ある日、とある離島の墓地の壁から地下へと延びる巨大な空洞が出現した。そこから王を自称する朽ちかけた男が這い出て、一千年の昔に滅亡したはずの“黄金の国”の存在を明かし、王国は“狂乱の魔術師”によって地下に囚われ続けているため、元凶である魔術師を討伐した者には国の全てを与えると言い残し、塵芥となって消えた。
その言葉に魅かれ、魔物が跋扈するダンジョンを踏破しようと多くの冒険者が乗り込む時代が幕を開けた。
6人パーティを組む冒険者ライオス一行は、ダンジョン探索中にレッドドラゴンに挑んで壊滅状態となり、ライオスの妹ファリンがドラゴンに食われながら使った脱出魔法により、他のメンバーはかろうじて地上へと逃れた。
ファリンの肉体がドラゴンに消化される前に救い出し、魔法によって蘇生させるため、すぐにでもファリン救出に向かいたいライオスだったが、一部のメンバーがパーティを離脱。
単身でダンジョンに挑もうとするライオスを見かねたエルフのマルシルとハーフフットのチルチャックが協力を申し出、あらためて3人のパーティが結成された。
残る問題は探索に必要な食糧だったが、ライオスは食料の現地調達、つまりダンジョンに巣食うモンスターを食材とすると言う、とんでもないアイディアを披露するのだった…。
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登場人物紹介
<主要人物(ライオス一行)>
ライオス・トーデン
種族:トールマン。本作の主人公。パーティーのリーダーであり、金属鎧を纏った長身の剣戦士。ファリンの実兄。
経験豊富で実力も高いが、重度の魔物マニア。子供のころから「迷宮グルメガイド」を熟読・携帯し、生態や能力だけでなく、常々魔物の味にも強い興味を抱いていた。
普段は温厚で冷静沈着な性格であり、戦士として実力もあるなど、リーダーとしての素養は決して低くはない。
しかし空気を読む能力や人を見る目は優れていると言えず状況や意味をあまり深く考えずに発言する癖がある。
マルシル・ドナトー
種族:ハーフエルフ。女性で魔法使い。宮廷魔術師でエルフの母と、宮廷歴史学者でトールマンの父を持つハーフ。
強力な攻撃魔法を駆使し、また多少の回復術の他、防御、罠や鍵の解除まで様々な魔法を扱えるのだが、回復術はリスクのある痛覚を弄るという行為をしないため、治療時に痛みを伴うという欠点がある。
明るく、感情表現が豊かな人物。弱音を吐くことも多いが、仲間と口喧嘩をしたりするなど、気の強い一面もある。
常識的な性格と嗜好の持ち主。
親交のあるファリンを救出するために、ライオスに同行を申し出る。
魔術の知識は豊富で、学生時代は「学校はじまって以来の才女」と言われるほど勉学では優秀だったが、ファリンとの出会いをきっかけに実地体験が乏しいことを自覚し、実践不足が露呈してしまった経験を持つ。
チルチャック・ティムズ
種族:ハーフフット。種族そのものが童顔で小柄なため子供扱いされがちだが、ハーフフットとしては成人(現代人であれば50歳前後)の男性で、既婚者。
妻と3人の成人済みの娘を持つ。
種族特有の身軽さや器用さと鋭敏な感覚を駆使し、扉や宝箱の開錠、及び罠の解除をこなす。
また、仕掛けられた装置を作動させての近道や危険の事前回避、安全優先に向けた誘導など、補助的な役割を主とする。
戦闘は基本的に行わないが、飛び道具を扱うことができ時には後方支援を務める。
普段は落ち着いた性格で思慮深く、一行の中では最も世間擦れしている。
