富士の見える町、横走市にある横走中央病院の医師・玉木。 ある日、駐屯する自衛隊の隊員・滝原、肉屋・中畑の2人が重篤な状態で立て続けに担ぎ込まれる。
似たような病状であったが、滝原は安定するも中畑は死亡。
そのうえ滝原は、玉木の知らぬ間に自衛隊病院へと転院させられていた。
そうした中、前週まで元気そうに働いていた女性看護師の鮎澤も来なくなり、高校生の娘・潤月によってベッドで亡くなっている姿が発見された。
何かが起こり始めていると考えた玉木の懸念は現実のものとなり、横走市では大勢の患者が似たような症状を訴えて病院へ殺到。
混乱のなか、国立疫病研究所の原神はサンプルの分析から肺ペストのアウトブレイクが発生していることを突き止めた。
中央アジアで流行していたものを、派遣されていた自衛隊員の滝原が持ち帰り、駐屯地の内外で感染が拡大してしまったのである。
感染拡大を防ぐために奔走する玉木と原神、だがペスト菌はさらに変化し、抗生物質が効かずに亡くなる人が増え始めた。
感染拡大は止まらず、病院の医療現場は限界を迎え、医師やスタッフの中にも来なくなる者が続出する。
院長も感染して命を落としてしまい、玉木は病院を代表してリモート会見で現場の窮状を訴えて支援を要請した。
他方、世間では横走市民への誹謗・中傷がエスカレートしていき、市内からも横走市の外へ脱走する者が相次ぐ。
それは自衛隊の中も例外ではなく、危篤になった母親の緊急手術に立ち会うために仁杉軍曹も市外へ出たいと願っていた。
すると、病院の清掃スタッフであるカルロスが仁杉に声をかけ、脱走の手引きを始めるのであった。
最終巻のあらすじを振り返ってみましょう。
脱走の断念
仁杉とカルロスは自衛隊演習地を越えて外に出ようとしていた。
だが脱走を手引きする者が逮捕されて合流することができず、仁杉は一人でも脱走しようと走り出す。
そこへ母親の病院から電話が入り、母親が蘇生措置を受けているが心拍が戻らないことを告げられる。
死亡確認は原則として家族が病院についてからするものだが、仁杉は涙を流しながら病院へは行けないことを告げ、電話越しに死亡確認をお願いする。

「リウーを待ちながら」3巻©講談社/朱戸アオ

遺されたものたち
玉木の記者会見が功を奏し、世界中から医者や支援が集まってきた。

「リウーを待ちながら」3巻©講談社/朱戸アオ
海外から派遣された医師団の中には、玉木の父とも仕事をしたことがある女医・シモーヌの姿もある。
他方、アパートに一人で暮らす潤月は夜中でも隣の家から赤ちゃんの泣き声とせき込む声がすることに気付き、心配になる。
隣人は潤月の助けを拒んだが、翌朝になっても赤ちゃんが泣き止まないことから、潤月はベランダ越しに隣の家の中を覗き見ることに。
すると、家の中では赤ちゃんの母親が倒れていた。
救急車は混みあっていて捕まらず、カルロスや玉木も電話に出ない。
赤ちゃんの声もだんだん小さくなっていることから、潤月は自ら隣の部屋へ足を踏み入れ、赤ちゃんを救出する。
しかし安心したのも束の間、赤ちゃんの手が潤月の口元にあたり、マスクを剥ぎ取ってしまう。

「リウーを待ちながら」3巻©講談社/朱戸アオ
潤月は濃厚接触者として、試験運用を兼ねて隔離生活を送ることを余儀なくされる。
心配をかけないよう、コウタには濃厚接触者になったことを黙っていたが、不安と恐怖に圧し潰されそうになるのだった。
排斥と隔離
横走からの脱走者リストを手に入れ、その分析をする原神。
もしも感染者が横走市の外へ出ていたら大変なことになる。
東京にいる助手にも指示して捜索すると、リストの中には1名だけ、医療機関を受診した者がいた。
それがナカマルエリカという女性だと分かり、助手は急いで家に向かう、先に脱走者のリストが世間に公表されてしまい、既にその家にはマスコミが押し寄せていた。
防護服に着替えた助手がマスコミをかき分けながら家に入り、ナカマルと対面を果たす。
しかしナカマルは少し風邪気味で病院を受診したがもう治ったと言い張り、隔離されたら困ると言ってきかない。
さらに市外の人が何もしてくれなかったのになぜ自分が市外の人のために何かしなくてはならないのかと怒りをぶちまけ、助手を追い出した。

