2年がたち、八雲はより成長した姿を見せる。
かつて助けた者や、遺された家族がたくましく生きていく姿を目の当たりにした。
そんな中、起きた事故で命の選択を迫られる。
DMATとして最善の判断が、必ずしも当事者の望みとは限らないことに八雲は悩む。
4巻のあらすじを振り返ってみましょう。
長谷川の決意
八雲の指示に従えなかった長谷川。
DMATのルールが優先されることは理解している。
だが、自分よりも子供を優先してほしいという母親の切なる願いは、同じ母親である長谷川から冷静な判断を奪ってしまった。
現場で同じことが起きれば、また同じ行動をとってしまうかもしれない。
怖さを知ってしまった長谷川は、DMATを辞めるつもりであることを八雲に伝えた。
八雲達にDMATの出場要請が出る中、長谷川は病院に残っていた。
その時、丸山佑子の母が訪れる。
大切な娘の命が救われたことに、涙を流して礼を伝えた。
長谷川は決意する。
ボロボロになっても立ち向かう八雲を支えることを。
DMATの装備を身に着けた長谷川は現場へと向かっていった。
華やかさの裏側
81歳になる児玉は元スター女優だ。
未だ美しく、気取ったところもないことから、病院仲間からも慕われている。
毎月八雲の診察で薬を出しているが、少しずつ良くなってきているようだ。
児玉は、八雲が最近たくましくなってきたと感じているようだ。
八雲もまた自分の成長に少なからず自信をつけてきていた。
突然緊急地震速報が鳴り渡り、首都圏を震度5の地震が襲った。
DMATにも出場要請が来る。
恵比寿の木造アパートが倒壊したとのことだ。
道は狭く、倒壊の影響で搬出が困難な状態だ。
首都直下型地震が起きた場合、このような木造密集市街地こそが、被害が集中するのだ。
消防やDMATは近づくことさえ難しいだろう。
実際、現場までの道のりは狭く、徒歩でのアプローチを余儀なくされた。
小さなアパートは全員入るのが難しい。
八雲と長谷川が中に入ると、心肺停止から蘇生処置をされている児玉がいた。
しばらく蘇生を試みるが、心拍が戻る様子はない。
八雲にできることは搬送される児玉を見送ることだけだった。
家の中を見渡すと、かつて主演した映画のポスターが貼ってある。
だが、生活は実に質素で生活保護を申請しようとしている様子がうかがえた。
外では華やかに見える児玉だったが、その実楽な暮らしではなかったようだ。
それに気づいてあげられるチャンスはあったのだろうか。
八雲は医師としても人間としても、まだ未熟であることを痛感させられた。
春子の結婚相手
八雲はまだ春子の交際相手が救助隊の桜庭であることを知らない。
桜庭はそろそろ義兄に交際の報告をするべきだと考えているが、春子はまだふんぎりがつかないようだ。
そんな中、春子の家に招かれ、手料理を振舞われる。
2人は身も心も急速に距離を縮めていった。
ある日、春子が八雲の家を訪ね、妊娠を報告する。
驚く八雲に追い打ちをかける桜庭の存在。
春子と桜庭は結婚することになった。
八雲の過去
八雲は子供のころ、父の仕事の関係でフィリピンのルソン島に住んでいた。
両親はこの土地が気に入り、将来の永住を考えるほどだ。
しかし、この地を地震が襲った。
八雲と春子は軽傷で済んだが、両親は重症のようだ。
父に春子を託された八雲は、暴動も起きる中、何とか日本大使館に逃げ延びていた。
だから八雲は今でも地震があると身がすくむ。
八雲と春子、桜庭の3人は八雲家の墓参りをしていた。
両親に春子の結婚と今の幸せを報告するために。
映画館薬物テロ
都庁では東京都防災会議が開催されていた。
伊勢崎もまた、災害時の初動対応の充実を訴えるべく、この会議に参加していた。
インターネットでもこの会議は中継されている。
ある男は自宅でこの中継を見ていた。
机には出来上がったばかりの謎の装置が置かれている。
男はつぶやいた。
