世界一のジャズプレーヤーになることを夢見て日本を飛び出し、ドイツの地に降り立った大。
カタコトの英語だけ、縁もゆかりもない土地で新たな生活が始まった。
アジア人という人種の見えない壁に阻まれる大だが、楽器店の店主ボリスをはじめ現地で出会った人たちの支えを得て、女性の小柄な体格に見合わぬ力強い演奏をするベーシスト、ハンナ・ペータース、性格に難があるものの確かな技術でひたすらに自分のジャズを追求するピアニスト、ブルーノ・カミンスキと、誰とも組まないことを信条としていたドラマーのラファエル・ボヌーを加え、4人でのバンドが結成された。
全員が腕に覚えのあるプロフェッショナルであり、練習初日から本音でぶつかり合う大たち。
しかし4人で臨んだ初ライブは全員が空回りして大失敗してしまい、バンドとして全くかみ合わないなか、ボリスが呼び寄せた甥のガブリエルが4人のもとに乱入し、半ば強引に連れ出すようにツアーに出ることを決めた。
大失敗の悪評が広まる前に、様々な場所でライブを成功させてバンドを知名度を上げるのが作戦。
ライブやSNSでのアピールを重ねながら着実にファンを増やす大たち、バンド名も全員が納得するまで誰の名前もつけない「NUMBER FIVE」に決まった。
ホルスト・ジャズフェスティバルで鮮烈な印象を残した大たちは、有名イベンターのアーサー・ウッドの目に留まりいずれは最大級のジャズフェスである「ノースシー・ジャズフェスティバル」への出演を見据えて知名度を上げていくこととなる。
大は家庭の事情で一時帰国することとなり、その代役としてバンドに入ったのは同年代で華も技術もある天才、アーネスト・ハーグリーブスとライバルとなった。
バンドに復帰した大たちはアーサーの企画で同世代の人気ジャズバンドにしてハンナと確執のある「モーレン5」と同じジャズバーで直接勝負することとなる。
今までになく挑戦的で全力の演奏で観客を魅了したのは大たち、見事に多くのファンを獲得し下馬評を覆すのだった。
9巻のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。
目次
レコーディングが決まる
順調に知名度を上げる大たちに、MNCレコード社の重役・ハインドルがアルバムのレコーディングの話を持ち掛けてきた。
〈レコーディングが決まる [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
費用は全てMNC持ち、発行枚数もある程度は期待できるとあり、大たちにとってはこれ以上ない良い話。
大にとっては人生で初めてのレコーディング、自分の音が残るとあり、期待に胸を膨らませる。
通常はレコーディング作業は何日もかけるものだが、大たちの都合がついたのはわずか2日間。
〈いざレコーディングへ [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
ハインドルが手配したドイツ人エンジニアの待つ、スペインへと降り立つのだった。
エンジニアのノア
スタジオで待っていたエンジニアのノア・ヴァッサーマンは如何にも真面目な職人という気質の男。
〈エンジニアのノア [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
初めて見る若者たちを相手に内心心配するノアだが、レコーディング開始早々に大たちの大迫力の音を聞いてその心配はいい意味で裏切られる。
さらに、これまでのアーティストはプライドが高くエンジニアの自分にはほとんど興味を抱かれなかったのに、大たちはレコーディングチームの一員として対等な意見をガンガン求めてくる。
〈ノアに積極的に意見を求める大 [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
他のアーティストとのギャップに驚きながら、ノアはレコーディングのプロとして大たちの音を最高な形で残すにはどう録ったらよいか、頭を悩ませるのだった。
〈頭を悩ませるノア [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
最高の音を残すために
しかし、悩むには圧倒的に時間が足りない。
初日の12時間はあっという間に過ぎ去り、それなりにGoodなものは録れたが、最高ではない。
テイクを重ねるごとに強くなっていく大たちの演奏を見て悩みぬいた末、ノアは2日目にチームの一員として2つの提案をぶつける。
〈レコードにしよう [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
1つ目は、CDではなくレコードにすること。
あえてアナログなものに残した方が、楽器本来の音に近づけることができる。
ノアの意見を尊重し、2日目のレコーディングが始まった。
そして2日目もテイクを重ね、残り1曲分となった終盤に2つ目の本題を切り出す。
〈最後は一発撮り [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
それは、「ここで最初から最後まで全部をワンテイクで録り直すこと」。
現場の最高の音を残すため、そしてテイクを重ねるごとに熱量が上がる大たちを信じたがゆえの提案。
ミスができない状況だが、ノアを信じて一発録りが始まる。
大たちは見事に完走し、ノアも興奮する最高のものが出来上がったのだった。
〈最高のアルバムが出来た [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
ジャズ界が盛り上がっていく
大たちのアルバムはこれまで出会った関係者たちも注目し、評判を広めていく。
ホルストのラジオ局ではジャズ・フェスティバルを運営したレネがアルバムを流し、サム・ジョーダンは知り合いの雑誌記者に紹介、ハンブルクのボリスもわざわざ店頭で売り、これまで出演したバーやファンの口コミでも広がっていく。
田舎で大と出会った少年(※6巻参照)も音楽店の店頭で大が映ったアルバムを見つけて胸を躍らせる。
〈アーネストもアルバムを出した [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
さらにハインドルはあえてアーネストのアルバムも同時期に売り出しており、2つのアルバムは相乗効果で売れていった。
NUMBER FIVEとアーネスト、どちらが上かという論争でジャズ業界は異様な盛り上がりを見せ始め、ハインドルとイベンターのアーサーはこの2組をあえてロックフェスに出場させるという企画を打ち出すのだった。
〈ロックフェスへの参加企画 [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
ツアー最後は始まりの地、ベルリン
