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社員を化けさせる方法、150の法則、組織のリーダーを見分ける基準、年功序列の現実『エンゼルバンク』8巻【ネタバレ注意】

~前巻までのあらすじ~

桜木が経営再建を果たした龍山高校、しかし井野は教師の仕事に飽きて転職を考え、桜木が主宰するビジネス塾の講師にして転職代理人の海老沢を紹介される。

海老沢にスカウトされた井野は思い切って自分も海老沢のもとで働くことを決心し転職するが、海老沢は社内でも変人扱いされており、日本の転職者市場を牛耳ることで日本を陰で操る「日本支配計画」という野望を持っていた。

その計画の一部に巻き込まれた井野はまず転職代理人としての仕事を任され、手探りながらも求職者とのカウンセリングをして場数を踏んでいくこととなる。

海老沢から要所でアドバイスを受けながらもがく井野だが、海老沢からすればまだまだヒヨッ子。

商社OLの北川のカウンセリングでは早々に行き詰ってしまうが、海老沢の知恵を借りたベンチャー企業の社長秘書という突飛な提案が刺さり、海老沢を慕うベンチャー企業の社長・岡本の秘書に転職することとなった。

その後も成功と失敗を繰り返しながら順調に仕事をこなしていく井野。

井野自身も友人の結婚式を機に自分のこれからについて悩みを抱くようになり、桜木にアドバイスを求めて「100人転職させたら自分も転職する」という目標を持つこととなる。

また海老沢に強い興味を持った東大卒のエリート商社マン・桂木が新たな仲間に加わり、新たなチームとなった井野と桂木は「社会を変えるためにまず日本の会社のルールを検証する」という仕事に取り組むことに。

日本独自の文化である人事異動には職場での化学反応と社員の成長促進という2つの狙いがあることを解き明かし、アメリカ企業との比較が進む。

今度は日本の新卒大量一括採用方式の謎について検証することに。

井野は自分で考えた結果として「新卒採用ではなく中途採用に力を入れるべき」と発案するが、海老沢は新卒の大量一括採用には現役社員の成長を促すメリットがあるとしながら、「採用してからの教育の方が大事」と説く。

採用に関する知見を深めるために社内の人事部長の前田から話を聞くこととなった井野。

前田は井野に「新入社員なんて誰でもいい。人事部の本当の仕事は採った社員をどう化けさせるか」と語るのであった。

 

8巻のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。

社員を化けさせる方法と「150の法則」

前田が言う社員を化けさせる方法、それは「失敗させる」というものだった。

思いっきり失敗させて自分の至らなさに気づかせ、本人が本気になれば化けるというのである。

大きい会社であれば社員1人の失敗で経営が傾くことはなく、部下に緊張感を与えながら一度谷底に突き落とすのがいい上司。

人事の仕事は失敗してもいい雰囲気を社内に作り、失敗から這い上がってきた社員にはご褒美として希望の部署に異動させたりすること。

社員全員の状況を把握するための秘訣として、前田は「150の法則」に則った組織構造のシステムを明かす。

組織の構成員は150人までならみんなで結束できるが、150人を超えると急に疎遠になってバラバラになってしまう。

150という数字は人類の長い歴史から経験則として導き出されたものであり、相互理解が可能な人数である。

前田は全ての部門について150人以下になるようなシステムを作り、社内の中にいくつもある150人以下の組織の調整を担っているのであった。

日本支配計画の第一歩は農業

その頃、海老沢は岡本社長と桂木と会食しながら既に日本支配計画が始まっていることを明かす。

その第一歩として海老沢が着手したのは、農業。

既に土地の用意を始めているという海老沢。

改めて後日に井野もつれて実際に何をしているのかを紹介することにする。

そして桂木には自分が10年前から温めていた農業プロジェクトの骨子となる資料を渡し、本格的に計画を始めるのであった。

組織のリーダーを見分け抜擢する方法

前田から話を聞き、「組織の中のリーダーはどう決めているのか」という疑問をぶつける井野。

前田はリーダーとして抜擢するにふさわしいかどうかを見分ける方法として、「当事者意識があるかどうか」を挙げる。

例えば自分の会社を「ウチの会社」という人は会社と自分の距離が近いが、「この会社」という人は客観的に見えているようで当事者意識が薄く、他人事のようにとらえているだけ。

前田が目指す会社の姿はアジの大群のように、1人1人が進む方向を決めていながらも全体としてまとまりながら進んでいくもの。

ここまで深い話を人事部長から聞かされた井野は、さらに「海老沢と前田が自分に何かさせようとしているのでは?」という疑問が沸いてくる。

それでもあえて企みに乗ってみると決め、「日本の会社は年功序列で出世するのが現実であり、抜擢というのは実際は無理では」と問いかける。

その質問を受けた前田は待ってましたと言わんばかりに笑みを浮かべるのであった。

年功序列の現実

年齢順に出世するのは途中までであり、年功序列という言葉のイメージとは違って課長よりも上に出世するのは一部だけ。

そこに出世できなかった人間には関連企業に出向するのが現実である。

対する井野は「どんどん若い社員を抜擢させれば会社はより活性化するのでは」と疑問をぶつけるが、それは年下に追い抜かされた社員が目標を失ってしまう逆効果を産んでしまう。

