桜木が経営再建を果たした龍山高校、しかし井野は教師の仕事に飽きて転職を考え、桜木が主宰するビジネス塾の講師にして転職代理人の海老沢を紹介される。
海老沢にスカウトされた井野は思い切って自分も海老沢のもとで働くことを決心し転職するが、海老沢は社内でも変人扱いされており、日本の転職者市場を牛耳ることで日本を陰で操る「日本支配計画」という野望を持っていた。
その計画の一部に巻き込まれた井野はまず転職代理人としての仕事を任され、手探りながらも求職者とのカウンセリングをして場数を踏んでいくこととなる。
海老沢から要所でアドバイスを受けながらもがく井野だが、海老沢からすればまだまだヒヨッ子。
商社OLの北川のカウンセリングでは早々に行き詰ってしまうが、海老沢の知恵を借りたベンチャー企業の社長秘書という突飛な提案が刺さり、海老沢を慕うベンチャー企業の社長・岡本の秘書に転職することとなった。
その後も成功と失敗を繰り返しながら順調に仕事をこなしていく井野。
また海老沢に強い興味を持った東大卒のエリート商社マン・桂木が新たな仲間に加わり、「これからはたった1人の天才の才能を生かした会社が生き残る時代」という仮説を実験するためのチームとして共に働くことに。
日本支配計画の一部として人材育成のプロになることを期待された井野は転職代理人の仕事を続けながら、同じく日本支配計画に参加している本田とも再会を果たす。
そして海老沢の出資する農業ベンチャー企業への転職斡旋も担当しつつ、今度は専業主婦からの再就職を目指す松村の転職をサポートすることとなり、高いハードルを越えるために奮闘することに。
他方、桂木は高校時代からの友人である研究者の体験談から日本の特許が抱える課題を認識し、日本を変えるために特許情報が検索しやすいシステムを作るべく起業を決意するのだった。
12巻のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。
目次
桂木が収益化のヒントを掴む
本当に自分がやりたい仕事を見つけて意欲に燃える桂木。
あとはビジネスをどう収益化するかについて考えることとなる。
他方、井野は松村の転職先がなかなか見つからず、あわよくば桂木が作る会社に雇ってもらおうとする。
当然起業したすぐは人を雇うことができないが、その話のなかで桂木は収益化のヒントを掴んだ。
特許をわかりやすく検索できるサイトを立ち上げ、そこに集まった技術者に転職を紹介するという、今まさにしている転職代理人のビジネスを活かしたアイディアだった。
桂木も温かく見守りながら、自力で足元にあるものに目を向けてアイディアに気づいた桂木の成長を歓迎。
桂木はすぐに退職を決め、起業の準備に取りかかるのだった。
松村が転職に本気になる
井野のもとを松村が訪れ、転職活動に本気を出すことを誓う。
ずっと仲の良かった親友が離婚し、数年専業主婦をしていただけで求職してもスーパーのパートにすら断られてしまったと聞き、危機感を募らせた様子。
現実を実感して考えを変えた松村。
井野にとっても松村の転職が成功すれば目標の折り返し地点である転職成功50人目とあり、気合いが入るのだった。
海老沢が桂木に課したハードル
起業するにあたって海老沢に出資を相談する桂木。
海老沢は出資については快諾しながらも、1つ条件として「会社の社員構成を日本の人口構成に似せること」を課す。
ほとんどのベンチャーは社員を自分より年下だけにしがちで、最初は勢いよく急成長するものだが、創業時のメンバーが歳を取ると若い社員が逆らえない雰囲気ができあがり停滞してしまう。
そのため最初から年齢構成のバランスを取ることが重要で、桂木が日本を変えることを意識するなら自分の会社をミニ国家にするべし…。
始めから年上を雇うのはハードルが高いが、最初に高めのハードルを越えてしまえばそのあとのハードルを越えるのにも役立つ。
アドバイスを受けた桂木は「国から補助金をもらわず、国と戦う覚悟で起業する」と、より高いハードルを自分に課すことを決意し、海老沢もその背中を応援するのだった。
起業にあたってのアドバイス
岡本社長らの支援も受けながら起業の一歩を踏み出した桂木。
当分はレンタルオフィスを使うことにし、まだ採用も考えていないという。
そこで岡本社長は初期採用のアドバイスとして、「経験者は絶対に避ける」ことを挙げる。
経験者は即戦力として期待されがちだが、ベンチャーの魅力は仕事の定型がないことであり、他の会社の方法を持ち込んでしまうと新しさという武器が失われてしまうからである。
経験者を採用するのは社員が20名を超え、自分の会社の形ができ始めてから。
続いて計画の立てかたについてもアドバイスするのだった。
目標と計画を混同するな
ついに退職し、独立した桂木。
友人から特許情報サイトと転職に興味のある研究者仲間も紹介してもらい、幸先のいいスタートを切る。
東大のキャンパス内で水野と再会し、水野が就活に苦戦していることを聞くと、桂木は岡本社長から教わったアドバイスをそのまま伝授する。
それは「目標と計画を混同してはいけない」というもの。
計画とは目標へのアプローチ方法であり、道に迷ったとしても目標というゴールにいく準備をするもの。
失敗の多くは目標を計画だと勘違いすることから始まり、失敗したときの軌道修正案を考えておかないと負け続けることになる。
