甲賀卍谷と伊賀鍔隠れに潜む一族は、ともに服部半蔵に率いられる忍者群同士でありながら、源平の昔より数百年、互いに憎悪を抱く不倶戴天の敵同士でもあった。服部の統制下、両門争闘の禁制によりかろうじて和平を保っていた。そのような中、甲賀組の首領甲賀弾正の孫弦之介と伊賀組の頭目お幻の孫娘朧は恋仲にあり、両家の縁組がすめば長きに亘った甲賀と伊賀の確執も解けるかと思われた。
そんな事情を知ってか知らずか、慶長19年4月末、両首領を駿府城に呼び出した徳川家康と半蔵(2代目)が甲賀・伊賀の忍びに与えた使命は実に戦慄すべきものであった。徳川第3代将軍となる後継者選びに悩んでいた家康は、天海の提言を受け入れ、その選定を甲賀対伊賀の忍法争いによって決めることにしたのだ。
方法はそれぞれから10人ずつの「選手」を出し、最後まで生き残った者が託された巻物を再び家康の前に持ち帰ること。後継者は、伊賀が勝てば竹千代、甲賀が勝てば国千代と決まる。甲賀・伊賀とも選ばれた10人は皆、驚くべき肉体や技を持った者ばかり。そして、その中には祝言間近の弦之介と朧の名もあった…。
運命を引き裂かれた忍者同士の凄惨な殺し合い、その果てに待つ結末とは―。
さっそく、1巻のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。
目次
甲賀卍谷衆と伊賀鍔隠れ衆の御前試合
慶長19年4月、徳川家康は柳生宗矩と服部半蔵の2人の立ち合いのもと、甲賀卍谷衆と伊賀鍔隠れ衆の御前試合を開いていた。
甲賀卍谷衆からは頭領の甲賀弾上と風待将監が、伊賀鍔隠れ衆からは頭領のお幻と夜叉丸が対峙している。
巻きつけた巨大な岩を切断するほどの威力を持つ細い糸を武器とする夜叉丸に対し、風待は蜘蛛のような身体から粘着力のある痰を吐いて夜叉丸の腕を封じて対抗。
長らく宿敵として争い続けてきた甲賀と伊賀、「不戦の約定」が結ばれた両者が御前試合に呼ばれたのは裏の理由があるのだった。
三代目将軍を決める代理戦争
徳川の三代将軍を決めるにあたり、徳川家は長男の竹千代派と次男の国千代派に分裂していた。
幕府後見人の南光坊天海は、代理戦争として甲賀と伊賀の忍者を使った10番勝負を提案。
家康は御前試合の場で「不戦の約定」を解くことを宣言し、弾正とお幻にそれぞれ巻物に10名の名を連ねるよう指示する。
甲賀は次男国千代、伊賀は長男竹千代に命運を託し、双方の殺し合いの末にこの巻物を持って生き残った者を勝者とすることが決まった。
選出された10名はそれぞれ次のとおり。
<甲賀卍谷衆>
・甲賀弾正
・甲賀弦之介
・地虫十兵衛
・風待将監
・霞刑部
・鵜殿丈助
・如月左衛門
・室賀豹馬
・陽炎
・お胡夷
<伊賀鍔隠れ衆>
・お幻
・朧
・夜叉丸
・小豆蠟斎
・薬師寺天膳
・雨夜陣五郎
・筑摩小四郎
・蓑念鬼
・蛍火
・朱絹
頭領同士の相討ちで殺し合いの火蓋が切って落とされる
弦之介と朧は不戦の約定により両一族の平和と発展を願う恋仲同士。
しかし駿府城外の川のほとりで甲賀と伊賀の殺し合いの火ぶたが切って落とされることとなる。
弾正が不意打ちで吹き矢をお幻の首に打ち込み、お幻も刺された針で弾正を刺し殺す。
頭領同士の相討ちに始まり、お幻は死ぬ間際に巻物を使役する鷹に伊賀のもとへ持ち帰らせるのだった。
情報戦を先に制した伊賀が動き出す
その頃、弦之介は鵜殿を従者にしながら朧との結婚祝いを控えていた。
朧は生まれついての「破幻の瞳」を持ち、その目で見た忍法を無効化する不思議な力を持っているようだ。
と、そこにお幻の使役する鷹が巻物を持って現れ、朧を除く伊賀のメンバーはその内容を知ることとなる。
殺し合いの火ぶたが切って落とされたことを知るのはまだ朧以外の伊賀の者たちだけ―。
何も知らない弦之介と鵜殿はそのまま伊賀の里へと誘い出されてしまうのだった。
甲賀の風待と地虫が討たれる
