女性として教授に上り詰める野望をもつ加藤が天才外科医の朝田とオペ看のプロであるミキをスカウトし、バチスタチームの結成を目指す。
朝田はさっそく医局に染まり切っていない研修医である伊集院に目をつけ、強引ながら指導をしていく。
常に患者のためにまっすぐで医局に問題を起こす朝田を野口教授が切り離そうとする一方で、その腕に惚れたERの鬼頭教授は朝田を手に入れようと画策する。
野口も加藤ではなく、ミキの兄にして朝田と因縁のある北日本大の軍司を推薦することに決め、一度は野望が終わったかに見えた加藤。
しかし「選挙制度そのものを変える」という抜け道を見出して選挙改革草案を作る一方、軍司が論文のためにバチスタを後回しにしていた患者も朝田の新しいバチスタ術式とともに救ってみせた。
選挙改革草案は「加藤が負けたら朝田はERに移籍する」という条件付きで鬼頭が教授会に通し、教授選が幕を開ける。
首の皮一枚つながった加藤だが、教授選では横綱相撲を見せる野口と、鬼頭自らが擁立した最強の候補者、国立笙一郎が立ちはだかることとなった。
国立にUCLAへの留学を持ち掛けられた朝田は、行かないでほしいと願う加藤たちをよそに、UCLAに行くことを宣言する。
そして朝田に続き、伊集院も加藤の元を離れて軍司についた。
朝田から学んだ様々な知識と経験は伊集院を急激に成長させていたが、誰でもできる正しい手術という軍司の理念には反するもの。
そしてVIP患者の手術を軍司が執刀することとなり、伊集院がその助手を務めることとなる。
難しい手術に軍司はどう挑むのか。
14巻のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。
絶対に失敗の許されない手術でミスが…
家族4人が交通事故でERに運び込まれてきた。
4人ともそのまま緊急手術。
鬼頭が祖母、朝田が子供、国立が母親、権藤が父親を見ることとなった。
同じころ、軍司と伊集院は野口がしっかりと監視するなか、田原の手術に臨む。
〈野口が手術を監視 [医龍 14巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
一分の隙も見せないといつも通り無難な手術に徹する軍司と、軍司を飼いならすためにつけ入る隙を探す野口。
手術室は異様な緊張感に包まれていく。
そして不測の事態が起こる。
軍司が超音波メスでグラフトを採取する際に若干の傷をつけてしまい、それに第一助手の木原が気づいた。
〈木原がミスに気付く [医龍 14巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
木原は軍司の顔を守るために自分のミスだと申告し、泥を被る。
野口からの心象は悪くなったが、軍司のことを守った。
これでもうミスは許されない―。
そんな矢先、今度は木原が誤って心臓の動脈を挟んでしまい、ここにもグラフトを繋げる必要が出てしまった。
〈今度は木原がミス [医龍 14巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
伊集院が修正プランを提言する
田原は酒とタバコのせいでグラフトを採取できる血管がかなり限られているため、致命的なミスか。
野口が攻め込もうとしたとき、軍司が「これはミスではない」と宣言し、咄嗟に手術プランを修正する。
〈立て直しを図る軍司 [医龍 14巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
「ミスはなかった」と野口を懐柔しようとしたとき、伊集院がそれよりも良い手術プランを提言した。
〈伊集院が意見する [医龍 14巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
軍司は無難な手術を目指す手前、自分の判断だけで医局の秩序と平和を乱す行為を嫌い、伊集院のプランを聞くまでもなく跳ねのける。
それでも伊集院は自分の判断が間違っていないと確信し、木原の顔を立てつつ提言を続ける。
軍司は徹底してリスクを避けるために伊集院のプランを却下しようと説得するが、伊集院は「自信がある」と真っすぐ前を向いた。
軍司の心の底にあったのは朝田への劣等感
仮に伊集院のプランを採用したとして、伊集院が失敗すればフォローはできない。
「朝田は今、急患を診ている。ここには来られない。君のフォローはできないぞ」
〈伊集院を突き放す軍司 [医龍 14巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
そう言って軍司は伊集院を切り捨て、退出を命じる。
そのとき、軍司が朝田に言及したことに隙を見出した野口が「もう少し伊集院の話を聞きたい」と口を挟む。
軍司が「朝田」と呼び捨てにしたことにも違和感が残る。軍司は朝田に個人的な強い感情を抱いている…。
〈野口が軍司の弱点を見つける [医龍 14巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
野口に薦められるがまま、自分のプランの詳細を説明する伊集院。
確かに伊集院のプランは発想が素晴らしい。
それでも軍司は頑なに否定し、「朝田先生の指導を受けたとはいえ、伊集院は経験不足だ」と突き放す。
「では、朝田先生を呼びましょうか」
そう言って野口が室内の電話に手を伸ばし、揺さぶりをかける。
朝田がここに来る…?
