横須賀北高校に転校してきた森 文太郎は根暗で周囲を拒絶していたが、山岳部の宮本に絡まれたことをきっかけに命綱なしで校舎をよじ登り、それ以来登山にハマっていくこととなる。
顧問であり自身も日本有数のクライマーでもある大西先生は単独で命を投げ出すような危険な登り方をしたがる文太郎を気にかけ、登山の基礎や技術を教えながらインドアクライミングの大会に文太郎を出場させた。
そこで文太郎は初心者ながらも見事なクライミングを見せ、以前いた高校ではクラスメイトの自殺現場に居合わせたことから殻にこもるようになったという過去があるものの、クライミングを通じて徐々に人としても変わり始める。
大西先生のもとでクライミングの基礎と技術を学んだ文太郎だが、遭難しかけた自分を救助しようとしていた大西先生が落石事故で亡くなってしまう。
それでも山への憧れを抑えられない文太郎はソロクライマーとして生きることを決意し、2年後、文太郎は派遣社員として冷凍倉庫で働きながら全てを登山のために捧げるストイックな生活を送るように。
大西先生の追悼登山ではその見事な登りっぷりが評価され、資産家で登山家の二宮から人類未踏の氷壁であるK2東壁の完登を目指すチーム「14マウンテン」にスカウトされる。
資金面での負担が無くなる願ってもない話だが、1人で登りたい文太郎はその誘いを固辞。
だが悪女と化していた夕実との再会を機に、山に集中したくても女の誘惑が頭をよぎるようになってしまうのであった。
5巻のあらすじを振り返ってみましょう。
目次
チームへの入隊を決意、若手登山家・新美との出会い
女の誘惑を振り切るため、14マウンテンへの入隊を決意した文太郎。
リーダーの二宮は文太郎以外にもメンバーをスカウトしており、新美 拓という変わり者の若い登山家もメンバーの一員となる。
「孤高の人」5巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
高所登山の成功率に関わる重要なファクターであるVO2max(最大酸素摂取量)に関して新美は飛びぬけた身体能力を持っている一方、文太郎は血中で酸素を運ぶヘモグロビン値が以上に低いという欠点が露わとなる。
だが文太郎には酸素摂取量が低くても、心身がリラックスした状態で平地とほとんど変わらないコンディションで登山することができる強みを持っていた。
新美は年の近い文太郎に興味を持ち、他の隊員らとの顔合わせを兼ねた槍ヶ岳登山での再会を楽しみにするのであった。
14マウンテンの副隊長
槍ヶ岳登山の当日、現地の集合場所へ向かう文太郎は、山道の途中で休憩している男と出会う。
男は15年前の事故で足が悪いらしく杖をついているものの、文太郎を案内する役を買って出た。
すると男はおもむろに、掴まれるところがほとんどなく急傾斜の岩を指し、その上にあるイワタケを取ってほしいと言い出す。
高難度のボルダリングに文太郎が苦戦していると、男は急に態度を変え、見事な技術でするすると岩を登っていく。
男の名は小松 辰治、14マウンテンのK2アタック隊で副隊長を務める男なのだった。
「孤高の人」5巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
チームの隊員と顔合わせ、嫌いだった縦社会
何とか岩を登り切った文太郎は、その他の隊員とも顔合わせを済ませる。
今回参加しているのは小松、文太郎、新美のほかには先輩風を吹かす加瀬、陰気な国枝の5人。
小松たちは隊のなかでも新参者で若手である文太郎と新美に雑用をさせ、新美は皆に気に入られようと率先して動く。
「孤高の人」5巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
しかしコミュニケーションが苦手な文太郎は気を利かせることもできず、大好きな山の上なのに嫌いな人間社会の縮図を見て嫌気が差すのであった。
上手くいかないチームワーク
テントを張り、早朝から全員分の朝食を用意した文太郎はたった1人で稜線を歩き出す。
念願だった1人での登山に心が洗われていくが、すぐに小松たちが怒りの形相で追いついてきた。
どうやら加瀬の財布が盗まれたらしく、新参者の文太郎と新美のどちらかが犯人だと疑われている様子。
「孤高の人」5巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
理不尽に疑われた新美が怒りを爆発させ、全員のザックを調べるべきといって国枝にも突っかかると、今度は国枝も敵対心を剥き出しに。
山ではどんなことをしても証拠など残らず、誰も助けてはくれない。
1人で歩いてみたかっただけの文太郎が戸惑いを隠せないなか、小松がわざと加瀬の財布を隠して隊員たちの反応や性格を分析していたことを明かす。
今回の槍ヶ岳登山も小松が独断で決めたものだという。
そして小松はこの冬、このメンバーで厳冬期北アルプスの全山縦走を行う予定であることを告げるのであった。
「孤高の人」5巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
職場でも嫌なことが
不況の波を受け、世間では容赦ない派遣労働者切りが。
文太郎の勤務先も例外ではなく、勤務態度は真面目だが人付き合いの悪い文太郎はいつ切られてもおかしくない崖っぷちの状況に。
さらに文太郎は厳冬期北アルプスの全山縦走のために年末年始に2週間以上休暇を取得しなければならない。
「孤高の人」5巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
幸いなことに勤務先の竹田支社長は文太郎に好意的であり、文太郎は食事の誘いに珍しくOKを出す。
しかしその食事の場には文太郎に猛アタックをしかける事務職の小堀もおり、竹田支社長はお節介ながら文太郎と小堀をくっつけようと早々に席を外していった。
だがどうしても小堀を受け入れられなかった文太郎は小堀を置いて、逃げるように店を後にするのであった。
厳冬期北アルプスの全山縦走開始
ただ登山に集中したい文太郎にとって、待ちに待った冬がやってきた。
山であっても人間関係から完全に逃れることはできず、怪我や死のリスクもあるのが登山。
それでも山に登りたいと願う文太郎は、小松たちと共に厳冬期北アルプスの全山縦走に臨む。
「孤高の人」5巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
7日目、天候不順が続いて予定より遅れている小松たちは一時的に晴れた隙に二宮隊長との合流地点まで急ぐことに。
先頭でぐんぐん進みながら皆を引っ張る文太郎に対し、ライバル心剥き出しの新美もいいところを見せようとする。
だが運悪く新美が足を滑らせて転倒し、下にいた加瀬が滑落に巻き込まれてしまうのだった。
「孤高の人」5巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
【5巻のまとめ】
女の誘惑を振り切って山に集中するため14マウンテンへのスカウトを受けることにした文太郎。
そこでは副隊長の小松、先輩風を吹かす加瀬、陰気な国枝、若手登山家の新美とチームを組むこととなるが、顔合わせ後の登山から小松は完全な縦社会関係を押し付けたことで早くもチーム内には不協和音が流れ、特に文太郎の立場は最も弱く標的にされてしまう。
職場でも不況の煽りや全く好きではない女性からアプローチを受けるなど嫌なことが続いた文太郎は、それでもK2登山のシミュレーションとなる厳冬期北アルプスの全山縦走を楽しみにしていた。
そして全山縦走がスタートすると、文太郎が先頭でぐんぐん進みながら皆を引っ張る一方、ライバル心剥き出しの新美もいいところを見せようとする。
だが運悪く新美が足を滑らせて転倒し、下にいた加瀬が滑落に巻き込まれてしまうのだった。
次巻へ続きます。
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