そして人里離れた重傷者施設で暮らす兄を思い、人を分けるのは上下ではなく内と外だと社会のあり方に歯がゆい思いをする三瓶。
そんな三瓶をそばで支えたいと願う川内だが、記憶障害の症状が急変してしまう。
16巻のあらすじを振り返ってみましょう。
すれ違い
川内の一過性全健忘の症状は2分で解消したものの、血管解離の再発を心配した三瓶は医大を訪れ、大迫とともにMRI検査に立ち会った。
血管乖離の再発や軽いてんかん発作など様々な可能性を話し合うが、解明も解決もされず不安が残る。
翌日、二人は患者会の会合にそろって参加した。
事故後の辛い経験を語り、就労就学支援の重要性を訴える颯太の母親。
そのスピーチに目をつけた松木保健局長が、さらに県庁での重要な会議でもスピーチをと提案してきた。
就労就学支援推進への前進に大喜びする母親だが、颯太と父親は活動にのめり込む母親に不満を募らせる。
そんな家族の様子が三瓶と川内も気がかりだった。
患者会の決裂
ある日、川内は日記を読まずに出勤し、三瓶のことだけが分からない様子…。
しかし、それは記憶がなくても三瓶に対する気持ちは変わらないことを確かめるための、川内の妹夫婦のアイデアだった。
知事の支援団体である患者会を上手くまとめたい松木は、請願書には1件の要求しかできないことに着目。
ハードルの低い就労就学支援を請願書にして隠れ蓑にすることで、患者会の他の要望を先送りにしようと企む。
松木に協力を依頼された高原好子議員は患者会の視察に訪れたが、中には数ある要望のなかで就労就学支援だけが取り上げられることを快く思わない会員も多数存在し、話は全くまとまらない。
なんとか要望を通したい颯太の母親は、ヒートアップする話し合いに夢中になるが、その間に自宅で一人で風呂に入っていた颯太は発作を起こし浴槽で溺れて意識をなくしていた。
結局、決裂した患者会から母親が帰宅したのは夜遅く。
颯太の異変に気が付いた母親は急いで病院へ運ぶが、颯太は意識不明の重体で、将来的にもずっとその状態が続く遷延性意識障害と診断されてしまう。
父親はやりきれない気持ちで、「颯太のための活動」と言いながら颯太を放置していた母親を責めることしかできなかった。
受け入れられた謝罪
颯太の事故によりその母親も消極的となって県庁でのスピーチを辞退し、患者会の樋内会長も請願書の辞退を申し出ると、面子を潰された高原議員も手を引くことをちらつかせる。
知事のためにも患者会の分裂はなんとしても避けたい松木は、患者会の要望をまとめて取り上げる方向で状況を打開するべく、商工局長の手を借りて患者会の活動方針をマスコミで取り上げることに。
就労就学支援だけではなく、生活介護などすべての活動を発表できる場が出来た患者会。
しかし颯太の母親への反発が強い会員は、未だ患者会へ戻ることを躊躇っていた。
患者会の会長である樋内もまた、交通事故で亡くなった夫のため、活動を続ける場所として患者会を守りたい気持ちがあり、泣く泣く颯太の母親に脱退を依頼しにやってきたのだった。
颯太の母親は患者会から脱会し、父親は離婚を選択。
それから、颯太との交通事故で車を運転していた加害者の中学教師は、直接謝罪をさせてほしいと中保に連れられやってきた。
事故当時は許せない思いでいた母親だが、颯太を前に何度も謝りながら泣き崩れる中学教師に、同じように辛い思いをしてきたことを悟り、ようやく受け入れることが出来たのだった。
三瓶の兄の容体が急変
これからの颯太との関わり方について考える颯太の母親と川内は、重症児である三瓶の兄が住む施設へ見学にやってきた。
そこで、重症児や後天的に遷延性意識障害になった人とも、意思疎通ができることを知った母親。
そして、三瓶の兄と川内はすっかり打ち解けた様子で、心が伴う川内の行動を感じ取り喜ぶ兄の姿を、三瓶とセンター長は温かく見守っていた。
しかし穏やかに過ごしていた兄が一変、数日後に肺炎で重症との知らせが入り、三瓶は兄のもとへと急ぐ。