迷宮探索から早めの引退を考えていた頃、深層に潜れる唯一のハーフフットとして組合員に紹介されパーティへ加入。
センシ
種族:ドワーフ。恰幅の良い短躯と丸い大きな目、豊かな黒髪と髭を蓄えた、ドワーフ語で「探求者」を意味する名を持つ斧戦士。
魔物食に初挑戦したライオスたちの素人振りを見かねてパーティーに加わり、レッドドラゴンの調理を目的として同行を申し出る。
食事面でパーティをサポートし、戦闘ではライオスと共に前衛を務める。また、古代ドワーフ語が読める。
先祖代々から伝わると自称する家宝の盾を鍋と鍋蓋へと加工し、ミスリルの包丁を含む各種調理器具と調味料を常時携行、迷宮で10年以上魔物食の研究を続けて自給自足の生活をしていた。
普段はダンジョン内第三層を拠点として活動している。月に一度程度、地上に出て調味料などを買い揃えており、その際にライオスたちと出会うこととなった。
迷宮内で単独活動をしていたために冒険者としての技量は高く、魔物の身体の造りや習性などに関する知識が、戦闘時にも柔軟に活用されている。
ダンジョン内であっても食と健康の重要性を説き、偏った栄養の食事を摂ることを良しとしない。
ファリン・トーデン
種族:トールマン。ライオスの実妹で魔術師。柔和で温厚な性格で、仲間内の諍いを仲裁し宥める役回りをしていた。
魔物を「食べたい」と発言するなど、好奇心や冒険心も兄と同じく旺盛。
物理的な戦闘は好まず、回復を主とする補助魔法の他、高度な術法を用いた除霊を行う。
幼少期から兄を追って野山を駆けまわっていたが、ある日、村の墓地で彷徨う死霊を鎮めたことで、他の村民らから気味悪がられてしまう。
しかし、兄からその素質を活かした職に就くよう勧められ、兄妹で異国を旅する空想を楽しんでいた。
兄が村を出た1年後、村を出てカーカブルードの魔法学校に入学するが当初は学校に馴染めず、授業を抜け出ては、校外の山で読書や兄に送る手紙を綴って過ごしていた。
物語冒頭で、ライオスを庇ってレッドドラゴンの牙に捕われながらも、帰還呪文を唱えてパーティを地上に逃して救ったが、自身は捕食されてしまう。
アセビ / イヅツミ
黒魔術によって大猫と呼ばれる魔物の魂を混ぜられたため体の大半が獣人となってしまったトールマンの女性。
「アセビ」はシュローの父の部下として与えられた通名で、「イヅツミ」が本名。
元はシュローの供として島に渡った忍者の一人で、シュローたちが帰還の術で地上に戻る際に「足抜け」して一行から離れた。
マルシルを人質にしてライオスたちの前に現れ、自分にかけられている2種類の術をマルシルに解呪させることを要求し、行動を共にすることとなる。
猫系獣人かつ忍者であるため戦闘能力は一行の中でも高く、特に身軽さと素早さを活かした接近戦を得意とする。
飽きっぽく打算的で自己中心的な性格の持ち主。
<冒険者・カブルー一行>
カブルー
黒い癖毛に褐色の肌、青い瞳をした青年。一見人当たりの良い好青年だが、冷徹で狡猾な策略家の面がある。
悪人というわけではないが、理想のためには殺人も辞さず、人間観察を好み、常に相手を値踏みしている。
以前から噂を聞いていた、トーデン兄妹の自らの損得を考えない行動を、人間に興味に持たない故の偽善であると考えており、いつか化けの皮を剥がしてやろうと目論んでいた。
対人戦に長ける一方、魔物退治は苦手としている。
迷宮で栄えた西方大陸の町ウタヤの出身であったが、15年ほど前に突如迷宮から魔物が溢れ死者が続出。
