15世紀のヨーロッパを舞台に、禁じられた地動説を命がけで研究する人間たちの生き様と信念を描いたフィクション作品。
15世紀前半のヨーロッパの「P王国」では、「C教」という宗教が中心となっていた。
地動説はその教義に反く考え方であり、研究するだけでも拷問を受けたり、火あぶりに処せられたりしていた。
その時代を生きる主人公・ラファウは、12歳で大学に入学し、神学を専攻する予定の神童であった。
しかし、ある日、地動説を研究していたフベルトに出会ったことで地動説の美しさに魅入られ、命を賭けた地動説の研究が始まる―。
登場人物紹介
<第1章>
ラファウ
本作の主人公の一人。12歳で大学に進級し、神学を専攻する予定だった神童。
ある日、フベルトと出会い、地動説の美しさに魅入られる。
フベルトの処刑後はフベルトの意思を継ぎ、極秘に研究を続けるが、義父・ポトツキの密告によりノヴァクに捕まる。
捕まった翌日の裁判で地動説を信じると宣言し、その夜、毒を飲んで自殺した。
フベルト
地動説を研究し、異端者として捕まっていた学者。
改心したと嘘をついてポトツキに引き取られたが、出所時に出会ったラファウと共に天文の観測を続けていた。
しかし、ノヴァクにバレ、火あぶりに処された。
ノヴァクに研究がバレた際、自身の研究資料をラファウに託した。
ポトツキ
ラファウの義父。ラファウが地動説の研究をしていることを知りながら黙認していた。
しかし、以前、地動説を研究して捕まったことがあるため、
異端を黙認していたことがバレると火あぶりになるとノヴァクに脅され、ラファウが地動説の研究をしていたことを密告する。
ノヴァク
元傭兵の異端審問官。常にけだるげな態度をとっている。C教の教えに反する地動説の弾圧により、その研究を行う異端者を炙り出して始末する汚れ仕事を一手に引き受けている。異端者を拷問して情報を吐かせ、最後に殺すのが仕事であるが、第2章では娘のヨレンタには父親として愛を注いでいる様子が描かれている。
<第2章>
オクジー
第2章の主人公。代闘士。超ネガティブ思考。優れた視力を持つが、空を見ることを恐れている。
現世に何も期待しておらず、早く天国に行きたいと願っている。
グラス
オクジーの同僚。超ポジティブ思考。家族を亡くし絶望していた中、火星の観測に希望を見出した。
バデーニ
修道士。「人生を特別にする瞬間」を求め、教会の規律に従うことなく純粋に「知」を追求した結果、眼を焼かれ田舎村に左遷された。
知識量、計算力など並外れた頭脳をもつ。右目に眼帯をしている。
ヨレンタ
天文研究助手。ノヴァクの娘。宇宙論の大家の施設に入れたが、「女だから」という理由で満足に研究をさせてもらえずに絶望している。
バデーニが出題した難問を解くなど、施設でも有数の頭脳をもつ。コルベの助手。ノヴァクの失墜を画策したアントニによって異端の罪を着せられるが、その仕打ちに疑問を感じた異端審問官のおかげで逃げおおせ、第3章では異端解放戦線のボスとして再登場する。
ピャスト
宇宙論の大家。ヨレンタの雇い主で、完璧な「天動説」証明に人生を捧げている。
女性差別問題について一定の理解がある。
コルベ
ヨレンタの先輩。ヨレンタが作成した論文を自身の名義で発表。
ヨレンタの実力を認める度量はあるが、女性軽視の感覚は抜けていない。
アントニ
助任司教。独身であるはずの現司教の息子。ノヴァクのことを快く思っていない。第3章では司教へと出世するが、教義よりも儲け話を優先するきらいがある。
クラボフスキ
バデーニの同僚の修道士。初めはバデーニのことを快く思っていなかったが、自らの匿名通報が結果的にバデーニの処刑に繋がったかもしれないことに悔いを感じ、バデーニの最後の頼みを聞くこととなる。
異端者の男
輸送中にグラスを説得し、共に脱走。フベルトの首飾りと研究資料をオクジーに託す。
<第3章>
ドゥラカ
第3章の主人公。頭脳明晰な天才少女。金稼ぎが信念。叔父に売られそうになるが、偶然発見した地動説の本を利用して金を稼ぐ方法を思いつく。
シュミット
異端解放戦線の強襲部隊のリーダー。自然主義者。
フライ
シュミットの部下として異端解放戦線に身を置いているが、後に裏切る。C教正統派を批判する過激な思考を持ち、正統派を信仰する兄一家をも手にかけた過去がある。
レヴァンドロフスキ
シュミットの部下。大柄な男。火薬の運搬で一役買う。
ダミアン
ノヴァクの後輩の審問官。今は司教となるが、かつてノヴァクと共にラファウやオグジー・バデーニらの審問にも関与している。ノヴァクのような過激な拷問には否定的な構え。
アッシュ
若い審問官。かつてのノヴァクと同じように、異端の排斥に躍起になっている。
アルベルト・ブルゼフスキ
実在したポーランドの天文学者。クラクフ大学で講義し、彼が提示した天動説への疑念や執筆した当時の天文学の注釈書がコペルニクスに影響を与えた。
ラファウ(青年)
アルベルトの家庭教師。博識だが真理の探究のためにはどんなことも厭わない過激な思考の持ち主であり、地動説を探求するためにその資料を持っていたアルベルトの父親を殺害する。第1章のラファウとよく似ているが、第1章のラファウは12歳で命を落としており、それから約35年後の舞台である第3章では若い青年として描かれていることから、生まれ変わりや生き写しだとしても別人である。