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極限状態の中で示される人間の覚悟、絶望に暮れる国民に天皇が示した希望の言葉『日本沈没』14巻【ネタバレ注意】

小学館/ 一色登希彦・小松左京
~前巻のあらすじ~
世界は日本人を受け入れるための代償として、日本という国家のあらゆるものを差し出すよう迫っていた。

政府が返答に困る中、国連は六郎を民間人の代表として結論をだすよう求める。

六郎はこれをあっさりと受け入れてしまうと、そのまま田所と姿を消した。

日本中が理不尽な条件に怒り叫ぶ中、小野寺は六郎不在の民間D計画を指揮することを決断する。

徐々に戻りつつある記憶は、小野寺に現実を受け入れる覚悟を決めさせていた。

14巻のあらすじを振り返ってみましょう。

最期の覚悟

総理大臣として救出条件の受け入れに調印をした緒形は、国民から責められることも厭わず日本へと帰国した。

快晴だったアメリカとは真逆の、やまない雨が降りしきる中、出迎えたD計画メンバーの前で総理としての覚悟を示す。

ところが、小野寺たちがヘリでその場を離れようとしたとき、突然眼前の山が噴火し、緒形総理たちに噴石が降り注ぐ。

最後までその生きざまを見せつけつつ、緒形総理は噴石の直撃を受け命を落とした。

憔悴した廣田官房長官は中田に総理代行を任せようと提案するが、中田はあえて廣田官房長官のバックアップを申し出る。

廣田官房長官が背負った十字架を前に進むチャンスは、今しかないのだ。

誰もが無茶な話だと考える中、廣田官房長官は覚悟を決めて総理代行の任に就くことを宣言した。

極限の狂気

順調に避難者が日本から離脱していく中、キャンプでは不可解な事件が続発していた。

安置された遺体が何者かによって散弾銃で損壊されているのだ。

資材管理を担当する矢崎は、このことを報告するとともに、帯同している脱獄囚の存在に不安を感じていた。

小野寺は自分に自信を持てないことから、投げやりな感情を吐露する。

玲子は目の前の人間が「小野田」であろうと「小野寺」であろうと、自分をないがしろにする彼を一喝した。

小野寺が自らヘリで救助活動に向かった時、突如銃声が鳴り響く。

気が触れてしまった矢崎が、散弾銃で人を撃ち始めたのだ。

子供やマコに銃を向ける矢崎を止めようとした脱獄囚が、次々と撃たれていく。

正論かのように聞こえる身勝手な論理で万能感に浸る矢崎の前に、小野寺が現れた。

半ば英雄とも言える小野寺と対峙することで、自らを社会的弱者だととらえる矢崎は、共感を得ようと目論んでいた。

それを見ているだけの大勢は、狂ったように小野寺が矢崎を殺すよう駆り立てる。

しかし、小野寺は拳で矢崎を制圧することを選択した。

小野寺は矢崎だけでなく、駆り立てた群衆にもきっぱりと宣言する。

命を奪うことも、絶望の果てに好き勝手振る舞った挙句死を選ぶことも、絶対に許さないことを。

晴れ渡る空

海外からきた救助船もまた、過酷な状況の中で日本人を収容するために奮闘していた。

しかし、命が助かれば先に待っているものは奴隷生活だ。

降りやまぬ雨中、世界中に散っていく人々は、すっかり生気を失っていた。

これでは必死になって助ける側も、その甲斐を感じられず、重い空気がただよう。

せめて雨を止ませ、快晴の空の下旅立てば、幾分か気が楽になるかもしれない。

そう考えた小野寺は中田に気象の操作を提案するものの、中田はその案を否定する。

確かにそれは可能だが、環境を人為的に操作したそのツケは、またほかの国が間違いなく負うことになるのだ。

A計画の顛末を持ち出し、過ぎた力がもたらす結末に触れる中で、小野寺は自分がそのプロジェクトに関わっていたことを思い出す。

そんな中、日本の象徴である天皇が、国民への思いを語り始めた。

厳しい現実を受け入れつつも、日本人として胸を張って旅立つよう、穏やかな言葉で語りかける。

それまで沈み切っていた日本人の心に、わずかながら晴れ間がのぞき始めていた。

すると何の因果か空は晴れ渡り、久しぶりの青空が広がった。

収容されていく日本人の目に、生気が戻る。

彼らを待つのは高波荒れる船旅だが、それでも空は晴朗なのだ。

そのころ、中田や玲子は突然小野寺を「キミ」としか呼ばなくなった。

中田も玲子も、自分の名前は自分で思い出せと突き放す。

ここで「小野田」であることを続けるか、自分の名前を思い出すのか、自分で決めればいい。

彼を「小野田」と呼んでいたマコは、その呼び名と共に姿を消していた。

【14巻のまとめ】

救出条件の受け入れに調印をした緒形総理は、覚悟を決めて帰国するも、突然の火山噴火に見舞われ命を落とします。

小野寺たちは人の狂気が生き死にを左右するような事態に陥るも、断固として脱出作戦を遂行していきました。

先への不安と絶望から生気を失った日本人に向けて、皇居からの言葉が届けられます。

晴れ渡る空に力を取り戻した彼らは、力強く旅立っていきました。

そんな中、マコが姿を消したことを知った小野寺は、自分を「キミ」としか呼ばなくなった中田と玲子によって、ついに記憶を取り戻すかどうかの岐路に立たされていました。

【14巻の見どころ】

この巻の見どころは、極限状態の中で示される人間の覚悟と、絶望を超えた希望の光です。

緒形総理が救出条件の受け入れに調印し帰国する場面では、命を懸けて国民に向き合う覚悟が描かれています。

国民から責められることも覚悟の上――その姿に、国家指導者としての重い責任が表れています。

突然の火山噴火による死は、国家指導者の運命の非情さを印象づけます。

最後まで生きざまを見せつけた緒形総理の姿は、読者の心に深く刻まれます。

一方、矢崎の狂気による混乱の中で、小野寺が拳で制圧し命を奪わず秩序を守る姿は、絶望の中でも人間としての理性と決意を貫く瞬間として緊張感を生みます。

群衆が殺すよう駆り立てる中、小野寺は断固として拒否します。

命を奪うことも、絶望の果てに死を選ぶことも許さない――その宣言は、混乱の中でも人間性を守ろうとする強い意志の表れです。

さらに、天皇の言葉と共に晴れ渡る空の描写は、絶望の底にあった日本人に希望を取り戻させる場面として、物語に大きなカタルシスをもたらします。

穏やかな言葉が人々の心に晴れ間をのぞかせ、それと呼応するかのように空が晴れ渡る――この奇跡のような瞬間は、救出される人々の心情と共に、読者の心も揺さぶります。

そして、マコが姿を消し、小野寺が記憶を取り戻すかどうかの選択を迫られる展開――彼の内面の葛藤が、次巻への期待を高めます。

混乱と絶望の中で見せる人間の覚悟と理性、そして希望の光が鮮明に描かれる、緊迫と感動の巻となっています。
管理人

次巻へ続きます。

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