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前巻はこちらサプリメントと処方薬、オーバードーズの患者、在宅医療における薬剤師の役割『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』4巻【ネタバレ注意】
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第5巻では、薬の適正使用という基本的なテーマから、みどり自身のキャリアへの葛藤、そして産科という新たなフィールドへの挑戦まで、物語が大きく動き始めます。
薬剤師という職業の奥深さと多様性が、さまざまなエピソードを通じてリアルに描かれた一冊です。
目次
処方薬は「その人のための薬」である
処方された湿布を家族や近隣の人に譲ってしまい、足りなくなったと訴える患者への対応から、本巻は幕を開けます。
同様にみどりの元には、自分のアレルギー薬を子どもに飲ませてしまっていた患者が訪れます。
どちらの患者にも共通するのは、「これまで問題がなかったから大丈夫」という根拠のない安心感でした。
薬剤師の注意をなかなか聞き入れない患者に対し、刈谷は実際に子どもに起きた重大な副作用の事例を静かに、しかし力強く語ります。
厳格で冷静な刈谷の対応は、一見冷たく映ることもありますが、その根底には徹底した患者本位の姿勢があります。
処方薬はあくまでその人のために選ばれたものであるという当たり前の事実を、改めて気づかせてくれるエピソードです。
素直になれない少年と薬剤師の優しさ
喘息で入院中の少年・カイは、服薬指導に来るみどりにそっけない態度をとり続けます。
忙しい母親に心配をかけたくない気持ちと、体の弱い自分への苛立ちが、彼の素直さを封じ込めていたのです。
七夕の短冊にみどりが自分の快方を願っていたことを知ったカイは、照れながらも再び強がって見せます。
短いエピソードながら、患者の内面に寄り添うことの大切さと、薬剤師と患者の間に生まれる温かなつながりが丁寧に描かれています。
みどり自身が抱えるキャリアへの不安
友人との飲み会でみなが将来のビジョンをしっかり持っていることにショックを受けたみどりは、自分の長期的な目標が曖昧なままであることに気づきます。
小児薬物療法の認定薬剤師という目標はあるものの、配置換えなどを考えるとはっきりした未来像が描けずにいました。
笹の葉薬局へ移った小野塚と食事をともにしたみどりは、互いの不安を打ち明け合います。
そしてまず短期的な目標として、以前から話に上がっていた病院薬剤師と院外薬剤師の合同勉強会を実現させることを誓い合いました。
薬剤師のキャリアに悩む姿は、どんな職業を持つ読者にも共感を呼ぶ場面です。
認定制度が教えてくれた「目指すべき姿」
靱帯再建で入院してきたアスリートの夏目は、ドーピング検査への影響を心配するあまり、服薬を拒否するという強い態度を見せます。
みどりがすぐに調べて問題ないことを確認し伝えると、夏目の態度は一変します。
さらに同僚の羽倉がスポーツファーマシストという認定資格を持っていることを知ったみどりは、専門資格が「頼られる薬剤師」への道標になることを実感します。
子どもたちにとって薬剤師が相談できる身近な存在であるためにという目標を改めて固めたみどりは、学校薬剤師という新たな分野にも関心を持ち始めます。
不安を抱えていた夏目が前向きな気持ちで退院していく姿も、読後感の良い場面のひとつです。
産科という「特別な現場」へ
産休に入る薬剤師の後任として産科担当に指名されたみどりは、母と子どもの両方を守るという特殊な環境に改めて気を引き締めます。
授乳への影響を心配して鎮痛剤を飲み渋る患者、流産経験から胎児への影響を過度に恐れる患者など、産科ならではの複雑な事情が次々と描かれます。
さらに、てんかんの既往を抱えながら複雑な事情で入院している向坂の存在は、すべての出産が必ずしも喜びに満ちたものではないという現実をみどりに突きつけます。
命の誕生に最も近い現場で薬剤師として何ができるのか、第6巻への期待が高まるエピソードで本巻は幕を閉じます。
【5巻のまとめ】
『アンサングシンデレラ』第5巻は、薬の適正使用という基本から、キャリアへの葛藤、そして産科という新境地まで、みどりの成長と変化が加速する一冊です。
薬剤師という職業の多様な可能性と、その仕事が日常のあらゆる場面に関わっているという事実を、改めて感じさせてくれます。

次巻へ続きます。
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