15世紀前半のヨーロッパのP王国では、C教という宗教が中心のもと地球が宇宙の中心と広く信じられていた。
その教義に反く考え方は研究するだけでも拷問を受けたり、火あぶりに処せられたりしていたが、12歳の神童ラファウはある日、フベルトという男と出会い、異端である地動説という研究と出会う。
その仮説から導き出される宇宙の姿の合理性と美しさに心を奪われたラファウは、その感動を貫くために異端の研究を続け、そして異端審問官のノヴァクによって処刑されてしまった。
しかし地動説はここで潰えず、ラファウがフベルトから受け継いだ研究資料は山の中に隠された。
ラファウの死から10年後、生きることに希望を見いだせていない代闘士のオグジーは同僚のグラスと共に異端者輸送の警備の任務に当たった際、異端者の男から唆されて異端の研究に手を貸すこととなる。
2人に託されたのは山で見つけたという地動説の研究資料だったが、グラスは命を落としてしまい、文字がろくに読めないオグジーは真理の追究のために全てを捧げる変わり者の修道士バデーニのもとを訪れ、頼ることとなる。
その地動説は異端だが宇宙と地球が調和する心理だと感じたバデーニは、オグジーを観測助手とし、世界を動かすべく2人で地動説の研究が秘密裏に進んでいく。
2人は女性と言う理由だけで表社会に名を残すことができずにいた天才少女のヨレンタと出会い、その協力のもとで宇宙論の大家であるピャスト伯の持つ膨大な資料を手に入れた。
バデーニは地動説の証明が完成し、あとはそれぞれ身を潜めて公表の機会を待つだけとなる。
ところが運命の悪戯か、ヨレンタの父が異端審問官のノヴァクであることが判明し、2人はノヴァクに目をつけられてしまった。
勘のいいノヴァクは2人が潰したはずの地動説の信奉者であることを見抜き、すぐさま馬車でアジトへ迫り来る。
逃げる準備を急ぐバデーニに対し、オグジーはバデーニを逃がす時間を稼ぐために命を捨てる覚悟を固め、ノヴァクらの前に立ちふさがるのであった。
5巻のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。
オグジーの抵抗は一歩及ばず
オグジーは持ち前の動体視力を活かして斬り込み、戦闘に不慣れな新米の審問官を斬り伏せていく。
命をかけて戦う覚悟のなかった審問官たちがやられていくなか、娘に近づいてきた異端者の存在にブチ切れていたノヴァクが立ちはだかった。
しかし元傭兵のノヴァクにも命を投げ捨てた戦い方でオグジーが追い詰めていく。
ギリギリのところで審問官の増援が到着し、オグジーはボウガンの矢で倒れてしまう。
そしてオグジーは異端者の情報を引き出すためにあえて生かされ、拷問にかけられることとなるのであった。
バデーニとオグジーの処刑
意識を取り戻したオグジーから口を割らせるのは困難と判断したノヴァクは、代わりに捕らえたバデーニから口を割らせることにする。
この世界においてC教正統派の目を盗んで逃げるのはほぼ不可能であり、先に逃走を図ったバデーニも捕まってしまっていたのである。
ノヴァクはバデーニの目の前でオグジーを痛めつけ、10年前に自分が担当した少年の異端者(ラファウ)が持っていたネックレスをオグジーが所持していたことから、地動説に関する資料も引き継がれているという確信のもと、資料の在りかを吐くようにバデーニに迫る。
資料は入念に全て燃やしたと答えるバデーニだが、オグジーに対する凄惨な拷問を目の当たりにし、さすがに心が痛んだのか資料があった石箱の在りかを吐いてしまった。
ノヴァクらによって石箱は発見され、12歳の少年から端を発する異端の研究もここで潰えることとなる―。
死を受け入れたバデーニとオグジーに真理を追究したことへの後悔は全くなく、美しい星空の下で首吊りの刑に処され、命を落とす。
しかしバデーニは予防策を仕掛けており、運が良ければオグジーがしたためた文章が復元され、それを読んだ人にその感動が伝播すれば地動説は後世に残るかもしれないという微かな希望が残っているのであった。
ヨレンタも異端として狙われてしまう
異端審問官の捜査はヨレンタにも及び、ノヴァクのことを快く思っていなかった助任司祭のアントニはヨレンタを異端者として拷問することを決定する。
たとえヨレンタが無実であろうと、娘を異端者として処刑することでノヴァクを失墜させるのがアントニの狙いである。
人を痛めつけることに抵抗を覚えていた新米の審問官が見かねてヨレンタを逃がしたが、C教として正しくあろうとした結果彼はアントニに火あぶりで処刑されてしまった。
アントニはその焼死体をあえてノヴァクに見せ、「娘が異端者として捕まり、脱走を図ったので処刑された」と吹き込む。
形見として渡された手袋はかつてノヴァクが娘に贈ったプレゼントであり、サイズは合わなかったが2人の愛の絆。
娘の死を悟ったノヴァクは絶望に突き落とされ、1人泣き崩れるのであった。
バデーニがかけていた保険が地動説を繋ぎとめる
ノヴァクがバデーニたちに目をつけるきっかけとなった匿名の通報は、クラボフスキによるものだった。
異端思想と思われる宇宙論の本は彼が拾ったピャスト伯の執筆物であり、クラボフスキはひょっとすると自分の通報がバデーニを死に追いやってしまったのではないかと感じていた。
そんなある日、クラボフスキはバデーニが生前にしたためていた手紙を受け取る。
そこには自分が知りたかった先人の詩と共に、バデーニからの心からのお願いが書かれていた。
それは「貧民が訪ねて来たら応対してほしい」というもの。
その数日後にはオグジーから施しのパンをもらえなくなった貧民たちが、バデーニからの言いつけどおりにクラボフスキのもとを訪れた。
クラボフスキは異端者とされたバデーニからの依頼に迷いつつも、「応対するだけなら」と貧民の求めに応じ、地下のある場所へと案内される。
すると貧民たちはバデーニから言われたとおりに次々と自分の頭髪を剃っていく。
クラボフスキが目にしたのは、貧民たちの頭に刺青として入れられた文章。
全部で60ページからなる内容は、バデーニが保険として希望を託していたものであった。
バデーニの言葉に突き動かされるように、今度は自分が世の中を変える使命を負う番だと感じたクラボフスキ。
こうして地動説は希望を繋ぎとめ、25年の月日が流れた後に再び物語が動き出すのであった。
【5巻のまとめ】
ノヴァクによってバデーニとオグジーは処刑されてしまった。
ノヴァクの娘のヨレンタも関与を疑われて助任司教のアントニによって処刑対象となり、寸でのところで逃亡に成功したものの、ヨレンタが死んだと思い込んだノヴァクは絶望の淵に立つこととなる。
そしてバデーニも万が一の場合の保険として貧民たちの頭に刺青として資料を残しており、繋ぎとめられた地動説の光は25年の時を経て再び輝き出すのであった。
次巻へ続きます。
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