右腕が義手である寄生虫を専門とする研究者の紐倉は、内閣情報調査室健康危機管理部門の牧野からの依頼でバイオテロ事件の捜査に協力することに。
紐倉は助手の高家と共に地球から根絶されたはずの天然痘に非常によく似たウイルスをまき散らしてターゲットを次々と殺していた容疑者の動機や手法も暴き出し、事件を解決に導いた。
そんなある日、ある大学の駅伝選手が練習中に急死したことをきっかけに、その選手が通っていた深谷スポーツクリニックが絡む組織的なドーピング疑惑が浮上する。
そのクリニックの顧客リストには男子マラソンのオリンピック金メダリストで国民栄誉賞候補でもある野桐俊の名前もあり、紐倉たちは非正規の手法で野桐のサンプルなどを入手した紐倉はそのドーピングの謎を全て解き明かし、ドーピングの副作用で野桐は既に急性骨髄性白血病になっている事を突き止める。
だが野桐は紐倉の忠告に耳を貸さず、周囲の応援に応えるために大会への出場を強行、結果としてレース途中で体調を崩してリタイアとなるのだった。
また別の日には、外務大臣のもとへ「日米首脳会談を中止しなければ娘を自殺させる」という脅迫状が届き、紐倉が他人を自殺させるウイルスや感染症の可能性について調査することに。
その中で外務大臣の娘自身が脅迫状の送り主であったことや、その狙いがあるアメリカの製薬会社の治験を中止に追い込むことだったことを暴き、見事に事件を解決に導いた。
また別の日には、免疫研究センターでの爆発事件の捜査に協力することとなった紐倉は、その背後に未公開論文の巨大な利権が絡んでいる可能性を掴む。
さらにその論文が捏造であったという密告を機に、その密告者、論文の捏造の真相、そして爆破の犯人を突き止め、事件を解決に導いた。
そして今度は国際テロ対策の情報担当・米谷の死により、彼がバイオテロを画策していた可能性について、専門家として調査に協力することに。
彼の部屋には無限の変異を持つ珍しい蝶・アグリアスの見事な標本があったほか、趣味にしては仰々しい実験器具の数々、そして南米や東南アジアのテログループに近い人物とも頻繁にやり取りしていたという情報も。
果たして米谷はテロを画策していたのか、それとも無実なのか―。
4巻のあらすじを振り返ってみましょう。
目次
無実の死を証明
米谷の部屋からは結局、テロにまつわるような危険なものはなにも出てこなかった。
海外とのやり取りも、蝶がいるようなジャングルにはだいたい反政府組織がおり、地元民の多くは何かしらの関係が出てしまう。
紐倉は、米谷の部屋にあった設備は米谷が犯した別の罪に関係するものと結論付けた。
それは極秘に珍しい蝶を個人輸入し、さらに遺伝子捜査するためのものだった。
「インハンド」4巻©講談社/朱戸アオ
紐倉の読み通り、預かったモルフォ蝶のサナギが羽化すると、羽根の表も裏も美しい青色をした蝶が飛び立っていく。
これで恵良も報われるのであった。
過疎地の村が乗っ取られようとしている？
40年ぶりの村長選挙を控える久地木村で、現職の村長である横井善三郎が全裸になって笑いながら通りを駆け回るという奇行が目撃された。
フィールドワークのため、高家と潤月を連れて久地木村を訪れた紐倉は、民宿を営む楽山から山へと案内されつつ、久地木村の現状について知る。
村長の対立候補は幸田アラタという若者で、バブル期に村に作られたリゾートマンションの理事会長の座を得て乗っ取り、勝手に療養所という名目の宗教施設として運営しているらしい。
幸田の営む「薬師療会」はうつ病をはじめとする各種病気に悩む人をマンションに住まわせて治療しているようだが、どうにも胡散臭く、さらにそのマンションの住人で自殺者が発生。
そして横井が紐倉のもとを訪ね、「幸田が村の乗っ取りを画策している、あいつらに狙われているから助けてほしい」と依頼してくるのであった。
「インハンド」4巻©講談社/朱戸アオ
怪しげな宗教施設の療養ステイに潜入
横井によれば、幸田は二束三文で売られていたマンションの部屋を買い取って自分の信者を住まわせ、マンションの理事会を既に掌握。
そして自分が全裸で村中を走り回ったのも、自分のネガティブキャンペーンを狙う幸田たちに薬物を盛られたのだと主張する。
「インハンド」4巻©講談社/朱戸アオ
話は聞いた紐倉は自ら幸田の運営する薬師療会の療養ステイを体験することに。
紐倉の見立てでは、薬師療会のシンボルマークはメキシコの先住民のアートである「ニエリカ」によく似ており、療法の手口も察しがついているようだった。