魔物化した死者と西方エルフ族カナリア隊との戦いの巻き添えで、唯一の肉親であった母を故郷もろとも喪う。
当時のカナリア隊副長・ミルシリルに引き取られ高い教育を受けた後、養母の大反対を振り切って冒険者となる。
しかし、自らの実力ではダンジョンを攻略できないとも思っていた為、可能性がある冒険者の支援も考えており、ライオスは候補者の一人だった。
リンシャ・ファナ
魔法使いの若い女性。気の強い性格。カブルーに好意を持っている。
パーティを一撃で消し炭に出来ると称されるほど強力な魔術を使える。
幼い頃、魔術によって生計を立てていた両親が私刑に遭い死別、駆け付けたエルフ達に保護され動物のような扱いを受けた経験から、エルフを大の苦手としている。
ミックベル・トマズ
ハーフフット。22歳。中性的な風貌の男性。スラムの底辺で育ち、他人種に媚びたり騙すことに躊躇いがない。
その為かチルチャックとは相容れないタイプであり、チルチャックの作ったハーフフットの組合からの誘いも詐欺か恐喝の一種だと考え無視し続けている。
クロ
コボルト。黒白の体毛が特徴。片刃の長剣を使う。奴隷商に捕らわれていたのを偶然ミックベルに助けられて以来、彼に雇われている。
「クロ」というはミックベルに付けられた仮の名で、本名は「ヨダン」。
普段はとても従順で比較的大人しいが、一度戦闘になると勇猛果敢に攻め立てる。
ダイア
ドワーフの女性。目元が隠れた髪型が特徴。武器は斧。クロと並んでパーティの前衛役を務める。
口数が少なく落ち着いた性格。性格と違って戦い方は豪快。
ホルム・クラノム
ノームの男性。垂れ目と帽子が特徴。四種類の精霊を扱う魔術の他、蘇生術も使える。おっとりとした雰囲気で、性格も穏やか。
精霊たちにはそれぞれ名前を付けるほど愛着を持っている。一度に複数の事が同時に起こると固まる癖がある。
<冒険者・タンス夫妻一行>
タンス夫妻
種族:ノーム。蘇生魔法を始めとした強力な魔法を使いこなす呪術師の夫妻。
夫は210歳のタンス・フロッカ、妻は204歳のヤーン・フロッカ。
島主の相談役でもあり、迷宮の謎が明かされる前に西方エルフに迷宮が渡らぬように水面下で綱引きをしている。
ライオスのパーティーを抜けたナマリの新たな雇い主。
タンス氏は、身内にはやわらかく優しい対応をする一方で、ライオスらやナマリに対しては、一見人当たりの厳しい頑固者といった態度を取るが、ナマリの心情を慮る面も見せている。
カカとキキ
種族:トールマンの若い双子。護衛として探索に同行している。帯剣した男性がカカ、クロスボウの射手を務める女性がキキである。
カカは不愛想で寡黙だが、キキは物腰柔らかな性格である。
元は戦争を避けて放浪を続ける一族の出であるが、ある街の酒場で捨てられた際にタンス夫妻に引き取られた身内であり、タンス夫妻の事を「じーちゃん」「ばーちゃん」と呼ぶ。
ナマリ
種族:ドワーフ。ファリン救出行以前のライオスの元パーティーメンバー。
短身ながらも勇猛な斧戦士で筋骨逞しい傭兵の女性。
ナマリ自身も武具にこだわりを見せ、素材や手入れの程度など細かい目利きが効く。
父親は島では「武器屋」と呼ばれ、ドワーフの生産する武具の流通を取り仕切っていたが、以前よりトラブルを起こしがちであり、最後は多額の横領が発覚した際に失踪した。
これが原因でドワーフの社会においてナマリも村八分にされてしまっており、また島主のドワーフたちに対する心証が悪化したことから、島主に父親の借金を返済すればドワーフたちの地位を回復し、自身も許されるのではないかという希望からライオスのパーティに加わっていた。
