主人公・鳥栖哲雄は平凡なサラリーマンだが、推理小説オタクであり、娘・零花が彼氏・麻取延人から暴力を受けたと知り、 延人を尾行したところで延人が半グレ組織の一員であり鳥栖家の実家の財産を狙っていること、そして尾行に気付いた延人が零花を殺そうとしていることを知り、零花を守るために延人を殺害。
妻の歌仙と共謀として死体の処理に奔走するが、 撲殺した麻取延人は犯罪組織（半グレ）のメンバーで、かつ、組織上層部の凄腕の詐欺師 麻取義辰の息子であったことから、実働部隊のリーダーである窪の指揮のもと、徹底した行方探しを開始。
哲雄と歌仙は反グレ組織の実行部隊の恭一をハメて罪をなすりつけることに成功した。
恭一は哲雄が延人殺害の真犯人であることを確信し組織から逃走するしつつ義辰に全てを暴露し、哲雄は自分の家族を守り抜くために義辰とも対峙する。
結局、愛する息子という生きがいを失った義辰が哲雄の前で自ら命を絶ち、その遺体を山中に埋めて全てを隠ぺいした哲雄。
しかし幸せを取り戻したのも束の間、計算外の台風により土砂崩れが発生し、その遺体が警察に見つかってしまった。
正義のために手段を厭わない安元刑事は、顔馴染みの哲雄がわざわざ現場近くまで様子を見に来ているのを見つけ、哲雄の動向を徹底的に調べ上げることに。
一方、零花にはモテ期が到来し、 イケメンで自称大学生の石井 信、コンビニバイトの新人で純朴な高校生の小沢 謙信、零花が通い始めたキックボクシングジムで知り合った金井憲広、自称占い師の紫楽来杉山の4人が近づく。
だがそのうち信は鳥栖家の実家が営む「和服の鳥栖」の財産を狙う志野と窪のスパイ、金井は逃走中の恭一と繋がっており、また謙信も哲雄が推理小説の投稿者であることを特定し、大ファンとして零花を通じて接触しようとしていた。
このうち金井は実家の遺産相続が決まった零花を狙う半グレ組織に始末され、恭一と繋がっていたことも竹田にバレてしまう。
金井の仇を討つため組織を潰す覚悟を固めた恭一は、哲雄に組織がまだ零花を狙っていることを伝え、哲雄と再び協力関係に。
計画を立てた恭一は警察に自首して安元刑事に組織の内部事情を暴露することにし、対応に追われる組織では、窪が冷徹な判断で竹田もろとも実働グループを始末。
一方、謙信は独自の推理で哲雄が隠している真実を看破したうえで哲雄に協力を申し出るが、ちょうど零花が信に狙われ、一時行方不明に。
零花を助け信を殺すべく哲雄と謙信が奔走、すると信に重傷を負わせて連れ去っていく歌仙の従兄・鳥栖洋二と思わぬ再会を果たしつつ、 自力で逃げおおせていた零花と無事に再会することができた。
その裏では零花を鳥栖家の後継者にすることに執着する歌仙の姉・胡蝶が糸を引いており、零花への遺産相続を放棄するために実家を訪れた歌仙も胡蝶に拘束されてしまったのだった。
9巻のあらすじを振り返ってみましょう。
零花が押さえた証拠
零花のファインプレーによって信が使っていたスマホを確保した哲雄は、謙信と合流。
レンタカーを監視していた謙信によると、洋二の部下が森の中の血痕などを掃除して引き上げていったらしい。
つまりそれは、現場の血痕は洋二たちが信を痛めつけたことによる信の血であることを意味していた。
鳥栖家がなぜ信を襲ったのか、果たして謙信に鳥栖家のことをどこまで明かすべきか、すぐには判断がつかない哲雄。
一方、零花が確保した信のスマホには信と半グレ組織の繋がりを示す証拠があるはずだが、それをすれば自分たちにも捜査の手が及びかねないリスクもあり、哲雄はそのスマホもどうすべきか悩む。
