医師でありジャズピアニストでもある産科医の鴻鳥サクラは自身も孤児として育ちながら、赤ちゃんが無事に生まれることを最優先し家族の幸せを願いながら常にベストを尽くす。
同僚として働くのはサクラの研修医時代からの付き合いであるベテラン助産師の小松、サクラの同期で無愛想な四宮たち。
1巻では飛び込みでの出産受け入れ、望まぬ妊娠で赤ちゃんを育てられない母親、切迫流産による緊急の帝王切開、浮気した夫から淋病を移された妊婦、身体に傷をつけたくないと帝王切開を拒むストリッパーの妊婦のエピソードが収録。
2巻では妊娠に悩む高校生妊婦、無脳症で一度は赤ちゃんを諦めた妊婦のエピソードを収録。
3巻では四宮を変える原因となった妊婦の喫煙リスク、日本でのライブツアー中に出産することとなったジャズ歌手のエピソード、助産院で産むことのメリットとデメリットが収録。
4巻では交通事故に巻き込まれて緊急搬送され母体と赤ちゃんのどちらの命を優先させるかという究極の選択を迫られる夫の苦悩、妊娠中に夫のDVという呪縛から逃れることができた妊婦、ワクチンさえ打てば防げる風疹の啓蒙エピソードを収録。
5巻では双子のお産と、体外受精・卵子提供による高齢出産のエピソードを収録。
6巻では子宮外妊娠、性感染症のクラミジア、口唇口蓋裂と、サクラも自身の幼い頃に通っていた乳児院のエピソードを収録。
7巻では新生児治療室（NICU）に焦点を当て、助けられるかどうかの瀬戸際で精神的に摩耗してしまった女医と、18トリソミーという染色体異常で長く生きられない赤ちゃんのエピソードを収録。
8巻ではつわり、マタニティブルー、自宅での破水と出産、臍帯脱出のエピソードを収録。そして研修医の赤西ゴローが加わり、サクラたちのもとで産科医としての第一歩を歩み始めます。
9巻では死戦期帝王切開、インフルエンザワクチン接種、出産予定日や赤ちゃんの大きさの捉え方についてのエピソードが収録。新生児科や救急救命科との連携から刺激を受けたゴローは、個人の産科医院を営む父の偉大さを改めて知ることとなり、医師としての自分の進路も決意したようです。
10巻では無痛分娩と、突然の管理入院生活による不安と苦悩を夫婦双方の観点から描いたエピソードが収録。
11巻では子宮内胎児死亡という悲運に見舞われた夫婦、妊娠にまつわる迷信、NICUを支えるのに不可欠な医師たちに関するエピソードが収録。
12巻では産後クライシス、アナフィラキシーショックのエピソードを収録。そして仲のいい妊婦を母子共に助けることができず挫折を味わった下屋が救急救命科へ転科しました。
13巻ではサクラの実の母の回想を含め、子宮頸がんのエピソードを収録。救急救命科へ転科した下屋の代役として、シングルマザーとして子育てと仕事の両立を図る倉崎が登場しています。
14巻では子宮頸がんの続きで広汎子宮全摘出をすることとなった妊婦、ノロウイルス、時間外受診に駆け込み帝王切開になった妊婦のエピソードが収録。
15巻では胎便吸引症候群、双胎一児死亡で出産届と死産届を同時に出すこととなった妊婦のエピソードを収録。さらにNICUには神経質だが仕事は丁寧な工藤が加わり、小松は友人の結婚式でピアニストの山下ジョージと運命的な出会いを果たします。
16巻では帝王切開後の自然分娩（VBAC）、離婚後300日問題、シングルマザーの仕事と育児の両立、子宮筋腫のエピソードを収録。また小松と山下が初デートするまでに接近します。
17巻ではゴローの離島研修のエピソードを収録。離島で地域医療を支える総合医に刺激を受け、医師として成長することをゴローは胸に誓います。
18巻では不育症、1か月健診、稽留流産、聴覚障害の妊婦のエピソードが収録。
19巻のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。
早産で自分を責める妊婦
ある妊婦は早産となり、産まれてきた800gの赤ちゃんはそのままNICUに入ることに。
