そして、綾野は経営者としての道ではなく外科医の道を選び、西島は綾野との婚約破棄を決断する。
前向きに進もうとする川内を見守る三瓶だが、川内に芽生えた三瓶への恋心には気づかないようで、川内はもどかしい思いをする。
9巻のあらすじを振り返ってみましょう。
言語聴覚士 五十嵐詩織
三瓶たちの病院に、言語聴覚士の五十嵐詩織が仲間入りした。
さっそく五十嵐が担当することになったのは、左側頭葉後方での脳内出血で、ウェルニッケ失語という後遺症が残った患者だった。
一見楽しくおしゃべりしているだけのように見えて、良く観察し結果を詳しく説明することで患者の妻を安心させた五十嵐。
言葉が通じないことに苛立ちパニックを起こしたときには、すかさず五十嵐が周囲にスキンシップや笑顔での非言語コミュニケーションを優先するように促し、患者の気持ちを落ち着かせた。
病院務めは初めてという五十嵐だが、三瓶は優秀な言語聴覚士であると評価する。
失語症の壁
リハビリ開始から2週間後、自分の症状に気づき始め戸惑う患者の姿を見て、、三瓶は無理に手順通りに進めず、患者のペースで進めるよう五十嵐に指示する。
さらに1週間、漢字を理解できることを発見した五十嵐は、回復のきっかけになればと患者とその妻に報告した。
妻は患者の回復を信じ、懸命に支えようと文字で意思疎通を図る。
しかし、患者は漢字が読めても平仮名が理解できず、夫婦はそろって困惑してしまう。
三瓶は失語症の特徴について詳しく説明し、漢字と平仮名の理解について補足説明をするが、解決策を見つけたと思っていた妻は新たな壁にぶつかり、ぬか喜びだったと落ち込む。
そんな妻に五十嵐は頭を下げるしかなかった。
三瓶は五十嵐に、患者やその家族を精神的に支えていくことも重要と諭した。
リハビリで目指すもの
それぞれのキャリアを築いてきた夫婦、患者は職場の方針で復帰が難しく、妻も働き方を変えることに職場からの理解を得られずに苦しんでいた。
三瓶は自宅で過ごしながらのリハビリ継続を想定し、試験外泊を勧める。
患者にとっては待ち望んだ自宅で家族と過ごす時間だったが、施設のパンフレットを発見してしまいショックを受ける。
病院に戻った後もリハビリを拒否するようになってしまった患者に対して、五十嵐はストレートに嫌がる理由を聞こうとするが、さらに拒否反応を起こしてしまう。
リハビリをあきらめようとする五十嵐や患者の妻に対して、三瓶は患者がより自分らしく生きていけるようにするのがリハビリの目的であると話した。
伝わる思い
気分が乗らない患者に、川内は「宝物帳」というノートを作って渡した。
患者にとって大切な言葉を自由にノートに書き周囲と共有していくことで、言葉で伝えられない気持ちを伝えるという発想が、川内らしいと三瓶は感心する。
妻も家族のことで埋め尽くされる「宝物帳」を見て、在宅ケアを決心した。
自分とは違うアプローチで患者を精神的にサポートする川内を見て、五十嵐は実力不足を思い知るものの、これからさらに力をつけていくことが期待される。
経営者の苦悩
竹工芸の会社を営む親子。
そろそろ娘にバトンタッチを意識し始めたころ、社長が交通事故にあった。
三瓶はびまん性軸索損傷と診断し、後遺症として認知機能の低下が考えられることを娘に告げる。
意識が戻った後、検査を行った五十嵐は心配された認知機能について、発覚した問題を説明したが、社長はまだ自覚がなく三瓶は観察期間を設けることに。
会社の立て直しを目指し助成金を受けようと奔走する娘は、父親のアドバイスを受けようとするが、社長は脳の処理速度が落ちているため理解が追いつかなかったり、複数人との会話が難しく苛立ってしまう。
五十嵐の根気強いリハビリと周囲が症状を理解し工夫することで、その状況は改善されていった。
しかし、仕事での大事な判断は難しく、娘の判断に委ねがちに。
仕入れ先廃業のトラブル発生に、娘は輸入に踏み切ろうとし、ブランド力を守ってきた従業員から反感をかってしまった。
父親のものさし
すっかり自信をなくした社長に、竹取物語を読ませる五十嵐。
得意な分野で生き生きと竹についての知識を話す社長の姿を見た三瓶は、経験や学習によって獲得した能力は失われていないと励まし、川内は娘へどう手を差し伸べるか悩む社長に竹のものさしを手渡す。
従業員との間にできた溝に頭を抱える娘のもとにやってきた社長は、廃業前の仕入れ先の竹林を見に行こうと娘を連れ出した。
地域貢献
難しいビジネス論ではなく、ただただ良い竹とそれを使った工芸を大事に守り続けてきた父親たちの姿を見て、跡継ぎがなく廃業が決まっていた仕入れ先の竹林を買い取ることに決めた娘。
竹の育成から加工までを一貫して行い輸入に頼らずコスト削減を実現し、地域貢献にも努めることで見事助成金を勝ち取った。
一方、別室で行われている「地域医療構想会議」には、救急受け入れの環境を整えたい理事長と院長が、構想発表のため出席していた。
【9巻のまとめ】
様々な後遺症に悩む、脳外科の患者とその家族を心身ともに支える三瓶と川内。
そこへ五十嵐が仲間入りし、病院にはまた新しい風が吹いた。
そして、「地域医療構想会議」には大迫教授、綾野の父、三瓶たちの病院の理事長が一堂に会する。
【9巻の見どころ】
この巻の見どころは、言語聴覚士・五十嵐詩織の奮闘と、患者やその家族が直面する壁を乗り越えていく姿です。
特に、ウェルニッケ失語の患者への対応が印象的です。
一見楽しそうに会話しているように見えても、言葉の意味が伝わらない状況を的確に見抜き、家族に安心を与える五十嵐の観察眼が光ります。
また、リハビリの停滞や患者の拒絶に直面しながらも、三瓶の指導のもとで成長していく五十嵐の姿も見逃せません。
さらに、事故で認知機能が低下した社長と娘の葛藤も心を打ちます。
竹取物語を通じて自信を取り戻す父の姿は、リハビリの本質を感じさせます。

次巻へ続きます。
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