「伊賀」と「甲賀」、二つの忍群が血で血を洗い、双方に分かたれながら相思相愛の男と女が激烈なる想いに殉じた「忍法合戦」から十数年の歳月が流れ去った。
寛永の時代、天下太平の世にあって、「忍び」の活躍できる場は年を経るごとに減り、伊賀甲賀も相争うほどの盛りはとうに失せていた。
ある隠し里で適度な緊張関係を保ちながら共に暮らす二つの忍群であったが滅するには未だ早いと考え、合意の下に互いの幼い棟梁たちを許嫁とし、一つの「力」を生み出そうとしていた。
甲賀の棟梁・甲賀八郎と伊賀の女棟梁・伊賀響。
双方は先代より受け継がれた「瞳術」をその身に宿しており、二人が契ることで、桜花と呼ばれる未知の「力」が発動すると言われている。
二人はそのために日々修行をし、その日を待つ。
本来ならば目出たき仲であった。二人が血を分けた実の兄と妹でなければ。
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登場人物紹介
甲賀八郎(こうが はちろう)
本作の主人公。甲賀五宝連の棟梁。瞳に映る相手の敵意を返す『矛眼術』を持つ。
伊賀響(いが ひびき)
本作のヒロイン。伊賀五花撰の棟梁。瞳に映る相手の敵意を無くす『盾眼術』を持つ。
<甲賀忍者>
碁石才蔵(いし さいぞう)
新・甲賀五宝連。頭脳明晰で、自分の目を周囲に飛ばし様々な場所を広範囲に見ることができる。
甲羅式部(こうら しきぶ)
新・甲賀五宝連。鉄のように固く、身体を岩のように変化させることもできる。
蜩七弦(ひぐらし しちげん)
新・甲賀五宝連。香袋で蛇や昆虫・鳥を大量に呼び寄せ操ることができる術を持つ。
根来転寝(ねごろ ごろね)
八郎と響の養育係。新・甲賀五宝連。生まれつき病弱。鍼による按法が得意で、人体を活かすも殺すも自在。自らに鍼を打つことで大幅に身体を強化する忍法『阿修羅』を使う。
<伊賀忍者>
蓮(はちす)
滑婆の右腕。新・伊賀五花撰。忍具の扱いに長け、回転式拳銃を持つ。
涙(るい)
新・伊賀五花撰。その身体から流れる体液は猛毒を帯びている。現とは恋人関係。
現(うつつ)
新・伊賀五花撰。素果布を広げることで発動する幻術を持つ。涙とは恋人関係。
滑婆(なめんば)
八郎と響の養育係。新・伊賀五花撰。鷹を縦横無尽に飛び回る鷹を使役する。蜘蛛の糸で製作され、飛行可能な『羽衣』を持つ。
<成尋衆>
孔雀啄(くじゃく ついばむ)
特異な砂時計を用いて時を操る秘術『時逆鉾(ときのさかほこ)』を持つ。その正体は、「第六天魔王」織田信長の家臣であった森蘭丸(もり らんまる)。
輪廻孫六(りんね まごろく)
成尋衆の副将。空間を超越した異界を作り出す秘術『金剛楼閣(こんごうろうかく)』を持つ。その正体は、織田信長に献上された黒人奴隷の弥助。
涅哩底王(ねいり ちおう)
現世に存在しないはずの神や魔を召喚、使役する秘術『魔獣召喚』を持つ。その正体は、大坂夏の陣で家康に反逆した豊臣五人衆の1人、キリシタン大名の明石全登。
夜叉至(やしゃ いたる)
未来を見通す「宿命通」の持ち主。その正体は細川忠興に嫁いだ明智光秀の三女、珠。宿命通の力によって自らの死を望んでも死ねないという境遇に絶望している。
成尋(じょうじん)
成尋衆の首魁。相手を意のままに操る『狂儡(くぐつ)』を持つ。その正体は、本能寺の変で命を落としながらも転生を果たした織田信長。
<徳川幕府>
徳川家光
三代目将軍。忠長の実兄で、当代の将軍。
天海(てんかい)
徳川家康の側近を務めた僧。配下の忍法僧を派遣し、成尋衆打倒に暗躍する。
柳生宗矩(やぎゅうむねのり)
徳川幕府の剣術指南役。
阿吽坊(あうんぼう)
天海を守護する忍法僧。天海の勅命で成尋衆の動向を探る。
<その他>
服部響八郎(はっとり きょうはちろう)
服部半蔵の息子。八郎と響の養父。和解した甲賀と伊賀の忍が住む慈尊院村の忍頭を務める。
甲賀弦之介(こうがげんのすけ)
前作の主人公。八郎と響の父親。
朧(おぼろ)
前作のヒロイン。八郎と響の母親。