三瓶は重症児である兄に対しどこか差別的な態度をとり、これ以上苦しませないためにあえて治療しない選択肢を仄めかす主治医を信頼できず、治療内容を監視するために時短勤務することを決めた。
そんな三瓶を心配した川内もまた、時短勤務に切り替え寄り添うのだった。
兄の魂
かつて三瓶がアメリカで研究に没頭している間、三瓶の母が兄のことを看護してきたが、三瓶に知らせないまま母は膵臓癌を患っていた。
颯太の母がそうであったように、三瓶も研究は兄のためと言い聞かせていたものの、結局は家族から遠ざかってしまったのである。
その罪悪感から兄の「蘇生措置拒否」にサインすることを頑なに拒んでいることを、施設のセンター長から指摘され、母ならどんな選択をするか考えるよう諭される。
次第に弱っていく兄を、看取る覚悟を決めた三瓶は「蘇生措置拒否」にサインをする。
三瓶にとってかけがえのない存在でいつも大切なことを教えてくれた兄は、立派に使命を果たし、三瓶と川内に見守られながら静かに息を引き取った。
そして、颯太もついに母の声掛けや風の気持ちよさに僅かながら反応を示すようになるのだった。
脳外科部長 魚住史也
西島グループの観光医療センター開設が記事になると、高原議員と樋内会長は「医師不足で地域医療が手薄になることはあってはならない」と松木を責める。
一方、丘陵セントラルには、大学から招かれて魚住史也が副院長兼脳外科部長として就任したが、研究ばかりで臨床経験が少ない魚住を部長として受け入れることができるのか、不安が残る三瓶たち。
その魚住は、「周囲の援助があることが前提である川内の診療はやめさせる」と言い出した。
三瓶は、「魚住には周囲の援助は必要ないのか、これから川内に助けられることも出てくる」と言い切り、反論する。
星前や綾野らもまた、川内をこれまでどおり全力でサポートすることを決意するのだった。
川内の選択
そんなある日、川内は救急の現場で突然倒れ、目が覚めると再び三瓶のことだけが分からなくなっていた。
海馬動脈の解離が進行している危険な状況で、脳梗塞が完成すれば二度と目覚めることはない、しかし手術もリスクが高すぎる。
それでも三瓶は、婚約者として川内を救いたいと周囲を振り切り、手術に賭けようと考えていた。
手術後もしも意識が戻らなくても、一生川内を介護する覚悟をしている三瓶は、川内に手術の同意を求める。
記憶がないなか、これまでの自分の日記を読みながら覚悟を決めた川内。
果たしてその回答は―。
魚住部長の手術でピンチに
一方、三瓶と綾野の不在時にくも膜下出血の疑いがある患者が運ばれた。
CTの結果をみて単なる脳出血であり、簡単な手術だと判断した魚住は、自ら執刀することにし、助手に星前をつける。
しかし突如として患者が大量出血を起こし、危険な状態に。
星前は念のため、手術前に風間を通じて三瓶に状況を知らせていたが、すぐにサポートに入れる状況ではない。
そんななか、魚住の手術でトラブルが起きていることを耳にした川内が、手術室へと急ぐのであった。
【16巻のまとめ】
川内は三瓶への気持ちを確信し、徐々に二人の距離は縮まるが川内の海馬動脈解離が進行し予断を許さない状態に。
そんな状態でも川内は、自分にしか救えない患者がいると立ち上がった。
そして、手術に執着する三瓶に対して、川内が出した答えとは――
【16巻の見どころ】
この巻の見どころは、颯太の事故をきっかけに揺れ動く家族の絆と、患者会の分裂を巡る人々の葛藤です。
母親が「颯太のため」と信じて活動に没頭する一方で、彼の命が危機にさらされるという皮肉な展開が胸を締めつけます。
また、三瓶の兄の最期は、家族の在り方や命の尊厳について深く考えさせられるシーンです。
さらに、川内の病状が悪化し、記憶を失う中で選ぶ道とは何か。
魚住部長の手術でのトラブルも重なり、緊迫感が増していきます。

次巻へ続きます。
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