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前巻はこちら児童虐待の発見、学術大会への挑戦、外国人患者への対応『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』8巻【ネタバレ注意】
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第9巻では、外国人患者への丁寧な対応が続く一方、薬剤部に実習生が加わることで「教える側」としてのみどりの新たな姿が描かれます。
医療者としての基本である「患者と向き合うこと」の意味を、さまざまな角度から問い直す一冊です。
異文化への配慮よりも大切なこと
前巻から続くインドネシア人家族のエピソードは、母親の子宮筋腫の治療へと展開します。
過去に日本のクリニックで嫌な思いをした経験から受診を拒んでいた母でしたが、息子に親身に関わってくれた萬津への信頼が背中を押し、ようやく受診を決意します。
子宮全摘手術にあたって萬津は女性のみで構成されたチームを結成し、薬剤管理をみどりが担当することになりました。
チーム会合ではイスラム教徒への対応を中心に検討が進みますが、宗教への配慮を気にするあまり投薬に悩むみどりに、瀬野は「まず患者自身を理解しなさい」と指導します。
実際に本人とコミュニケーションを重ねることで必要なことと不要なことが整理され、手術も療養も順調に進んでいきました。
宗教や人種にかかわらず患者と対話するという医療の原点を、みどりが改めて実感する章です。
4年ぶりの実習生がやってきた
薬剤部に4年ぶりとなる実習生・室井と丸川が加わります。
指導担当となったみどりは使命感に燃えており、張り切った様子が微笑ましく描かれています。
早速調剤の実務に入った2人のうち、室井はすぐに要領をつかんでこなす一方、丸川は戸惑いを見せていました。
丸川に声をかける室井の距離感が妙に近いことは周囲も気づいていましたが、誰もあえて触れずにいます。
勇気を出して関係を聞いた薬剤師には「付き合っていない」という答えが返ってきましたが、実習後に2人がともに過ごす様子や、室井が病院就職に関心を持っていない素振りなど、気になる要素が随所に散りばめられています。
実習生の人間模様が加わることで、物語に新たな彩りが生まれています。
「頭のいい実習生」が陥る落とし穴
順調に実習を進めていた2人は抗がん剤治療中の患者と関わる機会を得ます。
見学から始めたいという丸川に対し、すぐに患者と話したいと申し出た室井でしたが、データや情報ばかりに意識が向き、患者の気持ちを置き去りにしてしまいます。
刈谷が指導に入り反省の言葉を引き出しますが、心からの反省には見えませんでした。
瀬野は、自分本位な姿勢が変わらないようであればこれ以上患者に関わらせるべきではないと厳しい判断を下しています。
実習生であっても患者にとっては医療関係者のひとりであるという事実は、読者にも改めて考えさせられる重要な視点です。
それぞれの実習、それぞれの課題
室井と丸川は別々の病棟での実習へと移行します。
産科に入った室井はみどりから配慮すべき点を丁寧に伝えられ、その整った外見もあって患者たちとすぐに打ち解けました。
ある患者の夫がみどりの中学時代の同級生だったことが判明し、思わぬ再会に場が和む場面も描かれています。
一方、内科で糖尿病患者・飯島の担当となった丸川は、飯島が自身の教育入院の意味を十分に理解していないという難しい状況に直面します。
病気と長く向き合うための入院であることを理解してもらいながら関係を築くという、簡単ではない実習が始まろうとしています。
対照的なふたりの実習の行方が、次巻への大きな引きとなっています。
【9巻のまとめ】
『アンサングシンデレラ』第9巻は、異文化対応と実習生指導というふたつの軸を通じて、医療者としての「対話の基本」を問い直す一冊です。
完璧に見えて自己中心的な室井、不器用だが誠実な丸川という対照的な実習生の存在が物語に新鮮な緊張感をもたらしています。

ぜひ続きの第10巻とあわせてお楽しみください。
次巻へ続きます。
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