濃尾で最も有名な剣客である岩本虎眼が開いた虎眼流に容姿端麗で艶やかな空気を纏う伊良子清玄が道場破りに訪れたのが発端で、師範代の藤木源之助と清玄が跡継ぎを争うこととなった。
虎眼の娘である三重と結婚した者が跡継ぎになる状況、源之助は三重に想いを寄せていたものの、虎眼は清玄を跡継ぎに選び清玄は貧しい身分から成り上がるという野心の成就を確信する。
虎眼は門弟たちの眼前で清玄と三重に子作りを命じ、武家社会の慣習として源之助や師範代の牛又権左衛門を始め全員が当主である虎眼の命令に従うしかない状況だが、唯一清玄だけは三重の尊厳を守ったことで、三重もまた清玄に惹かれていくように。
他方、源之助は三重を奪われひどく落胆するが、復讐を挑まれた野試合で偶然にも奥義「流れ星」の骨子となる技法を開眼した。
しかし三重との結婚が決まりながらも調子に乗って清玄が虎眼の妾であるいくとも密通していたことが虎眼にバレたことで事態は急変。
虎眼はいくと清玄への厳しい制裁を行い、ハメられた清玄は両眼球を斬られて失明しいくと共に追放された。
しかし3年後、盲目の者のコミュニティである当道座に入り最高権威である検校の庇護を受ける清玄が復讐の鬼と化し、自分に制裁を課した虎眼流の師範代や門弟、そして虎眼までも次々と殺したことで虎眼流が終わりを迎えた。
虎眼の屋敷は封鎖され、取り残された源之助・権左衛門・三重の3人は清玄への復讐心を燃やしていく。
そして藩の家老である孕石備前守に清玄への仇討願いを提出し、源之助は虎眼流の正当な後継者として清玄との決闘へ。
両者一歩も譲らぬ緊迫した決闘の結果、源之助の左腕が斬り落とされ、助太刀に入って大立ち回りを演じた権左衛門も清玄に敗れてしまう。
片腕を失いながらも手術によって一命を取り留めた源之助は、傷口を見るたびに清玄への憎しみを募らせていく。
同じく清玄に斬られながらも執念で生きていた権左衛門は夜の嵐に紛れて再び清玄の前に姿を現す。
思わぬ奇襲に追い詰められた清玄は雨でぬかるんだ地面の代わりに自らの右足に剣を突き立て、足を犠牲にしながら必殺の一閃「無明逆流れ」で権左衛門を討つのであった。
11巻のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。
目次
孕石備前守が責任を取って自害、源之助と三重は2人だけの極貧生活に
仇討が凄惨な結果となったことの責任を問われ、孕石備前守が自害を命じられた。
武芸師範であった岩本家は家屋敷を没収され男女2人がどうにか食べていけるだけの禄高に降格。
三重はこれまで仕えてきた奉公人への退職金をはずみ、隻腕となった源之助と2人きりで侘しい暮らしをすることに。
2人には既に仇討失敗を受け止め清玄への復讐には拘らずに生きていく覚悟を固めていたが、「再度清玄との決着をつけるように」との命令が下る。
2人は再び武家社会の掟に縛られることとなり、源之助の無くなった左腕の傷がうずくのだった。
舟木流の跡継ぎ争い、千加に想いを寄せる醜悪な頑之助
時は少し遡り、源之助と清玄が舟木一馬・兵馬の兄弟を斬った後。
舟木の第三子である千加の婿と跡取り選びが難航していた。
豪放な気質と怪力を持つ千加に敵う門下生は少なく、互いに想いを寄せあう美形の又八と男女の仲になろうとしたときも、千加の陰核がまるで男子のように勃起。
又八は驚いてしまい、千加は恥ずかしさが勝って思わず手が出た結果、又八に大ケガを負わせてしまった。
人には言えない恥ずかしい秘密を抱えた千加、しかしその様子は同じく千加に想いを寄せる醜悪な門下生、屈木頑之助が屋根裏から覗き見ていたのであった。
跡を継ぐ条件は「兜投げ」を成功させること