金銭面での問題のため、レッドドラゴン征伐失敗後は、実入りの良い職を他に求めて離脱し、支払いの良いタンス夫妻の迷宮調査隊に採用される。
<冒険者・シュロー一行>
シュロー / ナカモト・トシロー
種族:トールマン。ナマリと同じくファリン救出行以前のライオスたちの元パーティーメンバー。
黒髪の総髪をした侍のような東洋風の服装で刀を武器とする男性。
本名は「半本俊朗(ナカモト・トシロー)」だが、ライオスたちには発音が難しいため「シュロー」と呼ばれている。
半本家は古くより工作・諜報の技をもって領主に仕えてきた一族であり、そのため剣術のみならず忍術や魔術にも長ける。
弟のトシユキ、トシザネ共々「海の外で"面白いもの"を見つけてこい」との父の命令により島を訪れた際にライオスと出会い、パーティーに加わる。
口数が少なく、生真面目な性格。ライオスからは強い親近感を持たれていたが、実は鈍感で大雑把で間の悪いライオスを苦手に思っていた。
ライオスの妹であるファリンには、彼女の独特の感性に惚れて求婚、返事待ちの状態だったが、ライオスはシュローの気持ちに全く気付いていなかった。
ライオスたちと別れた後は「別のツテを使ってファリンを救おうとしているのではないか」とナマリが推測していた通りに、離脱後すぐ故郷の者と合流し、共に迷宮に潜っていた。その後、一度蘇生させたファリンを「狂乱の魔術師」に奪われた後のライオスたちに出会い、ファリン蘇生に禁断の黒魔術を使用したことを知らされて激昂する。さらにキメラ化したファリンに襲撃されてマイヅル達が全滅する憂き目に合ったため、仲間の蘇生が終わるとファリン救出を諦めて迷宮を後にする。
マイヅル / イヨ
一行のリーダー格を務めるトールマンの魔術師。本名は「イヨ」。
妙齢の女性で、名前の通り鶴を思わせる袖のついた衣装が特徴。
シュローの事を「坊っちゃん」と呼び、付き従いながらも養育係として常にその身を案じている。
式神を作り出したり、蘇生術や転移術等、様々な魔術が使え、料理も上手い。
ヒエン / ナカ
シュローの護衛を務めるトールマンの女忍者。本名は「ナカ」。
長身で姉御肌な性格。両親とも半本家の使用人であり、シュローとは幼馴染にあたる。
何でも器用にそつなくこなせるため、多少自信家で他者への共感が希薄であるが、忍びとしての実力はしっかり伴っている。
ベニチドリ / マツ
シュローの護衛を務めるもうひとりのトールマンの女忍者。本名は「マツ」。
小柄で美形。出自は貧しい農村であり、奉公先からさらに半本家へと買い取られた。
幼い頃から人の顔色を窺って生きてきた結果、化粧なしでは自分の素顔を晒すことが出来ない醜形恐怖症を患っており、その反動として優れた変装技術を会得している。
イヌタデ / ヒジョウヒ
オーガの女性。愛称は「タデ」で、本名は「ヒジョウヒ」。
人間の中でも特に背が高く屈強な体格を誇る。
棘付きの金棒を武器とし、耐久力も高い。
元は賭け相撲の女力士であったが、たまたま初土俵を見に来ていたシュローの父に気に入られ、買い取られた経緯を持つ。
<カナリア隊>
ミスルン
カナリア隊隊長。銀髪に黒い瞳を持つ細身の男性。右目は義眼であり、両耳が上半分欠けている。
方向音痴であり、時折来た道を間違えて歩こうとする。
魔物に対する知識も豊富で、個体の特性を熟知しているような素振りを見せており、本編ではその知識の一部を披露する場面がある。
転移術の使い手。一瞬わずかに触れるだけでも、相手を転移させる事が出来る。