「インハンド」4巻©講談社/朱戸アオ
薬物を盛られた高家
高家と共に療養ステイに潜入した紐倉。
マンションの庭には毒や幻覚作用などの効能のある様々な植物が植えられており、元薬剤師である幸田にはそれを操る知識もある。
そしてその晩、マンションの食品庫を調べていたところで高家が突如として笑い出し、ハイになる現象に見舞われた。
「インハンド」4巻©講談社/朱戸アオ
高家を連れてすぐに脱出し、潤月の運転する車に乗り込む紐倉。
何者かが尾行してくるなか、高家は車の中で全裸になるなど、横井と全く同じ奇行に走るのであった。
黒幕のやり口が判明
牧野にも情報を提供して調べたところ、幸田は過去に処方箋のない者に向精神薬を販売して薬剤師の免許を取り消され、それから宗教法人を立ち上げていた。
おそらく、患者を集めて療養と称して薬物を盛り、色々と買わせて利益を得る手口だろう。
また高家の検査の結果、オオワライタケの中毒症状だったことも判った。
「インハンド」4巻©講談社/朱戸アオ
病院では他にも毒キノコであるカエンタケの中毒症状の患者も診療したことがあるらしく、また食品庫には幻覚作用のあるマジックマッシュルームの一種であるヒカゲシビレタケもあり、メキシコのシャーマンやギリシアなどで古代から幻覚作用が儀式として用いられてきた。
幸田は治療のために患者を選別してキノコを盛り、自分を信頼する者には幻覚作用を、敵には毒を仕込んでいる可能性が高いと紐倉は分析するのであった。
紐倉自身も毒を盛られ拉致されてしまう
再び久地木村に足を運び、横井に対して奇行の原因はオオワライタケの中毒症状であったことを伝える。
当日の時系列から逆算するに、横井がキノコを盛られたのは横井の選挙事務所内であった、つまり横井陣営のなかに裏切者がいる可能性が浮上する。
再び楽山荘に滞在して犯人を推理する紐倉たちだが、なかなか手がかりが見つからない。
高家はオオワライタケの中毒症状で前日はほとんど寝ていないため強烈な睡魔に襲われ潤月は楽山に案内されて夜の山へ。
そして1人になった紐倉は幻覚に襲われることとなる。
この楽山こそが裏切者であり、幸田たちへのキノコの供給や横井の食事への混入、当番表の改ざんによる証拠隠滅などを担っていたのである。
「インハンド」4巻©講談社/朱戸アオ
妻ががんになった際、幸田のおかげで妻を晴れやかなまま逝かせることができて以来、楽山は幸田の信者となっていた。
紐倉に盛られたのは平衡感覚の喪失や幻覚作用のあるヒカゲシビレタケ。
実は幸田は初めから今夜高家を熟睡させるために狙ってオオワライタケを食べさせており、狙い通り動けなくなった紐倉を拉致する。
牧野からの電話で目が覚め、紐倉が拉致されたことに気付いた高家は、潤月と連絡を取って通報を指示しつつ、紐倉を追うのだった。
救助され事件解決、しかし…
幸田は紐倉を堕とすため、幻覚作用を利用して療養の儀式を始める。
すると紐倉の奥に眠っていた記憶が呼び起こされた。
蘇ったのは、自分が失った右腕と、その契機となった入谷という男の姿。
「インハンド」4巻©講談社/朱戸アオ
ここで紐倉は高家に救出され、幸田は押収される前に薬物を信者にばら撒いていたものの、あえなく逮捕される。
村長には横井が当選し無事解決となったが、紐倉の脳裏に蘇った記憶が彼を蝕むことになるのであった。
「インハンド」4巻©講談社/朱戸アオ
【4巻のまとめ】
米谷はバイオテロなど画策しておらず、研究者としての情熱から一般的には許されていない遺伝子操作をしていただけであることを解き明かした紐倉。
ある日フィールドワークで向かった久地木村の村長から、村の乗っ取りが行われようとしていると助けを求められることとなる。
乗っ取りを画策しているのが宗教法人を運営する幸田であり、彼が毒キノコやマジックマッシュルームなどを使って信者を操ったり敵を排除していることを突き止め、幸田の逮捕へとつなげた。
だがその潜入捜査の過程で紐倉自身も薬物を盛られ、幻覚で自分が右腕を失った際の記憶が蘇る。
このフラッシュバックが紐倉を苦しめることになるのであった。
次巻へ続きます。
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参考寄生虫専門の天才科学者がバイオテロ事件の解決に奔走する医療ミステリー『インハンド』全5巻【ネタバレ注意】
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