【島で書道の次は、島で漫画。「ばらかもん」ヨシノサツキ最新作!!】どうにか生活できるほどの原稿料をもらいながら漫画家生活10年目を迎えた遠野成彦(32)。何本目かの連載作品がついに打ち切りになり、あとがない成彦に編集者が提案してきたのは、生まれ育った島の日常を描くことだった。こだわって描いてきたファンタジーとは真逆のジャンルに、成彦は反発しながらも挑戦することになるのだが…? 「ばらかもん」ヨシノサツキ待望の最新作!(C)2019 Satsuki Yoshino
(U-NEXT作品紹介より引用)
さっそく、1巻のあらすじを振り返ってみましょう。
目次
「わっかもん」誕生
戸の島の五々岳分校に通う、小学2年生の笠山宇一郎、中里遼、松下忠親、黄島啓人の4人は分校が廃校になり、担任の遠野先生も転勤になって離れ離れになる。
啓人は大好きな遠野先生と離れてから7年間、ずっと文通をしてきたが、ここ3通ほど音沙汰がない。
高校生になった4人は、ひー兄ちゃんはじめ、島の様々な人から話を聞いて遠野先生と連絡を取る手段を模索するが、話を聞く中で当時の先生の記憶とは異なる先生の言動や実態が浮かび上がってきた。
そこで、4人は先生に手紙を書くことにし、以前埋めたタイムカプセルを分校の跡地から掘り返す。
その中にそれぞれが書いたメッセージは、宇一郎、遼、忠親が「先生と結婚したい」と書いていたものの、先生が大好きな啓人だけは「文章を書く人になりたいです」と書いていた。
そして啓人たちは遠野先生に手紙を書き、その返事が来た。
封を開けてみると…「結婚しました」と写真入りの手紙が入っていた。
授かり婚だったので、休職し、子どもが生まれたら戸の島に遊びに行く…。
と結ばれていた。
…というストーリーで始まる漫画を、ある漫画家は悩ましそうに練っているのであった。
売れない漫画家の産みの苦しみ
遠野なるひこ、漫画家歴10年。
22歳の時にファンタジー漫画でデビューしたが、数本の読み切りと打ち切られた連載が2本。
さらに先月、3本目の連載が打ち切られた…。
そんな時に、担当さんから「離島の少年たちの日常系の漫画を描きませんか?」と提案された。
遠野が離島に住んでいるからだ。
もう後がない遠野にとっては背に腹が変えられない話だった。
アシスタントのとし坊に協力してもらい、海や船、磯の取材に出向く。
磯では同級生の笹山と出会い、笹山にはもう4人の子どもがおり、立派なお父さんをしていることを知ると、まだ何も成し遂げていない自分と比べずにはいられない。
そして、「オレはもっと求められたい」と強く思うのだった。
とし坊に背中を押された遠野
とし坊に新しい漫画のネームの感想を聞くと、「今度のは先生っぽくていいです!」と返ってきた。
「自分以外の人が自分の漫画を面白いっていってくれれば、それでいい」と思えた遠野は、こうして離島日常漫画を描く決意を改めて固めた。
ちょうど担当の林からも電話があり、ネームにOKが出た。
漫画のタイトルは「わっかもん」(=島の方言で「若者」)と伝えると、遠野はとし坊にピースサインをして、喜びを伝えるのだった。
漫画家になるまで
遠野は小3になる頃、周りのみんながマンガを読んでいて、それに影響されて自分でも漫画を描くようになった。
ちょっと描けるようになり、周りのみんなからも人気者になり、中学生になるが…。
中学になると、自分の見たいアニメがどのテレビのチャンネルでもやっておらず、どんなに自分の住んでいるところが田舎なのか恨んだ。
そして、周りの友だちも漫画より女の子と一緒にいることも多くなり始める。
遠野の親友、圭とただちん3人で、漫画への愛情は更に深くなっていった。
圭は美容師になり、時々連絡をくれるが、ただちんは高校卒業以来、会っていない。
漫画のコスプレをしたり、キャラクターに夢中になったり、修学旅行で島で手に入らなかった画材を手に入れに行ったり…と青春時代はそれなりにあった。
遠野は漫画家になるべく、島外に就職して仕事をしながら漫画を描くという目標を達成すべく、就職試験を受けていたが、高校3年の終わりまで試験に落ちまくっていた…。
そんな中でも漫画を描いていたら、何かの賞に引っ掛かり、俄然やる気が出てしまった遠野。
20歳の時に奨励賞を取り、初めて担当がついた。
そして、遠野は漫画家になることの大変さとなってからの大変さを知ることになる…。
とし坊とは一体何者!?
