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前巻はこちらゴンのプロポーズと、母娘の歪んだ関係の核心『凪のお暇』9巻【ネタバレ注意】
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『凪のお暇』10巻は、慎二・市川・夕・ゴンそれぞれが自分自身の矛盾や欲望と向き合わされていく、心理描写の濃い巻です。
北海道弾丸ツアーという動きを軸に、各登場人物の関係が静かに、しかし確実に変化していきます。
表面上は穏やかに見える日常の裏に、誰もが抱える"本音"と"建前"のズレがじわじわと浮かび上がってくる一冊です。
それでは、10巻の見どころを詳しくご紹介します。
目次
営業一位の市川と、慎二の消耗
営業一位になった市川は働く女性として取材を受けますが、完成した記事にはPV数を上げるための意図的な見出しをつけられ、傷つきます。
慎二は市川のパートナーとして社内に認識されるようになっていましたが、本当は古典的な家庭像を求めてプロポーズしたという本音を切り出せないまま、外堀を埋められていきます。
市川の愚痴を聞き続けることにうんざりしながらも、市川と別れれば自分の立場も下がるという打算から関係を続けていた慎二は、自分が一方的に消耗させられていることに気づいていました。
仕事でも恋愛でも「うまく立ち回る」ことを得意としてきた慎二が、その均衡を保てなくなっていく過程が、この巻でも続いています。
自分の本音を誰にも言えないまま消耗していく慎二の姿は、読んでいてどこか苦しいものがあります。
スナックでの本音と、北海道弾丸ツアーの決定
悩みを打ち明ける場所もなかった慎二は、桃園に誘われスナックへ向かい、ゴンや常連客のタロさんに本音を吐き出します。
勤勉な父と支える母、揚げたての唐揚げがある家庭への憧れが自分のプロポーズの動機だったと打ち明けますが、その思いを市川には言えていませんでした。
タロさんから恋バナをもっと話すべきだと言われ、北海道への弾丸ツアーに誘われます。
一方ゴンはスナックで凪の代打として働きながら、慎二と凪の距離が縮まることへの不安を抱えていました。
慎二とゴンが互いの凪への思いを探り合いながらも本音をぶつけ合う場面は、この巻の見どころのひとつです。
凪という一人の女性をめぐって、全く異なるタイプの二人の男性が静かに向き合う緊張感が、読者をぐっと引き込みます。
それぞれの家庭と、向き合えない葛藤
北海道弾丸ツアーが決まる中、登場人物それぞれが家庭内の問題と向き合っていました。
勝は父親の振る舞いへの複雑な思いを抱えながら、部活を辞めてふらふらしている自分を父に厳しく諭されます。
宇堂は姉から外見を磨くよう言われますが、そうした価値観への反発を覚えながらも、姉の孤独な様子が気になっていました。
取引先への誠実な行動をセクハラと誤解された市川は、自分が男性だったらこんな目に遭わなかったのかと慎二に相談します。
その言葉に的外れな考えを抱いた自分を嫌いだと感じた慎二は、その場から逃げるように弾丸ツアーへの同行を決意します。
勝と宇堂が凪の実家に集まり、男女どちらが生きづらいかで盛り上がる場面では、凪が「どちらが辛いかより、目の前にいる人を責め合う方がおかしい」と場を収めます。
この一言が、凪の成長と本質を見抜く力をさりげなく示してくれる印象的なシーンです。
夕のお暇と、欲の核への気づき
東京でお暇生活を楽しむ夕は、夢ノートのコンプリートを目指しながら美容や観光を満喫していました。
夕とゴンが行動をともにする様子を知った凪は、かつて夕がゴンのようなタイプが好きだと言っていたことを思い出し、不安を覚えます。
うららの母がおでんを届けに夕を訪ね、互いの母親との関係について話が深まります。
うららの母は、圧倒的な存在感で娘を支配してきた自分の母との関係を打ち明け、そうした母の言動の根底には満たされない欲があったと話します。
夕はその話に自分の祖母の姿を重ね、同時に自分と凪の関係にも思い当たります。
お暇で満たされないのは、自分の欲の核から目を逸らしているからではないかと指摘され、動揺した夕は帰宅後に自分の欲の核について考えます。
頭に浮かぶのは武の姿で、向き合えば何かが終わってしまうと感じながらも、夕は夢ノートに「武に会うこと」を書き加えます。
これまで娘への干渉という形で感情をぶつけてきた夕が、ついに自分自身の未解決の感情と向き合い始めるこの場面は、7巻・8巻からの流れが大きく動き出す重要な転換点です。
崩れていく慎二の人間関係
仕事への情熱を取り戻しつつあった慎二でしたが、市川をめぐって同級生たちとの関係が壊れていきます。
市川に近づこうとする友人を怒った慎二は逆に「学生時代で終わっている」と言い返され、コミュニティは崩壊していきました。
誰にも弱さを見せられないまま孤立した慎二は、逃げてはいけないという呪縛を振り払うように北海道行きを決意し、市川の前から姿を消します。
一方市川は、自分のせいで周囲の関係が壊れていくことに自己嫌悪し、職場に戻って同僚に打ち明けます。
同僚たちは慎二がそうした市川の自虐を毎回聞き続けていたことに驚き、慎二と凪がゴキブリ騒動で笑い合っていたエピソードを思い出します。
タロさんのSNSに映る慎二と凪の様子を見た市川は、複雑な思いを抱えます。
人間関係のバランスを巧みに保ってきた慎二が、次々と関係を失っていくこの展開は、読んでいて息が詰まるような緊迫感があります。
ゴンの葛藤、結婚資金と裏切りの間で
工事現場で凪との結婚資金を貯めながらも、不安から他の女性に手を出し続けてしまうゴンの葛藤が描かれます。
凪への本気の気持ちは確かにある。
しかしその一方で、これまでの行動パターンを断ち切れないゴンの弱さも同時に描かれています。
プロポーズまでしておきながら、自分の行動が矛盾していることへの自覚と、それでも止められないという苦しさ。
8巻でゴンの生い立ちが明かされた流れを受け、なぜ彼がそのような行動を繰り返すのかという背景が、読者にはすでに伝わっているだけに、一層切なく感じられる場面です。
【10巻のまとめ】
『凪のお暇』10巻は、慎二の孤立と消耗、夕が自分の欲の核に気づく瞬間、ゴンの葛藤、そして北海道弾丸ツアーへの動きと、物語が大きな局面を迎える前夜のような緊張感に満ちた一冊です。
各登場人物が自分の本音や欲望と向き合わされていく中で、凪の存在が一つの軸として機能していることが、改めて感じられます。

続きが気になる方は、ぜひ手に取ってみてください。
次巻へ続きます。
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