頑之助は幼い頃に行き倒れた浪士の孤児として舟木一伝斎に拾われるも、頭が大きすぎるバランスの悪さが災いしてまともに剣を奮うことができず門弟から馬鹿にされて生きてきた。
いじめられているところを千加に助けられたことで頑之助は千加に好意を寄せることとなるが、千加にとっては頑之助は家畜以下の生物として何の想いも抱いていない様子。
千加との結婚が認められるには舟木一伝斎の武勲と同じように空中に投げられた兜を両断する「兜投げ」を達成することが条件。
頑之助も兜投げの試技に名乗りを挙げ、一伝斎は頑之助の参加を認めた。
まともに素振りすらもできない頑之助にできるとは誰も思わなかったが、それでも千加は自分の婿選びの儀式に頑之助が参加することになったことに抗議。
一伝斎は「どのような境遇であろうと一生に一度は自己の運命を覆しうる場に立つことができる」と頑之助にチャンスを与える考えを口にし、3人の高弟と頑之助が兜投げに挑むこととなる。
舟木流を恨み、千加に執着する頑之助
1番手の桑木が失敗、2番手の倉川は2寸のみ、3番手の斎田が兜投げを成功させる。
最後は頑之助の番。
異様な殺気を見せる頑之助をおぞましく感じた一伝斎は、本能的に兜を放るのではなく頑之助に向かって投げつけ、頑之助は兜を顔面に食らって恥を晒す結果となった。
千加はそのまま斎田と結婚することとなるが、正月に悲劇が起きてしまう。
斎田が何者かに両足と顔の皮を斬られて殺害されたのである。
犯人は頑之助。
富士山麓に身を潜めて独自の修行に励んでいた頑之助は、異質な強さを身につけて千加と結ばれることに執着しているのであった。
再び千加の婿を選ぶための兜投げが行われ、名乗りを上げた6人のなかで前年に2番手だった倉川が成功を収める。
しかしその倉川も夜道で頑之助に襲われ、頭部を起点にして地面を転がるように斬りかかる頑之助によって両足を斬られ死亡した。
幼いころから忠長の馬廻役にして槍の名手であった笹原修三郎の従弟である笹原権八郎がこの状況を受けて千加の結婚と犯人への制裁を申し入れる。
頑之助の奇襲を受けて立つ権八郎だが、岩のように固くなった頑之助の背中によって刀は折られて返り討ちに。
「他の男と契れば相手の男が何者であろうと息の根を止める」
強烈なメッセージを残した頑之助。
頑之助と千加の運命は、後に忠長が主催した真剣での御前試合で決することとなるのだった。
源之助を逆恨みした孕石雪千代が返り討ちに
駿河藩の命令によってとある農家の納屋で侘しい暮らしを続ける源之助と三重。
源之助は清玄への復讐を遂げるために鍛錬に勤しみ、三重も源之助を健気に支える。
無いはずの左腕の幻影肢に悩まされる源之助の前に、自害を命じられた孕石備前守の息子雪千代が訪れ、父を失った恨みを源之助にぶつける。
源之助は雪千代を返り討ちにし、家名を汚すことを恐れた孕石家も雪千代の死を病死として処理してお咎めなしとなる。
床の血だまりに鏡写しで映った自分の姿を見て、源之助は左腕の幻影肢の痛みが和らぐのであった。
【11巻のまとめ】
大惨事となった仇討試合の責任を取るかたちで孕石備前守が自害を命じられ、虎眼の家屋敷は没収、源之助と三重は2人きりで極貧生活を送ることとなる。
侘しいながらも源之助は清玄への復讐を遂げるために鍛錬に勤しみ、三重も源之助を健気に支えるのだった。
他方、舟木流の跡継ぎとして舟木千加の婿選びが行われるが、千加に想いを寄せる醜悪な剣士・屈木頑之助が次々と千加の花婿を殺していく事件が発生。
千加と頑之助の運命もまた、後に忠長が開く真剣での駿府御前試合で決まることになるのだった。
次巻へ続きます。
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