そんな努力はたった一人の人間のささやかな悪意に対してでさえ無力だと。
パニック
八雲の幼馴染で元彼女でもある吉岡凛は、看護師の仕事を見つけるべく奥多摩から出てきていた。
どこも人手不足だが経営難が深刻なのか、面接の感触は良くない。
次の面接まで時間が空いた吉岡の目に入ったのは失恋物の映画。
自分も失恋したばかりの吉岡は何気なく映画館に入った。
途中電話が鳴り、廊下で不採用の連絡を受ける。
その時、館内放送が鳴る。
予告テロの対象となったため、避難を促すものだ。
実感のない客に緊張感はない。
だが、次の瞬間、一人の男が苦しみ始める。
一斉にパニックになる館内。
客は一斉に出口に集中し、廊下を群衆が駆け抜ける。
怒号と悲鳴が響く中、群衆に巻き込まれた吉岡は突き飛ばされ、意識を失った。
悪意の正体
現場には東京中のDMATが集められた。
東京は世界で唯一、化学テロ攻撃を経験している都市だ。
こういう事態への備えは充実しているが、DMATの安全が保障されているわけではない。
まだ撒かれた毒物も特定されていないのだ。
八雲は震えをこらえながら、消防たちへの信頼を呼び掛けていた。
避難してきた者たちの除染が順調に進められて行く。
その傍らで一人の男がその様子を満足げに眺めていた。
かつて身勝手なトラブルから有栖川を解雇された事務職員。
この男による伊勢崎への恨みがテロ行為の動機だった。
このころ、ようやくガスの散布機が発見され、噴霧物が特定される。
水にカプサイシンを混ぜた物は、直接死に至るものではなかった。
周到に用意された仕掛けから、パニックを狙った犯行が疑われた。
八雲達の下へ次々と重症者が運ばれてくる。
だが、中毒症状が出ている者はいなかった。
一方で、館内には押しつぶされた患者が自力で脱出できずに取り残されている。
薬物散布がデマだとしたら、一刻を争うのは取り残された者たちだ。
八雲はDMATによる館内での救助活動を進言した。
悪意の矛先
館内で意識を取り戻した吉岡は避難を開始する。
避難する途中で負傷者を発見する。
自分も足を負傷する中、応急手当を施し、ともに避難する。
限界が近い中、DMAT達の館内救助が実行され、幼馴染の八雲が吉岡を出迎えた。
吉岡が目にしたのは、頼りなかったはずの八雲がDMATとして活躍する姿だった。
その後、八雲達の活躍により、数名の重傷者はでたものの、死者は出さずに済んだ。
伊勢崎に恥をかかせるという犯人の目的は達成されず、怒りの矛先は八雲にも向かう。
状況を打開する判断をした八雲に、犯人はまた次の犯行を決意した。
後日、回復した吉岡はそのまま求人を出していた有栖川に就職し、DMATにも参加することとなった。
【4巻のまとめ】
DMATを辞めようとしていた長谷川は、賢明な八雲の姿に立ち直った。
一方で成長著しい八雲だが、まだまだ未熟であることを思い知る。
春子は桜庭の子を宿し、結婚することとなる。
そんな中、伊勢崎に恨みを持つ者が、化学テロを企てる。
八雲の機転で死者を出さずに済むものの、犯人の恨みを買ってしまう。
偶然現場にいた幼馴染の吉岡は有栖川の看護師としてDMATに参加することとなった。
【4巻の見どころ】
この巻の見どころは、長谷川の決意、八雲の成長、そしてテロ事件の緊迫感です。
自らの弱さを知った長谷川はDMATを辞めようとしますが、救われた家族の涙に触れ、再び現場へ向かう決意を固めます。
その姿には、命を守る覚悟の強さがにじみます。
一方、華やかさの裏に孤独を抱える元女優・児玉の死を通して、八雲は自分の未熟さを痛感。医師としての在り方を問われます。
さらに、映画館での化学テロ事件は、犯人の悪意と混乱の恐ろしさを描きながら、八雲の機転が光る展開。
極限状態での彼の判断が多くの命を救い、新たな仲間も加わりました。

次巻へ続きます。
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