遠野は、漫画家への夢を応援してくれていた祖母が亡くなった後、その祖母の家で一人暮らしをしている。
そして、遠野と日々を共にしているのがとし坊。
本名、松尾敏人(まつおとしひと)22歳。
遠野のアシスタント兼日々の生活をた助けてくれている頼もしい若者だ。
性格も遠野と真逆で明るい性格。
とし坊は10年以上前から遠野のことを尊敬していてくれているようだ。
とし坊の生態は謎だが、とし坊は遠野のことをよく把握してくれている。
とし坊のサポート無くしてネーム描けず
ネームを描こうとしてもなかなか集中できない遠野。
とし坊が遠野のスマホを没収したりするが、それでも遠野はストーリーがほとんどできている安心感から腰が重い様子。
見かねたとし坊は周りに何もなく、ボロい空き家に遠野を連れていき、そこに閉じ込めて仕事をさせる。
空き家の中には見知らぬ人の遺影やボットン便所、電気もつかなく、本当に何もなかったので、鍵もかけられてしまった遠野はネームに打ち込むことができた。
だが夜になると、孤独に加えて雨が降りはじめ、雨漏りからネームを守るために悪戦苦闘することとなった。
ようやくとし坊が迎えにきて、家に帰ろうと2人で家の前に来ると、とし坊は漫画の材料に使えるように、家の前の畑を耕してくれていた。
これで遠野は漫画の別のエンディングを思いつき、よりいいものへと描き変えることができたのだった。
第1巻発売
連載が始まって半年、待望の「わっかもん」第1巻が発売された。
意を決して、本屋でマンガを手に取る遠野。
本当に自分の描いた漫画の単行本が店頭に並んでいるのを目の当たりにすることができた。
第1巻が発売される2ヶ月前には、ゆきこさんという古参のファンから手紙が届いていた。
遠野はゆきこさんは自分のファンタジー漫画のファンだと思い込み、日常系への路線変更はファンの期待を裏切ることになってしまうのではと弱気になっていた。
だがとし坊は「ジャンルが変わっても応援してくれる、先生のことを誰よりも先に見つけた第一発見者なんだから」と励まし、待望の第1巻にこぎつけたのだった。
遠野だけの望遠鏡
第1巻が発売され、反省点も見えてくるなか、遠野ととし坊はこの漫画が大ヒットしたらどうするかなどと語り合う。
そんなやりとりをしていると、担当の林から緊急重版が決定したとの連絡が入った。
電話を放り投げ、母親に自分の漫画がヒットしたことを興奮しながら話す遠野。
日常を描く漫画…。
ゴールがなく、ただ今日を生きていく、そんな若者を描く。
この「わっかもん」がヒットしたら、遠野の日常はどう変わっていくのか。
これはそんなしがない漫画家、遠野の日常の物語である。
【1巻のまとめ】
漫画家・遠野なるひこが担当に提案され、苦渋の中描いた離島の青春日常漫画「わっかもん」。
漫画家歴10年なのに鳴かず飛ばずで路線変更を強いられて書き始めた漫画だが、アシスタントのとし坊に重い腰を叩かれ、助けられながら第1巻が発売され、さらに緊急重版が決定した。
これは離島に住みながら、青春マンガを描く漫画家の日常を描いた漫画である。
【1巻の見どころ】
この巻の見どころは、夢にしがみつく漫画家・遠野なるひこの葛藤と、彼を支えるアシスタント・とし坊との絆が描かれる場面です。
離島の少年たちの物語「わっかもん」の執筆を進める中で、空き家にこもってネームを仕上げる遠野の姿には、情けなさと切実さがにじみ、創作の苦しみと向き合うリアルな姿に胸を打たれます。
また、とし坊が畑を耕して遠野に着想のヒントを与えるシーンでは、誰かの支えが創作にどれほどの力を与えるかが強く伝わってきます。

次巻へ続きます。
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