細身の外見に反して身体能力は非常に高く、基本的に無表情で、感情の起伏が少ない人物。
元は名家の次男坊で、病弱な兄の代わりに看守となって迷宮探索をしていた。
しかし、ある日山羊の姿をした悪魔に唆されて迷宮の主となってしまう。
最終的にその悪魔に欲求をほぼ全て食われてしまい、食事や睡眠、排泄と言った生存に不可欠な欲求すら感じない体となった。
唯一残ったのは悪魔への復讐心であり、現在はその欲求だけを拠り所に生存している。
パッタドル
鼻の形と切り揃えた前髪が特徴的な女性の看守。貴族の令嬢で、看守としては最年少かつ今回が初任務。
巨大歩き茸の踏み付けにも耐えられるほど強力な結界を使う他、連絡用の妖精も管理している。
真面目だが、感情的になりやすい。
シスヒス・オフリ
褐色肌を持つ、妖艶な雰囲気を纏った女性の罪人。罪状は古代魔術の使用と、殺人教唆・文書偽造・詐欺。終身刑。
口調は穏やかで冷静だが、敵対者相手には容赦しない冷徹さも持つ。鈴の音で人を惑わせる幻覚術の使い手。
看守を操りカナリア隊への入退を繰り返しており、現在は術を使ってミスルンの世話を任されている。
フレキ
ハネ髪の小柄な女性の罪人。罪状は古代魔術品の所持及び売買。懲役240年。言動がやや荒っぽい。
鷹匠の餌掛け(手袋)のような道具を持ち、視覚を共有する鳥型の使い魔を操る。
リシオン
長髪で背が高く、女性のような顔立ちの男性の罪人。罪状は後述のように古代魔術による人体の改変と殺人・傷害。終身刑。
上半身はほぼ裸に近く、下半身は腰巻きぐらいしかない衣装が特徴。
肌のあちこちに文様のような入れ墨が描かれている。自身の本来の容姿が嫌いで、古代魔術である「人工獣人」を作る術師を探し出し、現在の体を得た。
肉体を変異させて狼系獣人のような姿になる術を使うが、イヅツミとは異なり元の姿に戻ることが出来る。
気さくで温和な話し方をしているがその戦い方は荒々しい。
オッタ
短髪で小柄な女性の罪人。罪状は古代魔術道具の売買及び人身売買。カナリア隊の入隊以前は商人だった。
男性的な振る舞いを好むためエルフからも性別を間違われがち。両腕に入れ墨がある。
地形を作り変えて壁や足場を作る術を使う。
ミルシリル
かつてミスルンと共にダンジョンへ派遣されたエルフの一人。元看守の女性で、現在は引退している。当時の二つ名は「陰気なミルシリル」。
内向的な性格で、同族のエルフにも馴染めない生活をしていた。
歴戦の軍人の家系で複数のぬいぐるみを自在に操る術を使う。剣技にも優れており、かつてミスルンに「隊随一の剣客」と言われた程の腕前。
子供の疑問や好奇心に応える努力を一切惜しまない人。
カブルーを含む養子たちを溺愛する一方で、上記の事もあり同族のエルフとは折り合いが良くなく、山奥で離れた生活をしている。
フラメラ
「島」に派遣されたカナリア隊の副長で、船で待機していた一人。
銀髪、赤目が特徴の女性。弱気な部下たちを叱咤し、短命種を未成熟な種族と評するなど態度は高圧的。
<ダンジョンの住人>
シスル /「狂乱の魔術師」
ダンジョンを創造した魔術師。褐色の肌に銀髪の小柄なエルフ。男性。時折瞳孔の形が変わることがある。
ダンジョンを、自身が強い忠誠心を示している「黄金の国」のデルガル国王のものとしているため、探索する冒険者たちには強い敵意を抱いており、魔物や使い魔を使役してデルガルを探している。
元々は幼い頃に、エルフの侍従を欲したデルガルの父王に道化として雇われ気に入られ、デルガルとは兄弟のように育つ。。
