アメリカにいた頃の親友・入谷がテログループに関与している容疑がかかり、FBIから潜入捜査をさせられていた。
親友の無実を信じ、またその持病の治療に協力していたが、ついにテログループへの関与やその計画の証拠を掴んでしまう。
FBIと共に大規模テロは防ぐことができたものの、入谷は屋上から身を投げ、紐倉は右腕で入谷の身体を引き上げようとしたものの、入谷はその右腕を撃って自ら命を絶った。
全ての記憶が蘇った紐倉は、入谷の死に責任を感じる必要は無く、彼が自分で死を選んだことを理解する。
そしてPTSDを克服し、いつもの紐倉に戻るのであった。
最終巻のあらすじを振り返ってみましょう。
紐倉に殺人容疑?
特定の遺伝子を人為的に遺伝させる「遺伝子ドライブ」を専門とするバカリ・オニャンゴ教授が研究室で死んでいるのが発見され、ベテラン女性刑事の茶山と後輩の男性刑事・世登が捜査に乗り出す。
研究室の様子から強盗などの可能性は低く、机の上には誰かからの贈り物と思われる食べかけの高級チョコレートがあり、そこから世界最強の毒物であるボツリヌス毒素が検出された。
そしてごみ箱に捨てられていたそのチョコの箱の包み紙には紐倉の名前が記されており、紐倉は容疑者として逮捕されることに。
馬鹿馬鹿しい展開に憤慨しつつも、面倒なことに巻き込まれた紐倉は、その場にいた牧野を人質に取るフリをしながら逃亡。
みすみす容疑者を取り逃がしたことに世登が気を落とす一方、勘の鋭い茶山は紐倉は自分の名前を残しながら相手を毒殺するような犯人ではないことを悟るのだった。
相次ぐ研究者の死
逃亡した紐倉は牧野を途中で降ろし、近隣の病院でアルバイトをしている高家と合流。
すると高家はオニャンゴ教授と接点があったことが判明し、真犯人はオニャンゴ教授経由で高家と紐倉に罪を着せようとしていることがわかった。
一方、警察もオニャンゴ教授と高家がかつて一緒に医療活動をしていたことを把握し、紐倉を容疑者、高家を重要参考人として手配する。
容疑者を取り逃がしたことで同僚から笑いものにされている茶山と世登は、紐倉に人質に取られた際に抵抗の素振りもなかった牧野に事情聴取へ。
牧野もアメリカやフランスで研究者の死が相次いでいる情報を掴んでおり、茶山が紐倉を犯人と考えていないことを悟ると話に応じる。
そして逃亡を続ける紐倉と高家も、アメリカやフランスでも研究者が同じようにボツリヌス毒素で死んでいること、容疑が知り合いの科学者にかけられていることを掴むのだった。
重要人物の医師
研究者たちが何者かに毒殺されており、紐倉と高家もその犯人にハメられた可能性が濃厚。
殺された研究者たちの共通点を探る紐倉と高家は、彼らがいずれもWHO本部が作ったマラリア対策の特別チームである「STEM」に協力的であり、コートジペール共和国で活動していたことを突き止める。
そこはちょうど、近隣諸国の和平実現や国内の民族問題を解決し、ノーベル平和賞候補にもなったルコンデ元大統領も死亡したばかり。
紐倉はすぐさま牧野とも情報の連携をしながら、今度は高家とオニャンゴ教授の共通の知り合いを洗い、デシャンという医師に犯人の目星をつける。
デシャンはSTEMに協力しており、現在は日本に滞在中。
そして何よりも、長年コートジペール共和国で医師として働き、現地で結婚もしている。
デシャンのことをよく知る高家は庇おうとするが、犯人でなければ次のターゲットである可能性も高いのであった。
その医師にも毒が…
早速、デシャンに接触する紐倉と高家。
相次いでいる研究者の毒殺について教え、STEMの内情について聞こうとした矢先、デシャンも突然嘔吐して容態が悪くなり倒れてしまう。
症状からするにボツリヌス症で、麻痺も進行している様子。
高家がすぐさま応急処置を施し、紐倉はデシャンの携帯で緊急通報。
その傍ら、紐倉はデシャンのいたコテージである写真を見つける。
そこへちょうど、犯人の捜査を進める茶山と世登もデシャンのもとを訪れてきた。
心肺停止に陥ったデシャンの救護をする高家をそのままに、鉢合わせした紐倉はその場から再び逃走するのであった。
ヒントを掴む紐倉
高家の救命措置のおかげでデシャンは一命をとりとめたが、麻痺による呼吸機能障害が残り入院。
警察に身柄を確保された高家は取り調べを受けることとなり、潔白を主張しても刑事は全く聞く耳を持たず辟易する。
一方、また紐倉を取り逃がした茶山は落ち込みながらも、冷静に考えて紐倉がデシャンのケータイを持ち去っていることに気づき、連絡を取ることに成功。
茶山からの接触を待っていた紐倉は、デシャンはコーヒーにボツリヌス毒素を盛られていたこと、熱による失活を考慮すると、だいぶ前に毒素が仕込まれており、たまたま自分と高家が訪れたタイミングで発症したという推理を告げる。
茶山は通話しながらケータイの位置情報を特定するが、そこは紐倉の方が一枚上手。