結局、零花が命がけで戦った証を尊重する意味で、スマホはそのまま処分せずにおくのだった。
最後の晩餐
帰宅すると、歌仙が疲れた様子で哲雄と零花の帰りを待っていた。
零花のスマホが警察に届けられれば自分の逮捕に繋がるかもしれず、哲雄は最後の晩餐として家族3人で外食に行くことを決める。
だが歌仙との結婚記念ぶりに行った豪華なお店は閉店しており、行きつけの居酒屋も臨時休業。
しかたなくファストフードで済ませることとなり、歌仙と哲雄の昔話に花が咲く。
零花は2人を邪魔しないよう席を外すなか、歌仙は哲雄に自分を実家から救い出してくれたことへの感謝と、零花を守ることへの決意を改めて口にするのだった。
哲雄を揺さぶる安元刑事
零花が警察にスマホを提出すると、恭一の供述で半グレ組織の操作を進める安元刑事が出張ってきた。
哲雄のことも徹底的に調べ上げたい安元刑事は、零花に対してスマホの入手経路を事細かに吐かせ、零花が「他人からそのスマホを盗んだ」ことを認めさせると、零花に窃盗の容疑をかけ、任意同行として身柄を拘束した。
そのまま駐車場で待っていた哲雄にも任意同行をかけ、零花に窃盗容疑がかかっていることを引き合いに、半グレ組織の情報を全て話せば零花の罪は不問にする、と取引を持ち掛ける。
そして最初に安元刑事が出したのは、鳥栖洋二の写真。
山で洋二と再会したことがもう警察にバレたのかと内心驚く哲雄だが、洋二について、まともに会ったのは20年程前で、鳥栖家の人間でヤクザであることなど、嘘はつかず当たり障りなく答える。
まず哲雄が嘘をつくかどうかを試されていると悟った哲雄だが、どこまで警察の調べがついているのかはわからない。
尊敬する先輩の息子である哲雄がなぜ婿入りしてまで反社会勢力の親戚になったのか、と問い詰めてくる安元刑事に対し、当時の妻には自分が必要であり、結婚するときに全ての決意や覚悟は済ませた、他人にとやかく言われる筋合いはないと真っ向から返す。
すると安元刑事は自分がマル暴であることを示唆しつつ、哲雄自身への捜査に切り替え始めた。
次に安元刑事が取り調べしている恭一の写真を見せると、哲雄は恭一と自分の関係がどこまで知られているのか、恭一がどこまで供述しているのかわからないまま、賭けに出る。
恭一について零花から話を聞いた可能性が高いと考え、「零花のストーカーだった男」ということにすると、安元刑事は驚いたような表情を見せて席を外した。
自分の賭けが外れたことを察知し、恭一に裏取りされると証言が合わなくなることに焦るのであった。
警察内部に内通者が？
恭一に対し、零花をストーキングしていたかどうか聞く安元刑事。
恭一は零花のことを知っていることについては否認せず、半グレ組織を潰すまでは哲雄との共闘を優先し、哲雄に繋がる情報は黙秘を貫いた。
すると安元刑事は別件として警察の捜査情報が半グレ組織に筒抜けだったことを明かし、警察の中にいるであろう内通者に心当たりがないか訪ねる。
恭一はこれに対しても、「知っている人がいるとすれば窪だけだろう」と回答。
安元刑事はどこかに内通者がいる以上、表向きとは別の秘密捜査を行う必要があると考え、さらに独断で部下の薬師寺に指示し、哲雄の車にGPSと盗聴器を取り付けるのだった。
実家へ向かった歌仙
その後、やけにあっさりと解放された哲雄と零花。
違和感を感じて何が起きているのか問い詰めてくる零花に対し、哲雄は家に帰ったら家族3人で話そうと返す。
その会話は盗聴器を通じて安元刑事と薬師寺も聞いている。
