桜木らのノウハウを引き継いだ龍山高校は進学校へと一気に成長したが、教職員らが影で「女帝」と渾名される龍野久美子が理事長代行となってからは有名私立大学の合格実績がさらに上がる一方で東大合格者は年々減少し、ついにゼロとなってしまった。
この低迷に桜木は龍山高校の理事となり、既存の特進クラスとは別に「東大専門コース」を設置すると独断で宣言、自身の弟子にして龍山高校初の東大合格者であり、現在は桜木の下で弁護士を務めている水野にその担当を命じる。
東大専門コースの門を叩いた気分屋の早瀬菜緒とメンタルの弱い天野晃一郎を迎え、スマホアプリを始めとするITを駆使しながら様々な受験テクニックや勉強法を教えていくことに。
難関大コースの小杉と藤井も東大受験を決意する一方、早瀬と天野は受験マトリクスで自分の勉強すべき範囲と順序を把握。
さらに性格診断で2人とも思い切った自己改革が必要と判断され、英語の効果的な学習も兼ねて早瀬はTwitter、天野はYouTubeを活用したアウトプットを実践することに。
早瀬が文科1類、天野が理科2類の志望に決まり、ここから合格への道を突き進む。
その頃、理事会では抜本的な学校改革を巡って桜木と龍野が舌戦を繰り広げていた。
中学校を新設して更なる進学実績を追求すべきと主張する桜木に対し、龍野は国際社会で活躍できる独創性豊かな人材の育成を掲げて革新的な教育システムに移行すべきと真っ向から対立。
その場で決着はつかず桜木の案は準備に留まることとなるが、龍野は裏ではこの学園の売却を企んでいる様子。
一方、東大専門コースには英語の特別講師である鍋が登場し、早瀬と天野にリスニング対策を伝授し、桜木はその両親に東大を受けさせることに同意させたうえで家庭で守るべき10か条を示した。
そして早瀬と天野は国語の特別講師として新たに招聘された太宰府治のもとで読解力を養うトレーニングが始まり、勉強合宿へと突入。
同じ東大を目指す学生に負けられないという競争意識が芽生えてついに勉強のスイッチが入り、水野から渡されたバカ鉢巻きを身につけて恥や屈辱と言うネガティブな感情をパワーに勉強し始める。
初心に返って小学2年の算数から計算力を徹底的に鍛え直すこととなった早瀬と天野。
そこに数学の特別講師として「数学の鬼」柳鉄之介が再び登場し、LINEのグループを活用した最新式のやり方で2人の計算力を磨いていく。
しかしそこへ天野の母親が突然訪れた。
早瀬と天野はバカ鉢巻きを始めとする屈辱的なアイテムを身につけた状態、果たして天野の母親の来訪をどう乗り切るのか―。
9巻のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。
天野の母親が桜木のもとへ
心配した様子を見に来た天野の母親は、息子がバカ鉢巻やウンコシールを身につけている姿を見て取り乱し、学校に厳重に抗議すると騒ぎ始める。
しかし天野が自ら母親を静止し、めげずに頑張りぬく決意を語りながら心配した母への感謝を口にした。
言葉を失った母親はそのまま引き下がり事なきを得る。
水野はすぐに桜木に報告し、桜木は母親が自分の事務所に来るであろうことを予測。
その読み通り、天野の母親がアポ無しで桜木のもとを訪れるのだった。
過保護で何が悪いのか
息子に反抗されショックを受け、考えもまとまらないまま桜木の事務所を訪れた母親。
桜木はゆっくり話を聞きながら、天野が成長していることを実感させる。
自分が過保護なのがいけないのか気にする母親に対しては「そもそも母親が過保護で何が悪いのか」と持論を展開。
一般家庭で親が子の心配をするのは愛情であり、どこまでが平均なのかという基準などない。見えない常識にとらわれず、自分の思うままに生きればいい。
江戸時代には日本は大人たちがコミュニティのなかで子供たちを教育しながら育てるシステムが確立され、ほぼ全ての階層の子が様々な形で教育を受けられる教育大国だった。