早く経済的に自立したいという思いから就活を焦っていた水野は、その目標にたどり着くための様々なアプローチを改めて考えてみながら、桂木の会社に就職することも視野に入れるのであった。
就職に悩む水野へ桜木がアドバイス
龍山高校の卒業生として受験生の激励会に顔をだして再会した水野と矢島。
やりたい仕事や夢がハッキリと見つかっていない水野は、「仕事は給料が高ければ何でもいい。普通の生活ができればいい」と考えていたが、同時に就活に苦戦する現状から東大を目指すきっかけになった桜木の「東大へ行くことは人生のプラチナチケットを手にすることだ」という言葉にも疑問を抱いていた。
そこに姿を現した桜木は、「東大はこれからも永遠にプラチナチケットだ」と諭す。
マスコミが騒いでる就職氷河期なんてのはみんなデタラメだ、と断言する桜木。
日本の自営業者の割合は戦後から減り続けており、その原因は大手スーパーやチェーン店の増加だけではない。
日本の大学の数は少子化に逆行してここ30年弱で300も増えており、4期制大学の卒業者で正社員就職をした数はバブルで好景気だった1990年よりも就職氷河期といわれる2008年の方が多いというデータが出ている。
企業の新卒採用数は微増が続いており景気による変動はわずか。
それなのにマスコミが騒ぐのは、就職率の数字だけを見ているから。
大卒者の人数が増えたのに採用数がほぼ変化がなく、就職率が低下したというのが正しい背景だが、マスコミはこの就職率の低下を不景気と結びつけて騒いでいるだけなのである。
自営業者が減り大学生が増えたというのは、みな会社に守ってもらえるサラリーマンという存在になることを望んでいるということ。
しかし大学が多くなりすぎたために限られた採用の枠が争われることとなり、就職率の低下につながった。
大学を出てサラリーマンになる道だけではないと知れば、就職氷河期なんてそもそも存在しない…
続けて桜木はマスコミに騙されない人間になるためのテクニックとして、「データの分子だけでなく分母を見る人間になれ」とアドバイスする。
分母に対して想像力を働かせること。
印象を操作したりズルしたりする人は分母を隠そうとするため、その不自然なところに注目して想像すれば世の中で本当に起きていることを理解できる。
就活に於いても東大生が1学年約3000人、半数が大学院に進学するため学部卒で就職するのは約1000人であり、東証一部上場企業は全部で1700社。
つまり東大生を採用できていない企業は多く、東大生は未だに希少価値があるのである。
「人に対策を聞いているばかりではなく、自分で考えて行動する人になれ」
水野は桜木の叱咤激励を胸に刻むのだった。
官僚志望の矢島へのアドバイス
一方の矢島は官僚志望と聞き、驚いた声を出す桜木。
「今の日本は良くない、高齢化社会になるとさらにダメになる」
という危機感から日本を良くするために官僚を志していた。
しかし桜木は
「野次馬に国は変えられない。国を変えたいなら自分で考え信念を持って行動する人間になれ」
とアドバイスを送る。
高齢化というのは人類が今だかつて経験したことのない現象であり、考えもなくそれをダメと考えるのは早計。
今の日本で問題なのは高齢化社会に対応できてない年金制度や社会保険のシステムであって、そこを改革できれば高齢化は問題ではないかもしれない。
ところが政治家や官僚は国民の不安を煽ってコントロールしやすくするため、本気の改革でその不安を取り除く気はない。
不安を煽ってバカな国民からできるだけ多く税金をとりたいというのが国家権力の本性…。
それでも志を持って官僚を目指す矢島。
桜木は「官僚の個々人がいくら優秀でも国は良くならない。この国には政治家と官僚を見張る奴らがいないからだ」と告げる。
日本のマスコミは記者クラブという制度があり、メンバーはジャーナリストではなく会社員であるために保身を最も優先してしまう。
つまり真実の追求よりも会社や仕事に支障が出ないことを優先し、他の会社と取材メモも付き合わせて確認さえする結果、同じようなニュースしか流れない。
記者は批判ではなく褒めることで官僚から優先的に情報をもらったりもする。
したがって官僚は監視されてはおらず、人にみられていないがゆえに大多数の人間はストイックに頑張ることができない。
マスコミの監視もなく市場原理も働かない官僚は守られた場所でだらけながら各省庁で自分達の権益を増やそうとし、そんな組織に入れば知らないうちに染まってしまうのがオチ…。
桜木の言葉に反論できなかった矢島は再度じっくり考えることに。
どんなことも決めつけて考えなくなった矢島の成長を感じた桜木は、「国を良くできるのは官僚だけじゃない。他にも色んな方法がある。いろんな角度からものを見て、調べて、考えろ。それでも官僚だと思うなら自分の決断に自信をもって進め」と言葉を送るのだった。
【12巻のまとめ】
今の転職代理人のビジネスモデルをヒントに技術者の転職支援で収益化するアイディアを閃いた桂木は、海老沢や岡本社長らの支援を受けて独立を果たした。
他方、桜木は就職に悩む水野と官僚を志す矢島にそれぞれアドバイスを送る。
厳しい言葉をかけながらも、「自分で考えて行動する人間になれ」という共通のメッセージが込められているのだった。
次巻へ続きます。
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