横須賀北高校に転校してきた森 文太郎は根暗で周囲を拒絶していたが、山岳部の宮本に絡まれたことをきっかけに命綱なしで校舎をよじ登り、それ以来登山にハマっていくこととなる。
顧問であり自身も日本有数のクライマーでもある大西先生は単独で命を投げ出すような危険な登り方をしたがる文太郎を気にかけ、登山の基礎や技術を教えながらインドアクライミングの大会に文太郎を出場させた。
そこで文太郎は初心者ながらも見事なクライミングを見せ、以前いた高校ではクラスメイトの自殺現場に居合わせたことから殻にこもるようになったという過去があるものの、クライミングを通じて徐々に人としても変わり始める。
大西先生のもとでクライミングの基礎と技術を学んだ文太郎だが、遭難しかけた自分を救助しようとしていた大西先生が落石事故で亡くなってしまう。
それでも山への憧れを抑えられない文太郎はソロクライマーとして生きることを決意し、2年後、文太郎は派遣社員として冷凍倉庫で働きながら全てを登山のために捧げるストイックな生活を送るように。
大西先生の追悼登山ではその見事な登りっぷりが評価され、資産家で登山家の二宮から人類未踏の氷壁であるK2東壁の完登を目指すチーム「14マウンテン」にスカウトされる。
1人で登りたい文太郎だったが、悪女と化していた夕実との再会を機に女の誘惑が頭をよぎるようになり、山に集中するためそのスカウトを受けることに。
そこでは副隊長の小松、先輩風を吹かす加瀬、陰気な国枝、若手登山家の新美とチームを組むこととなるが、顔合わせ後の登山から小松は完全な縦社会関係を押し付けたことで早くもチーム内には不協和音が流れ、特に文太郎の立場は最も弱く標的にされてしまう。
職場でも不況の煽りや全く好きではない女性からアプローチを受けるなど嫌なことが続いた文太郎は、それでもK2登山のシミュレーションとなる厳冬期北アルプスの全山縦走を楽しみにしていた。
そして全山縦走がスタートすると、文太郎が先頭でぐんぐん進みながら皆を引っ張る一方、ライバル心剥き出しの新美もいいところを見せようとする。
隊のなかで文太郎は孤立していき、二宮からも目をかけられる文太郎へのエスカレートするなか、ブランクと怪我の影響で加瀬が事故死してしまう。
小松はそれでも縦走続行を決め、自分なりに考えて下山を切り出した文太郎はクビを宣告されてしまった。
人との繋がりが鬱陶しかったはずが、なぜか捨てられたくない思いが強烈に沸き起こり、文太郎は涙を浮かべながら小松たちの後を必死に追いながら縦走を続行するのだった。
8巻のあらすじを振り返ってみましょう。
縦走から唯一生還した文太郎
北アルプスの縦走は結局、4人の死者を出す事故となり、文太郎だけが唯一の生存者という結果になってしまう。
文太郎は幸いにも大きな怪我はなく、保護された後に警察の事情聴取に応じる。
「孤高の人」9巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
孤独になってしまった文太郎は、自分はずっと1人だったこと、そして怪我をして動けなくなった新美の傍に数日間いたことなど経緯を重い口から話し始める。
そこでは故人の関係者として新美の婚約者、そして過去に後ろ暗い過去を持つ国枝の関係者たちが訪れ、文太郎から話を聞こうとし、重荷を背負わされるのであった。
雪崩に巻き込まれた小松たち
少し距離を置いて小松たちの後を追いながら縦走を続ける文太郎。
小松は一度クビにした以上構う気はない一方で、新美は文太郎を心配、そして国枝はなぜか取り乱すようにペースを速め始めた。
一方の文太郎は新美からかけられた「ラッセルドロボウ」という言葉を思い出し、いっそ夜中のうちに小松たちを追い越して先行し始める。
それがますます何者かの幻影から逃げ続ける国枝を錯乱させ、文太郎から離れるために別のルートを歩みだす。
そして不運にも頭上の雪庇が崩れて落ちてきてしまう。
「孤高の人」9巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
第一波では無事だったものの、錯乱する国枝を助けに行った新美、そして小松も雪崩に巻き込まれ、生き埋めになってしまうのだった。
国枝の後ろ暗い過去
国枝の本名は村田といい、大学卒業年には山岳部で親友の霧谷 徹と谷川岳の登山に行ったが、そこで徹を突き落とした。
密室ともいえる山の事故で証拠もなかったため警察は立件せず、それ以来徹の父親は執拗に国枝の後を追い続けることとなる。
当時、国枝には好意を抱いている女性がいたが、その女性が徹とデキていることを知り、裏切られたと感じたために徹を殺したというのが真相のようだ。
その後国枝は葬式への参列も遺族への謝罪もなく、名前も変えて逃げ続ける。
だが国枝の遺品のなかにはその女性と徹と3人で撮った写真が大事そうに保管された状態で発見されるのであった。
新美の最期を看取った文太郎
文太郎は新美を救出するが、新美は両足を骨折し内臓も損傷し身動きが取れず、吹雪のなかでどうすることもできない。
文太郎は救助を呼ぶためにテントを出ようとするが、精神的に参っていた新美は見捨てられるかもしれないという恐怖から文太郎に傍にいて欲しいと懇願。
その想いを汲んだ文太郎は新美の傍にいてやることを選択し、2人は初めて腹の内から色々なことを語り合う。
全てをさらけ出すうちに新美となることができた文太郎は、そのままテントの中で新美と一緒に死んでもいいとさえ思った。
そのまま新美は衰弱していき、新美は失意や無念など、これまでの人生へ思いを馳せながら息絶える。
「孤高の人」9巻©集英社/ 坂本眞一・鍋田吉郎・新田次郎
隣で最期まで看取った文太郎は、また孤独になったのであった。
【8巻のまとめ】
結局、小松たちは文太郎と距離を置いて別行動していたところで雪崩に巻き込まれ、全員命を落としてしまう。
なかでも大怪我を負った新美を数日間看病しその最期まで看取った文太郎は、唯一の生存者として警察の事情聴取に際し重い口でその様子を語るのであった。
次巻へ続きます。
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