デシャンの携帯は別の通行人のバッグに滑り込ませ、会話は別のスマホに転送、自分は別の場所に身を躱していたのである。
紐倉が追えないとわかり、真犯人のヒントだけでもと紐倉にすがる茶山。
すると紐倉は、今回の連続殺人の被害者らは皆「プロジェクトコースト」の重要人物であり、その集合写真がデシャンのコテージにあったことを教えるのだった。
後ろ暗いプロジェクト
プロジェクトコーストとは、アパルトヘイト政策が行われていた時代に南アフリカで計画された極秘の化学生物兵器開発計画。
黒人を対象にした不妊ワクチンや、ボツリヌス毒素を仕込んだビールやチョコレートなどもその一環で研究されていた。
集合写真の中で最初に死んだのは「白い掃除屋」とも呼ばれたジョー・マッソン医師であり、プロジェクトコースト終了後にコートジペール共和国に入国、ルコンデ元大統領の主治医を務めていたようだ。
コートジペール共和国内はカワイダ族とブサラ族の民族対立が長く続いており、ルコンデ元大統領がその民族問題を解決したはずだったが、その裏で元大統領は敵対するカワイダ族を減らすための研究を進めていた疑いがあることになる。
そしてその集合写真の中には、津目橋という日本人研究者の姿もあり、まだ日本で存命という。
すぐさま津目橋の自宅に張り込みをかける茶山と世登。
すると、そこに紐倉も姿を見せ、刑事が張り込んでいるとも知らずに津目橋の家をピッキングして侵入。
津目橋がウイルスを使った遺伝子操作を専門とし、アパルトヘイト時代の南アフリカで行われていた黒人女性の不妊ワクチン開発をコートジペール共和国でも行ったことを突き止めた紐倉は、帰宅した津目橋に詰め寄る。
津目橋は、ルコンデ元大統領の肝いりでマッソン医師が主導し、カワイダ族の民族浄化を可能にする様々な研究開発が行われていたことをあっさりと認めた。
殺された被害者たちの研究や真犯人の心当たりなどを探ろうとするも、深くは語ろうとしない津目橋。
そこにしばらく様子をうかがっていた茶山と世登が踏み込み、紐倉は連続殺人事件の容疑者としてではなく最初に逃走した際に2人に手錠をかけたを口実に逮捕されることとなるのであった。
暴かれた犯人と真相
茶山と世登に連れられ、高家とも合流を果たした紐倉は、一連の事件の真犯人がデシャンであることを確信していた。
そして意識を取り戻したデシャンに詰問。
デシャンは医師としてコートジペール共和国で医療活動をしているなかで、妊婦の早期流産が相次いでいるのを不審に思い、独自に捜査。
その結果、国立環境生命工学研究所に潜入し、マッソンと津目橋が不妊ウイルスをビールやチョコレートに仕込むなど、数々の民族浄化に関する研究の証拠を見つける。
そしてそのアイスは、自分の妻にも配られているものだった。
気づいたときには既に手遅れであり、妻との間に子を設けることもできず、怒りと悲しみに暮れるデシャン。
その後、ウイルスはカワイダ族のみならずブサラ族にも流産を引き落としてしまい、激怒したルコンデ元大統領によって計画は中止、研究所も閉鎖された。
デシャンは新たな人種差別の火種を生まないために当初はその真相は闇に葬ろうとしたが、ルコンデ元大統領の死、そして愛妻の死をきっかけに感情が抑えきれず、罪を償わせるためにプロジェクトに加担した研究者たちを毒殺し、自らも服毒して死ぬことを計画したのだという。
全てを告白したデシャンは亡き妻、そして抱くことができなかった我が子への愛を涙ながらに語る。
そして津目橋にもまた、コーヒーの角砂糖にボツリヌス毒素を仕込んでおり、それを摂取した津目橋は苦しみながら、証拠隠滅のために自宅に火を放って命を落とし、デシャンは全てをやり遂げた。
実行されていた民族浄化計画を世間に公表するべきなのか、何が正しいのかはわからない。
そして平穏を取り戻したかと思いきや、また紐倉のもとには牧野、そして茶山と世登も捜査への協力を仰ぎに訪れるのであった。
【6巻(完)のまとめ】
遺伝子研究者オニャンゴ教授が毒入りチョコで殺害され、刑事の茶山と世登が捜査を開始。
容疑をかけられた紐倉は逃亡し、事件の裏に国際的な陰謀があると察知。
過去にアパルトヘイト政策下で行われた「プロジェクトコースト」に関与した研究者たちが次々と毒殺されていることが判明する。
真犯人は、自身の妻を不妊にされた復讐として研究者たちを殺害したデシャン。
彼は最後に津目橋を毒殺し、自らの計画を完遂するのだった。
【6巻(完)の見どころ】
この巻の見どころは、民族浄化という重いテーマを背景に展開される、遺伝子研究を巡る壮絶な真相解明です。
冤罪で追われる紐倉と高家の逃亡劇と並行して、次々に毒殺される研究者たちの謎を追う茶山と世登の捜査が緊張感を高めます。
とりわけ、デシャンが妻の不妊の真実を知り復讐に走るシーンは、怒りと喪失に満ちた感情の爆発が胸を打ちます。

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