女性として教授に上り詰める野望をもつ加藤が天才外科医の朝田とオペ看のプロであるミキをスカウトし、バチスタチームの結成を目指す。
朝田はさっそく医局に染まり切っていない研修医である伊集院に目をつけ、強引ながら指導をしていく。
常に患者のためにまっすぐで医局に問題を起こす朝田を野口教授が切り離そうとする一方で、その腕に惚れたERの鬼頭教授は朝田を手に入れようと画策する。
初回のバチスタを何とか成功させた加藤たちだったが、偶然にもミキの兄にして朝田と因縁のある北日本大の軍司が加藤と同じ日にバチスタを成功させていたことが明らかになり、バチスタの論文レースが熱を帯びていく。
その後、応援に行ったERで麻酔のプロである荒瀬と出会い、バチスタチームに加入することとなる。
2度目のバチスタへ進む加藤たちだったが、北日本大の軍司のバチスタの方が症例の進みが早く、野口は加藤を見限ることを通告する。
自らの野望は潰えても、伊集院という若い芽や自分の作り上げた理想的なチームを守るため、2度目のバチスタを成功させた加藤はチームの生き残りを賭けて戦うことを決意するのだった。
8巻のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。
バチスタチームが生き残る
バチスタが終わり、加藤は野口に対し「喜んで教授選から身を引く」と切り出す。
野口に服従する代わりに、バチスタチームとその研究データを次期教授に委ねたいと申し出る加藤。
〈野口に頭を垂れる加藤 [医龍 8巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
野口はバチスタチームの存続の確約はしなかったが、加藤が自分に屈服したと感じた。
加藤が色々と周りに吹き込んだこともあり、野口が言葉にした医局改革はすぐに教授会の話題にも上る。
さらに祖父江からは針を心臓に置き忘れ再手術を行った医療ミスについても言及があり、胸部心臓外科として一枚岩であることをアピールしなければならなくなった野口は当分のあいだ、朝田やバチスタチームを処分することができなくなった。
加藤は失脚したが、バチスタチームは生き残ったのである。
バーの店員である香の退院祝いの場にバチスタメンバーも全員集まり、加藤から今後について連絡がなされる。
加藤が身を切ってチームを存続させたと知り、チーム全員の絆が深まった。
〈バチスタチームのメンバーが集合 [医龍 8巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
さらなる難局
後日、加藤は鬼頭から北日本大の内部資料を入手し、北日本大でバチスタを執刀していた軍司が論文のために難しい容態の患者を後回しにしていたことを知る。
〈軍司が論文のために患者を選別していた[医龍 8巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
加藤がこれを朝田に渡せば手術となるだろう。しかし失敗の可能性が高い手術の許可が下りるとは思えず、強行すればチームに処分が下る。
逆に加藤が朝田にこれを渡さなければ鬼頭が直接話し、朝田の信頼を失うこととなるだろう。
加藤はさらなる難局に身を置くこととなった。
野口の推薦候補は軍司だった
軍司が明真を訪れる。久々に再会を果たした朝田に対し、軍司は自分が今度ここの教授になることを伝えた。
〈朝田と軍司の再会 [医龍 8巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
軍司が野口の推す後任だったのである。
まだそうとは知らない加藤は、朝田に鬼頭から入手した資料を見せた。
当然、朝田の判断は手術。
北日本大でのバチスタは成功率が高い患者をかなり選別したものだったことなど内部事情を知った一同。
事情を察した朝田は、その軍司が明真で野口の後任となりそうであることを打ち明ける。
自分のバチスタチームと研究データをライバルである軍司に奪われるかたちとなった加藤。
軍司への反感を露にする朝田は軍司に対し、「お前は教授にはなれない。教授になるのは、この加藤だからさ」と挑発してみせた。
〈軍司を挑発する朝田 [医龍 8巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
勝つための抜け穴
軍司が後回しにしていた患者は、内臓の位置がすべて通常と逆という珍しい症例だった。
〈次のバチスタは超難手術に [医龍 8巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
さらに患者は生後9か月。
無謀な手術であることや、軍司への挑発について加藤は朝田に忠告するが、朝田は加藤が教授になるための抜け穴を見つけ出していた。
教授選の選挙のルールを変え、助教授や講師、助手たちスタッフにも選挙権を与えればいい。
〈選挙のルールを変えるという抜け穴 [医龍 8巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
そして加藤のバチスタが本物なら医局員たちの信頼を得て、勝算が出てくる。
選挙改革委員会という休眠中の委員会に希望の光を見出した加藤。
軍司がまた自分の上につくと知り、心の傷を抉られる想いのミキ。
また高難度の手術に向けて必死にイメージトレーニングを重ねる伊集院。
それぞれの想いをよそに手術が近づいていく。
選挙改革へ向けた一手
とある日、野口が加藤を呼び出した。
どうやら政敵である祖父江が軍司に対抗して候補者を擁立したらしい。
〈祖父江が対立候補を擁立 [医龍 8巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
野口は北日本大の軍司を推薦したことで明真OB会の反発を買ったようで、おそらくいい勝負になるだろう。
これ以上候補者は増えないと踏んだ朝田と加藤は、選挙改革に向けて次の手を進める。
祖父江の金魚のフンである真田教授に対し、過去に裏口入学の手引をしていたことをネタに脅しをかけ、選挙制度改革の草案を教授会に出すように持ち掛ける。
〈真田を脅す加藤 [医龍 8巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
マスコミにリークされ地位も名誉も失うよりは、すべての教授を敵に回した方がまだ真田にとってマシな選択である。
加藤が他の不祥事をリークすることで、改革に切り込む真田は新しい勢力となれるかもしれない。
真田は他にいい策が浮かぶわけでもなく、加藤の案を飲むしかなかった。
野口への宣戦布告
しかし後日、加藤はリークしていないにも関わらず、真田が関わった別の不祥事が新聞で報道されてしまう。
こうなっては真田は加藤の動きを野口に売りかねない。
焦る加藤に追い打ちをかけるように、野口から呼び出される。
まだ選挙改革案は教授会に出されてはおらず、いまなら野口は自分を処分できる。
しかし野口の要件はそれではなく、別の教授の誕生パーティの件だった。
言われるがままパーティに出席した加藤。
加藤は野口の息子と以前恋仲にあり、野口の妻とも面識がある。
野口の妻とも親交を温める加藤だが、野口は加藤を呼び出して「来週にも、外のポストに飛んでもらう」と告げる。
〈加藤に非情の通告 [医龍 8巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
真田から選挙改革の情報を得た野口が先手を打ってきたのである。
強い信念で動く加藤に対し「教授の適正がない」と判断した野口。
しかし意を決した加藤はここで野口に宣戦布告をするのだった。
【8巻のまとめ】
加藤はいったん自分の野望を諦め、バチスタチームを存続させた。
しかし野口の推す候補者はいまバチスタの論文レースを争う軍司であり、さらに軍司が論文のために患者を選り好みしていたと知る加藤たち。
加藤たちの次のバチスタは、軍司が後回しにした完全内臓逆位の生後9か月の患者に決まった。
さらに朝田は加藤が勝つために「選挙制度そのものを変える」という抜け穴を見つけ、加藤もその改革案を教授会に諮問するために動き出す。
野口がいち早くこの動きをキャッチし加藤に先手を打とうとするが、意を決した加藤はついに野口に宣戦布告するのだった。
次巻へ続きます。
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