自分を責める母親は、昔自分が19歳のときに同じように早産で赤ちゃんを産み、育児と看護に疲れて子供を夫と義母に押し付ける形で捨ててしまったことを告白しながら、今産まれた子の顔を見ることができないとサクラに打ち明ける。
子供を捨てた罪悪感に苦しむ母親に対し、「今NICUにいる赤ちゃんは誰のコトも恨んでなんかいません」と言葉をかける。
新生児科の今橋もまた、「育てる自信がないということは、この子のことを真剣に考えてあげているということ。ぼくらと一緒に何度でもこの子のために一生懸命悩んで考えてあげましょう」と母親の気持ちをサポートする。
その言葉に前向きな気持ちになった母親は、積極的にNICUにいる我が子に母乳を届けるようになるのであった。
白川が失敗を糧に新たな道へ踏み出す
新生児科の医師として自分が腕を上げていることに白川は天狗になり始めていた。
新生児仮死の状態で生まれた赤ちゃんにも手際よく挿管して対処するが、酸素飽和度が低いことから新生児遷延性肺高血圧症という診断を下す。
新生児科の工藤と助産師のカオリは別の病気を探った方がいいのではないかと疑問を投げかけるが、白川は自分の意見を曲げない。
しかし翌日、赤ちゃんが呼吸窮迫症候群という肺胞自体が膨らまない状態であることが明らかとなり、白川の見立てと治療法が間違っていたことが判明。
カオリに呼ばれて来た新生児科の今橋は冷静にエコー検査からこの赤ちゃんが心臓の奇形で血流に異常があり、すぐに手術が必要であることを見抜く。
手術が必要でありこれまでの治療に意味が無かったことを知った両親は「医療ミスではないか」と白川を責め、精密検査と手術のために大学病院に搬送することに同意。
今橋は難しい診断で必ずしも医療ミスではないとしながらも、助産師の助言を無視して自分を過信したことへの戒めとして白川に搬送のドクターカーに同乗させ、最後まで見届けるように指示を出した。
搬送先の病院で針のむしろとなった白川。
そこを以前新生児科で燃え尽きて去っていった新井（※7巻参照）がたまたま通りがかり、声をかける。
今は在宅医療の仕事をしながらNICUを卒業した赤ちゃんや子供のケアをしつつ、小さな命を助けた後のことを考えながら働く新井の言葉に刺激を受けた白川は、しばらくの間悩みぬいた末にある決意を固めた。
白川の決意とはこの病院を辞め、大学病院で小児循環器科医として心臓や血管の病気についての診断をして内科的治療を行うプロになるために勉強すること。
今回の失敗を糧に、白川が新たな道に進むことになるのだった。
母体が命を落とす確率の高い羊水塞栓症
お産は100%安全なものではなく、羊水塞栓症という疾患は2万～3万分娩に1件の確率ではあるが、場合分娩や帝王切開の際に大量出血を起こしてショック状態となり、妊婦が死亡する確率が60%程度とされる。
今回、サクラたちは運悪く妊婦が羊水塞栓症で大量出血を起こし、赤ちゃんは産まれたものの母体を助けることができなかった。
その悔しさと悲しみが癒えぬうちにサクラたちは再び羊水塞栓症の症例に当たることとなる。
その患者は助産師として小松と同期であり、子宮筋腫の手術を済ませた後に自然妊娠した武田。
小松と武田は若い頃に一緒に励まし合って来た親友とあり、武田は小松を信頼して安心しながらお産に臨む。
ところが赤ちゃんが産まれた直後に大量出血。
緊急事態とあり救命医の加瀬や下屋、新生児科の今橋らもヘルプに駆け付ける。
それでも出血が止まらず、武田の意識は遠のき心停止。
何とか懸命の処置が功を奏し最終的には子宮を全摘出せざるを得なかったが、一命を取り留めたことにサクラや小松たちは安堵した。
回復して意識を取り戻した武田もまた、当たり前のように赤ちゃんを抱っこして退院していくことがどれほどの奇跡であるかを実感するのであった。
【19巻のまとめ】
19巻では早産で自分を責める妊婦と羊水塞栓症のエピソードを収録。
自分の力を過信するあまり赤ちゃんが心臓に先天異常を抱えていることを見抜けず診断ミスをしてしまった白川は、小児循環器科医を目指して新たな道を進むことになりました。
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