多重債務者の冴えない青年・梶隆臣はひょんなことから凄腕のギャンブラー・斑目貘と出会い、行動を共にするようになる。
さらに梶は命すら対価にするギャンブルや、それを成立させるために立会人を派遣する中立の秘密組織「賭郎」の存在を知り、廃ビルでの命懸けの脱出勝負に勝った貘は、全てを凌駕する暴力を持つ別人格の怪物・ロデムを宿すマルコを仲間に加え、賭郎の会員権や大金を得た。
賭郎の会員権を梶に譲った貘はさらに賭郎の能輪立会人の手配で新たな賭郎勝負の場を設定してもらうこととなり、貘と顔なじみである立会人の夜行妃古壱が梶の専属につくなか、富士山中のトンネルでテロリストの佐田国との賭郎勝負に臨む。
この勝負を制し、お屋形様と取引した貘は再び賭郎会員に復帰した。
しかしその裏ではお屋形様の思惑通り警察以上の力を持つ新組織成立へと動き始めており、さらに賭郎の乗っ取りを企む米国の犯罪組織「アイデアル」も賭郎に接触し、交渉の場を持つことに。
賭郎外務卿の泉江がA級掃除人たちを連れて交渉に臨むも、アイデアルの実行部隊リーダーである暗殺者カラカルは強気の態度を崩さず、武力衝突が勃発。
賭郎の乗っ取りには力尽くではなく「屋形越え」が必要と判断したカラカルはあっさりと撤退し、これ以降屋形越えに挑む権利を如何にして手に入れるかを考えることとなる。
他方、貘と梶は「賭ける側は0円なのに勝てば最高で億単位の金を稼げる」という奇妙なギャンブルの噂を街で聞きつけ、まず梶が挑戦することとなる。
怪しい相手に連れられるがままその場にいくと、嗜眠性脳炎を患い空白の10年間を過ごした雪井出という男から、「特定の日付に関する思い出話を賭けてほしい」と切り出された。
思い出を賭ける日付のレートに応じて、勝てば1億、負ければ思い出が無かったことになるという条件で、ゲームは互いに迷路を作ってどちらが早く脱出できるかを競う迷宮勝負となる。
賭郎からフリーの立会人である門倉がその勝負を仕切ることとなり、ゲームスタート。
しかし開始時点で既に梶はハメられていることにまだ気が付いていないのであった。
9巻のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。
目次
このギャンブルの真相を知り動揺する梶
雪井出に負けた梶は次のゲームで取り返そうとするが、雪井出は突然態度を硬化させ、難癖をつけて次のゲームに入るのを拒否。
勝負は打ち切られ、梶はそのまま元の街へと返されるが、背後から何者かに襲われて攫われてしまう。
死を覚悟する梶。
しかしたどり着いた先にいたのはアイデアルからの逃亡生活を送るカールと、梶に協力する形で2人を護衛する伽羅だった。
カラカルの恐怖におびえ続けるカールは、梶も自分と同じように表の世界から裏の世界に突き落とされたことを教える。
テレビのニュースではもともとこの0円ギャンブルを教えてくれえた若者が数年前の一家惨殺事件の犯人として逮捕されたことが報道されている。
つまりこの0円ギャンブルで負けた際に奪われていたのは、未解決事件の日のアリバイ。
伽羅によるとギャンブルが行われていたのは警視庁の建物の内部であり、警察もそもそもグルだった。
賭郎が取り立てる以上はその日のアリバイを立証することはできず、待ち合わせ前に引っかかれた皮膚でDNAは採取済、あとは事件の証拠を警察が捏造すれば確実に実刑をくらうのだ。
そして日付によって賭け金が違うのは、その日に起きた未解決事件の軽重によるもの。
自分が置かれた状況を理解した梶が動揺するなか、今度はギャンブルの真相を理解した貘がラビリンスに挑むのであった。
今度は貘が無知を装って挑む
何も知らないフリをしながら雪井出のもとを訪れた貘は、自分が賭郎会員であることを明かさず、その場にいる賭郎立会人の門倉に対しても何も知らないフリをする。
中立の立場を貫く門倉も互いに賭郎会員であることを指摘することなく、ルールの確認が進んでいく。
賭郎が取り立てるその日付の出来事はあくまで賭郎にできる範囲に限ることを確認し、合意が成立。
貘が選んだ日付の賭け金は1億であり、貘と雪井出による化かし合いが始まるのであった。
初戦から貘がペースを握る
