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前巻はこちら対話の大切さと次世代の育成、薬剤師の原点に返る『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』9巻【ネタバレ注意】
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第10巻では、対照的なふたりの実習生・室井と丸川それぞれの山場が描かれます。
順風満帆に見えた室井が深く傷つき、不器用だった丸川が着実に信頼を勝ち取っていく様子は、医療者としての成長とは何かを改めて考えさせてくれます。
そして巻末には、次巻への不穏な伏線が待ち受けています。
不器用な丸川が積み上げた信頼
飯島への声がけを部屋でひとり練習していた丸川の姿は、不器用ながらも誠実な姿勢を象徴しています。
医師や看護師の記録を読み込む中で、自分の説明がうまくできているかばかりを気にしていた自分に気づいた丸川は、向き合い方をあらためていきます。
患者本位の姿勢に指導薬剤師も好感を持ち始める中、飯島との何気ない会話から体調不良の原因が更年期障害にあると気づくという大きな手柄を上げました。
時間をかけて築いた信頼が、医療の現場で実際に役立つ発見につながるという展開は、丸川の成長を鮮やかに示しています。
完璧な室井が直面した「答えのない場面」
一方、何事も難なくこなしてきた室井に、大きな試練が訪れます。
つい一週間前に幸せそうな姿を見せていた柳夫妻の赤ちゃんが、子宮内で亡くなっていたのです。
これから亡くなった赤ちゃんを分娩しなければならない柳の妻に、どう接すればよいのかまったくわからなくなってしまった室井は、打ち解けていた患者を突き放すような態度をとってしまいます。
みどりの指導に感情的になって立ち去ったその日を境に、室井は実習に来なくなってしまいました。
データや知識では対処できない現実との衝突が、エリート実習生を打ちのめすという展開は、読者の心にも深く刺さります。
大晦日の当直が生んだ、思わぬ和解
年末の当直をひとりで担ったみどりは、食事を取る暇もないほどの多忙な夜を過ごします。
そんな中、別棟の医師・大河内から特段急ぎでもない確認が度々入り、一触即発の雰囲気になりかけました。
そこに救命の豊中が割って入り、それぞれの事情が理解し合われることでふたりは和解します。
年が明けた頃、豊中が瀬野の机から勝手に持ち出した年越しそばをふたりにふるまうという、ユーモアあふれる場面は本巻の清涼剤ともいえます。
医療現場の連携と人間関係がリアルかつ温かく描かれた、印象的なエピソードです。
挫折から立ち直る室井、それぞれの選択
引きこもっていた室井のもとに兄が訪ねてきます。
コンプレックスを感じさせる存在でもある兄からの言葉が背中を押し、室井はようやく実習への復帰を決意しました。
刈谷たちは叱ることなく室井の意思を尊重し、みどりの提案で柳のもとを訪ねた室井は、自分の未熟さを認めた上で自分なりのかかわり方を申し出ます。
総括発表会も無事に終えた送別会の場で、室井は医療の道を真剣に考えることへの決意を、謝罪とともに伝えました。
充実した実習を終えた丸川もポジティブな感想を語りますが、刈谷が両名の薬剤師としての将来に期待を示した直後、丸川は大学院での研究進学を打ち明けます。
さらに丸川は室井との交際も終わりにすることを伝え、驚く室井の姿が印象的に描かれています。
自分の成長のために前へ進もうとする丸川の決断は、静かな強さを感じさせます。
巻末に忍び寄る「薬不足」の危機
妙なやる気に満ちた室井からのお礼状に戸惑うみどりたちのもとへ、羽倉が駆けつけてニュースを確認するよう伝えます。
報道されていたのは、製薬会社の工場での火災でした。
萬津でも採用されている薬の供給が滞り、現場が混乱することは避けられない状況です。
医薬品の安定供給という、普段は意識されにくいテーマが突如クローズアップされるこの場面は、次巻への期待と緊張感を一気に高めます。
【10巻のまとめ】
『アンサングシンデレラ』第10巻は、対照的なふたりの実習生を通じて、医療者としての成長とは何かを丁寧に描いた一冊です。
完璧に見えた人物の挫折と再生、不器用な人物の着実な成長という構図は、読者に深い共感を呼びます。

次巻へ続きます。
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