かつてデルガルの父王が毒殺された場面に居合わせており、デルガルと黄金の国を守ることに強く執着している。
その後、王位に就いたデルガルの薦めで魔術を学び始めたことで頭角を現したが、黒魔術に傾倒したあげく、王国の住民たちに「不死の呪い」を施し、黄金城をダンジョンと化した。
「狂乱の魔術師」と称される通り、自分の独善的理屈や感情でのみ行動し、他者とは正常なコミュニケーションが取れなくなっている。
かつての黄金郷の住民達を庇護し、亡霊にも親しく話し掛ける一方、反逆を疑って住民を処刑するなど、実質的には独裁者として振る舞う。
ゾン
ダンジョン内に居住するオークの一団の族長。仲間からは「お頭」と呼ばれている。
センシの顔馴染みであり、ゴーレムで栽培した野菜を買ってくれるお得意様でもある。3人の妻との間に子供がいる。
リド
ゾンの妹。第5階層に残ったオークの一団のリーダーで、仲間からは「隊長」と呼ばれている。
武人気質であり、ライオス達の勇敢さを高く評価している。
<黄金郷の住人>
ヤアド・メリニ
黄金郷の住人。まだ年端も行かぬ少年の容姿を保っているが、実年齢は千歳以上。
かつて黄金郷を統治していたデルガルの孫に当たる。他の住人からも「旦那様」と呼ばれ敬意を持たれている様子。
理知的で物腰も穏やかだが、シスルの目から隠してデルガルを地上に送り出し、ライオス達を呼び寄せながらこれを隠す程度の手腕は持つ。
王国に伝えられたという予言を信じ、翼持つ剣を持つライオスが狂乱の魔術師を倒して黄金郷を救うと期待している。
デルガル・メリニ
黄金郷の住人。男性。かつて黄金郷を統治していた国王その人。ヤアドの祖父に当たり、シスルとは兄弟同然に育ったという。
物語の冒頭にて、息子の肉体を使ってシスルの目を誤魔化しながらダンジョンから這い出し、自身を発見した人々に言葉を残すと、そのまま塵となって消え去った。
フリナグ・メリニ
黄金郷の住人。デルガルの父親で、シスルの名付け親。当時の領主の策略で暗殺された。
有翼の獅子 / 翼獅子(よくじし)
黄金の国の守護獣。未来を予言する力を持ち、「狂乱の魔術師を打ち倒す者」の出現も予言した。
元々は迷宮遺跡に隠された翼獅子の像の中に、さらに書物として封印されており、平和繁栄を望むデルガルのためにシスルが解呪して黄金郷と迷宮形成に力を貸していたが、望まぬ状況が頻発する黄金郷社会に苛立ったシスルとの関係に齟齬を生じたあげく、頭部と体に分けられて魔書に封印された。
以降は夢を介して今なお黄金郷の住人たちを導く。
裏島主
ダイアの従兄弟叔父にあたるドワーフ。ダンジョンの第一層に拠点を持ち、「島」の裏を牛耳っていた。
<その他>
島主
ダンジョンの存在する「島」の主。本名は不明。
小太りした男性で、ダンジョンのおかげで「島」が活性化したことで富を得ている成金。
ノームのタンスを相談役に据え、ダンジョンを明け渡すように迫る西方エルフと交渉しているが、目先の利益ばかりに目がいって、大局を見極められていない。
かつてナマリの父親「武器屋」による汚職の被害に合ったため、ドワーフに対して悪感情を抱いている。
実はデルガルの父王を暗殺した領主の子孫である。
山羊の悪魔
かつてミスルンを誘惑して迷宮の主に仕立て上げた悪魔。
最初は仔山羊の姿だったが、最終的にミスルンを片手で握れるほど巨大な山羊頭の人型に変貌している。
ミスルンの心に付け入って欲望を膨らませ、最終的にミスルンが衰弱すると残っていた欲望のほぼ全てを食い尽くし、行方を晦ました。