女性として教授に上り詰める野望をもつ加藤が天才外科医の朝田とオペ看のプロであるミキをスカウトし、バチスタチームの結成を目指す。
朝田はさっそく医局に染まり切っていない研修医である伊集院に目をつけ、強引ながら指導をしていく。
常に患者のためにまっすぐで医局に問題を起こす朝田を野口教授が切り離そうとする一方で、その腕に惚れたERの鬼頭教授は朝田を手に入れようと画策する。
バチスタを武器に症例を重ねたい加藤だったが、ミキの兄にして朝田と因縁のある北日本大の軍司にバチスタの論文レースで後れをとり、野口は加藤に見切りをつけて軍司を推薦することを決めてしまう。
しかし軍司が論文のために患者を選り好みしていたと知る加藤たち。
さらに朝田は加藤が勝つために「選挙制度そのものを変える」という抜け穴を見つけ、加藤もその改革案を教授会に諮問するために動き出す。
意を決した加藤はついに野口に宣戦布告し、「加藤が負けたら朝田はERに移籍する」という条件付きで鬼頭に選挙改革草案を提出させた。
首の皮一枚つながった加藤だが、教授選では鬼頭自らが候補者をたてて強力な敵として立ちはだかることになる。
そして加藤たちの3度目のバチスタの患者は、軍司が後回しにしていた完全内臓逆位の生後9か月の赤ちゃんに決まった。
完全に行き当たりばったりの手術で、早速想定外のトラブルが発生。加藤はやむなくバチスタ中止を宣言するのだった。
10巻のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。
朝田は続行を選択
手術中止を宣言した加藤に対し、朝田は続行を主張する。
朝田はバチスタに加えて新たな血流の道を作るバイパス手術も同時に行ってしまおうというのだ。
〈朝田の判断は続行 [医龍 10巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
朝田は脅威的な技術と集中力でグラフトを採取し、バチスタにかかる。
変性部位の特定についても、朝田は切り札を用意していた。
しかしその切り札を使えば、加藤の論文はまた作り直しになる―。
〈朝田の切り札とは [医龍 10巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
その意味はまだ誰にもわからなかった。
教授会での選挙改革審議
その頃、教授会では鬼頭の出した選挙改革草案の審議が行われていた。
野口は老獪な弁舌で可決に傾いていた流れを引き寄せ、白紙に戻そうとする。
しかしそこで祖父江が口を挟む。
政敵同士、いつものこととはいえ、今回の祖父江には落としどころに納得がいけば野口に賛同してもよいというスタンス。
さらに野口は鬼頭にも釘を刺そうと鬼頭を茶化すように発言を求める。
自分の方針をずっと保留にしていた鬼頭だったが、野口のこの態度が決定的となって朝田が示したように選挙改革に賛同しつつ自分で候補者を立てる道を決断する。
結局、「教授会の3分の2以上の拒否があれば立候補を取り消すことができる」という条件をつけることで落としどころとなった。
バチスタを抜けて木原からの助けに応じるか?
その頃、バチスタの手術室。
やはりこれまでの方法では朝田は心臓の変性部位を特定できない。
そのとき、手術室の外では交通事故にあった50代の女性が急患で運び込まれてくる。
患者の顔を見た木原が取り乱しはじめた。
運び込まれたのは、木原の母だったのである。
〈急患は木原の母だった [医龍 10巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
「一番腕のいい外科医に手術してほしい」と願う木原だが、朝田も加藤もバチスタ手術中で手が離せない。
やむなく中田が緊急手術を執刀するが、患者は心破裂を起こしており、どうすることもできない。
患者の死を悟り手術室が静寂に包まれる。
母の命をどうしても諦められない木原はバチスタの手術室に駆け込み、泣きわめきながら朝田に助けを乞う。
〈朝田に助けを求める木原[医龍 10巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
朝田は冷静に、自分が離れても手術を続行できるか、加藤と伊集院に判断を求めた。
また朝田の無茶な命令だ、自分が否定しても朝田は自分にやらせる気だ、と感じた伊集院は「できない」とすぐに否定する。
すると朝田は伊集院の判断を信じ、木原の母へのヘルプには行けないことを宣言する。
その朝田のまっすぐな態度に伊集院は改めて自分の力量を冷静に考え直し、加藤の助手を自分が務める自信を口にするのだった。
〈伊集院が口にした自信 [医龍 10巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
朝田が木原の母を救う
15分が朝田抜きで手術を持ちこたえられる時間の限界である。
そして朝田は木原の母の手術のヘルプへ。
〈朝田がヘルプに来た [医龍 10巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
朝田は脅威的な速さで処置を進めていく。
全ての縫合が間に合わないのも計算に入れて、傷口を指で押さえながら心臓マッサージを施し、無事に木原の母は蘇生。
〈見事に窮地を救った朝田 [医龍 10巻](c)小学館/乃木坂太郎〉
山場を越え、朝田はバチスタの手術室へと戻っていく。
安心した木原はその後ろ姿を泣いて見送るのだった。
【10巻のまとめ】
加藤はバチスタの中止を宣言するが、朝田には加藤にとって諸刃の剣となりそうな切り札があり、手術は続行となる。
しかしそこに木原の母が急患として運び込まれてきた。
泣きながら助けを求める木原の声に応じ、朝田は加藤と伊集院にバチスタを託し、いちど離れて木原の母を救う。
加藤と伊集院は朝田の一時離脱の間、持ちこたえられるのか。
次巻へ続きます。
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