女性として教授に上り詰める野望をもつ加藤が天才外科医の朝田とオペ看のプロであるミキをスカウトし、バチスタチームの結成を目指す。
朝田はさっそく医局に染まり切っていない研修医である伊集院に目をつけ、強引ながら指導をしていく。
常に患者のためにまっすぐで医局に問題を起こす朝田を野口教授が切り離そうとする一方で、その腕に惚れたERの鬼頭教授は朝田を手に入れようと画策する。
野口も加藤ではなく、ミキの兄にして朝田と因縁のある北日本大の軍司を推薦することに決め、一度は野望が終わったかに見えた加藤。
しかし「選挙制度そのものを変える」という抜け道を見出して選挙改革草案を作る一方、軍司が論文のためにバチスタを後回しにしていた患者も朝田の新しいバチスタ術式とともに救ってみせた。
選挙改革草案は「加藤が負けたら朝田はERに移籍する」という条件付きで鬼頭が教授会に通し、教授選が幕を開ける。
首の皮一枚つながった加藤だが、教授選では横綱相撲を見せる野口と、鬼頭自らが擁立した最強の候補者、国立笙一郎が立ちはだかることとなった。
国立にUCLAへの留学を持ち掛けられた朝田は、行かないでほしいと願う加藤たちをよそに、UCLAに行くことを宣言する。
そして朝田に続き、伊集院も加藤の元を離れて軍司についた。
朝田への強い劣等感があった軍司も、朝田への思いを吹っ切って伊集院を育てることに全力を注ぐことを決意する。
そんななか、軍司と伊集院が担当するVIP患者の容体が急変し、大動脈解離を起こしてしまう。
加藤と朝田がヘルプに入り、伊集院が嵐の中、転倒事故を起こしながらも決死の思いで血液を運ぶ。
しかしその努力も虚しく、VIP患者を救うことはできなかった。
それでも自分の運んだ血液によって別の患者が助かったのだが、伊集院はまだそのことを知らない。
朝田は打ちひしがれる伊集院に対し、「お前の仕事はまだ終わってない」と指示するのだった。
17巻のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。
目次
遺族への挨拶、そしてバチスタチームに伊集院が復帰
朝田は伊集院に、1人で田原の遺族へ挨拶に行くよう指示する。
どうしても気が重い伊集院。
遺族の顔を見たら、きっと目に焼き付いて離れなくなる。
しかし朝田は、「この先一生、見えない顔を想像し続ける方がずっと恐ろしい」と伊集院の背中を押した。
伊集院は意を決して遺族への挨拶に向かう。
自分になついてくれていた孫は、泣きじゃくっていた。
〈伊集院の目に焼き付く泣き顔 [医龍 17巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
伊集院は担当した患者の死を真っすぐ受け止め、成長していくのだ。
伊集院は自分を指導してくれた軍司に感謝しつつも、患者に全力になるために朝田のしたで励むことを決意する。
〈伊集院は再び朝田に教えを乞うことに [医龍 17巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
バチスタチームは快く、伊集院の復帰を受け入れた。
低下する野口の影響力
軍司が吹っ切れて自分の鎖を断ち切ったことで、野口は教授選では八方ふさがりになり、潮目が変わるのをひたすら待つ。
新しい教授候補もすぐに見つかりはしない。
そんなことを考えながら帰宅した野口は、外交官として働く息子の政之と久々に再会した。
妻の未沙子が妊娠中しており、父が強い権力を持つ明真で最高の医療を受けたいと思っての帰国だった。
一度流産を経験しているようである。
とはいえ、孫ができることを喜ぶ野口は部下を誘って飲み会を開催する。
しかし会場に参加者は少なく、空席が目立つ。
野口の影響力が低下しているのは明らかだった。
妊娠に悩む井坂
バチスタチームに帰ってきた伊集院は、トイレの前で同じ心臓外科の井坂先生が吐き気を催しているところに遭遇する。
通りかかったミキは、すぐにそれが妊娠のつわりであることを見抜いたが、井坂は妊娠を隠そうとする。
忙しい時期に妊娠が発覚すれば周りの迷惑になりイジメの標的になるかもしれないし、そもそも不正出血があり子供もダメかもしれない。
〈妊娠に悩む井坂 [医龍 17巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
加藤のように女を捨ててひたすら働いた人だけが医局で出世できる。でも既に二度流産してしまっており、どうしてもこの子は産みたい―。
そう願う井坂の想いを受け、伊集院は加藤に相談することを考えるが、心臓外科というハードな職場では家庭と仕事の両立は簡単な話ではない。
流産のリスクを抱えながらも働き続ける井坂とは対照的に、野口のコネで好きなように診察を受けられる未沙子。
