外科に進むことを決めていたが、賢人は依然として自分の専門を決めかねているのだった。
医官の大先輩
循環器内科の実習で、賢人は一人の患者を担当することになった。
カルテを読み込むと、その患者の予後は良くて半年程度だった。
患者の名前は九門義十郎。
退役した元医官であり、かつては防衛医大の学生長も務め、防衛医学の教科書を作成し、自衛隊衛生の基礎を築いた人物だった。
賢人が九門と二人きりになると、九門は医官の仕事を「この世で最もつまらない」と否定した。
なぜそんな偉大な人物が医官を否定するのか、疑問を抱いた賢人は、九門の真意を確かめようとする。
しかし、その途中で九門の体調が悪化して話すどころではなくなり、賢人は九門の担当を外されてしまうのだった。
大先輩に学ぶ医官の仕事
幸いにも九門は安静を取り戻し、賢人がもう一度九門の担当を希望すると、すると、九門のほうからも賢人を指名していたことがわかった。
九門の元を訪れ、改めて賢人が発言の意図を尋ねると、九門は学生時代から日本における「医官」の在り方を模索していた話を明かし始めた。
九門との交流を深めながら学んでいく賢人。
そしてある日九門は災害派遣の現場で夫婦を看取った際、残された幼い息子が涙を浮かべながら「さいごにパパとママをみてくれてありがとう」と言ってきたことを明かす。
九門にとって、感謝されたくて仕事しているわけでもなく、困っている人を助けるのは当たり前のこと。
医官とは天才でも英雄でもなく、無名の存在で良い―。
これこそが、医官の仕事を「つまらない」と言った真意だった。
と、その時、一人の青年が九門の病室を訪れた。
彼は幼い頃、長野県で被災し、九門に助けられた少年であり、心の支えであった九門にもう一度会うために探し当ててきたのである。
当時両親を亡くしながらも気丈に振る舞っていた少年のことを、九門もまた、今でも覚えていた。
医官は特別な存在でなくても、誰かにとって特別な存在であることはある。
賢人は、いつか自分もそうありたいと感じるのであった。
落第点からの卒業式
そして卒業式を迎えた。
医師国家試験の合否は卒業式の後に発表される。
星は6年間を通じて、皆が人間として成長したと言葉を贈る。
賢人は星に、かつて落第点をつけられたがゆえに成長できたことを感謝するのだった。
同期たちのその後の活躍
15年後ー。
土居内は海自で潜水医学の研究から宇宙との共通点を見つけて、宇宙飛行士になった。
歌野や男鹿、久保出、美馬らもそれぞれの立場で活躍している。
賢人は9年の義務年限後、「国境なき医師団」へ入団し、現在はクルド人キャンプで活躍中。
そんな賢人の元へハナレが海外派遣の任務でやってきた。
こうして2人は医師として、共に仕事に臨むのであった。
【5巻(完)のまとめ】
周囲を見下す生意気な後輩の徳川の指導に手を焼いていた賢人だったが、人は変わることができると信じて粘り強く接し、自分が実習や同期との交流を通じて得た学びを説くことで、徳川も心を入れ替えた。
4年生後期の病院での実習では医官の大先輩を患者として担当することとなり、医官の仕事とは何かについて学び、自分の目標ができる。
そして無事に皆揃って卒業を迎え、15年後、賢人は「国境なき医師団」のクルド人キャンプで活躍。
ハナレも念願の海外派遣で故郷に戻り、医師として賢人とまた出会うのだった。
【5巻(完)の見どころ】
この巻の見どころは、賢人が生意気な後輩・徳川と向き合いながら「良い医師とは何か」を模索する姿です。
徳川は医師を「勝ち組の肩書き」と捉え、他人を見下しますが、賢人は彼に仲間の大切さを説き、少しずつ意識を変えていきます。
また、解剖実習を通じて献体者の人生に触れ、医師の使命を改めて実感。さらに、偉大な先輩医官・九門との交流を通じ、医官の本質を学びます。
最終的に賢人は「国境なき医師団」の道を選び、15年後、海外派遣されたハナレと再会。

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