だが帰宅すると、歌仙は「交渉のために実家に戻る」という置手紙を残して既に家を出た後だった。
実は歌仙は零花を鳥栖家の跡継ぎにするべく、姉・胡蝶から脅迫を受けていたのである。
言い表せない不安がよぎる哲雄は歌仙に電話をするが、歌仙は哲雄を心配させまいと「脅されていない」と嘘をついてしまうのだった。
哲雄と恭一の関係がバレる
義辰が死んだあと証拠隠滅を図っていた哲雄は、義辰の使っていた貸金庫も調べ、多額の現金を発見。
家財の処分や零花の引越しなど手仕舞いにかかったお金だけを拝借し、残りの現金は別の貸金庫に移していた。
一方、哲雄の顔写真を分析班に回しつつ捜査を進める安元刑事は、頭脳派集団の半グレ組織には異質な存在だった延人に着目し、延人がこの組織に入れたのは誰かのコネだと推理。
そして延人の家族を調べ、延人の父・義辰が大企業を退社してから行方不明になっていることを知る。
義辰について徹底的に調べていくと、ついに義辰の歯型が山で見つかった遺体のものと一致するに至り、遺体の身元を特定した。
同じく行方不明になっている延人についても行きつけの店や、組織のバックについていた間野会の運営する店などを捜索。
その中で延人の恋人である響が在籍するキャバクラにも足を運び、令状なしの強引な捜査で店の監視カメラの映像を確認する。
そして膨大な量の映像を薬師寺と2人で確認した安元刑事は、哲雄と恭一が2人で来店していたときの映像を発見したのだった。
哲雄と歌仙の覚悟
哲雄と恭一の関係を全て暴いたわけではないが、その映像をネタに哲雄に接触し、さっそく揺さぶりをかける安元刑事。
安元刑事に完全に目を付けられたことを知った哲雄は、逮捕される前に鳥栖家の後継者問題の解決と半グレ組織の壊滅を決意する。
可能な限り家族を巻き込まないために、歌仙とも離婚する覚悟を固めたのだった。
哲雄と歌仙の出会いは25年前。
哲雄が郊外のガソリンスタンドでワンオペしていたところに和服を着た少女(歌仙)が迷い込み、家から逃げてきたことを明かしたことから始まった。
そしていよいよ歌仙に離婚を伝えようと電話をかける哲雄。
だが、歌仙は逆にどこか震えた声で「零花をよろしく」と先に切り出し、「話がこじれるから実家には来ないで」と一方的に切り出してきた。
このとき実家からの脅迫に屈した歌仙は、零花に代わって鳥栖家の信仰対象である「オガミメ」の座を自分が引き受けるべく、拷問と洗脳の儀式に身を投じようとしていたのである。
いったん自分がオガミメを継ぎ、歳月と共に実家の癌ともいえる鳥栖家の親族の力が弱まった後、実家を逃げ出して再び哲雄の元に帰るというのが歌仙のプラン。
一方、電話越しに歌仙の異変を察知していた哲雄は、様子を確認するために20年ぶりに鳥栖家の実家がある村へ行くことを決意する。
その背後では安元刑事と薬師寺が、哲雄が役所に離婚届を提出するのも含めて四六時中、哲雄の動きをマークしているのだった。
【9巻のまとめ】
安元刑事の捜査が進み、哲雄と恭一がグルであることにも気づかれてしまった。
完全に容疑を懸けられていることを悟った哲雄は家族を守るために歌仙との離婚を決意する。
一方の歌仙は先に問題を片付けるべく実家へ向かうが、 実家からの脅迫に屈してしまい、零花に代わって鳥栖家の信仰対象である「オガミメ」の座を自分が引き受けるべく、拷問と洗脳の儀式に身を投じようとしていたのだった。
次巻へ続きます。
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