「リウーを待ちながら」3巻©講談社/朱戸アオ
その後外出したナカマルはマスコミに追いかけ回され、信号待ちをしていたところで誰かによって道路に押し出され、車に轢かれてしまうのだった。
初の生還者
隔離生活を送る潤月は発熱し、感染区域に入院することになった。
感染区域に一度持ち込んだものは退院するまで外に持ち出せず、もし死んでしまったら家族に返却されるとはいえ、母は亡く父も離婚しておりもはや家族とは呼べない。
潤月は大切なものを持ち込むことにし、これからどうなるのか不安で泣きそうになるところを、玉木が慰める。
玉木は潤月の為にも抗生剤の効いた頃の患者のリストを調べ直し、旧型のペストに感染して退院した患者は比較的長く生存できるケースがあることを突き止める。
原神もそのことに気付きリスト化しているところだったが、リストが作れていない時期もあり、一度目の感染で多少の免疫が付くということ以外はよくわからない。
潤月はコウタに感染したことを話し、平気なふりをしながら電話を切った。
その後潤月の容態は悪化。
だがそこへ今まで疎遠になっていた父が現れ、これまでのことを潤月に謝罪し、潤月も心のつかえがとれた。
潤月の容態はさらに悪化し心肺停止してしまうが、死の淵で母が潤月を現世に突き飛ばし、潤月は意識を回復、新型ペストからの初の生還者となるのだった。

「リウーを待ちながら」3巻©講談社/朱戸アオ
絶望の終わりに
隔離生活の運用が普及して新規感染者の数は半減し、流行はピークを越えた。
原神は地道に抗体検査を続け、新型と旧型の両方の抗体を持つ人を2人見つけていた。
旧型ペストの抗体があれば新型にかかる確率が低いこと、そして新型にかかっても僅かだが生還する可能性があることも判明。
さらにカルロスも実は申告しなかっただけで旧型ペストに感染していたことがわかり、把握できていないケースを考慮すれば旧型の抗体を持っている人はもっと多い可能性がある。
新型ペストのアウトブレイクは想定以上に少ない犠牲者で早く収束するかもしれない―。
原神からの朗報を聞いた玉木は、何もできずにただ嵐が過ぎ去るのを見ていただけな気がして素直に喜べなかったが、原神は「それでも嵐の中で小屋ぐらいは建てた」と玉木を元気づけた。

「リウーを待ちながら」3巻©講談社/朱戸アオ
だが潤月の退院の日、玉木は自分が濃厚接触者リストに入ったことを告げられ動揺する。
感染が発覚したのは、まさかの原神だった。
どうやら抗体の調査で沢山の人に会っていたことで感染してしまったようだ。
旧型ペストの抗体を持っていればまだ助かる可能性はあるが、不運にも原神は抗体を持っていなかった。

「リウーを待ちながら」3巻©講談社/朱戸アオ
原神は100%死ぬと悟り、涙があふれ出る玉木。
防護服を着たままでは原神のためにできることも限られ、原神は治療を断る代わりに手を繋いでいてほしいと願う。
そして「死にたくない」と涙を流したのだった。
あなたのいない世界で
時は経ち、無事にアウトブレイクが収束して横走市の封鎖が解除された。
平穏な日常が戻るなか、玉木は亡くなった原神のことを引きずっていた。
原神は亡くなる前、玉木に大切なデータを全て送り、また「いつか取りに行って欲しい」という言葉と共にある贈り物を遺していた。
独立して自分の病院を開院した玉木は、新しい生活のスタートと共に原神の遺した贈り物が埋められていた場所へと向かう。
メッセージのとおりに横走中央病院の感染者が入院していたテント付近を掘り起こすと、そこには原神の愛読書だった『ペスト』が埋められていた。
その本に出てくる主人公・リウーは原神の憧れの存在であり、アウトブレイクに立ち向かった玉木をその姿に重ねていたのだろうか。
「最期までカッコつけて、こんなのよこして…」
玉木がそうつぶやくのを予期していたのか、本には
「まあそう言わず読んでよ。面白いよ」
と原神からのメッセージが添えられていた。

「リウーを待ちながら」3巻©講談社/朱戸アオ
玉木は原神を思いひとしきり泣いた後、新たな一歩を踏み出すのだった。
【最終巻のまとめ】
海外からの医師団など支援に支えられ、感染者を自宅で隔離させる運用も安定したことで新規感染者の数は半減し、流行はピークを越えた。
そして幸運にも新型ペストからの生還者から抗体が発見され、事態は最悪を想定していたよりも少ない犠牲者で早期に収束を迎えた。
だが収束のために玉木と共に奔走した原神は最後の最後で新型ペストにかかってしまい、命を落としてしまう。
心の支えでもあった原神を失い、玉木はその死を悼みながら新たな一歩を踏み出すのであった。
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