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前巻はこちら実習生たちの成長と挫折、そして新たな危機の予感『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』10巻【ネタバレ注意】
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第11巻では、前巻の最後に予告された製薬工場の火災による薬不足が、いよいよ深刻な社会問題として描かれます。
現場の混乱の中でそれぞれの薬剤師がどう動くかを通じて、薬剤情報の重要性やキャリアへの向き合い方、そして慢心の怖さが丁寧に描かれた一冊です。
薬不足が浮き彫りにした「情報」の重要性
工場火災から3週間が経過しても薬不足は解消されず、患者の不安と現場の混乱は社会問題レベルにまで達していました。
代替薬の提案が必要な状況でも薬剤情報室からの情報はなかなか届かず、医師への対応も思うように進みません。
かねてから薬剤情報室が軽視されてきた萬津の体制に問題意識を持っていた羽倉は、上長に直接ヘルプを申し出ます。
この局面を通じて薬剤情報の存在価値を萬津の中に根づかせられるかどうか、羽倉にとっても正念場となる章です。
情報が医療の質を左右するという事実が、危機的状況の中で鮮明に浮かび上がります。
「先入観」が視野を狭める
過敏性腸症候群を患う名波は、萬津での診断をきっかけに初めて自分の辛さを理解してもらえたと感じ、主治医・本間への強い信頼を持っていました。
しかし薬不足による代替薬への切り替え以降、症状が悪化していると感じ始めます。
羽倉は今ある薬での対応に奔走しますが、薬剤情報室の穂上がプラセボ薬の使用を提案しました。
効果が不確かなものを処方することに難色を示す羽倉でしたが、穂上は本間と名波の信頼関係があれば機能するはずだと考えていました。
実際に本間が穂上の提案を受け入れると、名波の症状は回復へと向かいます。
早急に答えを出そうとするあまり先入観で視野を狭めていたと羽倉が反省するこの場面は、医療者の姿勢として普遍的な問いを提示しています。
市販薬の「飲み方」が引き起こした思わぬ影響
原因不明の蕁麻疹に悩む藤原は、ようやく受診して処方薬を受け取りその劇的な効果に驚きます。
しかし症状が切れたときのかゆみに耐えられず、薬局で薬を買い足し始めると、服用量と頻度はじわじわと増えていきました。
そして認知機能に異変が現れ始めます。
みどりの勧めで精密検査を受けても原因が見つからない中、みどりは製薬会社への問い合わせを重ね、薬の影響であることを突き止めました。
処方薬と市販薬の境界が曖昧になりがちな現代において、服薬管理の重要性を改めて教えてくれるエピソードです。
羽倉もまた薬剤情報を志す者として指摘できなかったことへの悔しさをバネに奮起します。
それぞれのキャリア、それぞれの立場
次回の予防接種講習会の打ち合わせを終えたみどりと小野塚の近況報告は、ふたりの間に生まれた温度差を浮き彫りにします。
笹の葉薬局へ転職した小野塚は、キャリアアップどころか芽が出なければ後がない状況の中で必死にもがいていました。
そのことを知らないまま環境への不満を口にするみどりの言葉は、小野塚には贅沢なものに聞こえてしまいます。
一方みどり自身も、恵まれた環境にいることは認めながらも、必死に食らいついてきた自負があるという複雑な気持ちを抱えています。
互いの立場をすべては理解できないというリアルな人間関係の機微が、丁寧に描かれた章です。
手ごたえが生んだ慢心と、その代償
難病指定の自己免疫疾患で入院中の黒沢とその母親のエピソードでは、みどりが痛い失敗を経験します。
医師・六谷に対して自分の仕事ぶりをアピールすることに意識が向いてしまったみどりは、黒沢の小さな変化を見逃してしまいました。
早期退院を望むあまり体調不良を隠し続けた黒沢は容態が急変しましたが、幸い大事には至りませんでした。
調子に乗っていたと素直に反省するみどりの姿は、どれだけ経験を積んでも慢心は禁物だという普遍的な教訓を伝えています。
この経験を経てみどりは小児領域の認定薬剤師への応募を決意し、気まずい状態が続く小野塚にもその旨を報告しました。
ひとつの失敗を次への踏み台にするみどりの姿勢に、着実な成長を感じさせる巻末です。
【11巻のまとめ】
『アンサングシンデレラ』第11巻は、薬不足という社会的危機を軸に、情報・先入観・慢心・キャリアというテーマを多角的に描いた一冊です。

みどりの認定薬剤師への挑戦という新展開とともに、ぜひ続きの第12巻へと読み進めてみてください。
次巻へ続きます。
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