貘を警戒する雪井出は自分が先攻という条件を出し、イカサマを使って1ターンで終わらせようとする。
しかし貘は既にイカサマのトリックにアタリをつけていた。
貘の目に映るのはマジック、迷宮を書く用紙、そしてそれを挟むバインダー。
貘は下書きがしたいと言ってシャーペンを借りつつ迷宮を作成し、門倉が2人の迷宮のコピーを作成してゲームスタート。
イカサマで貘の作った迷宮を確認した雪井出は、ある事を決めあぐねていたが、貘が自分の迷宮の控えを胸ポケットに入れていることから「貘がこのゲームを捨てて次に期待している」と読み、歩みを進める。
みるみるうちにゴールへと近づいていく雪井出。
ところが雪井出はゴールまであと一歩というところで壁に阻まれてしまった。
後攻の貘はストレートで一発クリアし、貘が勝利を飾る。
約束通り1億を受け取った貘に対し雪井出は次のゲームを持ち掛けるが、ここで貘は「次に賭ける日付が思いつかないから終わりにしよう」と切り出すのであった。
続くゲームで貘はとんでもない日付を賭ける
どうしても何かしらの罪をなすりつけたい雪井出は貘に食い下がった。
貘の渋りに対し、雪井出は賭け金の釣り上げを狙っているもの、そして門倉は勝った金と引き換えに梶が奪われたアリバイを取り返すことを狙っているものと推理する。
雪井出の求めに応じて次のゲームに進む気になった貘は、「2001年4月9日」という特定の日付を指定。
その日は雪井出が予め設定した表には無かったが、雪井出はその日の賭け金を100万円とすること、そしてゲームはあと2回に限定することを条件に設定した。
貘も合意し、2回戦へと向かう。
しかしここで門倉は貘が仕掛けたとんでもないことに気づいた。
貘が指定した日付は、かつて貘が屋形越えに挑戦して失敗した日だったのである。
つまり貘はここでわざと負けることで、屋形越えに負けた事実を雪井出になすりつけようとしていたのである。
合意が成立したものの、進め方について判断しかねる門倉は参號立会人の棟耶（通称「判事」）に報告。
棟耶は屋形越えに失敗しながら生きながらえている貘が唯一の例外であることを指摘したうえで、これまでもQ太郎や佐田国と貘が命を賭けた勝負をしていることから、今回の賭けも有効、つまり命の取り立てについても移すことは可能との見解を下すのだった。
何も知らずに命の取り立てを押し付けられた雪井出
2回戦では雪井出がシャーペンの使用を封じ、貘の先攻でスタート。
貘が2歩進んだところで壁にぶち当たり、雪井出の番となる。
雪井出は探りを入れつつ着実に迷宮を進み、互いに数回のミスをしつつも雪井出が先にゴールを果たす。
思惑通りに進んだ貘はここで自分がこのギャンブルでアリバイを賭けていることに気付いていたこと、そして屋形越えの事実をなすりつけたことを明かした。
予想外の事態に動揺を隠せない雪井出は、貘が賭郎会員であることやその日が屋形越えであることの説明をしなかった門倉を責める。
しかし門倉は雪井出を威圧して黙らせ、棟耶の見解の通り今回の賭けを有効とし、次の勝負では屋形越えや賭郎に関する事柄のやり取りを禁止することを告げる。
命を狙われる立場となった雪井出が呆然とするなか、貘と最後のゲームが始まるのであった。
【9巻のまとめ】
この迷宮勝負は、警察とグルになって未解決事件の犯人をでっち上げるための仕組みであり、思い出を奪われるというのは犯罪が起きた日のアリバイを奪われることを意味していた。
1億円という大金が賭かった日付であっさりと負けた梶には、より重大な事件の犯人を押し付けられることとなり、梶は伽羅に連れられてアイデアルから逃亡中のカールと共に潜伏生活を送るハメになる。
梶がハメられたことを知った貘は無知を装って迷宮勝負に挑み、勝負の流れを支配する。
イカサマを読んで勝利を手繰り寄せ1億を獲得し、次のゲームではあえて敗北。
負けて取られた日の思い出は、貘がかつて屋形越えに失敗した日のものだった。
命の取り立てを押し付けられたことを知った雪井出は激しく動揺し、続いて最後のゲームが始まるのであった。
次巻へ続きます。
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