現代の東京。その伝説的な強さのため、裏社会の人間から「寓話」という意味を持つ「ファブル」と呼ばれる1人の殺し屋がいた。
その男は幼いころから「ボス」の指導を受け、数々の標的を仕留めてきた。
しかし、彼の正体が暴かれるのを恐れたボスは「1年間大阪に移住し、その間は誰も殺さず一般人として平和に暮らせ」と指示する。
こうして彼は「佐藤明」という名前を与えられ、ボスと古くから付き合いのある暴力団「真黒組」の庇護の元、一般人として大阪での生活を始めるのだった―。
さっそく、1巻のあらすじを振り返ってみましょう。以下ネタバレ注意です。
殺し屋、休業します
都内某所、とある暴力団のアジトであるマンションを襲撃するプロの殺し屋の男がいた。
男は覆面マスクを被り、サイレンサー付きの銃1丁と指先にはめたナイフだけでターゲット5人を鮮やかに殺害。
〈プロの殺し屋の男女 [ザ・ファブル 1巻](c)講談社/南勝久〉
いつも通りの仕事を難なく終えた後はアシスタントで記憶力に優れる美女と共に姿を消し、使った道具の後始末なども済ませる。
男女が所属する組織はヤクザや政治家など大物から依頼を受けて動く裏稼業専門の組織、通称「ファブル」。
その中でも男はトップクラスの殺しの実力を持っており、この6年だけで71人ものターゲットを葬ってきた。
組織のボスは「今年は殺りすぎた」と告げ、1年ほど休業することを決める。
2人は偽の身分とこれまでに稼いだ金を渡され、ボスと契約している大阪のヤクザ・真黒組で内々に面倒を見てもらうことに。
ボスが2人に与えた命令は、「プロの殺し屋として一般人に溶け込み、普通の人間として生活しろ」というものだった。
〈休業を決めたボス [ザ・ファブル 1巻](c)講談社/南勝久〉
当然、一般人生活中の殺しはご法度。
男には「佐藤 明(サトウ アキラ)」、女には「佐藤 洋子(サトウ ヨウコ)」という偽の身分が与えられ、兄妹という設定に。
アキラはボスに内緒で愛銃のナイトホークだけは手放さず、撃てないようにバレルだけを置いて大阪へ旅立つ。
〈愛銃の本体だけは持っていく [ザ・ファブル 1巻](c)講談社/南勝久〉
10歳のころ家が全焼し父母を亡くしてからボスに引き取られたヨウコと、一切の素性不明のアキラの奇妙な共同生活が始まった。
慣れない一般人としての振舞い
大阪へ向かう途中のパーキングエリア。
アキラは車上荒らしを企む若者2人を見つけ、凝視する。
若者2人がアキラの視線に気づいて絡むと、アキラは殺し屋としての条件反射で返り討ちにしてしまう。
〈身に染み付いた条件反射 [ザ・ファブル 1巻](c)講談社/南勝久〉
「どんな敵でも常に6秒以内に倒せ」という指針を意識してきたプロにとって、すぐに手を出さない一般人としての生活は思った以上に難しいものとなりそうだ。
2人の面倒を見る真黒組
2人の面倒を見ることになった真黒組は広域組織に属さない20名程度の構成員からなる小さなヤクザ。
組長は4代目の浜田広志、若頭は武闘派の海老原剛士であり、アキラとヨウコの事情を知っているのはトップのこの2人だけである。
〈真黒組の浜田と海老原 [ザ・ファブル 1巻](c)講談社/南勝久〉
真黒組が単独で生き抜いてきたのは裏にファブルがついていたからであり、真黒組組長とファブルの付き合いは先代から続くもの。
3年前には真黒組の依頼で対立する鮫剣組をファブルがたった1人、2分で全滅させたこともあり、浜田は今回の件では「友人の子供として棲みかを用意する」という話でアキラとヨウコの件を引き受けていた。
そしてアキラとヨウコが大阪に到着、真黒組の浜田・海老原と初対面を果たすこととなる。
2人を厄介者扱いする海老原
全く物おじせずにラフな格好で不躾な態度をとるアキラだが、その実力は本物。
浜田と海老原が胸ポケットに銃を忍ばせていることを一瞬で見抜く。
「問題を起こしても真黒組は責任を持たず、迷惑が掛かれば即刻出ていく」という条件のもと、海老原は隣り合う2軒の家に2人を案内。
〈物件を借りる [ザ・ファブル 1巻](c)講談社/南勝久〉
1階のガレージに海老原の愛車のハコスカがある方の家にアキラが、その隣の家にヨウコが住むこととなった。
まだ2人の実力に半信半疑の海老原が「今から言うモノを2秒以内に探して撃て」とアキラに告げる。
すると「防犯カメラ」と言い終わる前にアキラは壁に埋められた小型カメラを撃ちぬいて見せた。
どうしても2人のことが気になる海老原は、構成員の高橋に命じて浜田にも内緒で2人の監視を始める。
〈2人をこっそり監視 [ザ・ファブル 1巻](c)講談社/南勝久〉
アキラは家に仕掛けられた6つの隠しカメラを全て取り除くが、ヨウコは気づく気配もない。
高橋はヨウコを隠しカメラで見ながら興奮するのだった。
近所に住む女性との出会い
どうにか2人を街から追い出したい海老原は、高橋に監視させながら策を考える。
アキラとヨウコが引越記念で近くのバーに飲みに出た際、高橋は後輩の不良のツテでキックボクシングの元チャンピオンを呼び、けしかけることにした。
〈不良をけしかける高橋 [ザ・ファブル 1巻](c)講談社/南勝久〉
店を出たところで絡まれるが、一般人になりすましたいアキラはヨウコを先に帰し、冷静に相手の戦闘力を見極めながら対処する。
痛がるフリをしながらダメージを返す作戦である。
〈弱いフリ [ザ・ファブル 1巻](c)講談社/南勝久〉
チャンピオンのジャブには涙と鼻血を出しながら助けを求めるフリまでし、チャンピオンは手ごたえのなさに納得できないながらも騒ぎが大きくなる前にその場を後にした。
アキラの家の近所に住む女性がそこに通りがかり、アキラに手とハンカチを差し伸べる。
〈近所に住む女性がハンカチを差し伸べる [ザ・ファブル 1巻](c)講談社/南勝久〉
アキラから見ればいつも忙しそうに走っている女、女から見たアキラは泣きながら許しを乞うひ弱な男-。
これが2人の第一印象となるのだった。
【1巻のまとめ】
裏稼業専門の組織、通称「ファブル」がしばらく休業を決め、プロの殺し屋であるアキラとヨウコは一般人として世間に溶け込むことに。
組織のボスと付き合いのある大阪の地元ヤクザ・真黒組に面倒を見てもらうこととなるが、真黒組の若頭・海老原は急に出てきた2人の存在が気にくわない様子で、構成員の高橋に命じて2人を監視させながら、正体を暴こうとする。
天才殺し屋としての正体を隠したいアキラは、高橋の後輩のキックボクシングチャンピオンに襲われてもあえて弱いフリをしながら詮索を煙に巻こうとする。
そんなとき、わざと襲われ涙と鼻血を出しているアキラを目撃した近所の女性が優しくハンカチを差し伸べる。
これが2人の運命の出会いとなるのだった。
次巻へ続きます。
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