井坂は赤ちゃんも仕事も諦めきれないままだった。
〈野口の義娘と自分を比較する井坂 [医龍 17巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
シングルファーザーの別府
同じく、離婚してシングルファーザーとなった別府先生も保育園からの呼び出しなど、子育てと仕事の両立に苦労している。
子供のためとはいえ、仕事に穴を空けてはキャリアに影響するのである。
いっそ子供が流れてしまえば…と考える井坂だったが、赤ちゃんが順調に大きくなっていることを知ってまた複雑な胸中に戻るのだった。
別府の苦労は野口にも知れてしまい、野口は当然のように別府をはずす方針を固める。
自分のキャリアの危機を知り、保育園からの電話にビクビクするようになった別府。
そうそう保育園からはかかってこないはずなのだが、運悪く別府の手術中に「子供がケガした」と保育園から呼び出しがかかってしまう。
手術を終えて保育園に急ぐ別府。
子供はちょっと扉に指を挟んだだけで何ともなかった。
〈シングルファーザーの別府 [医龍 17巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
大げさすぎると感じたが、この可愛い生き物には自分しかいないのである。
加藤を嫌う井坂
子供のためにキャリアを諦める方に傾きだした別府は、また別の日に「子供が熱を出した」とベビーシッターから連絡を受ける。
別府は井坂にシフトを頼んで早退した。
その場に居合わせた伊集院は、無理をして働く井坂に対し、加藤に助けを求めるよう提案する。
しかし井坂は過去に加藤が同様の相談を受けたときにその医局員を冷たく見捨てて傍観したことがあることを理由に、不信感を抱いていた。
加藤のように女を捨てることができればと羨む一方で、加藤のことは大嫌いなようである。
政之と未沙子の子供の心臓に異常がみつかる
その加藤は、野口の息子である政之と再会を果たす。
2人は元恋仲であり、未沙子が一度流産していることもあって家庭を持つことに重みを感じている政之は、加藤に未練タラタラだった。
そんな政之は、妻の診察を担当する産婦人科の横光教授に野口と共に呼ばれる。
「胎児の心臓に異常がみられる。出産してもすぐに死んでしまうかもしれない。」
〈野口の孫の心臓に異常が [医龍 17巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
政之は言葉を失うのだった。
家に帰って妻に告げると、未沙子は取り乱す。
翌日。重みに耐えかねる政之は加藤への未練を増し、野口の教授室にある住所録から加藤の電話番号を探してかけようとする。
そのとき未沙子から「病院についた」と連絡が入った。
が、その直後、未沙子が自転車にぶつかって胸をうって倒れたとの知らせが入る。
〈未沙子が事故に巻き込まれる [医龍 17巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
母子ともに救えるか
未沙子はお腹は守ったが、肋骨が2本折れていた。
さらに内部で出血もみられ、担当する井坂は手術を決める。
未沙子は「何があっても赤ちゃんの命優先で」と告げる。
〈未沙子は赤ちゃんを優先 [医龍 17巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
複雑な思いで受け止める井坂。
簡単な手術のはずだったが、開局すると折れた肋骨が心臓に突き刺さっているのを目の当たりにする。
〈折れた肋骨が心臓に刺さる想定外の事態 [医龍 17巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
うかつに抜くと母体が危険だが、時間をかけてゆっくり処置していては胎児に影響する。
妻の危険な状態であることを知った政之は、助けを求めるべく加藤の電話番号に電話をかけるのだった。
【17巻のまとめ】
遺族への挨拶を済ませ、患者の死を乗り越えていく伊集院はバチスタチームへ復帰。
しかしまだ心臓外科も一枚岩ではない。
妊娠しながら仕事との両立に悩む井坂と、シングルファーザーとして子供の世話に追われる別府。
そんな2人とは対照的に、出産のために義父にあたる野口のコネを使って明真に来た未沙子。
しかしお腹の中の赤ちゃんに心臓の異常がみつかり、さらに未沙子も自転車と衝突して倒れてしまう。
母子ともに救うのは難しい状態。
夫の政之は未だに未練のある元恋人の加藤に助けを求めるのだった。
次巻へ続きます。
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