まずはみなを一定ラインの課長まで出世させて期待を持たせるという意味で、年功序列は「できるだけ長い時間全力で働かせる制度」という側面を持っている。

しかし今の日本は終身雇用とセットになった年功序列の限界が近づきつつあり、インターネットの普及により人海戦術という量よりも質が求められるようになった。

これからは大勢の社員が働きやすい会社ではなく、たった1人の天才の才能を生かした会社が生き残る時代―。

そしてこの仮説を実験するために抜擢されたのが海老沢であり、失敗しても困らない海老沢が全責任を採る形でチームを率いていることが明かされるのであった。

二足の草鞋を履くこととなった井野

海老沢のチームが社内の実験のためだと聞かされた井野。

海老沢は計画の一部として井野には人材育成のプロになることを期待している様子。

井野は前田と海老沢の話を桂木にも共有するが、井野は「目に見える形で会社に貢献して給料をもらわないと自分の中で納得がいかない」という気持ちからあまり乗り気ではなかった。

桜木のもとを訪れてこのもやもやをぶつけてみるが、秘書の南と意見が合っても徹底した合理主義の桜木と意見が一致することはなく、井野は自分1人で悩むこととなる。

翌日、海老沢に率直に「目に見えて手応えの感じられる仕事で自分の給料をもらわないと居心地が悪い。転職代理人の仕事に戻りたい」と相談する井野。

すると海老沢は仕事で結果を出した報酬として自分が望む仕事を与える考えを明かし、「僕の仕事も転職代理人も両方すればいい」と告げる。

こうして井野は二足の草鞋を履くことになるのであった。

倒産の危機に切羽詰まった求職者

転職代理人として新たな求職者を担当することとなった井野。

今度担当するのは内藤という印刷会社の経理担当だが、どこか元気がない様子。

内藤は自分の会社が倒産するかもしれないという状況から転職を考えていたが、もともと親族のコネで入社しただけに1人だけ抜け駆けできないというジレンマを抱えていた。

どうすべきかという切羽詰まった相談を受けた井野は、「倒産後に求職活動をしても不利。今すぐ転職活動を始めるべき」というアドバイスを送る。

しかし話を聞いた海老沢は内藤がただの心配性で倒産しない可能性もあることを指摘しつつ、潰れる会社に最後までいることも「人が避けたがる清算という面倒な仕事を最後までやり通したことは評価される」という面があると告げる。

海老沢のアドバイスで視野が広がった井野は、求人リストを作成しながら「リストラを進める会社でも求人を出している」という矛盾に気づく。

求人情報はリストラへの世間の非難を受けないようにあくまで転職代理人にだけ出す秘密の情報であろうが、世間に隠れてまでなぜ求人するのかという疑問が沸いてくる。

その答えとして「会社にとって社員は栄養であり、転職市場に掘り出された優秀な人材を拾うため」という答えに行き着いた井野。

つまり内藤にも拾う神がいるかもしれない、とすぐに内藤との面談を進めようとするが、内藤は転職活動が面倒くさくなり井野との面談を少し保留にしてしまうのだった。

転職は準備が大事な宝探し

話を聞いた海老沢は、「内藤はしばらく放っておけば向こうからくるから大丈夫」とアドバイス。

その読み通り、1人での転職活動に行き詰った内藤から再び井野を訪ねてきた。

そこで井野は海老沢から伝授されたテクニックを使ってみることに。

「企業は面倒くさがって楽な方に流れない、ストレス耐性の強い人を求めている。」と伝え、転職を宝探しに例えながら、

「初めに財宝の在りかを示す地図を手に入れて周到な準備をして旅に出なくてはいけない。楽して財宝を獲ようと準備をさぼると途中で道に迷って野垂れ死んでしまう。」と教える井野。

そして早速気の進まないこととして、自分の会社が本当に父さんしそうかどうかを確認するよう指示。

井野が内藤に教える、平社員でもできる会社の倒産を見分けるチェックポイントとはいったい―。

【8巻のまとめ】

社員を化けさせる方法や会社の組織をコントロールするための「150の法則」、そして組織のリーダーを見分ける当事者意識の大切さ、年功序列の現実など様々な話を人事部長から聞く井野。

ここまで深い話をするのも、海老沢が井野を人材育成のプロにしたいと期待しているからのことであり、海老沢のチームは「これからはたった1人の天才の才能を生かした会社が生き残る時代」という仮説を実験するためのチームであることが明かされる。

それでも実験のためではなく目に見える仕事をして給料をもらいたいと願い出た井野は転職代理人としての仕事も担うこととなり、今度は「自分の会社が倒産するかもしれない」という求職者・内藤を担当することとなった。

焦りながらも面倒くさがりの内藤に対し、転職を宝探しに例えながら周到に準備を重ねることの大切さを説く井野。

そして海老沢から教わった知恵を活かし、まず「平社員でもできる会社の倒産を見分けるチェックポイント」を伝授するのであった。

次巻へ続きます。

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