子供のしつけや教育は当時は日本社会全体の義務であり責任とされ、親も子育てに一生懸命、つまり現代の親も過保護くらいでいい。
西洋では学校教育は上流階級の子供に限られていたが、明治時代に富国強兵政策のもと人材育成のために英国の名門校の学校教育を取り入れたことで日本の教育も変わってしまった。
取り入れたモデルはキリスト教の戒律に従い子供を厳しく躾ける、規律重視の管理型教育。
そしていくつもの戦争のために学校は兵士を鍛える軍事訓練の場と化し、戦後の人口の爆発的増加や高度経済成長期も管理型で軍隊式の短期養成が引き継がれた。
その名残は今でも残っており、誰も疑問を持たないまま。
桜木は龍山高校ではこうした軍隊を起源とする伝統を廃止し、合理的で機能的なものにすることを宣言。
桜木の言葉に勇気をもらった天野の母親も、常識にとらわれず思うままに行動することを決意するのだった。
東大数学は中3レベルの基礎で決まる
柳のもとで計算力を徹底的に鍛える早瀬と天野は、ようやく小6レベルをクリア。
東大数学を突破するには中3レベルあれば十分であり、試しに東大の過去問に触れてみると、天野はあと少しで解けるまでの感覚に至った。
東大数学は基礎をしっかり勉強したかどうかで決まる。
数学は積み上げ型の教科であり、途中で積み残したところがあると穴の空いたバケツのような状態となり、わからずにやがて嫌いになってしまう、
わかる、わからないの違いは中学高校の数学の公式が証明できるかどうかであり、証明できればきちんと理解できている証拠。
2人は中学数学を徹底的に復習し、気合と根性で柳の指導についていくことに。
「もともと偏差値が50程度ある2人なら基礎を固めれば偏差値の飛躍的な上昇が期待でき、東大数学にも真っ向から挑めるまでになる」と柳は断言するのだった。
桜木と龍野が再び理事会で舌戦を繰り広げる
桜木が龍山高校の緊急理事会を開き、理事長代行である龍野に学校の廃校と土地の売却という不穏な噂の真偽を問いただす。
龍野は堂々と廃校の噂を認めながら、日本の教育を抜本的に変えるべく通信教育を中心にした学校にする方針を掲げた。
シンガポールを拠点にした投資家が日本の教育に興味を持っており、IT技術を最大限活用した理想の教育を実現するために龍野が龍山高校を売却する形で協力したいというのである。
授業は基本的に在宅で行い、学校は常に開かれた場として科学系の実験などに使う。
生徒が自由に学びたいものを学び、自立自存の精神で世界に羽ばたく若者を育てるのが新たな理念。
話を聞いた桜木が通信教育を理想とする理由を聞くと、龍野は「単純明快で便利だから」と返す。
通学が要らない分時間に余裕が生まれ、校則も不要、さらにいじめもなくなるというメリットをアピールする龍野。
IT企業が経営する通信教育制高校の新入生が4000人を突破するなど、これからの時代を担う新たな教育と豪語し、龍野は理事会での多数派のポジションを取るために理想論に弱い高原を説得しにかかる。
流れを引き渡したくない桜木と校長の奥田が策を考えるが、高原はその場で押し切られて龍野への賛同を表明してしまう。
今度は桜木が追い詰められてしまうのだった。
【9巻のまとめ】
天野が毅然とした態度で母親を制止し、桜木のフォローもあって天野の母親は大人しく引き下がり、事なきを得た。
その一方で緊急理事会が開かれ、桜木と龍野が再び舌戦を繰り広げる。
龍野はIT技術を最大限活用した理想の教育を実現したいというシンガポールの投資家に協力する考えを明かし、龍山高校を売却する方針を掲げた。
龍野が目指すのは通信教育を中心にした学校。
流れを引き渡したくない桜木と校長の奥田が策を考えるも、理事の1人である高原がその場で龍野への賛同を表明してしまい、今度は桜木が追い詰められてしまうのだった。
次巻へ続きます。
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