争いを好まぬ朧には知らせずに作戦を練る伊賀のメンバーたちは、まず御前試合に出てもう1つの巻物を持っているであろう風待を狙うことに。
同日夕刻、甲賀の地虫十兵衛は籠に乗って移動しているところを伊賀のメンバーに偶然補足され、襲撃を受ける。
伊賀の参謀役である天膳は地虫を拷問して甲賀のメンバーが使う忍法などの情報を吐かせようとするが、地虫は四肢のない身体ながらも食道に隠した槍の穂での不意打ちで天膳を返り討ちに。
そして得意である星占いで出た不吉な予兆を心配して先を急ぐ。
他方、巻物を持って走る風待は、伊賀のメンバー4人に狙われてしまう。
風待は口から吐いた蜘蛛の糸で相手の動きを封じようとするも、伊賀の小豆・小四郎・蓑念鬼・蛍火の連携によって致命傷を負った。
風待はその場に居合わせた地虫に巻物を託し、討たれてしまう。
そして巻物を持って走る地虫もまた、殺したはずの天膳に道を阻まれ、討たれてしまうのだった。
狙われた弦之介と鵜殿
天膳たちは地虫から回収した巻物を燃やし、このまま一方的な展開で進めることを画策する。
その夜、伊賀の屋敷ではまんまと誘い出された弦之介と鵜殿を残った伊賀のメンバーがもてなしていた。
伊賀の陣五郎と朱絹は好機とばかりに弦之介らを襲う作戦を立て、鵜殿は座敷牢になっている部屋に閉じ込める。
柔軟性に富む肉体で座敷牢を難なく脱出する鵜殿に対し、朱絹は色仕掛けで鵜殿に忍法勝負を挑むことに。
勝てば美女である朱絹を一晩の妻にできるとあり喜んで誘いの乗る鵜殿だが、朱絹の身体から血が霧のように吹きだす忍法を見てゾッとする。
そしてその頃、まだ事情を知らない朧も屋敷を包む不穏な空気を察知するのだった。
危機に気づいた鵜殿までもが討たれる
陣五郎がナメクジのように身体を変化させる屋敷の天井を伝い弦之介の部屋に忍び寄っているのを見抜いた朧は、「破幻の瞳」で陣五郎の忍法を破り、身体をナメクジ状態にしたまま放置する。
朧はその付近で忍法勝負を始めた朱絹と鵜殿を仲裁し事なきを得るが、鵜殿は朱絹の殺気が本物であったことから異常事態を察知していた。
他方、身体を元に戻すために苦しみながらも水場を目指して這い続ける陣五郎。
鵜殿は弦之介のいる建物から何者かが這い出た跡を見つけ、滝の手前で陣五郎を発見する。
陣五郎が弦之介の暗殺を企てたことを見抜いた鵜殿はそのまま陣五郎を拷問し、甲賀と伊賀の不戦の約定が解かれた事実を知った。
しかし滝の水しぶきで生気を取り戻した陣五郎は脱出を図る鵜殿の体内に侵入し、内側から鵜殿を窒息死させる。
こうして甲賀側はまだ危機を知ることもないまま、4人が討ちとられたのだった。
【1巻のまとめ】
源平の昔より数百年、互いに憎悪を抱く不倶戴天の敵同士である忍者の甲賀卍谷衆と伊賀鍔隠れ衆は、服部半蔵の統制下「不戦の約定」を結び和平を保っていた。
甲賀組の首領甲賀弾正の孫弦之介と伊賀組の頭目お幻の孫娘朧は恋仲にあり、両家の縁組がすめば長きに亘った甲賀と伊賀の確執も解けるかと思われた矢先の慶長19年4月末、徳川第3代将軍となる後継者選びに悩んでいた家康は、その選定を甲賀対伊賀の忍法争いによって決めることにして「不戦の約定」を解く。
勝負のルールは双方から10人ずつの「選手」を出し、最後まで生き残った者が託された巻物を再び家康の前に持ち帰ること。
後継者は、伊賀が勝てば竹千代、甲賀が勝てば国千代と決まる。
甲賀・伊賀とも戦士10人を選び、その中には祝言間近の弦之介と朧の名もあるなか殺し合いの火蓋が切って落とされた。
甲賀弾正とお幻の相討ちに始まり、先に勝負が始まったことを知った伊賀側が仕掛ける。
甲賀の風待・地虫・鵜殿が討たれ、さらに何も知らない弦之介にも危機が近づく。
甲賀側は勝負が始まったことさえ知らないまま、既に4人が討ちとられてしまうのだった。
次巻へ続きます。
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