軍司は自分をしっかりと保つために、自分の判断の正当性を主張する。
「私は私の理念を貫けば、決して朝田に負けた事にはならない!」
〈軍司から出た綻び [医龍 14巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
手術室の扉が開いたとき、軍司はそう口調を強めたが、ヘルプに来たのは朝田ではなく岡島だった。
軍司の内面にある朝田への強い劣等感を見抜いた野口は、教授命令として伊集院のプランを指示する。
「研修医に手術ミスをフォローされたとあっては、教授選に影響するよね?」とこっそり口止めの必要性を軍司に吹き込む野口。
〈ミスの口止めを吹き込む野口 [医龍 14巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
揺らぐ軍司は伊集院のフォローをしながら、朝田と仲がよかった頃や自分の過去に想いを馳せていく。
軍司の決意
高齢出産で自分を産んだ母は病弱で周りよりも老けており、早くに亡くなった。
そして父の愛人とミキと同居することになるが、自分の母より若い愛人のことや、その女を選んだ父のことが嫌いだった。
朝田もまた家族はなく、帰る家もなかった。
朝田と2人で海へ行ったときには、朝田との間には家族のような絆が生まれていたはずだった。
しかしひたすらに腕をあげていく朝田と、医局員として出世していく軍司は進む道が異なっていき、北日本大でのあの事件が起きる。
自分は本当は朝田のことが好きだった―。
〈軍司が抱いていた朝田への想い [医龍 14巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
朝田を忘れないために明真に来て、もう一度自分の存在を朝田に刻み付けたかったが、朝田の眼中に自分はもう入らない。
代わりに、朝田の下にいた伊集院がいま迷い子のように自分の手を掴んでいる。
自分にできることは伊集院を正しい道へ導いてやることだ。
吹っ切れた軍司は凡庸という鎧を捨て、全身全霊で伊集院を指導することを決心する。
〈伊集院の指導を決意する軍司 [医龍 14巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
伊集院が見ている手前、野口が言うような口止めという卑劣な行為はできない。
しかし手術ミスが露見してしまうと、教授選に響く上にミスをした木原も守ることはできない。
それでも軍司は教授選も木原も捨てることを決断し、伊集院への指導を始める。
自分が見捨てられたことが信じられず、軍司のことを信じたい木原は、必死にすがるのだった。
〈軍司に捨てられた木原 [医龍 14巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
【14巻のまとめ】
VIP患者の手術中に起きた些細なミス。
木原が軍司の顔を立てるために自ら泥を被るが、咄嗟に手術プランの変更を提言する伊集院。
無難な手術を掲げる手前、伊集院の提言を跳ね除ける軍司だったが、心の底に朝田への強い劣等感があることを野口に見抜かれてしまう。
朝田への思いを吹っ切った軍司はこれからは伊集院を育てることに全力を注ぐことを決意するのだった。
次巻へ続きます。
この漫画をもう一度読みたい方はこちら
全巻まとめに戻る
-
-
参考天才外科医と共に腐った医局に改革を『医龍-Team Medical Dragon-』全25巻のあらすじ
続きを見る