NUMBER FIVEのヨーロッパツアーのラストは、始まりの地ベルリン。
〈ラストはベルリン [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
ブルーノの家に半ば強引に泊めてもらうことにした大は、借りた100ユーロを返そうとする。(※4巻参照)
しかしブルーノはひとつ間を置き、「まだ返さなくていい」と言ってそのままにした。
〈金はまだ返さなくていい [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
まだ口では大をリーダーとして認めたがらないブルーノだが、大の実力や姿勢を心の中ではもう認めていた。
「世界に羽ばたく大に汚点を残してはならない」という想いから、あのブルーノが4人での最初のライブで大失敗したジャズバーに足を運び、もう一度ライブをやる機会を粘り強く交渉し勝ち取った。
〈ブルーノが必死に交渉 [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
もちろんブルーノはそんな努力を大に見せないが、大はブルーノが何かしてくれていることを悟り、ただ感謝を伝えるのだった。
汚名返上、そして大がリーダーに
そしてNUMBER FIVEが大失敗したあのステージに再び戻ってきた。
〈再びあのステージに帰ってきた [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
あれから実力も知名度も上がり、客は満席。
序盤からそれぞれが自分の殻を破る演奏を見せつけるなか、ひときわ大の演奏がメンバーをも圧倒していく。
ハンナとブルーノは大についていくだけでも精一杯、ラファエルが何とか支えられるレベルにまで、大の実力は飛びぬけていた。
〈圧倒的なプレー [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
大の演奏は観客を身震いさせるほど圧倒的な存在感を放ち、そのライブは言わずもがな大成功を収める。
ライブ後にはハインドルからの電話でヨーロッパ最大級のロックフェスにアーネストと共に出場することが決まったことが告げられ、このタイミングで大が提案を切り出した。
「バンド名なんだけど、『Dai Miyamoto NUMBER FIVE』にしよう」
〈大がリーダーに [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
大が一人突き抜けたことを実感していたメンバーから異論は出ず、ロックフェスには大の名前を出して出場することとなるのだった。
日本のレコード社も大に注目
NUMBER FIVEのアルバムがヨーロッパで発売されたのを受け、日本の21ミュージック社の営業・五十貝が遠路はるばる大を訪ねてやってきた。
〈五十貝が大を追ってきた [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
五十貝は大のアルバムを日本でも売る為、大の名前で発行したいと切り出すが、大はあくまで「このアルバムは『NUMBER FIVE』のアルバムです」といって頑なに固辞する。
結局、五十貝は大と契約を結ぶことはできなかったが、確実に成長してジャズ界を変えつつある大との再会に「来てよかった」と感じるのだった。
全員で上がる決意
大が五十貝と会っている間、ラファエルはブルーノとハンナを集めて話を切り出した。
大が一人だけ飛びぬけてしまい、手に負えない。自分たちが全員世界一を目指して上がらないと、大も世界一にはなれない。
〈全員で上がろう [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
そんな決意を胸に秘めながら、ロックフェスに挑むために練習を再開する。
ガブリエルとはここでお別れ
大の決意は、ロックフェスでも王道のジャズで勝つこと。
練習を指揮するバンドのリーダーとしてギャラの支払いなど役目を果たす大は、ツアーを支えたガブリエルへギャラの支払いを行う。
〈また金がない [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
総額は合計で6,000ユーロにもなり、払った後はまた金のない生活に逆戻りとなった。
ロックフェスへの移動も再びガブリエルにお願いしようとする大だが、ガブリエルの方から「世界一のプレーヤーになるんだろ?目を覚ませ」といって自分を雇う金を工面するのを目的にするなと進言。
〈ガブリエルからの進言 [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
ガブリエルは自らクビになることを求め、この日でガブリエルとはお別れとなるのだった。
ロックの大御所に喧嘩を売るアーネスト
ロックフェスの会場を下見に来たアーネストは、そのステージの大きさに武者震いする。
〈ロックフェスの大会場 [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
同じジャズバンドとして出場する大たちには負けられない、そもそもロックバンドにも負けたくない、ここで成功したら―。
そんな考えを持ちながら、次に演奏する有名ロックバンド「Erasers」を見つけ自ら話しかけるアーネスト。
しかしギタリストのイアンは内心、ボーカルのエバンスにいたってはあからさまにジャズを見下しており、アーネストは喧嘩を買うかたちで「少なくともアンタのド肝は抜いてやるよ」と挑発し返すのだった。
〈ロックの大御所を挑発するアーネスト [BLUE GIANT SUPREME 9巻](c)集英社/古舘春一〉
ボーナストラック
ノア・ヴァッサーマン:NUMBER FIVEのレコーディングが彼にとって仕事を続ける良い契機となったことを語る。あれから何度か大のレコーディングを担当したが、やはり大はプロとして自分の意見を尊重してくれるようだ。
【9巻のまとめ】
バンドとしてレコーディングも済ませ、ヨーロッパを股にかけて知名度を上げていく大たち。
その勢いはアーネストとも比較される形でジャズ界を盛り上げていき、ついに大たちとアーネストはヨーロッパ最大級のロックフェスにジャズバンドとして参加することが決まった。
ヨーロッパツアーを終えるころにはバンドの中でも頭一つ飛びぬけて成長した大がバンドのリーダーとして認められ、大たちは「Dai Miyamoto NUMBER FIVE」としてロックフェスに参加する。
一方のアーネストはジャズを見下してきたロック界の大御所に腹を立て、喧嘩を買う形でもめ事を起こすのだった。
次巻へ続きます。
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